孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

オーストラリア  対中国 「どん底」を抜けて更に悪化 フェイク画像問題に怒るモリソン首相

2020-11-30 22:54:35 | オセアニア

(オーストラリアのモリソン首相は投稿について「恥を知るべきだ」と述べた【11月30日 BBC】)

 

【フェイク画像にモリソン首相「恥を知るべきだ」 中国「豪州政府とツイッター社の間の問題だ」】

悪化する中国とオーストラリアの関係については、これまでも取り上げてきたところです。

5月23日ブログ“中国・オーストラリア関係 米中対立が飛び火した形で中国による報復的な輸入制限措置へ

6月26日ブログ“オーストラリア  相次ぐ問題で豪中関係は悪化の一途 親中派議員の家宅捜索も

9月20日ブログ“オーストラリア・中国の関係は政治的には「どん底」 関係改善はすぐには期待できず

 

9月20日ブログでは「どん底」という表現を使用しましたが、これは間違っていました。まだまだ落ちる余地があったようです。

 

****豪「恥ずべき振る舞い」と中国非難=兵士中傷画像投稿で****

オーストラリアのモリソン首相は30日記者会見し、中国外務省が子供の喉元にナイフを突き付けている豪州兵の画像をツイッター上に投稿したことについて、画像は偽物とした上で「恥ずべき振る舞いだ」と非難し、中国側に謝罪と即時削除を要求した。これに対し中国は一歩も譲らず、両国の緊張関係が一段と高まった。

 

豪州は最近、アフガニスタンに派兵された特殊部隊の隊員らが民間人や捕虜39人を違法に殺害したとする調査報告書を公表した。これを受け、中国外務省の趙立堅副報道局長は豪州兵の画像と共に「こうした行為を強く批判し、責任を取らせるよう求める」と投稿した。

 

モリソン氏は「(画像は)全く遺憾であり、どんな理由であれ正当化できない」と指摘。「国防軍に対するひどい中傷だ」と訴えた。同時に、両国間の関係改善に向けて閣僚や首脳間の対話の再開を呼び掛けた。

 

これに対し、中国外務省の華春瑩報道局長は30日の記者会見で、「豪州政府は深刻に反省し、アフガン人民に正式に謝罪すべきだ。彼らの軍人がアフガンの罪のない民衆を惨殺したことを恥ずべきではないのか」と反論、モリソン氏の謝罪要求に反発した。

 

問題の画像については「インターネット上に流れているもので、誰の作品かはっきりしない」と出所不明のまま利用したことを認めながらも、削除要求は「豪州政府とツイッター社の間の問題だ」とかわした。【11月30日 時事】

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話を整理すると、アフガニスタンに派兵された特殊部隊隊員の民間人・捕虜殺害自体はオーストラリア政府自身が認め、その対応にあたっている案件です。

 

****豪政府、軍兵士がアフガンで民間人ら39人殺害と報告 特別捜査官事務所を設置****

アフガニスタンに派遣されたオーストラリア軍兵士が現地の民間人らを違法に殺害していた問題で、モリソン政権は豪軍から独立した特別捜査官事務所を設置し、兵士を起訴するかどうか判断する。

 

豪軍兵士の残虐行為は豪公共放送ABCが2017年に「疑惑」として報じたことで広く知られるようになり、実態解明が懸案となっていた。豪軍の戦闘部隊がアフガンから撤収して7年近く経過し、ようやく事態が動き出した。

 

制服組トップのキャンベル司令官が19日、調査報告書を発表し、残虐行為があったことを公に認めた。モリソン首相は報告書が公表される前の12日に特別捜査官事務所を設置すると発表し、厳格な姿勢で臨むことを表明した。

 

政府としては、報告書などの証拠に基づいて中立機関が判断することで、豪軍に対する国内外の信頼回復につなげたい考えだ。特別捜査官は刑法に詳しい弁護士か元裁判官が指名される予定で、判断の期限は未定。政府は監視委員会も設け、豪軍の綱紀粛正に向けた取り組みを確認する体制を整えた。

 

モリソン氏は残虐行為に関する報告を受けた後、地元メディアのインタビューで「真摯(しんし)に受け止め、法の支配の下で対処する。これはアフガン政府にも約束してきたことだ」と強調した。アフガン政府に哀悼の意を伝えたという。

 

報告書は500ページ以上にのぼり、個別事案については固有名詞などの詳細を黒塗りにして公開された。

 

報告書によると、豪軍兵士に殺害されたアフガンの民間人や非戦闘員は39人にのぼった。目撃者からの聞き取りや膨大な量の文書や画像から、主に陸軍特殊空挺(くうてい)連隊の兵士ら25人が関与していたことが判明した。

 

「下級兵は捕虜の殺害を推奨されていた」とされ、組織的な行為もあったとみられる。兵士が非武装のアフガン人を殺害後、戦闘員だったと見せかけるため、武器などが写り込んだ偽装写真を撮っていたケースもあった。

 

01年9月の米同時多発テロ後、豪州は同盟国の米国に協力して同10月にアフガンに派兵。国際治安支援部隊にも参加し、13年末に戦闘部隊を引き揚げた。

 

世論は当初、派兵に理解を示したが、混乱が泥沼化して40人近い戦死者が出たことや、長期化による財政負担の増加などから反対意見が強まった。報告書によると撤収直前の12〜13年に残虐行為が多発したという。

 

この件を巡っては、疑惑として報じたABCが、19年に連邦警察の捜査対象になった。警察は報道の基になった機密情報の入手経路を問題視し、記者の取材資料などを押収したが、結局は起訴を見送った。豪メディアは「報道の自由を脅かす」と激しく反発していた。【11月24日 毎日】

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「下級兵は捕虜の殺害を推奨されていた」というのは、“「初の殺害」を経験させる目的で捕虜を射殺させた例や非武装の民間人を殺害した例などが確認された。”【11月19日 読売】という、一人前の兵士になる「通過儀礼」として捕虜を殺害させるといった、相当におぞましいものだったようです。

 

こうした「戦場の狂気」はしばしば明らかにされる・・・と言うか、戦争というのは、不可避的にこうした非人間的狂気を伴うものだと言うべきで、これはこれで真摯にオーストラリア政府・軍が向き合うべき問題です。

 

オーストラリアのモリソン首相が怒っているのは、中国・趙立堅副報道局長が流した画像が「真実」ではない、故意にオーストラリアに汚名をきせようとする偽物だという点です。

 

****オーストラリア、「不快な」フェイク写真めぐり中国に謝罪要求****

オーストラリアの兵士がアフガニスタンの子どもを殺しているように見えるフェイクの写真を、中国の政府高官が30日、ツイッターに投稿した。オーストラリアは同日、謝罪を求めた。

 

同国のスコット・モリソン首相はテレビ演説で、「不快な」写真をソーシャルメディアで共有したことについて、中国政府は「恥を知るべきだ」と述べた。(中略)

 

中国外交部の趙立堅報道官は30日、オーストラリア兵が血の付いた刃物を子どもに突きつけている合成写真をツイートした。この子どもはさらに、子羊を抱えている。

 

同国の公共放送オーストラリア放送協会(ABC)はこの画像について、オーストラリアのエリート兵がアフガニスタンで10代の子ども2人をナイフで殺害したという、立証されていないうわさに関連したものだと報じている。

ADF(オーストラリア国防軍)の調査の結果、このうわさを裏付ける証拠は見つかっていない。

 

しかし報告書では、違法な殺人が行われた「信用できる証拠」や特殊部隊に存在する「戦士文化」について指摘。下位の兵士らが「最初の殺し」として、非武装の民間人の殺害を強いられた例などが挙げられている。

 

趙報道官はツイートの中で、「オーストラリア兵によるアフガニスタンでの市民や捕虜殺害の事実にショックを受けている。こうした行為を強く非難し、責任を取るよう求めていく」と語っている。

 

オーストラリアは、この投稿は「偽情報」だとして、ツイッターに削除要請を出している。

モリソン首相は、ツイートは「本当に不快で、非常に攻撃的で、全く憤慨している」と語った。

「中国政府はこの投稿に関して恥を知るべきだ。国際社会における中国の権威を低めるものだ」

「これは偽の画像であり、オーストラリア軍に対するひどい中傷だ」

 

首相は両国間の緊張関係についても言及し、「だが、こういうやり方ではだめだ」と指摘。他国がオーストラリアと中国の関係を注視していると警告した。

 

緊張関係はどうなる

中国はオーストラリアにとって最大の貿易相手国。モリソン首相の発言は、同国政府が行った中国批判としては最も語調の強いものとなった。

 

両国の関係は、オーストラリアが新型コロナウイルスの起源について中国に調査を要求したことから悪化。さらに、中国がオーストラリアの内政に干渉しているという疑惑も持たれている。

 

こうした批判に対し中国は、貿易停止やオーストラリア製品への追加関税など、経済的な打撃を加えることで対抗している。

 

在豪中国大使館は今月初め、オーストラリアが中国との関係を悪化させようとしているとされる政策14項目を、地元メディア向けに発表。これには中国の投資計画の阻止や、華為技術(ファーウェイ)の第5世代移動通信システム(5G)の禁止、「新疆や香港、台湾の諸問題をめぐる、絶え間ない理不尽な介入」などが含まれていた。

 

オーストラリアはこれに対し、政策的な立場は変えないとした上で、中国の貿易政策は「経済的な威圧行為だ」と指摘している。【11月30日 BBC】

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このモリソン首相の「フェイク画像」批判への中国の回答が、冒頭【時事】にある、オーストラリアは自分の行為を反省すべき、画像はネットに流れているものを使っただけだとの華春瑩報道局長の対応です。

 

ちなみに、趙立堅副報道局長は、これまでも過激な発言などで「戦狼外交官」の先駆けとして知られる人物です。

 

もちろんモリソン首相の怒りはわかりますが、「それなら、さんざんフェイク情報を垂れ流しているトランプ大統領はどうなのよ?」って感も。

 

【断崖式に落ち込む中豪関係】

経済的には深い関係にある中豪関係が急速に悪化したきっかけは、新型コロナに関して、モリソン首相が4月、新型コロナの武漢発生を前提に、独立した国際調査を呼び掛けたことが中国側の怒りを買ったこととされています。

 

そのことが引き金となった背景には、それ以前の、中国側が政治献金などでオーストラリア政治に干渉しようとしていたことへのオーストラリア側の警戒感、オーストラリアが他国に先駆けてファーウェイを5G通信網構築から排除したことへの中国側の反感などがありました。

 

****中国とオーストラリアの関係はなぜ断崖式に下落したのか―米メディア****

米ボイス・オブ・アメリカの中国語版サイトは26日、「中国とオーストラリアの関係はなぜ断崖式に下落したのか」とする記事を掲載した。

記事はまず、「中国湖北省武漢市で新型コロナウイルスが発生したことを受け、オーストラリアが独立した国際調査を呼び掛けたことが、北京の怒りを買った」とし、「ここから今年の中豪関係の断崖式下落が始まった」とした。

そして中国がオーストラリアの肉製品や大麦について輸入停止や関税上乗せの措置をとったこと、また最近では、モリソン豪首相が、同国の人権外交やメディアの独立、投資政策などに対し中国が示した不満について、受け入れない考えを明らかにしたことなどを取り上げた。

さらに、「豪中間の不信感は長年にわたって高まっている。北京が『戦狼外交』を頻繁に使用し、経済的および外交的手段を使ってキャンベラを威嚇し内政干渉するにつれて、両国関係は谷底へと向かっている」とした。

記事は、「両国関係の転換点となったのは2017年だ」とし、「オーストラリアの安全情報機関は、中国がますます大胆にキャンベラの政策決定に影響を及ぼそうとしていると警告した。中国人ビジネスマンによる政治献金も明るみに出た。オーストラリアは同年末、外国の干渉を抑制することを目的とした法律を成立させた。それに対し、北京は外交訪問の停止で応えた」とした。

さらに、2018年にはオーストラリアが「国家安全保障を理由に、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)を5G通信網構築から排除した最初の国となった」とした。

記事はまた、「オーストラリア人の中国に対する見方も大幅に悪化している」とし、米世論調査会社ピュー・リサーチ・センターの調査で、中国に対して否定的な見方をしている人の割合が、2017年の32%から2019年は57%に、そして2020年は81%へと増加していることも取り上げた。

そして、「中国とオーストラリアの関係がどこまで悪化するか」については、「経済的な結び付きが強いことから、緊迫した政治関係のバランスを取りながら不安定な形で前進する」との分析がある一方で、「両国間の争いはイデオロギーの違いにも関連している。大国として台頭しようとする中国はますます気勢激しく人に迫るようになり、他国に対して中国のルールに従って行動することを迫るようになるだろう」との見方もあると伝えている。【11月30日 レコードチャイナ】

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国民感情レベルの関係悪化を示す一例としては、以下のような「場外乱闘」的な騒動も。

 

****武則天がゴキブリ食べる…豪ABC、中国人「醜化」番組放送し炎上―中国メディア****

中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(電子版)の23日付報道によると、オーストラリアの公共放送ABCの子ども向けチャンネルがこのほど、中国人を醜く描いた内容の番組を放送したとして、中国系市民などから批判を浴びているという。

記事によると、問題の番組は、英BBCの子ども向けチャンネルCBBCが2015年に放送した「Horrible Histories」シーズン6の第2話。中国史上唯一の女帝である「武則天」に扮した白人女性が、ゴキブリやタケネズミを食べるシーンが含まれている。

番組放送後、SNS上では中国系市民などから「吐き気がする番組だ」「人種差別甚だしい」などの声が上がっている。中国系市民のコミュニティーはABC側に、謝罪と説明を求めているという。【11月23日 レコードチャイナ】

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中国側は優位な経済的立場を利用して、オーストラリア側からすれば「いじめ」「いやがらせ」ともとれるような圧力をかけ続けています。オーストラリア産大麦・木材や牛肉の一部について輸入を停止しているほか、最近では・・・。

 

****中国、輸入石炭が環境基準満たさずと指摘 豪石炭足止め報道で****

中国は25日、輸入石炭が環境基準を満たさなかったことを明らかにした。多くのオーストラリア産石炭が中国の港で足止めされているとの報道について回答した。

外務省の趙立堅報道官が定例会見で「中国の税関はここ数年、輸入石炭の安全性と品質についてリスク監視評価を行っており、多くの輸入が環境基準を満たさなかった」と述べた。

