『NHK人間ドキュメント 白鵬 ~”綱”に挑んだ15日~』を見た。
モンゴルでは、大相撲の視聴率が高い。
首都ウランバートルの街。はかま姿の白鵬の大きな写真。
人々の白鵬にたいする期待はつよい。
名古屋場所で、横綱昇進に挑んだ、21歳の大関・白鵬。
番組では、モンゴルでわが子の健闘を祈る白鵬のご両親を密着取材した。
白鵬の父、ムンフバト・ダヴァジャルガルさんも、モンゴル相撲全国大会で5年連続横綱だった国民的英雄だ。
「相撲の時には厳しく、土俵を下りればやさしい、父のような横綱になりたい」日本のファンにもやさしく応対する白鵬。
しかし、来日当初(2000年10月)、小柄だった白鵬を受け入れてくれる部屋はなく、最後に入門を受け入れた熊ヶ谷親方にしても、父のモンゴルでの実績のことはしらなかったという。
2001年3月場所の白鵬、初土俵の映像。
当時体重は80kしかない。
現在、192cm、153kの白鵬とは別人のような少年だ。
(白鵬の入門当時(2000年)は、175cmで68kgだったという。)
十両の里山(25)の現在の身長177cm 体重115kより小さい。
ぎこちない感じの相撲ながら、白鵬の抜群の相撲センスのよさを、当時から宮城野親方(現、熊ヶ谷親方)は注目していた。
必殺技「左前まわし」をひっさげ、名古屋場所、横綱を目指す白鵬。
しかし、その技は相手に研究され、行き詰ってしまう。
実は、十両4場所目の里山にも、同じような迷いがあった事を、先場所あたりから見抜いていた人物がいた。
わがホーソー机、カイセツのオジヤマ氏であった。(笑)
里山の相撲は、低い立ち合いから、相手のふところ深く潜り込み、左前まわしを、引き付けながら、頭で相手を起こして、前に出る相撲。その間の多彩な技が持ち味。
これらを、相手力士に封じられ、連勝中にもかかわらず「実は、自分の思うような相撲が取れたのは、1~2番しかない」と里山は、向正面のレポーターにもらしている。
番組での白鵬の姿をダブらせるオジヤマ氏。
オジヤマ氏も段ひら氏も、小柄な里山は、まわしにこだわるべきか、否か、明確な答えを出せずにいた。なので、今まで言わずにいた。
そこでワレハレは、以下に、
ニューヒーロー白鵬が“綱”に挑んだ15日間の舞台裏の記録をブンセキし、その強さの秘密に迫るとともに今後の里山の相撲のカイセツに生かそうと試みた。
ワレハレは、番組をあらゆる角度からテッテイ的にカイセキした。これは、そのホンの一部の報告である。
うーむ。
番組には、他にも見所となる、いくつかのテーマがあったが、今回、ワレハレの視点は、白鵬の必殺技「左前まわし」をめぐる、立ち合いの不安と、その解消の過程、一点にしぼられた。
導きだされた結論は、たった一つ。
(飛ばして読んでもわかるさ、赤い文字)
うーむ。
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寝ることが、体力をつけると考える白鵬は1日12時間以上寝るようにしています。
入門当初から、とにかく食べ、体を大きくしてきました。
はいては食べることのくりかえし。
白鵬の強さを支えているのは、柔らかな体です。
相手の強力な、突き、押し。しなやかに体をそらし、しのぎます。
旭天鵬「攻めながら、やわらかい」「みんなやりにくいんじゃないすかね」
そして、白鵬の力が最も発揮されるのは、「左前まわし」です。
白鵬は、左手で、相手の前まわしをつかみ、強力な腕の力でひきつけます。
相手の体が浮き上がったところを、一気に攻める。
(先場所)
土俵際、十分に腰を落とし、寄り切り。
体が浮き上がった、雅山(みやびやま)、どうすることもできない。
(先場所)
土俵中央
「左が入った!!」ワー!