中国は10月以降、非公式にオーストラリア産石炭の輸入を禁じている。両国関係の悪化が背景。中国は代わりにモンゴルとロシアからの輸入を増やしている。【11月25日 ロイター】

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****中国、豪ワインに反ダンピング措置 保証金徴収へ****

中国商務省は27日、オーストラリア産ワインの輸入に反ダンピング措置を適用し、28日から107.1〜212.1%の保証金を徴収すると発表した。豪中の緊張がいっそう高まりそうだ。

 

商務省は、「国内ワイン産業への実質的な損害」を受けての暫定措置だと説明している。

 

中国はオーストラリアの最大の貿易相手国だが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)をめぐって豪政府が調査を求めたことから経済的報復をちらつかせ、既に豪州産の木材と牛肉の一部について輸入を停止している。(後略)【11月27日 AFP】

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ロブスターでも・・・“中国、豪産ロブスターに新たな通関検査 豪は出荷停止”【11月3日 ロイター】

 

更には、オーストラリアへの不満をまとめたリスト配布も。

 

****「圧力には屈しない」 豪首相、中国の抗議リストを一蹴****

中国がオーストラリアに対する苦情をまとめたリストを豪メディアに配布したことをめぐり、スコット・モリソン豪首相は19日、中国の圧力には屈しないと強調した。

 

ある中国政府当局者が18日、14の抗議項目が列挙された文書を豪メディアに配布。主要3メディアに対し「中国を敵だとするならば、中国は(オーストラリアの)敵となる」と言ったと報じられている。

 

抗議項目には、オーストラリアの厳格な外国による干渉を防止する法律や、中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の第5世代移動通信システムからの排除、「国家安全保障を理由に」中国の投資計画を阻止する決定などが含まれる。

 

モリソン氏は、この「非公式文書」は駐豪中国大使館が配布したものであり、これによりオーストラリアが「国益に沿って法律や規則」を制定することをやめるつもりはないと主張。チャンネルナインに対し「外資規制や5G通信網の構築、内政干渉を防ぐ制度の運用方法などを、われわれ自身が決定するということについて譲歩はしない」と述べた。

 

さらに抗議項目には、豪政府が中国の内政に「絶え間ない理不尽な干渉」を行ってきたという主張も含まれている。一方で中国は、豪政府が新型コロナウイルスの発生源について独立機関による調査を求めたことについて、オーストラリアが米国の反中国キャンペーンに加担し、偽情報を拡散したと非難している。

 

モリソン氏は17日、菅義偉首相と会談し、防衛協力強化を大枠で合意した。これは、アジア・太平洋地域で海洋進出を強める中国を念頭に置いているとみられている。 【11月19日 AFP】

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【米中対立に揺れる立場への苦悩も】

オーストラリアが新型コロナや中国包囲網でアメリカに加担している・・・との中国の批判に対しては、モリソン首相は「豪は米の言いなりではない」と反論しつつ、米中対立のあおりを受ける立場への苦悩も。

 

****「豪は米の言いなりではない」 モリソン首相、いたずらな対中関係悪化を非難****

(中略)モリソン氏は、英ロンドンで行われた英シンクタンク「ポリシー・エクスチェンジ」の討論会にオンライン出席。中国からの圧力の高まりを非難する一方、オーストラリアが米国の「言いなり」だというイメージは間違っており、豪中関係を「いたずらに悪化させるものだ」と非難した。

 

さらに、オーストラリアは干渉を受けることなく自国の利益を追求する権利を保持しつつ、米中両国との「互恵的な」関係を求めていると訴えた。(中略)

 

モリソン氏によると、いずれ欧州諸国を含む世界の国々が中国の強制外交にさらされる見込みで、オーストラリアはその苦難の一端を前もって味わっているにすぎないという。

 

一方でモリソン氏は、米大統領選で勝利を確実にしたジョー・バイデン氏の次期政権を念頭に、オーストラリアのような国々は、覇権を争う米中のどちら側に付くかを迫られるべきではないと主張。「世界トップクラスの大国には、パートナー国や同盟国それぞれの国益に配慮できるだけの度量の大きさが求められる」と訴えた。 【11月24日 AFP】

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オーストラリア・中国の関係は政治的には「どん底」 関係改善はすぐには期待できず

2020-09-20 22:54:11 | オセアニア

(【8月6日 日経】 関係悪化にもかかわらず、オーストラリアから中国への輸出額は増加している。6月の輸出額は過去最高を記録)

 

【「どん底」の豪中関係】

保守政権のオーストラリアと中国の政治的関係が険悪となっていることは、

5月23日ブログ“中国・オーストラリア関係 米中対立が飛び火した形で中国による報復的な輸入制限措置へ

6月26日ブログ“オーストラリア  相次ぐ問題で豪中関係は悪化の一途 親中派議員の家宅捜索も

でも取り上げましたが、その後も悪化は止まることなく「どん底」(豪公共放送ABC)状態ともなっています。

 

そのあたりの報道は連日のように目にしますが、今日も・・・

 

*****豪州、中国の政界工作疑惑で捜査 外交官が地方議員顧問と共謀か****

オーストラリアで中国外交官による政界への工作疑惑が浮上し、現地捜査当局が実態解明に乗り出した。豪州ではこれまでも中国の工作疑惑が浮上。

 

豪州が新型コロナウイルスの国際的な調査を求めたことで「どん底」(豪公共放送ABC)と呼ばれるほど悪化する豪中関係だが、さらなる冷え込みは避けられない状況だ。

 

9月以降の豪州メディアの報道によると、豪捜査当局は在シドニー中国総領事館の外交官が、東部ニューサウスウェールズ州議会上院の野党・労働党に所属しているモーセルメイン議員の政策顧問と共謀し、国内政治に干渉しようとした疑いがあるとみている。政策顧問は中国系豪州人だという。

 

モーセルメイン氏は親中派議員として知られており、新型コロナ対応めぐって、中国の習近平国家主席の指導力を称賛する発言も行っている。

 

捜査当局は6月、モーセルメイン氏の関係先を家宅捜索。ABCによると、政策顧問宅から押収したパソコンや携帯電話には、中国の外交官とやり取りしたメッセージが残されていたという。また、政策顧問とつながりがあった可能性がある国営新華社通信など駐豪中国メディア記者の自宅も捜索したもようだ。

 

疑惑をめぐって中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は今月16日の記者会見で、捜査を進める豪州に対して、「中国大使館・領事館の正常な職務履行を政治化したり汚名を着せたりすることを止め、中豪関係に新たな厄介事と障害を作り出さないよう求める」と反発した。

 

豪州では昨年11月にも、中国の情報機関が総選挙(昨年5月実施)に中国系豪州人の30代の男性を立候補させようとしていた疑惑が判明。男性は豪保安情報機構(ASIO)に対応を相談したが、その後にホテルで死亡しているのが見つかった。

 

モリソン政権は相次ぐ中国による工作疑惑に警戒感を強めており、昨年12月には内政干渉を発見し、捜査するための新組織を設立する方針を発表していた。【9月20日 産経】

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オーストラリアと中国の間には、オーストラリアがアメリカ・トランプ政権に協調する形で中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の排除に乗り出したほか、オーストラリア国内における中国の諜報活動や地位乱用にオーストラリア世論が不満を訴えるなどの問題がありましたが、新型コロナウイルスのパンデミックの発生源と対応についてオーストラリアが中国の影響力が強いWHOから独立した調査を要求したことで、中国側が“キレた”ような感じで、一気に関係悪化が進行しています。それに並行して、オーストラリア国内の対中国批判も高まることに。

 

****中国、豪州への「圧力」次々 旅行にブレーキ・牛肉輸入停止・大麦関税 コロナ対応の調査要求に反発?****
中国がオーストラリアとの人や物の行き来にブレーキをかけている。豪州では「新型コロナウイルスなどを巡る豪州の厳しい対中姿勢を封じ込めようとしている」との見方が広がる。最大のビジネス相手からの「圧力」に悩みは深いが、中国依存から脱却すべきだとの声も高まっている。

 

中国政府は5日、自国民に豪州へ旅行しないよう促す注意喚起をした。新型コロナウイルスの影響で「中国人らへの差別や暴力行為がエスカレートしている」との理由からだ。(中略)
 
アジア系に対する差別問題は2月以降、豪州でも表面化した。だが、豪州が感染抑止に成功したことが顕著になった5月以降は沈静化。

 

豪州のバーミンガム貿易・観光・投資相は6日、中国政府の主張には「根拠がない」と反発した。中国人は、年間の観光客(約140万人)と留学生(約20万人)の数がともに国別で最多で、豪州の観光・教育産業を支える存在だ。
 
中国は5月、貿易を巡って次々と豪州に厳しい手を打っていた。「検疫に違反する状況があった」として12日、豪州の食肉大手4社からの輸入を停止。19日には豪州産大麦に反ダンピング(不当廉売)関税と反補助金関税を発動した。
 
大麦のダンピング調査が始まったのは2018年10月。豪政府が、次世代通信網5Gの事業に中国の華為技術(ファーウェイ)が参入するのを禁止した2カ月後だ。牛肉の措置は、豪政府が4月に中国の新型コロナ対応について国際的な調査を要求した直後だった。
 
バーミンガム氏は牛肉に関し、「技術的なミス」と反論。大麦については、ダンピングの根拠として豪政府による灌漑(かんがい)施設整備の支援策を挙げたことに「完全にばかげている」と応じた。大麦の大半は灌漑施設なしに生産されている。
 
パース米国アジアセンターのジェフリー・ウィルソン研究部長は「政治的な動機がある貿易上の制裁だ」とみる。

 

 ■豪に依存脱却論も
豪州にとって中国は貿易額の4分の1を占める最大の「顧客」で、農産物や鉱物の主要輸出先だ。大麦は輸出の7割が中国向けだった。

 

全国農業者連盟は「両国による早期の問題解決を望む」と難しい立場をのぞかせるが、ウィルソン氏は「豪州は代わりの輸出先を拡大すべきだ。選択肢はたくさんある」と指摘する。
 
対中関係をめぐって豪州では近年、政治献金を通じた豪政界への親中政策の働きかけや、周辺の島国へのインフラ支援攻勢を通じた影響力の強化についても危惧する声が出ていた。
 
中国外務省の華春瑩報道局長は8日の会見で、「健全で安定した中豪関係は両国の利益にかなう。豪州側が中国と歩み寄り、互いを尊重し、平等・ウィンウィンの原則で協力するよう希望している」と述べた。
 
ニューサウスウェールズ大のティム・ハーコート研究員は、中国が経済力を背景に豪州の主張を封じ込めようとしていると批判する。「通商政策を使って外交ゲームを続ければ、結局は自国の利益を害するだろう」【6月9日 朝日】

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****オーストラリア人の中国に対する信頼感が急減、世論調査で明らかに―仏メディア****

仏RFIの中国語版サイトは24日、「外交と貿易摩擦の影響によりオーストラリア人の中国に対する信頼感が急減したことが、世論調査結果で明らかになった」とする記事を掲載し、次のように伝えている。 

豪シドニーのシンクタンク、ローウィ研究所が24日公表した年次世論調査によると、外交と貿易摩擦の影響により、中国政府が国際舞台で責任ある行動を取っていると信頼しているオーストラリア人の割合は、2年前の52%から23%へと半分以上も減った。 

2つの貿易相手国間の対立が高まる中、この日公表された調査結果は、オーストラリア人の中国に対する信頼感が過去最低にまで落ち込んだことを示している。 

仏AFP通信によると、ローウィー研究所幹部のマイケル・フュリラブ氏は、「わが国最大の貿易相手国、中国に対する信頼は急激に下がった。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席への信頼はさらにもっと落ちている」と述べた。 

AFP通信は、「中国は、習主席のもとでより積極的になり、北京はその高まる経済的力を政治的、外交的、軍事的な力に変換しようとしている」と伝えている。 

だが、中国の「筋肉」誇示は、インドとの国境での小規模衝突からオーストラリアとの外交上の溝まで、近隣諸国との一連の対立を悪化させている。 

特に、オーストラリアが新型コロナウイルスの発生源について国際的な調査を求めたことを受け、オーストラリアと中国との間の外交関係は悪化している。(中略) 

調査によると、回答者の94%が政府は貿易多様化で中国への経済依存度の低下に努めるべきと答え、82%が人権侵害に関与した中国当局者への制裁を支持した。 

公式統計によると、中国はオーストラリアの貿易総額の4分の1を占めており、オーストラリアの鉱物は中国の重工業と燃料動力の開発を支えている。(中略) 

ロイター通信によると、トランプ米大統領はオーストラリア人の間であまり人気がないが、この調査では、米国との安全保障同盟を支持するとの回答が前回から6ポイント上昇して78%となったことも分かった。また対米関係は対中関係よりも重要との回答は55%、対中関係が重要としたのは40%だったことも分かった。【6月25日 レコードチャイナ】

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上記記事以降の主だった動きについて、記事見出し・要点を並べてみると・・・

 

“親中派議員に家宅捜索=モリソン首相「内政干渉を阻止」―オーストラリア”【6月26日 時事】

(冒頭【産経】記事にある中国外交官による政界への工作疑惑のスタートとなった捜査)

 

“豪州、10年間で国防費40%増へ 中国けん制か”【7月2日 CNN】

(モリソン同国首相は首都キャンベラの国防大学で演説し、豪州は第2次世界大戦以降、最も厳しい国際情勢に直面しているとの危機感を表明。中国の脅威増大には直接触れなかったが、中国が主権論争に絡むインドとのヒマラヤ地域での国境線係争、南シナ海や東シナ海情勢に言及。「誤算に加え紛争勃発(ぼっぱつ)のリスクも増えている」とし、インド太平洋地域を「我々の時代において主要な国際的競争の中心」と位置付けた。)

 

“豪、中国への渡航に注意喚起 「恣意的な拘束」のリスク”【7月7日 ロイター】

(豪当局の「スマートトラベラー」のサイトでは「中国当局は外国人を、国家の安全を脅かしたとして拘束したことがある」と警告。7日には外務貿易省が新たに「豪国民には、恣意的な拘束に遭うリスクもある」との警告を追加した。)

 

“オーストラリアが「中国旅行で捕まるリスク」指摘、中国大使館「滑稽」―米華字メディア”【7月10日 レコードチャイナ】

((上記の豪対応に関し)中国大使館の報道官は「滑稽で、完全な虚偽情報だ」と一蹴。全ての在中外国人について「法規を守りさえすれば心配する必要は皆無」とした上で、「当然のことながら、薬物の取引やスパイなどの違法活動を行った者は他の国と同様、法に基づく処分を受ける」と表明した。)

 

“中豪関係の「暗い影」を懸念、公正な投資環境望む=中国の駐豪公使”【8月26日 ロイター】
(同公使は「冷たい心と暗い考え方が、われわれのパートナシップに影を落とすことがあってはならない」と発言。中国がオーストラリアからの輸入を一部制限していることについては「経済による強制」ではないと説明。オーストラリアが新型コロナウイルスの発生源に関する国際的な調査を呼び掛けたことについては「中国だけを標的にしている」との認識を示した。)

 

“中国当局、国営チャンネルの豪州人キャスターを拘束”【9月1日 朝日】

((拘束された)チャン氏は中国からの移民。豪州国籍を取得後、中国に戻り、最近では、CGTNのビジネスニュース番組のキャスターを務めていた。)

 

“豪州が「国益反する」外国との協定破棄へ法整備 「一帯一路」や孔子学院に影響も”【9月2日 産経】

(オーストラリア政府は、国内の地方自治体などが外国政府と締結した協定について、政府が「国益に反している」と判断した場合、破棄できる法律の導入を計画している。外国の影響力拡大を防ぐ狙いがあり、国内への浸透を図る中国を念頭に置いていることは間違いない。

モリソン首相は法案は「中国を標的にしていない」と強調しつつ、他国との協定に関しては「1つの声で話し、1つの計画に沿って行動することが重要だ」と、政府に一元化していく方針を明確に示した。)

 

“豪国防相、国内のサイバー攻撃が増加と指摘”【9月4日 ロイター】

(豪政府は6月、サイバー対策を強化する方針を表明。モリソン首相はその際、同国の政府や政治団体、重要なサービスの提供者、基幹インフラの運営者に対し、「国家を基盤とする」高度なサイバー攻撃が何カ月にもわたって企てられてきたと語った。関係筋によると、政府は中国が攻撃元だと考えている。中国は疑惑を否定している。)

 

“中国、豪記者2人を「追放」 出国禁止措置後に尋問 外交悪化で「嫌がらせ」か”【9月8日 毎日】

(2人の帰国により、中国に駐在する豪メディアの豪州人記者は一人もいなくなった。

中国外務省の趙立堅副報道局長は8日の定例記者会見で、2人が「関連機関」の調査を受けたことを認めたうえで「通常の法執行の一環だ」と述べた。)

 

“豪当局による家宅捜索、中国人記者の権利を侵害=中国外務省”【9月9日 ロイター】

(中国外務省の趙立堅報道官は9日、オーストラリア当局が6月に中国国営メディアの記者の自宅を捜索したとの報道について「露骨な非理性的行為」で、記者の権利を侵害していると非難した。)

 

まさに「どん底」と言うか、「両者、足を止めてリング中央で打ち合い」といった感があります。

 

【米の対中戦略に協力し、日米との連携を強める豪への中国の苛立ち 豪政府の姿勢には国内世論支持があり、関係改善はすぐには期待薄】

豪中関係は経済的には“中国はオーストラリアの貿易総額の4分の1を占めており、オーストラリアの鉱物は中国の重工業と燃料動力の開発を支えている。”というきわめて緊密な関係にありますが、中国側の経済的圧力に対しても“オーストラリアのスコット・モリソン首相は(6月)11日、中国人観光客や留学生らが豪にもたらす巨額の利益を中国側が抑え込もうとする動きを見せていることを受けて、経済的な「威圧」の試みにひるむことはないと明言した。”【6月11日 AFP】ということで、当分、この「どん底」状態が続きそうです。

 

****中国と豪州、過去最悪の関係 経済から安保までなぜ一変****

中国とオーストラリアの外交関係に緊張が走っている。長らく貿易強化を柱に良好な関係が続いたが、対中攻勢を強める米国と足並みをそろえる豪州に中国が反発。対立は経済分野から人権や報道の自由、安全保障にも広がり、両国関係は「過去最悪」との見方も出ている。(中略)

 

豪州では最近の両国関係について、天安門事件を非難し2万7千人の中国人学生を受け入れた「1989年以来で最悪の危機」(オーストラリアン紙)との見方も出ている。

 

中国、5G巡る米国追従に反発

米国との対立が強まる中国は近年、その対応に集中するため周辺国との関係改善に動いてきた。尖閣諸島を巡ってぶつかる日本や、国境地帯で衝突が続くインドなどとも決定的な対立を避けようとするなか、豪州には攻勢を強めている。

 

その理由について、中国外交当局者は二つの要因を挙げる。

一つは、豪州が米国の対中戦略に最も協力的であることだ。

 

トランプ政権が諜報(ちょうほう)機関の情報を提供しあう「ファイブ・アイズ」(米、英、豪、カナダニュージーランド)の他の国々に中国の華為技術ファーウェイ)機器を使わないよう求めると、豪州は2018年8月に次世代通信規格5Gの整備で、他国に先駆けて華為排除に動いた。外交当局者は「米国にどこまで付き合うかは、英国やカナダに迷いも見られる。だが豪州にはそれがない」と話す。

 

もう一つは豪州が、日米のインド太平洋戦略に呼応するように、安全保障面での連携を強めている点だ。

 

中国は18年に豪州主導の多国間軍事演習「カカドゥ」に初参加するなど防衛交流を進めてきたが、そうした動きは止まりつつある。逆に豪州は7月、南シナ海と西太平洋で日米との合同演習に参加し、中国への対抗姿勢を強めた。

 

豪州、安保情報の流出に強い懸念

豪州は最大のビジネス相手として中国との関係を重視し、13年からギラード、アボット両政権ではほぼ毎年、首脳の相互訪問を続けてきた。

 

中国に対して明確な強い姿勢に転じたのは、ターンブル前政権下の18年だ。華為の5Gへの参入禁止に先立ち、同年6月には、外国政府の意を受けて政策決定のプロセスに影響を与える行為を厳罰化した。

 

当時、サイバー攻撃や基幹インフラへの中国企業の参入、政治献金を通じた政治家への働きかけなどを通じ、安全保障に関わる情報などが中国に渡っているという懸念が急速に広がっていた。

 

近隣の太平洋の島国に中国がインフラ支援攻勢をかけ、影響力を広げていることへの危機感も強い。18年には、中国の援助で建設されたバヌアツの港を中国が海軍の拠点として使う可能性が報じられ、物議を醸した。豪政府はパプアニューギニアやフィジーで軍の基地施設の整備を支援するなど対抗している。

 

経済界は中国による輸入制限などにあえぐが、モリソン首相は「豪州は国益を考えて行動する。誰からも威嚇されない」と、安易な妥協はしないとの姿勢だ。

 

豪国防省の国防情報機構出身の安全保障専門家、ポール・モンク氏は「中国の『いじめっ子ぶり』に国民はいらだっており、(政府の対中姿勢には)世論の支持がある。両国関係がすぐに改善するとは思えないが、ヒステリックにならずに対話のチャンネルを保つことが大切だ」と語る。【9月18日 朝日】

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ただ、オーストラリアは経済的にはむしろ中国依存が強まっています。

 

****豪、6月対中輸出が過去最高 中国は外交姿勢転換求める****
オーストラリアから中国への輸出額が増加している。6月の輸出額は中国向けが約146億豪ドル(約1兆1000億円)で過去最高だった。

 

6割を占めるとみられる鉄鉱石の価格上昇が影響している可能性もあるが、外交や安全保障で中国と距離をとりながら、貿易ではなお対中依存が高い。(後略)【8月6日 日経】

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オーストラリア  相次ぐ問題で豪中関係は悪化の一途 親中派議員の家宅捜索も

2020-06-26 23:28:30 | オセアニア

(豪キャンベラで中国とオーストラリアの国旗を掲げる人々(2008年4月24日撮影)【6月26日 AFP】)

【オーストラリアへの「圧力」を次々にかける中国】
オーストラリアが政治的にはアメリカと同盟関係にあるものの、経済的には大きく中国に依存し、米中対立のはざまで微妙な立ち位置にあることは、これまでも時折取り上げてきました。

最近では、5月23日ブログ“中国・オーストラリア関係 米中対立が飛び火した形で中国による報復的な輸入制限措置へ”など。

5月23日ブログでも取り上げたように、今年4月にオーストラリアが中国の新型コロナウイルス対応を巡り、国際的な調査を要求したことで、両国の関係が急速に悪化しています。

特に、中国の強圧的な対応が目立ちますが、強国アメリカにぶつけられない不満を“手ごろな”オーストラリアにぶつけているようにも見えます。

****中国、豪州への「圧力」次々 旅行にブレーキ・牛肉輸入停止・大麦関税 コロナ対応の調査要求に反発?****
中国がオーストラリアとの人や物の行き来にブレーキをかけている。豪州では「新型コロナウイルスなどを巡る豪州の厳しい対中姿勢を封じ込めようとしている」との見方が広がる。最大のビジネス相手からの「圧力」に悩みは深いが、中国依存から脱却すべきだとの声も高まっている。

中国政府は5日、自国民に豪州へ旅行しないよう促す注意喚起をした。新型コロナウイルスの影響で「中国人らへの差別や暴力行為がエスカレートしている」との理由からだ。
 
アジア系に対する差別問題は2月以降、豪州でも表面化した。だが、豪州が感染抑止に成功したことが顕著になった5月以降は沈静化。

豪州のバーミンガム貿易・観光・投資相は6日、中国政府の主張には「根拠がない」と反発した。中国人は、年間の観光客(約140万人)と留学生(約20万人)の数がともに国別で最多で、豪州の観光・教育産業を支える存在だ。
 
中国は5月、貿易を巡って次々と豪州に厳しい手を打っていた。「検疫に違反する状況があった」として12日、豪州の食肉大手4社からの輸入を停止。19日には豪州産大麦に反ダンピング(不当廉売)関税と反補助金関税を発動した。
 
大麦のダンピング調査が始まったのは2018年10月。豪政府が、次世代通信網5Gの事業に中国の華為技術(ファーウェイ)が参入するのを禁止した2カ月後だ。牛肉の措置は、豪政府が4月に中国の新型コロナ対応について国際的な調査を要求した直後だった。
 
バーミンガム氏は牛肉に関し、「技術的なミス」と反論。大麦については、ダンピングの根拠として豪政府による灌漑(かんがい)施設整備の支援策を挙げたことに「完全にばかげている」と応じた。大麦の大半は灌漑施設なしに生産されている。
 
パース米国アジアセンターのジェフリー・ウィルソン研究部長は「政治的な動機がある貿易上の制裁だ」とみる。

 ■豪に依存脱却論も
豪州にとって中国は貿易額の4分の1を占める最大の「顧客」で、農産物や鉱物の主要輸出先だ。大麦は輸出の7割が中国向けだった。

全国農業者連盟は「両国による早期の問題解決を望む」と難しい立場をのぞかせるが、ウィルソン氏は「豪州は代わりの輸出先を拡大すべきだ。選択肢はたくさんある」と指摘する。
 
対中関係をめぐって豪州では近年、政治献金を通じた豪政界への親中政策の働きかけや、周辺の島国へのインフラ支援攻勢を通じた影響力の強化についても危惧する声が出ていた。
 
中国外務省の華春瑩報道局長は8日の会見で、「健全で安定した中豪関係は両国の利益にかなう。豪州側が中国と歩み寄り、互いを尊重し、平等・ウィンウィンの原則で協力するよう希望している」と述べた。
 
ニューサウスウェールズ大のティム・ハーコート研究員は、中国が経済力を背景に豪州の主張を封じ込めようとしていると批判する。「通商政策を使って外交ゲームを続ければ、結局は自国の利益を害するだろう」【6月9日 朝日】
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アジア系に対する差別に関しては
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豪最多の人口を抱えるニューサウスウェールズ州の反差別委員会は先週、アジアをバックグラウンドに持つ人々への差別に関する問い合わせが増加していると報告した。
 
委員会によると、通勤中や運動中やスーパーマーケットでの買い物中にマスクを着用していていじめられたり、つばを吐かれたり、嫌がらせを受けたりするなどの被害が報告されており、また車の窓を割られたり、車や私有地の建物に人種差別的な言葉が落書きされたりするなどの行為を受けたとの報告もあったという。【6月9日 AFP】
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【6月9日 朝日】では“感染抑止に成功したことが顕著になった5月以降は沈静化”とありますが、オーストラリアにそうした“下地”があるのは事実でしょう。

ただ、そうした差別問題をもって“豪州へ旅行しないよう促す注意喚起”というのは、極めて政治的な判断です。異種の“いやがらせ”とも。

****中国との対立が飛び火、「留学生減」が豪経済直撃も****
(中略)中国教育省は9日、オーストラリアへの留学を検討している学生に慎重に判断するよう促した。新型コロナウイルスの発生を受けて中国人を含むアジア人を差別する動きが見られると説明した。

中国は、オーストラリアにとって最大の貿易相手であると同時に、同国に最も多くの留学生の送り出している国でもある。豪政府のデータによると、2019年の海外留学生(中高等教育機関部門)の37.3%を中国人が占めた。

中豪関係は数年前から悪化していたが、豪が新型コロナウイルスの発生源について国際的な調査を呼び掛けたことでさらに悪化した。

中国は、豪製品ボイコット論や、豪農産品の輸入制限に動き、先週は新型コロナ流行に絡む中国人への人種差別と暴力を理由に、国民に豪への渡航回避を勧告した。

オーストラリアは、新型コロナの封じ込めに成功した国の一つだが、経済的な打撃は大きく、第1・四半期は9年ぶりのマイナス成長となり、30年ぶりの景気後退入りが予想されている。

中国政府が豪留学に「待った」をかけたことを受け、バーミンガム貿易・観光・投資相は10日、メディアに、中国人留学生が減少すれば、国内の大学に影響が出るだろうと述べた。その上で、それは中国人学生にとってもマイナスであり、長期的に「両国の相互理解の深化に寄与しない」との認識も示した。

(中略)国内では大学が1国の留学生の授業料に過度に依存しているとの批判も出ている。ニュー・サウス・ウェールズ州政府の監査当局によると、州内の大学の2019年の収入の3分の1は留学生の授業料だった。