「出し投げを打った!!」ワーッ!ワーッ!」
「白鵬!うまいっ!」
琴欧州をものの見事にひっくりかえします。
白鵬、フーと息をつき、会心の表情。
これが白鵬の相撲です。
白鵬は、左前まわしを取ることで、先場所初優勝。
今場所優勝すれば、横綱昇進が決まります。
しかし、他の力士たちも、この白鵬の左前まわしを防ぐ手立てを考えます。
名古屋場所、初日、白鵬は、朝赤龍(あさせきりゅう)に、左を封じられ黒星スタート。
朝赤龍は白鵬の「左前まわし」をかわす稽古をしていた。
二日目の朝、熊ケ谷親方は、白鵬にこう言います。
「いつも言っているように、平常心でいかないと、俺は強いんだと、余裕をもって、」
「はい」
「自分の相撲を取れば勝てるんだから、自信を持っていかないと」
「うん」
宮城野部屋では、家族同然の日々です。
その後、5連勝しながらも対戦相手に左まわしを切られ、思うような相撲がとれず、不安な日々が続く白鵬。
9日目、白鵬の稽古の様子が変わります。
左まわしをねらわないのです。
9日目の対戦相手は、突き押し相撲の雅山。
立合いの迷いを振り払えないまま、土俵に上がった白鵬。
立ち合い、まわしを取りに行きません。
途中から、あわてて左前まわしを取りにいったところを雅山に、頭を押さえつけられるようにして、はたかれます。
小さくガッツポーズの雅山、先場所の優勝決定戦の相手でした。
白鵬はこの日、横綱昇進には、致命的となった2敗目を喫します。
そして、みなさん、いよいよ番組に、その時がやってまいります。(笑)
不安をつのらせる白鵬に、ウランバートルの父ムンフバトさんから、電話が入ります。
偉大な父は、白鵬の立ち合いの迷いを見抜いていました。
父の言葉です。
「息子よ、今日は、ちょっと、踏み込みが足りなかったようだな、そして、まわしがつかめなかった。」
「明日はまわしを取りなさい、あわてなくてもいい。必ず取れるはずだから。
負けたけど、落ち込む必要はないさ、明日の取り組みだけに集中するんだ」
ここは、番組の起承転結でいえば、転にあたる部分への、導入部になる、重要な場面です。できれば、声に出してお読み下さい。(笑)もし、優勝していたら、番組の副題になったかもしれない部分です。「息子よ、あわてずに、綱をとりなさい」とか・・・。
携帯電話で話す父の言葉は、声優の声で、ゆっくりとした調子の日本語に翻訳されます。
文字は出ません。声優の見せ場でもあります。ちなみに、わが段ひら氏の場合です。↓
「ジョー!踏み込みがたりないぞ。まわしもとれんかった。
いいかジョー!あしたはジョー!、まわしを取るんだジョー!あわてるんじゃあないぞ!いいかジョー!、負けたけど、落ち込むこたあないぞ!いいか!よーく聞くんだジョー!
あしたのジョー、もとい、あしたの取り組みだけに集中するんだ、ジョー!」
うーむ。
白鵬、父の言葉が、自分の相撲を見つめ直す、きっかけになります。
終盤戦、残りあと5日間、絶対に負けられない日々が続きます。
残る相手は、強敵ぞろい。
10日目の、相手は、あの怪物、把瑠都(ばると)。白鵬よりもさらに速い出世。
「大関、強いすからね、一番楽しみじゃないかな」←余裕の把瑠都、今場所6敗もしてしまったな。
立ち合い、把瑠都、強烈な突っ張りで、白鵬の左を防ぎます。
把瑠都の普段の稽古相手は、同部屋の里山、たぶん里山から教わった。だいぶ立合いがうまくなっている把瑠都。
しかし、この日の白鵬は、あわてません。
やわらかな体で、突っ張りをしのぎながら、まわしを取ります。
「把瑠都、突っ張ります!」
「突っ張った!」
「みぎよつ!」
「上手をひいた白鵬!」ワーッ
「引き付けて、出ます!白鵬」ワーッ
「白鳳の寄り、寄り倒しいー!」ワーーッ
「白鳳勝ちました!勝ち越し」アナウンサーの声、やや上ずっている。
「2敗を守りました、白鵬!」
”あわてずに、まわしを取れ!”、父の言葉を生かした一番です。
続いて、栃東戦で、まわしをはじかれながらも、前に出る勢いで勝った白鵬は、こう、言います。
「相手も必ず研究してきますからね」
「まえみつ(前まわし)を取るだけの相撲じゃなくて」
「相撲の流れを作ってから、まわしを取っていく相撲にかえた」
千秋楽の朝青龍戦まで、あわてずに、まわしを取る相撲で、2敗を守った白鵬。
ウランバートルの自宅でTVを観る偉大な父も、思わず体に力が入ります。
「よくやったと言いたい。息子を誇りに思っています。」
母は、お香を焚いて息子に怪我のないよう祈りながらTVを見つめました。
綱の重さを知った、21歳「大関・白鵬、再び、綱取りに挑みます。」
9月場所、十両筆頭の位置に近づく里山、幕内昇進が期待される。