ムーディーズ・インベスターズ・サービスのバイスプレジデント、ジョン・マニング氏は、新型コロナに関連した渡航規制で、中国の警告が豪大学の今年の収入に与える影響は抑えられるとみる。「より長い目でみれば、国際的に評価が高い豪大学は多く、今後も魅力的な留学先であり続けるだろう」と述べた。【6月11日 ロイター】
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【モリソン首相「脅迫には決してひるまない」】
こうした中国の圧力に対し、中道右派の自由党・モリソン首相は「ひるまない」という強気姿勢を崩していません。

****中国の経済的威圧には「ひるまない」 豪首相が明言****
オーストラリアのスコット・モリソン首相は11日、中国人観光客や留学生らが豪にもたらす巨額の利益を中国側が抑え込もうとする動きを見せていることを受けて、経済的な「威圧」の試みにひるむことはないと明言した。
 
中国政府は先に、新型コロナウイルスが世界的に大流行する中、オーストラリア国内でアジア系の人々を標的にした人種差別事案が増えているして、オーストラリアへの渡航を控えるよう勧告していた。
 
モリソン首相は11日、中国人が人種差別的な扱いを受けたとする訴えは「ばかげている」と一蹴。ラジオ局の取材に対し「くだらない主張であり、受け入れられない」と話した。

「われわれは中国と重要な貿易関係を築いており、それが続くことを望んでいる」と首相。
 
一方で、豪政府は「脅迫には決してひるまない」「威圧に対しては、それがどこから来るものであれ、わが国の価値観を売り渡したりはしない」と述べた。
 
(中略)中国外務省の華春瑩報道官は記者会見で「豪首相が言う『威圧』がどこから来るものなのか、私には分からない」と話した。
 
その上で、「オーストラリアには、問題を直視し、自省し、豪州における中国人の安全と権利を守るための具体的措置を取るよう促したい」と述べた。
 
豪政府は近年、中国が豪州や太平洋地域で影響力を強めようとする動きに反発しており、両国間の緊張が徐々に高まっている。 【6月11日 AFP】AFPBB News
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【相次ぐ火種で豪中関係は更に悪化】
軋轢の種は次から次に。

****中国裁判所、豪国籍の男に死刑判決 両国関係さらに緊迫か****
中国の裁判所が、麻薬取引の罪に問われていたオーストラリア国籍の被告に対し、死刑判決を言い渡していたことが分かった。問題を抱える両国関係が、この判決により緊迫の度をさらに増す可能性もある。
 
広州市中級人民法院のウェブサイト上に投稿された告知によると、豪メディアによってキャム・ガレスピーという名前の人物と特定された被告が10日、死刑判決を受けたという。同サイト上では、豪国籍との情報以外は公表されていない。
 
中国の地元メディアによると、男は香港の北西に位置する広州白雲国際空港で2013年12月、預けた手荷物にメタンフェタミン7.5キロ超が入っていたとして逮捕された。
 
豪外務省はこの判決に「深く悲しんでいる」とのコメントを発表。死刑制度に反対する同国の姿勢を強調した。(後略)【6月13日 AFP】
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一方、モリソン首相は、名指しこそ避けたものの明らかに中国を念頭に置いていると思われる国家的「サイバー攻撃」を批判。

****オーストラリアに大規模サイバー攻撃、攻撃主体は「国家ベース」****
オーストラリアのスコット・モリソン首相は19日、同国が政府や公共サービスなどを標的とした大規模サイバー攻撃を受けており、攻撃主体は「国家ベース」だと明らかにした。
 
モリソン氏は緊急記者会見を開き、サイバー攻撃について「あらゆるレベルの政府、産業界、政治団体、教育事業者、保健事業者、必要不可欠なサービスを提供する事業者、その他の重要なインフラの運営事業者など、幅広い分野にわたるオーストラリアの組織を標的としている」と語った。
 
さらに、「オーストラリアの組織は現在、国家ベースの洗練されたサイバー攻撃主体に標的とされている」と述べたが、詳細は明らかにしなかった。
 
中国、イラン、イスラエル、北朝鮮、ロシア、米国、多くの欧州諸国が高度なサイバー戦闘部隊を持つことで知られているが、対立が激化する中で最近オーストラリア製品に貿易制裁を科していたことから、中国に疑いが掛けられる可能性が高い。
 
オーストラリアは、新型コロナウイルスの発生源についての調査を求めたことで中国の怒りを買っていた。 【6月19日 AFP】
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“政府機関や企業のシステムに侵入し、内部情報や関係者の個人情報にアクセスすることなどが目的とみられている。豪州では2015年に気象局、昨年2月には連邦議会がサイバー攻撃を受け、中国が関与しているとの観測が出ていた。
 
豪政府は18年に安全保障上の理由で、次世代通信規格5Gの通信網事業から中国の華為技術(ファーウェイ)の参入を禁止。その後、対中関係が悪化している。”【6月19日 朝日】

【中国への信頼感は急速に低下】
こうした状況で、オーストラリアにおける中国への信頼度は急速に低下しています。

****豪調査、中国への信頼が過去最低に 対立激化を反映****
オーストラリアのシンクタンク、ローウィー研究所が24日に発表した調査結果によると、中国を信頼していると答えたオーストラリア国民の割合は23%で、2018年の52%から急落した。過去最低の割合となり、2国間の対立の激しさを反映する形となった。
 
調査では、中国政府が国際舞台で責任ある行動を取っていると思うか尋ねた。中国はここ数か月、オーストラリア産大麦に80.5%の追加関税を課すなど豪州の輸出品に対し貿易制裁を課したほか、麻薬取引の罪に問われていた豪国籍の被告に死刑判決を言い渡すなどしていた。
 
一方、これまでに豪州は中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の排除に乗り出したほか、中国の諜報(ちょうほう)活動や地位乱用に国民が不満を訴え、また新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の発生源と対応について独立した調査を要求しており、中国側は不満を募らせていた。
 
ローウィー研究所幹部のマイケル・フュリラブ氏は調査結果について、「わが国最大の貿易相手国、中国に対する信頼は急激に下がった」と指摘。また「中国の習近平国家主席への信頼はさらにもっと落ちている」という。
 
調査によると、回答者の94%が中国への経済依存を減らすべきと答え、82%が人権侵害に関与した中国当局者への制裁を支持した。
 
この調査は2005年から実施されており、今年は豪州に住む成人2448人に対し調査が行われた。【6月24日 AFP】
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なお、“米国については同盟関係は重要だが、「米国に対する信頼感は低迷しており、トランプ大統領はほとんど信頼されていない」”【6月24日 ロイター】“対米関係は対中関係よりも重要との回答は55%、対中関係が重要としたのは40%だった”【6月25日 レコードチャイナ】とも。

これだけ問題があり、信頼度が急落しても、対米関係より対中関係が重要という考えが40%もあるというのが、中国はオーストラリアの貿易総額の4分の1を占めている「現実」を反映しているように思えます。

【親中派議員に家宅捜索 モリソン首相「内政干渉を阻止」 予想される中国の反発】
一連の応酬は、両者リング中央で足を止めての打ち合い・・・って感じですが、更にモリソン首相のパンチが・・・

****親中派議員に家宅捜索=モリソン首相「内政干渉を阻止」―オーストラリア****
オーストラリアの連邦警察は26日、ニューサウスウェールズ州議会の野党・労働党に所属しているモスルマン上院議員の自宅と議会内の事務所を捜索した。

モスルマン議員は新型コロナウイルスをめぐる習近平中国国家主席の対応を「決断力がある」と称賛してきた「親中派議員」として知られる。全国紙オーストラリアン(電子版)などが伝えた。
 
豪政府は4月、新型コロナウイルスの発生源を調査するよう国際社会に訴えた。これをきっかけに中国との対立が激化し、最近も中国が仕掛けているとされる大規模なサイバー攻撃への警戒を呼び掛け、中国との対決姿勢を強めている。モスルマン議員に対する捜索で豪中関係は一層緊迫化する可能性がある。
 
モスルマン議員は、中国が「新たな世界秩序をつくりだす」必要があると公言していた。労働党は、モスルマン氏の党員資格停止の手続きに入っている。
 
モリソン首相は26日の記者会見で、家宅捜索に関する質問に対し「この領域での脅威は本物だ」と指摘した。豪州では、内政干渉を阻止するための新法が2018年に施行されており、モリソン氏は「誰も豪州の活動に干渉しないよう確実にする決意を固めている」と述べた。【6月26日 時事】 
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オーストラリアでは、今回の一連の軋轢以前から、裕福な中国人や中国系オーストラリア人のビジネスマンたちが主要政党の最大の資金提供者となっていたことが判明するなど、オーストラリアの連邦政府、企業、主要政党、大学、メディアなどへの中国の影響・浸透が問題となっていました。

モリソン首相の「この領域での脅威は本物だ」と言う発言は、こうした事情を踏まえての、中国が組織的にオーストラリアの政治をコントロールしようとしている・・・との疑念を示すものです。

【日本への関心は?】
これだけ豪中関係が悪化すれば、オーストラリアの日本への関心が相対的に高まるのでは・・・とも思われるのですが、そうとも言えないようで・・・

****豪州国立図書館、日本語資料の収集大幅減へ 中国を優先****
オーストラリア国立図書館(キャンベラ)が、日本語など複数のアジア言語の図書の収集を、大幅に縮小する方針であることがわかった。同図書館の日本語の所蔵資料は日本国外では世界でも有数の内容で、研究者らに懸念が広がっている。
 
同図書館は1950年代から収集してきた「アジアコレクション」と呼ぶ、東・東南アジアの各言語の図書の充実で知られ、豪州のアジア理解に大きな役割を果たしてきた。

図書館によると、電子版を除く1千万点の収蔵資料の13%を占める。ただ、7月からの新しい収集について、中国とインドネシア、太平洋の島国を優先する方針を打ち出した。(後略)【6月26日 朝日】
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中国・オーストラリア関係 米中対立が飛び火した形で中国による報復的な輸入制限措置へ

2020-05-23 22:59:48 | オセアニア

(中国は豪州産大麦に追加関税を課した(写真は18日、大麦の種植え作業を行う豪ビクトリア州の農家)【5月22日 WSJ】 緑色のものは大型トラクターです。)

 

【豪のコロナ発生源に関する「独立調査」要求に中国激怒 「豪州は中国の靴の裏にくっついたガム」】
オーストラリアが政治的にはアメリカと同盟関係にあるものの、経済的には大きく中国に依存し、米中対立のはざまで微妙な立ち位置にあることは、これまでも時折取り上げてきました。

次世代通信規格「5G」導入を巡っては、情報工作への懸念を深めたオーストラリア当局が中国企業を排除し、中国が不満を示しています。
 
また、オーストラリアと歴史的につながりが深い南太平洋の島嶼国では、中国が巨額の財政支援を通じて影響力を拡大しており、オーストラリアも経済協力の拡大で対抗しようとしており、南シナ海をめぐるアメリカの中国けん制にもオーストラリアは同調しています。

しかし、一方で、最大貿易相手国の中国は、オーストラリアの輸出入額の約4分の1を占める存在です。その中国との関係はオーストラリアにとって死活的に重要です。

そうした微妙な中豪関係ですが、トランプ大統領がコロナ禍の責任転嫁の中国批判を強めるなかで、オーストラリアが中国からの厳しい圧力にさらされる形にもなっています。

素人目には、中国としてはさすがに(本来の敵である)アメリカに対しては慎重に動かざるを得ないものの、オーストラリアに対してなら“うっぷんを晴らすかのように”強硬な姿勢でのぞめる・・・というようにも見えます。

最近の中豪関係のもつれの発端は、5月8日ブログ“新型コロナの武漢ウイルス研究所起源説をめぐる米中の確執 困惑する豪 武漢起源も薄めたい中国”でも取り上げたように、コロナに関するオーストラリアの感染発生源に関する「独立した調査」要求でした。

中国は、このオーストラリアの要求を、アメリカの尻馬に乗ったものとして激しく反発しています。

****豪「感染源の調査が必要」、中国「豪の行動に失望」…対立先鋭化****
新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、オーストラリアと中国の対立が先鋭化している。スコット・モリソン豪首相が、感染源などの調査が必要との考えを示したのに対し、中国が強く反発している。
 
モリソン氏は先週、コロナウイルスの爆発的感染が中国から世界へ広がった経緯について、「独立した調査が必要だ」と述べた。
 
これに対し、駐豪中国大使の成競業氏は、豪州メディアのインタビューに「国民はオーストラリアの行動にいら立ち、失望している」と語った。さらに、事態が悪化すれば中国で豪州産ワインや牛肉の消費が落ち込み、豪州への旅行客や留学生が減るかもしれないと警告した。
 
豪州にとって、中国は輸出額の約3割を占める最大の貿易相手だ。成氏の発言は、経済的報復措置をほのめかしたものとみられる。
 
豪ABC放送によると、サイモン・バーミンガム豪貿易相は28日、「重要な保健分野の政策が、経済的な脅しで変えられることはない」と不快感を示した。【4月28日 読売】
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****豪州は中国の靴の裏にくっついたガム―中国紙編集長****
中国紙・環球時報の胡錫進(フー・シージン)編集長は29日、オーストラリアに対する批判的な発言をしたことについて「後悔していない」との見解を示した。 

胡氏は27日、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)で、「オーストラリア政府は最近、米国に追従して中国への非難が行き過ぎている」と批判。「オーストラリアはいつも同じこと(中国に対する非難)をしている。中国の靴の裏にくっついたガムに少し似ていると思う。時にはこすり落とすための石を探さなければならない」と述べた。 (後略)【5月2日 レコードチャイナ】
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オーストラリアは、別にアメリカのお先棒を担いでいる訳ではないと弁解。

****新型コロナ、豪政府が米国の武漢研究所発生説に困惑****
複数の関係筋によると、新型コロナウイルスの発生源を調べる「独立調査」を求めているオーストラリア政府が、米国の対応に困惑している。(中略)

オーストラリアのバーミンガム貿易・観光・投資相は8日、ABCラジオとのインタビューで、独立調査を提案したことで中国との通商関係が悪化するのではないかとの批判に対し「米国の言いなりになって(調査を求めて)いるのではない」と発言。

「オーストラリア政府の一部の主張と米政府の一部の説明には大きな違いがある。オーストラリアは独自の分析、独自の証拠、独自の勧告に基づいて、この問題を世界保健総会に提起する」と述べた。

中国外務省は、独立調査を求める動きを「政治工作」と非難。オーストラリアに対し「イデオロギー的な偏見を捨てる」よう求めている。【5月8日 ロイター】
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中国は、18日から行われたWHO年次総会で、60カ国共同提案に賛同する形で、新型コロナウイルスの発生源などをめぐる国際的な調査による検証を受け入れる姿勢を示しています。(現段階での調査については「時期尚早」としていますが)

このWHOでの調査の話と、オーストラリアが求める「独立調査」は全くの別物というのが中国の立場です。

****新型コロナ調査決議案巡る豪州の主張は「ジョーク」、中国が批判****
在豪中国大使館は、新型コロナウイルスに関する調査を求める世界保健総会(WHA)の決議案が、オーストラリアによる国際調査呼び掛けの正当性を裏付けているとの同国の主張は「ジョークでしかない」と批判した。

同大使館の報道官は電子メールの声明で「WHAで採択されるCOVID─19(新型コロナウイルス感染症)に関する決議案は、オーストラリアの独立した国際調査の呼び掛けとは全く異なる」と指摘。

「WHAの決議案がオーストラリアの呼び掛けの正当性を裏付けていると主張することはジョークでしかない」と一蹴した。【5月19日 ロイター】
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【中国 報復ではないとしながらも、豪からの輸入を制限 「(豪からの)電話に出ない」厳しい対応】
中国は、単なる口先の脅しだけでなく、(独立調査要求への報復ではないとしながらも)現実にオーストラリアからの食肉・大麦輸出に制限をかけています。

****中国、豪州の食肉処理施設4カ所からの輸入を停止****
オーストラリアのバーミンガム貿易・観光・投資相は12日、中国が豪食肉処理場4カ所からの輸入を停止したと明らかにした。

両国の関係は新型コロナウイルスの発生源調査などを巡り悪化しており、主要農産物の輸出に影響が出る可能性が懸念されている。

同相の声明によると、(中略)ラベル表示に問題があったためという。

同相は、キャンベラでの記者会見で「これらの食肉処理施設には数千人の雇用が関連している。さらに多くの農家が畜牛の販売でこれらの施設に依存している」と述べ、中国による輸入停止に失望感を示した。

ただ、オーストラリアが新型コロナの発生源調査を呼び掛けたことを受けた措置ではないと指摘した。
衛生証明書やラベル表示に誤りがあったことが輸入停止の理由だとの通達があったという。

ラベル表示の問題は2017年にこれらの食肉処理場などが数カ月、中国への出荷停止となった際にも指摘されていた。

中国外務省の趙立堅報道官は12日の会見で、輸入停止は、検査・検疫規定の違反があったためで、新型コロナ関連調査を巡る対立とは関係ないと述べた。【5月12日 ロイター】
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****中国、豪州産大麦に5年間の反ダンピング関税-19日発動****
中国は18日、オーストラリア産大麦に対して5年間の反ダンピング(不当廉売)関税を課すと発表した。
  
中国商務省の声明によると、豪州産大麦は19日から73.6%の反ダンピング税と6.9%の反補助金税の対象となる。中国は豪州産大麦の最大の買い手。
  
パンデミック(世界的大流行)となった新型コロナウイルス感染症(COVID19)の発生源に関する独立した調査を豪州が呼び掛けたことで、ここ数週間にわたり豪州と中国との間に緊張が高まっていた。
  
豪州のバーミンガム貿易・観光・投資相は17日、中国が関税を発動する場合は世界貿易機関(WTO)に申し立てを行う考えを示していた。2017年の中国向け大麦輸出は14億豪ドル(約980億円)だった。【5月19日 Bloomberg News】
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大麦輸出への高関税の影響については、オーストラリア側の負担が大きいようです。

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オーストラリアの政府関係者はロイターに対し「代替市場は多くない。大麦をサウジアラビアに輸出することは可能だが、中国向けよりも大幅に値引きされるだろう」と述べた。

対照的に、世界トップの大麦輸入国である中国は、フランスやカナダ、アルゼンチンなど主要な生産国からの輸入にシフトできる。【5月18日 ロイター】
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関税そのものもさることながら、注目すべきは中国側の取り付く島もない厳しい対応です。

****豪当局「中国側が電話に出ない」、貿易問題で話し合いできず****
2020年5月18日、観察者網は、中国がオーストラリアからの輸入大麦に反ダンピング税の賦課を発表したことについて、オーストラリアの関係閣僚が「中国が電話に出なかった」と語ったと伝えた。 

中国商務部は18日に公式サイト上で「19日よりオーストラリア産の輸入大麦に反ダンピング税を賦課する」との公告を発表した。18日には中国の鍾山(ジョン・シャン)商務部長がこの件をめぐって「両国間で意思疎通を保っている」とコメントした。 

一方で、オーストラリアのバーミンガム貿易・観光・投資相は17日、豪公共放送ABCに対して「鍾部長との討論を求めたが、受け入れられなかった」と語り、リトルプラウド農業相も「近ごろ、中国の農業部長との通話ができなくなっている。彼らとのコミュニケーションを求めたが、現在直面している難題について討論するチャンスはないと返事をされた」と述べたという。 

中国外交部の趙立堅(ジャオ・リージエン)報道官は、18日の記者会見でこの件について質問を受けた際に「オーストラリアの貿易相が中国と連絡を取りたいのであれば、正規の外交ルートを通じて連絡を取るべき」と回答するとともに、オーストラリア産大麦への反ダンピング税発動は新型コロナウイルスの発生源についてオーストラリアが調査を求めていることへの報復ではなく、「正常な貿易救済調査案件であり、わが国は関連法規や世界貿易機関(WTO)のルールに則って調査を進めている」との姿勢を改めて強調した。【5月19日 レコードチャイナ】
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【「国際貿易における公正な取引相手」としてのイメージを損なう中国】
中国側の“報復ではなく”云々は、日本の韓国に対する輸出制限措置をも連想させます。
中国は、輸入先をオーストラリアからアメリカに切り替えるようです。

オーストラリアとしては、トランプ大統領の対中国批判のとばっちりを受けたような状況なのに、輸出をそのアメリカにもっていかれる・・・という、納得しがたいところでしょう。

アメリカ・トランプ政権は、対中国交渉の「成果」を誇ることにもなるのでしょう。

ただ、こうした貿易制限措置は、長期的・総合的にみた場合、あまり賢明な判断とは言えません。

****習主席がもてあそぶ三角関係、豪州巻き込み複雑化 ****
米中の貿易戦争が豪州にも飛び火
 
恋愛の三角関係というのは、メロドラマやハリウッド作品のお決まりの展開だった。だがここにきて、世界の農産物貿易においても、それが繰り返されている。 
 
中国は18日、豪州産大麦(主にビール醸造に使用される)に80.5%の追加関税を課した。補助金による支援を受けて、不当に廉価で販売されているというのがその理由だ。

その数日前には、中国は豪州産牛肉についても、検査・検疫の要件に違反したとして、輸入を一部禁止している。オーストラリアが新型コロナウイルスの発生源を巡り、徹底した国際調査を求めたことから、豪中関係は悪化の一途をたどっている。 

ここで最も興味深いのが、中国が税関総署ウェブサイトに5月14日掲載した告知で、米国産大麦の購入を許可した点だ。それまで米国産大麦の輸入は認められていなかったが、米中の貿易合意に基づき変更が求められた。 
 
中国は5月初旬に初めて豪州産大麦への関税発動に踏み切る構えを示しており、その数日後のタイミングで米国産大麦の輸入解禁を発表したことを偶然として片付けるのは難しい。

中国が追加関税をちらつかせて以降、豪州産大麦の価格は急落している。オーストラリアは資源の主要輸出国である一方、中国はその最大の買い手であり、購入規模は群を抜く。 

米国にとって、小麦に比べると大麦の輸出は取るに足らない規模だ。だが、この一連の動きから浮かび上がってくるのは、米中の貿易合意がはらむ本質的な矛盾だ。

米国はこれで、大麦の対中輸出を通じて大儲けするかもしれないが、世界の市場は廉価な豪州産大麦であふれることになるだろう。

これまで米国産大麦を購入していたかもしれない国々は、米国産にこだわる理由はなくなる。しかも、米国産大麦のコスト競争力に関して、根本的には何も変わっていない。

米農家が生産を拡大したところに、再び中国の政治的な風向きが変わるようなことがあれば、米農家は行き場のない大麦を大量に抱えることになりかねない。 
 
この状況は中国にとって、米国とその親密な同盟国の1つである豪州との間に摩擦を引き起こすと同時に、「中国を怒らせるな」とのメッセージを送ることで他国をけん制することにもなる。

パンデミック(世界的大流行)の渦中に米中貿易合意の目標がなんとか達成できたとしても、これが米国の利益にどうかなうのかは不透明だ。 
 
その一方で、今回の動きは「国際貿易における公正な取引相手」としての中国のイメージ向上には何らつながらない。

中国は豪マレー・ダーリング盆地の農家に対して灌がいインフラ向けの資金を提供していることは、生産の補助金に当たると主張している。だが、豪貿易相によると、大麦輸出は国内の別の産地からのものが大半を占める。 
 
米中の覇権争いが制御不能に陥った世界の新たな現状において、食糧供給は政争の具の色合いをますます強めている。

国家主義的な主張を唱える政治家は、太平洋の両側で稼ぎを得ている。農家(いずれの国でも)が恩恵を受けているかどうかは、また別の問題だ。【5月22日 WSJ】
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オーストラリア  中国の政治的干渉に高まる警戒感 国内には懸念されるヘイトの風潮も

2019-11-25 23:04:18 | オセアニア

(【1125日 NHK】 スパイになるよう打診されたとASIOに明かし、今年3月にモーテルの部屋で死亡しているのが見つかった中国系オーストラリア人中国系オーストラリア人ジャオ氏)

 

【中国の政治力行使への警戒感】

オーストラリアは経済的には中国との関係が極めて強く、輸出では全体の三分の一、輸入でも四分の一弱を中国が占めており、輸出入全体では対中国貿易は日本やアメリカの3倍近い規模になっています。

 

一方で(“それだけに”と言うべきでしょうか)、政治的には保守派を中心に、存在感を強める中国への反発もあり、以前から中国のオーストラリア政治への影響力行使の疑惑に対する警戒感が存在しています。

 

****豪州、外国からの政治献金禁止へ 中国の影響力増大を懸念****

ターンブル首相は5日、オーストラリアが外国勢力による政治介入を防ぐ政策の一環として、外国からの政治献金を禁止すると発表。背景には中国による影響力拡大に対する懸念があるとみられる。

 

外国勢力が、オーストラリアや世界の「政治プロセスに影響を与えようと、これまで前例のない、ますます巧妙な工作を行っている」と、ターンブル首相は首都キャンベラで記者団に語った。また、「中国の影響について懸念すべき報告がある」と指摘した。

 

世界では約3分の1の国が外国からの政治献金を認めており、オーストラリアや隣国ニュージーランドもそれに含まれる。米国や英国、欧州の数カ国では、こうした献金は禁止されている。

 

ターンブル首相によると、今回導入する新たな法律は、米国の外国代理人登録法を一部参考にしたもので、外国の介入を犯罪とみなし、外国政府のために働くロビイストに対して登録を義務付ける。

 

オーストラリアでは、中国政府が影響を拡大しつつあるのではないかとの懸念が高まっており、自国の政治家と中国政府の国益との関係が注目を集めている。

 

地元メディアのフェアファックス・メディアやオーストラリア放送協会(ABC)は6月、中国の利益を促進するため、中国が組織的に豪州政治への「浸透」工作を行っていたと報じた。中国側は、こうした報道を否定している。

 

中国外務省の耿爽報道官は、オーストラリアの内政に介入したり、政治資金を使って影響を及ぼそうという意図は中国にないと述べた。「同時に、オーストラリアには偏見を取り払い、中国と中国との関係について、客観的かつ前向きな態度で評価することを求めたい」と、耿報道官は付け加えた。

 

しかし、野党労働党のサム・ダスチャリ上院議員は先週、党の方針に反して、中国の南シナ海での領有権主張を支持するような発言をした録音が表面化したことを受け、党の幹部職を辞職した。(後略)【2017126日 ロイター】

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そうした中国警戒感がある状況での出来事。

 

****「スパイを豪連邦議員に」 中国の試みを捜査 オーストラリア*****

中国系オーストラリア人の高級車ディーラーを政治工作員にして連邦議会に送り込もうとしたとされる中国の試みについて、オーストラリア当局が捜査を進めている。情報機関のオーストラリア保安情報機構(ASIO)が24日夜、明らかにした。

 

豪メディア大手ナイン系列で24日夜に放送された報道番組「60ミニッツ」で、中国の工作員が高級車ディーラーのボー・「ニック」・ジャオ氏に100万豪ドル(約7400万円)を支払い、メルボルンの選挙区から連邦議会選に立候補させようとしたという疑惑を報じた。

 

ジャオ氏は昨年、スパイになるよう打診されたとASIOに明かし、今年3月にモーテルの部屋で死亡しているのが見つかった。

 

ASIOのマイク・バージェス長官は24日夜声明を出し、ASIOは以前からこの件について知っており、「積極的に捜査を進めている」と明らかにした。バージェス氏が声明を出すのは異例。

 

バージェス氏は、ジャオ氏の死も捜査対象になっているため、これ以上のコメントは避けるとした上で、「敵対する外国の情報活動は、依然としてわが国とわが国の安全保障に対する脅威となっている」と指摘した。

 

オーストラリア議会の情報・安全保障合同委員会で委員長を務めるアンドリュー・ハスティー議員は、「超現実的」で「スパイ小説から飛び出した話のようだ」と述べた。

 

オーストラリアでは23日に、中国のスパイだったという「威廉王」こと王力強氏が、香港で活動する中国軍の情報将校の身元と、台湾やオーストラリアで行われている活動の内容と資金源に関する詳細な情報を豪当局に提供していたと報じられたばかりだった。 【1125日 AFP】

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こうした事件を内々に知る立場にあったASIOの元長官が下記のような警告も。

 

****中国が豪政治の「乗っ取り」企図、保安機関元トップが警告****

中国が水面下で狡猾(こうかつ)に組織的なスパイ活動と利益誘導を駆使してオーストラリア政治体制の「乗っ取り」を企てていると、オーストラリア保安情報機構の元トップが豪紙とのインタビューで警告した。

 

このインタビューは、今年9月までの5年間ASIOの長官を務めていたダンカン・ルイス氏のもので、22日付の豪紙シドニー・モーニング・ヘラルドに掲載された。ルイス氏がASIO長官退任後にメディアのインタビューに応じるのは初めてだ。

 

ルイス氏はシドニー・モーニング・ヘラルド紙外信部長とのインタビューで、豪政治関係者は誰もが中国諜報(ちょうほう)活動の標的となる可能性があり、何年間も気付かれないままにその影響が及び続ける恐れがあると警鐘を鳴らした。

 

「(中国の)スパイ活動や内政干渉は水面下で狡猾に行われている。その影響が表面化するのは何十年後かもしれないが、その時は既に手遅れになっているだろう。ある日、目を覚ましたら、我が国の政府が我が国にとって有益でない決断を下していたということになりかねない」

 

さらにルイス氏は、中国による乗っ取りは政界にとどまらず、地域社会や財界にも及んでいると指摘。基本的に活動の指令はオーストラリア国外から出ているという。

 

中国による大規模な利益誘導作戦の例としてルイス氏は、豪政党に多額の献金をしている中国人工作員の存在を挙げ、メディアや大学も標的となっていると警告。「疑心暗鬼を引き起こすつもりはないが、賢明に認識しておく必要がある」と訴えた。 【1122日 AFP】

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中国側は「妄想に取りつかれている」「でっち上げている」と反発しています。

 

****豪内政への干渉疑惑、中国は「でっち上げ」と否定****

中国の情報機関が豪連邦議会へのスパイの送り込みを画策していたとされる疑惑を巡り、中国外務省は25日、中国は他国の国内問題に干渉しようと試みたことはなく、その意図もないなどとして疑惑を否定した。

一部の豪テレビ局や新聞は24日、中国の情報機関がメルボルンの高級車ディーラーの男性に対して、連邦議会選への出馬と引き換えに100万豪ドルを提供すると持ち掛けていた、と報じた。(中略)

中国外務省の耿爽報道官は、25日の定例記者会見で、一部の豪メディアは中国の干渉をでっち上げたと強調した。

報道官は、豪州の一部の政治家・組織・メディアが中国に関する問題で「妄想に取りつかれている」とし「いわゆる中国のスパイが豪州に潜入しているといった話を常にでっち上げている」と発言。

「どれほど突拍子のない話であれ、どれほど装いを変えても、嘘は嘘だ」と述べた。【1125日 ロイター】

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【“中国スパイ” 豪・台湾の政界にも影響】

昨日は、前出【AFP】最後に書かれているように、“中国スパイ”に関する別の話題も。

 

****中国人スパイ 豪に亡命求める 工作活動の情報と引き換えに ****

香港と台湾などでスパイ活動に関わっていた中国人の男性が工作活動に関する情報と引き換えに、オーストラリアへの亡命を求めていると現地メディアが伝えました。

 

男性の亡命が認められれば、中国の影響力をめぐって冷え込んだ両国関係がさらに悪化することが予想され、オーストラリアがどのように対応するか注目されます。

 

オーストラリアの大手紙シドニー・モーニング・ヘラルドなどによりますと、亡命を求めているのは香港と台湾、それにオーストラリアでスパイ活動に関わっていた中国人の男性です。

香港で抗議活動が続くなか、中国軍からの指示で民主派の情報を収集したり、韓国人になりすまして台湾に入り、来年1月に行われる総統選挙に向けた工作を行ったりしたとされています。

男性はこうした工作活動の内容と資金源についての情報や、香港で活動する中国軍の幹部の情報をオーストラリアの情報機関に持ち込んで、亡命を求めていると報じられています。

現在、観光ビザでシドニーに滞在していて、中国に戻れば死刑になると訴えているということです。

男性の亡命が認められれば、中国によるスパイ活動の一端が明らかになる一方で、中国の影響力をめぐって冷え込んだ両国関係がさらに悪化することが予想され、オーストラリアがどのように対応するか注目されます。【1124日 NHK】

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“韓国人になりすまして台湾に入り、来年1月に行われる総統選挙に向けた工作を行ったりした”ということですから、当然に総統選挙を控えた台湾でも問題になっています。

 

****台湾与党、中国は「民主主義の敵」と批判 選挙干渉疑惑受け****

台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統の与党・民主進歩党(民進党)は25日、1月11日の総統選・立法委員(国会議員)選挙を前に中国が台湾の政治に介入しているとの報道を受けて、中国は「民主主義の敵」だと批判した。

オーストラリアの報道によると、中国人スパイを名乗る男が亡命を求めており、中国が台湾、オーストラリア、香港でどのような政治的な干渉を行っているか豪保安情報局(ASIO)に情報を提供したという。

台湾独立を志向する民進党の卓栄泰主席は記者会見で、フェイクニュースの多くは中国発だとして、さらなる調査が必要だと指摘。「民主主義の敵は中国だ。現在、台湾にとって最も野心的な敵および競合相手も中国だ」と述べた。

報道によると中国人亡命者は、台湾で親中路線の最大野党、国民党の韓国瑜・高雄市長などをメディアが好意的に取り上げるよう誘導する手助けをしたと述べている。

卓氏は、国民党は選挙の直接的な敵だが、最大の挑戦を仕掛けてくるのは「最強の破壊力」を持つ中国だとした。

国民党の韓氏は中国共産党から金銭の受領があった場合は選挙への出馬を撤回すると表明した。

これとは別に国民党の報道官は、この問題は「共産党の間抜けなスパイ行為」の1つで、早急の調査が必要だと強調。また、台湾政府はこの問題を「選挙操作」のために使おうとしていると訴えた。

そのうえで「蔡政権や国家治安当局に関連事案の説明を求める。この問題について曖昧な態度を取って選挙に影響を及ぼすのはやめるべきだ」と述べた。【1125日 ロイター】

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香港問題で中国との関係が逆風になっている国民党にとっては、更に状況を苦しくさせる問題でしょう。

 

最初の話題にせよ、後の話題にせよ、中国の関与が実際会ったのかどうかはわかりません。

ただ、“日頃の行い”から強い疑惑を持たれるというのは“不徳の致すところ”でしょう。

 

【豪国内の“中国スパイ”より懸念すべき風潮】

オーストラリアを取り上げたついでに、最近見たオーストラリア社会に関する懸念すべきニュースも。

 

****男がスカーフ着用の妊婦を殴打、イスラム嫌悪か 豪シドニー****

オーストラリアのシドニーで、無抵抗のイスラム教徒の妊婦に殴る蹴るの暴行を加えた男が起訴された。豪イスラム関係評議会は「イスラム嫌悪」に基づく襲撃事件だと非難している。

 

事件は20日、シドニー西部のカフェで起きた。店の防犯カメラ映像には、ヘッドスカーフを着用した女性3人が談笑しているテーブル席に男が近づき、いきなり飛び掛かるようにして女性1人を殴りつける様子が映っている。女性に男を挑発する様子はなかった。

 

男は何度も女性を殴り、女性が床に倒れ込むと今度は踏みつけるなど、周囲の人々が力づくで引き離すまで暴行を続けた。警察によると、被害者の女性は妊娠38週で、病院に搬送されたが既に退院したという。

 

男は「暴行によって身体障害と平穏侵害を引き起こした」罪で起訴された。保釈は認められない。男の動機について警察は明らかにしていないが、複数の余罪で追起訴する可能性があるという。

 

事件を受け、AFIC21日に発表した声明によると、男は被害者と友人の女性たちに向かって「反イスラム的なヘイトスピーチ(憎悪表現)を叫んでいた」という。ラテブ・ジュネイドAFIC議長は、「人種差別とイスラム嫌悪に基づいた襲撃なのは明らかだ。そのように対処されることを期待する」と述べた。

 

豪チャールズ・スタート大学の最近の研究報告によれば、オーストラリアではイスラム嫌悪が「継続的な現象」となっており、特にヘッドスカーフを着用した女性が被害に遭う事例が多いという。 【1122日 AFP】

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報道の自由  「知る権利」と「機密保持」の対立 政権に不都合な事実の隠蔽も

2019-10-21 23:11:04 | オセアニア

(オーストラリアの主要各紙は21日、1面に黒塗りの文書を掲載した。【10月21日 BBC】)

 

【オーストラリア 政府に不利な報道をした記者たちを、それが公共の利益にかなう内容にもかかわらず脅かしている】

「国境なき記者団(Reporters Without Borders=RWB)」は、情報の自由、報道の自由を目的に、1985年にフランス・パリで設立された非政府組織で、戦争地域などで活動するジャーナリストの金銭的・物的支援や、拘束されたジャーナリストの救出、メディア攻撃に対する非難声明、情報の自由に対する攻撃の監視などの活動を行っています。

 

この「国境なき記者団」は世界各地の約130名の記者と協力して、世界各地で報道の自由に違反している情報を調査・収集し、「報道の自由度指数」に関する報告書を作成しています。

 

そのなかで毎年報告されているのが「報道の自由度ランキング」

 

4月に発表された2019年のランキングでは、オーストラリアは21位、「満足できる状態」ということで、まずまずの評価となっています・・・・が。(日本の話は後述します)

 

****豪メディアに捜査、危機感 機密報道の記者に、指紋提出求める/通信記録にアクセス*****

オーストラリアで、政府の機密情報をもとに伝えた報道をめぐる連邦警察の捜査が、波紋を広げている。

 

6月に公共放送ABCなどを捜索して衝撃を与え、7月には記者に指紋の提出を求めるなど、捜査の実態が次々明るみに出た。豪主要メディアは政府に、「報道の自由」を守るための法改正を求めている。

 

連邦警察が捜査しているのは、ABCによる2017年7月の報道。独自入手した政府の機密文書をもとに、09~13年にアフガニスタンに派遣された豪特殊部隊が非武装の男性や子どもを殺害する事件が少なくとも10件あったと報じた。

 

これを受けて、警察は6月5日、ABCのシドニー本部を家宅捜索。「機密情報の公表を禁じる刑法の規定に基づいた」と説明し、担当記者らが刑事訴追される可能性を否定しなかった。

 

ABCは7月15日、警察が今年4月、担当記者と番組プロデューサーに、指紋と掌紋のコピーの提出を求めるメールを送っていたと報道。「住宅に不法侵入した容疑者と同じような扱いを受けた。豪州で記者が指紋提出を求められるのは初めてとみられる」と批判した。

 

さらに、この記者についてシドニーモーニングヘラルド紙が、警察が今年初め、豪航空最大手のカンタス航空に、記者が利用した16年の6月と9月のフライトの記録の提出を求めていたと報じた。

 

同紙はまた、警察が17年7月からの1年間に、通信会社が保管するジャーナリストらの電話やインターネットの記録に、58回にわたってアクセスしていたと伝えた。ただ、今回の記者に関する情報かは不明だ。

 

警察が依拠したのは通信傍受法で、ジャーナリストの通話記録や電子メールの相手先や通信時刻などがわかるデータを、捜査機関は利用できると定めている。

 

警察はABCへの捜索の前日の今年6月4日には、別件の捜査で、大手新聞社ニューズコープの記者のキャンベラの自宅も捜索した。この記者は昨年4月、政府が情報機関による市民への監視を強めることを検討していると機密情報をもとに報じていた。

 

 ■テロ防止背景

豪州は、米NGOの「フリーダムハウス」が各国の社会の自由度を数値化した2019年版の報告書で、100点満点中98点と、209カ国・地域中6位タイだった。

 

報道の自由を含む市民の「表現と信教の自由」の項目では満点の評価を受けた。国際NGO「国境なき記者団」(本部・パリ)が4月に発表した報道の自由度ランキングでも180カ国・地域中21位。67位の日本を大きく上回る。

 

7月23日に発表された民間の世論調査では、ABCなどへの警察の家宅捜索について、40%が「とても心配」、34%が「少し心配」と答えた。

 

豪州では近年、国内でのテロを防ぐため、機密情報の管理や通信傍受など治安対策の法律を強化してきた。警察幹部は捜索翌日の会見で「機密情報が守れない国とみなされると、協力国から我が国への(テロなどの)情報が枯渇する」と説明。とくに「ファイブアイズ」(米、英、豪、加、ニュージーランド)と呼ばれる国々の情報機関同士の協力に影響が出るとした。

 

豪州のメディア法に詳しいメルボルン大のデニス・ムラー上級研究員は「連邦警察が政治的な勢力になっている。政府に不利な報道をした記者たちを、それが公共の利益にかなう内容にもかかわらず脅かしている」と指摘する。

 

 ■政府も動くが

強制捜査に危機感を抱いたABCやニューズコープなど豪メディアは連名で、政府に対し、(1)情報提供者の保護(2)記者への強制捜索令状の発行の厳格化(3)公共の利益のために機密情報の内容を報じた記者への刑事訴追の免除――などの報道の自由の保障を明確にする法改正を要求。さらに、ABCとニューズコープはそれぞれ捜索令状は憲法上無効との司法判断も、連邦裁判所に求めている。

 

内外で広がる批判や懸念を受けてダットン内相は8月9日、機密文書漏洩(ろうえい)に関する捜査について「自由で開かれた報道の重要さや幅広い公共の利益を考慮するように期待する」として、強制捜査を検討する前に別の関係者への捜査を尽くしたり、記者に自発的な捜査協力を求めたりするよう連邦警察長官に指示した。

 

これに対し、ニューズコープのマイケル・ミラー会長は同日、「今ほど(大臣の警察への)助言より法改革が必要なときはない」と豪紙に語り、政府の対応は不十分との認識を示した。【8月11日 朝日】

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当局側による報道への圧力強化の背景に“国内でのテロを防ぐため、機密情報の管理や通信傍受など治安対策の法律を強化”する動きが進んでいいることが指摘されていますが、日本の「特定秘密保護法」制定と同種の流れでしょう。

 

****報道の自由訴え 豪主要紙が1面黒塗り 警察の放送局捜索を批判****

オーストラリアで、国の機密情報が漏えいした疑いがあるとして、公共放送ABCなどが警察の捜索を受けたことに対し、地元の主要な新聞は、21日、一斉に朝刊の1面の文面をほとんど黒く塗りつぶして報道の自由を訴えました。

 

オーストラリアの公共放送ABCが、おととし、国防省の機密文書に基づき、アフガニスタンに派遣された兵士が民間人を殺害したなどと報じたことについて、連邦警察はことし6月、当局者による機密情報漏えいの捜査の一環として、シドニーにあるABCの本部を捜索しました。

こうした事態に対し、地元の主要な新聞は、国民の知る権利を脅かす行為だと厳しく批判し、21日朝の紙面で報道の自由を訴えるキャンペーンを一斉に展開しました。

各紙とも1面の文面のほとんどを黒く塗りつぶしたうえで、1番下に「政府があなたたちから真実を遠ざけるとき、何を隠蔽しているのでしょうか」と問いかけています。

2面以降も関連する記事を掲載し、このうち有力紙「オーストラリアン」は内部告発者が守られ、報道した記者が罪に問われないようにすべきだと訴えています。

捜索に踏み切った連邦警察は機密情報を守れないと他国から情報を得られなくなると説明していますが、主要な地元紙が、こうしたキャンペーンを展開したことで、今後報道の自由をめぐる議論が活発になるとみられます。【10月21日 NHK】

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知る権利を求めるメディア側と機密保持を重視する政府の立場は対立しています。

 

“安全保障に関する法律が報道の自由を制限し、オーストラリアに「秘密の文化」を生み出していると非難している。

 

一方、政府は報道の自由を擁護するとしつつ、「誰も法の上に立つことはできない」との姿勢をとり続けている。

スコット・モリソン首相は20日、「法治主義」は維持される必要があると強調。「それは私も、どのジャーナリストも、他の誰もが対象となる」と述べた。”【10月21日 BBC】

 

【日本 経済的な利益が優先され「多様な報道が次第にしづらくなっている」】

同種の対立は、他の国でも、日本でもあるところですが、日本における報道の自由は、冒頭「報道の自由度ランキング」によれば日本人が意識している以上に芳しくないとされています。

 

****報道自由度、日本67位 国境なき記者団、前年同様 ****

国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(RSF、本部パリ)は18日、2019年の世界各国の報道自由度ランキングを発表した。日本は前年と同じ67位。経済的な利益が優先され「多様な報道が次第にしづらくなっている」と指摘した。

 

全体の傾向についてRSFは「記者への憎しみが暴力となり、恐怖を高めている」と指摘。クリストフ・ドロワール事務局長は「恐怖を引き起こす仕掛けを止めることが急務だ」と訴えた。

 

ランキング対象の180カ国・地域のうち「良い」か「どちらかと言えば良い」状況にある国は前年の26%から24%へ減少。

 

トランプ大統領が批判的メディアを敵視している米国は48位に順位を下げ、日本と同様「問題のある状況」とされた。

 

1位は3年連続でノルウェー。フィンランドとスウェーデンが続き、3位までを北欧諸国が占めた。

 

政府が独立系メディアやインターネットへの圧力を強めているとしてロシアは149位に下がり、中国も177位に下落した。北朝鮮は最下位を脱して179位となり、トルクメニスタンが最悪だった。

 

日本は10年には11位だったが、次第に順位を下げ、17年は72位だった。【4月18日 日経】

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日本はG7では最低の順位ですが、2010年の11位からすると急速に状況が悪化しているように見えます。

 

****順位が下がった理由****

「報道の自由度」ランキングは、意見の多様性、政府機関・宗教からの独立性、報道の内容によって政府や特定団体などからいやがらせや脅迫を受けていないかなど、7つの質問項目を基準に採点されます。

 

最新版(2017年版)では日本はイタリアに抜かれて主要7カ国のなかで最下位、アジアのなかでも韓国に抜かれ3位に後退してしまいました。

日本について国境なき記者団は、「日本のメディアの自由は、安倍晋三が2012年に首相に再就任して以降、衰えてきている」と指摘。

 

一方、日本の記者クラブについては、フリージャーナリストや外国人記者を選り好みしており、自己検閲を増大させていると批判しました。

 

また、日本政府はメディアに対する敵意を隠さず、ジャーナリストに対してハラスメント(いやがらせ)をしていると非難。

 

さらに、SNS上のナショナリスト達は、政府に批判的な記者や、慰安婦問題や南京問題などの論争に取り組むジャーナリストに対して脅迫・いやがらせをしていると問題視しました。

 

特定秘密保護法も批判の対象となっており、違法に取得された情報を公表したとして有罪判決を受けた場合、内部告発者に10年の懲役を科す法律を「国連の抗議を無視して成立させた」と非難しました。【https://www.sin-kaisha.jp/article/global/報道の自由度ランキング、なぜ日本はg%EF%BC%97で最下位/

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特定秘密保護法について日本弁護士連合会は、「特定秘密」はとても範囲が広く曖昧で、どんな情報でもどれかに該当してしまうおそれがあると指摘。

 

また、「特定秘密」を指定するのは、行政機関であるため、行政機関が国民に知られたくない情報を「特定秘密」に指定して、国民の目から隠してしまえる危険性があるとも指摘しています。

 

【アメリカ トランプ大統領のメディアバッシングがデマ、フェイクニュースの新時代に引きずり込む】

アメリカも2019年版で48位と良くありません。

 

****トランプの影響? 米国も順位を落とす****

米国の「報道の自由度」は(2017年版では)昨年より順位を2つ落として、43位となりました。

 

国境なき記者団は、トランプ大統領による相次ぐメディア批判や、マスコミへの報復としてホワイトハウスへのアクセスをブロックしていることなどを非難しました。

 

また機密情報などの内部告発者に対する逮捕や告訴が続いていることから、今日まで、アメリカのジャーナリストは、情報源の秘匿などの権利を認める「ジャーナリスト・シールド法」に守られていないと指摘しました。

 

米オンラインメディアのハフィントンポストは記事のなかで、「例えば元CIA職員のジェフリー・スターリング氏は、ニューヨーク・タイムズの記者に機密情報を漏らしたために2015年に有罪判決を受け、いまだ獄中にいる。スターリング氏と家族、それに数万人の支持者は彼の無罪を主張し、赦免するよう求めている」と語ります。【同上】

**********************

 

「ジャーナリスト・シールド法」は取材に際しての情報源である人物を特定しうる情報を他に漏らさないことを保証する法律。

 

アメリカでは、いわゆるシールド法によって取材源の秘匿を保護している州も多いが、連邦レベルでは認められておらず、2005年7月に、CIA情報員の身元をメディアに漏らした政府高官の氏名の証言を拒否したニューヨーク・タイムズ紙の記者が、法廷侮辱罪で収監されたとのこと。

 

「報道の自由」におけるトランプ大統領の最大の問題は、相次ぐメディア批判によって、報道の信頼性を失わせようととしている点でしょう。

 

****報道の自由は新たな転換点を迎えている*****

国境なき記者団のクリストフ・デロワール事務総長は、報告書のなかで「報道の自由度」が全世界的に下がっていると警告しています。(中略)

 

トランプ米大統領がメディアに対して「無能」「不快」「フェイクニュース」などと口撃するように、公然と批判する風潮が世界的に広まっていることについて、ハフィントンポストは、「あからさまなメディアバッシングであり、世界を『ポスト真実(客観的事実よりも感情的な訴えが世論に影響すること)』やデマ、フェイクニュースの新時代に引きずり込む、極めて有害な反メディアの言葉である」と批判。報道の自由が世界的に蝕まれる傾向にあると危惧しました。(後略)【同上】

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【ミャンマー ロヒンギャ報道の記者 有罪のまま恩赦で釈放】

「報道の自由」は多くの国々で侵害されていますが、ロヒンギャ問題に絡むミャンマーの事例も国際的に懸念されました。

 

****スー・チー氏が向き合わない「報道の自由」の危機 ミャンマー民主化はどこへ****

ミャンマーの裁判所は(2018年)9月3日、イスラム教徒少数民族ロヒンギャの問題を取材していたロイター通信の現地記者2人に、禁錮7年の実刑判決を下した。

 

記者の行為が国家機密法違反だったと認定したが、「(2人を逮捕するための)わなだった」とした警察官の証言は考慮されなかった。

 

長期の軍事政権を終え、芽吹き始めていた同国の「報道の自由」は、試練を迎えている。だが、民主化運動を指導してきたアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相は、自分を支えてきた記者たちの懸念に、正面から向き合おうとしていない。(中略)

 

実刑判決を受けた2人は、西部ラカイン州で昨年、ロヒンギャ10人が殺害された事案を取材。12月に警察官から面会場所のレストランに呼び出されて資料を受け取り、外に出たところで別の警察官に逮捕された。

 

英国のハント外相は「不都合な真実を記事にする記者を禁錮刑とすることは報道の自由に対する大きな打撃だ」と批判。欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表は、ミャンマーの民主化を「落第」として、実刑判決が「ジャーナリストたちを萎縮させる」と懸念する。(中略)

 

ミャンマーの報道関係者は、今回の記者への実刑判決に絡むスー・チー氏の対応に「がっかりした」と落胆を隠さない。国内では沈黙を貫き、シンガポールやベトナムなど海外の講演会で質問されてやっと口を開いたものの、「(今回の判決は)表現の自由とは関係なく、国家機密法に関するものだ」と突き放し続けているからだ。(後略)【2018年10月1日 産経】

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2名の記者は昨年9月に一審で禁錮7年の実刑判決を受け、高裁、最高裁に上訴するも、4月に最高裁で棄却されていましたが、5月、ミャンマー政府は高まる国際社会からの批判を受け、有罪判決は容認しつつ、恩赦によって2名を釈放しました。

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オーストラリア  太平洋諸島諸国で影響力を中国と競うも、その高圧的姿勢に反発も

2019-08-20 22:29:22 | オセアニア

(【2012年5月25日 WEDGE Infinity】

 

【太平洋諸島諸国で影響力拡大を競う中国とオーストラリア】

中国が各地で影響力を強めているのは今更の話ですが、太平洋諸島諸国においても、インフラ支援をてこにして関与を強めています。台湾が外交関係のある国の3分の1がこの地域に集中していることも、中国がこの地域への関与を強める背景にあります。

 

****中国の拠点、サモアにも? 港建設を支援****

中国が南太平洋のサモアで、新しい港の建設支援を検討している。安全保障上の戦略的な思惑もあるとみて、米国やオーストラリアが警戒。

 

日本が最大の出資国であるアジア開発銀行(ADB)が5月の年次総会をフィジーで開いた背景にも、太平洋諸国に及ぶ中国の支援攻勢がある。

 

(中略)新港の必要性について、パパリイテレ公共事業・運輸・インフラ相は取材に「アピア港が手狭になってきている」と説明した。

 

だが、アピア港は昨年6月、日本政府の35億円の援助で、埠頭(ふとう)の長さが2倍の約300メートルに拡張され、大型クルーズ船も停泊できるようになったばかりだ。

 

新港建設は、サモア政府の依頼でADBが2016年に将来の港湾整備計画を作ったが、「経済性が低い」と評価された。貨物量の増加も予想されず、アピア港の改修で十分、との判断からだ。ADBの立入政之・太平洋地域ディレクターは「新港への投資を(利用収入などで)回収するのは難しい」と話す。

 

それでも、政府は「アピア港には、クルーズ船がいる間、貨物船のスペースがない」(パパリイテレ氏)と新港建設をあきらめていない。

 

だが、人口20万人の島国に「建設に十分な財源はない」。そこで中国に支援を要請。これに中国が応じ、事業可能性調査を年内に終える予定だという。(中略)

 

 ■軍事利用の懸念も

(中略)サモアでは、中国による空港や病院、政府庁舎などのインフラ支援が目立ち、対外債務の国内総生産(GDP)比は50%に迫る。中国の融資で港を建設したものの返済に窮し、中国企業が運営権を得たスリランカのように、中国の「債務のわな」に陥りかねないと米国などは懸念している。

 

中国が採算を度外視して南太平洋の島国を支援するのは、安全保障上の利益があるためだ。港は南米からの食料や鉱物資源の輸入船の寄港拠点になりうる。

 

豪戦略政策研究所のマルコム・デービス上級アナリストは「港には中国の軍艦も寄港できる。サモアがそうなれば、太平洋の戦略地図を変え、米豪には大きな懸念になる」と指摘する。

 

ハワイから豪州の間の赤道以南の太平洋地域で米軍が駐留するのは豪州だけだ。サモアのすぐ東には米領サモアがあるが、米軍基地はない。安保上の「空白地帯」に、中国が手を伸ばす動きとの見方がある。

 

南太平洋では昨年4月、豪紙が「中国がバヌアツに海軍基地を設ける協議を始め、中国の支援でできた埠頭(ふとう)が候補地だ」と報道。両政府は否定したが、豪州では警戒感が広がった。(後略)【5月3日 朝日】

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“中国にすり寄る太平洋諸国”【同上】に対し、従来よりこの地域に影響力を有してきたオーストラリアは危機感を強め、中国に対抗する形で関与を強めようとしています。

 

****豪、ソロモン諸島に資金協力=最大188億円、中国に対抗****

オーストラリアのモリソン首相は3日、訪問先の太平洋の島国ソロモン諸島でソガバレ首相と会談し、インフラ整備で豪州が10年間に最大2億5000万豪ドル(約188億円)の資金協力を行うことで合意した。

 

インフラ支援をてこに太平洋諸島諸国への影響力を強める中国に対抗する狙いがあるとみられる。5月の総選挙で勝利したモリソン首相は選挙後初の外遊先としてソロモン諸島を選び、太平洋諸島重視の姿勢を打ち出している。【6月3日 時事】 

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【中国からの債務増大に警戒感も】

太平洋諸島諸国も、こうした中豪が影響力を競う構図を利用して最大限に利益を引き出そうとしています。

 

****パプア、中国に8500億円分の「借金」要請 債務返済のため異例の対応****

パプアニューギニア(PNG)政府が中国に、総額約270億キナ(約8500億円)に上る政府債務の借り換え支援を求めた。

 

異例とも言える要請が通れば、太平洋の島国の間で広がる中国の影響力がさらに強まる可能性がある。豪紙オーストラリアンが7日、伝えた。

 

PNGの政府債務の金額は、同国の国内総生産(GDP)の3割相当にまで拡大。主な輸出品である原油や天然ガスの価格が落ちた影響で歳入が伸びなかったためとされる。この「借金」返済のために、中国から新たに借金する形だ。

 

5月に就任したマラペ首相は6日、薛冰・中国大使に会って借り換えの支援を求め、両国の中央銀行とPNG財務省が具体的な協議を進めるよう提案した。

 

同紙は「中国は、PNGが返済できなくなったときのために、大型の資源事業といった担保を求めるだろう」との国際金融筋の見方を伝えた。

 

PNGは資源が豊富。最大の援助国の豪州のほか、日本や米国が関係を重視している。近年は、中国が国際会議場や幹線道路などの整備支援を通じて、PNGでの存在感を増している。【8月8日 朝日】

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ただ、太平洋諸島諸国も中国からの債務が大きな負担となりつつあり、いわゆる「債務の罠」に対する警戒感も強まっています。

 

*****太平洋諸島フォーラム開幕 中国巨額援助の「債務の罠」に危機感****

オセアニアの地域協力機構「太平洋諸島フォーラム(PIF)」の年次総会が(2018年9月)3日、太平洋の島国ナウルで始まった。

 

太平洋諸国は中国からの巨大経済圏構想「一帯一路」などを通じた巨額の援助で「債務のわな」に陥る危険性が指摘されており、4日の首脳会合では債務放棄要請が議題となる可能性がある。

 

一方、台湾は外交関係のある国の3分の1がこの地域に集中し、中国に対抗して現地で存在感の維持に努めている。

 

オーストラリアのローウィ国際政策研究所によると、中国が2011年以降、太平洋諸国に援助した総額は低利融資を含め約12億6千万ドル(約1400億円)。豪州に次ぐ2位で、ニュージーランドを上回る。公約ベースでは59億ドル(約6500億円)に上り、地域全体への援助公約額の3分の1を占める。

 

ロイター通信によると、トンガでは対外債務の約60%、バヌアツでは約半分が中国に由来する。世界銀行の幹部は同通信に、太平洋諸国の債務は「継続的に返済できる限界に近づいている」と指摘している。

 

こうした批判に対し、中国外務省の華春瑩(か・しゅんえい)報道官は8月30日、中国による「債務のわな」の指摘は「西側メディアの誇張だ」と反論。「中国の融資は被援助国政府と人民の熱烈な歓迎を受けている」と強調した。

 

トンガのポヒバ首相は8月中旬、ロイター通信の取材に対し、PIFの首脳会合で、太平洋諸国が一致して中国に債務放棄を求める計画があると明かした。だが、その直後に「債務問題は各政府が個別に解決策を模索すべきだ」と発言を翻した。中国の圧力が原因の可能性がある。(後略)【2018年9月3日 産経】

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【オーストラリアの高圧的対応への反発も】

一方、この地域を「自分たちの裏庭」と呼ぶようなオーストラリアの傲慢・高圧的な姿勢に対する反発・批判も目立っています。オーストラリアがそうした無礼な対応を続けるなら、今後は中国に・・・という話にもまります。

 

****フィジー首相、豪首相を「無礼」と非難 中国人の方が善良とも*****

フィジーのボレンゲ・バイニマラマ首相は16日、南太平洋地域の独立国・自治政府が加盟する「太平洋諸島フォーラム」の首脳会議の閉幕を受けて、オーストラリアのスコット・モリソン首相を「とても無礼」と非難し、より友好的な外交を持ちかけているとして中国を持ち上げた。

 

ツバルで開催されたPIF首脳会議は、気候変動で存亡の危機にひんする島しょ国側と、石炭業界に好意的な豪政府が反目。15日の閉幕後、バイニマラマ首相はモリソン首相の高圧的な手法を批判した。

 

バイニマラマ首相は16日夜、英紙ガーディアンの取材に対し、「(モリソン)首相はとても無礼で恩着せがましかった。(両国の)関係にとって良くない」と語った。

 

米ニューヨークで来月開かれる国連気候行動サミットを控える中、PIFは気候変動の矢面に立つ国々の側から、行動を迫る国際的なメッセージを表明することを目指していた。

 

だが、島しょ諸国の首脳たちによると、涙が流れ、怒号が飛び交う有様となった12時間にわたる協議の末、モリソン氏の強い要求で首脳会議の共同コミュニケ(合意文書)が骨抜きにされ、期待に遠く及ばない代物となった。

 

モリソン首相は、再生可能エネルギーおよび気候変動からの回復力強化への投資、さらには太平洋地域で影響力を高める中国への対抗策の一環として、太平洋の島しょ諸国に5億オーストラリア・ドル(約360億円)の支援を約束。

 

だが、他の首脳らは豪政府に対し、二酸化炭素の排出削減と、利益をもたらす石炭産業の抑制を要求した。

 

バイニマラマ首相は、「(モリソン首相が)ある段階で、他の首脳らによって窮地に立たされたようになり、オーストラリアが太平洋諸国に与えてきた金額がどれほどのものになるかと言い出した」「とても無礼だ」と語った。

 

バイニマラマ首相はさらに、オーストラリアと中国の間に、太平洋地域をめぐる「競争は存在しない」とした上で、中国政府の外交アプローチを称賛。「中国政府はこれだけの金額を太平洋諸国に与えてきたと世界に触れ回ったりしない。中国人は善良で、確実にモリソン氏より善いと言える」と主張した。 【8月18日 AFP】

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オーストラリアからすれば、これまでどれだけ支援してきか・・・という思いがあるのは当然でもありますが、気候変動の問題は太平洋諸国にとっては国が海面下に水没するかも・・・という、譲れない問題でもあります。

まあ、とかくカネの話は「それを言っちゃ、おしまいよ」といった面も。

 

水没の危機にあるツバル首相の怒りはフィジー首相以上に激しいものがあります。

 

****ツバル首相、豪州を新植民地主義的と批判 地域機構からの追放求める****

南太平洋地域の独立国・自治政府で構成する「太平洋諸島フォーラム」の有力加盟国の首脳が、オーストラリア政府の「新植民地主義的」な姿勢、および気候変動に対する早急な行動を同国が拒絶していることを批判し、同国はPIFから追放されるべきだと訴えた。

 

先週ツバルで開かれたPIF首脳会議は、気候変動で存亡の危機にひんする島しょ国側と、石炭業界に好意的な豪政府が反目。

 

米ニューヨークで来月開かれる国連気候行動サミットを控え、気候変動をめぐり世界に向けて行動を呼び掛けるメッセージを発しようとしていた参加国の首脳らを黙らせたとして、オーストラリアは批判を浴びている。

 

マイケル・マコーマック豪副首相は、島しょ国の懸念を一蹴し、「こっちに来て果物を収穫して」生計を立てれば良いとの侮辱を口にした。

 

ツバルのエネレ・ソポアンガ首相は、マコーマック氏の発言を「無礼で侮辱的」だとし、豪州にPIFの加盟国資格に疑問を投げかけた。

 

ソポアンガ首相はニュージーランド国営のラジオ・ニュージーランドの取材に対し、「彼ら(豪政府)はパシフィックウエーの精神が分かっていない。私は彼らが何も理解していないと思っている」と語り、「もしそうならば、彼らがPIFの首脳会議にとどまる意味は何だというのだ?私にはいかなる意義も見いだせない」と続けた。

 

同首相は今回の気候変動をめぐるPIFでの騒動について、「宗主国」が議題を決めていた数十年前の地域会合を思い起こさせたと指摘。「彼らが話したことに、この新植民地主義的な姿勢の反映および表明が見て取れる」と語った。

 

これに先立ち、フィジーのボレンゲ・バイニマラマ首相も先週末、スコット・モリソン豪首相を「とても無礼」と非難し、より友好的な外交を持ちかけているとして中国を持ち上げていた。

 

太平洋の島しょ国は、豪政府から毎年合計約14億豪ドル(約1010億円)の支援を受け取っている一方、両者の関係は複雑だ。

 

島しょ国側は寛大な支援を受けているにもかかわらず、豪政府当局者が「自分たちの裏庭」と呼ぶなど、太平洋地域に対するオーストラリアの姿勢にたびたびいら立ちを見せている。 【8月19日 AFP】

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オーストラリアが難民認定希望者をパプアニューギニアなどに放置している問題でも、パプアニューギニア側にはオーストラリアに都合よく利用されているという感があるようです。

 

****パプア首相、豪に難民認定希望者引き受けの期限求める 施設では自殺未遂頻発****

パプアニューギニアのジェームズ・マラペ首相は19日、祖国を逃れてオーストラリアにたどり着いた後、パプアニューギニアのマヌス島に数年にわたり留め置かれている難民認定希望者数百人について、再定住の期限を定めるようオーストラリア側に求めた。同首相が豪公共放送ABCに述べた。(中略)

 

マラペ氏はABCに対し、「われわれが相手にしているのは人間だ。彼らの将来について真剣に考えることなく、彼らを不安定な状態のまま放置しておけない」と述べた。(後略)【7月19日 AFP】

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オーストラリアも太平洋諸国の声に真摯に向き合わないと、ますます中国へ・・・・ということにもなりかねません。

 

【中国の台頭とアメリカの衰退・自国中心主義 オーストラリアには核武装論も】

オーストラリアは、これまで安全保障はアメリカとの同盟に頼る一方で、経済的には鉱物資源輸出などで中国への依存を強めるという形で、両者とのバランスをとってきましたが、そうした対応がいつまで続くのかという疑問もあるようです。

 

****核武装論も浮上、米中のはざまで国防めぐる議論続くオーストラリア****

同盟関係を必ずしも重視しない姿勢の米国大統領と、好戦姿勢を強める中国との両にらみの中、オーストラリアの軍事戦略家たちは独自の核抑止力の開発を検討する必要性について慎重に議論を進めている。

 

長年、オーストラリアは国防に関して懸念すべきことはあまりなかった。米国との100年に及ぶ同盟関係は確実な安全保障を、同時に中国への鉱物資源の輸出は不況知らずの28年を国内にもたらした。

 

しかし、ドナルド・トランプ米大統領の同盟関係に対する配慮が限定的である一方、中国の習近平国家主席は太平洋地域における自国の優位性を追求しており、オーストラリアの安全保障を構成する二つの柱は不確かなものとなっている。

 

長らくオーストラリアの国防について再考を求めてきた軍事戦略家のマルコム・デービス氏は、オーストラリアの戦略的地位について「軍事戦略の辺境どころか、オーストラリアは今まさに最前線国となっている」と指摘する。

 

これまでのところ豪政府は慎重な対応を見せている。米国との同盟関係を維持しつつ、同時に経済大国として台頭する中国との貿易関係も続けている。

 

しかし、首相補佐官を長く務め、豪政府の軍事戦略ブレーンの第一人者としても知られるヒュー・ホワイト氏は、そうしたどっち付かずな態度をそろそろ改める時期だと考えている。

 

戦略的自立、国益、戦力といった難解な議論が交わされる中、ホワイト氏は今月出版された著書「How to Defend Australia(いかにオーストラリアを防衛するか)」において、あるシンプルな問いを投げ掛け、激論に火を付けた。その問いとは「核兵器の保有」だ。

 

オーストラリア国立大学で戦略研究の教授も務めるホワイト氏は、核兵器の保有に賛成も反対もしていないものの、議論は避けられないものになりつつあるとしている。

 

ホワイト氏は「アジアにおける大きな戦略的転換」という言葉を用いつつ、オーストラリアの国防にとって「核兵器が意味のないもの、という考えはもはや真偽不明だ」と指摘し、「新しいアジアにおいて核兵器を諦めるという戦略的コストは、これまでよりずっと高くつく可能性もある」と主張する。

 

ただ、たとえ限定的な核抑止力の開発であってもオーストラリアには甚大な経済的、政治的、外交的、社会的負担がのしかかり、核拡散防止条約からの脱退や隣国との関係悪化も強いられることになる。

 

しかし広大な大陸国であるオーストラリアにとって、限られた人口と通常兵器で自国を防衛することは極めて困難であるかもしれない。

 

ホワイト氏はまた、米国という確固たる保証がなかったら、通常の戦争でオーストラリアは中国からのささいな核攻撃の脅しでも屈服させられかねないと指摘する。(中略)

 

だが一方で、ホワイト氏の主張は費用面で実現不可能な上、非現実的で無用なものだと批判する向きもある。豪シンクタンク、ローウィー研究所のサム・ロゲビーン氏は、ホワイト氏の著書の書評において「控えめに言ってもオーストラリアの防衛政策に関する超党派の政治的コンセンサスは、ホワイト氏が取る立場とは程遠い」と指摘する。

 

それでもロゲビーン氏は、中国の台頭と米国の衰退というホワイト氏の見解は「冷静な分析に基づいている」とし、自身にとっても「説得力のあるもの」だと考えている。

 

誰もが同じような考えにあるわけではないが、ホワイト氏の主張がまともに受け止められているという事実こそ、世界におけるオーストラリアの立ち位置に関する懸念が高まっていることの証しとなっている。 【7月15日 AFP】

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オーストラリア  中国との関係悪化が続く中で、国内総選挙で重みをもつ華人票の行方

2019-05-13 22:08:11 | オセアニア

(華人有権者に中国語で話す野党・労働党のジェニファー・ヤン候補(左から3人目)【513日 朝日】)

 

【一触即発のイラン近海でサウジ・UAE船舶への破壊工作?】

今日の話題に入る前に、昨日とりあげたイラン・アメリカをめぐる緊張に関連する“奇妙な”“きな臭い”ニュースが今日報じられていますので、その件だけ少し。

 

****サウジ石油タンカー2隻、UAE沖で「妨害行為」受け損傷****

サウジアラビアの石油タンカー2隻が、アラブ首長国連邦沖で「妨害行為」を受けて損傷したと、国営サウジ通信が13日、エネルギー相の話として報じた。

 

SPAによると、ハリド・ビン・アブドルアジズ・ファリハエネルギー産業鉱物資源相が、「サウジの石油タンカー2隻が、アラビア湾(ペルシャ湾)を横断中にUAEの排他的経済水域内のフジャイラ首長国沖で妨害行為の標的となった」と述べたという。

 

UAE政府は前日12日にも、船籍の異なる商船4隻がフジャイラ沖で妨害行為の標的になったと発表していた。

 

ファリハ氏は、妨害行為による死傷者はおらず、石油の流出もないが、「2隻の船体が大きく損傷した」と述べた。うち1隻は米市場向けの原油を積み込むために、サウジの海上石油ターミナルに向かっていたとされる。

 

UAEは行為主体には言及していないものの、「商船や民間船への妨害行為に及び、乗客乗員の安全と生命を脅かすのは深刻な事態だ」と警告している。

 

同域では、「イランの脅威」があると訴える米国が、複数のB52戦略爆撃機を配置するなど、軍事的プレゼンスを拡大してきており、両国間の緊張が高まっている。

 

先週にはイランが、2015年に主要国との間で締結し、昨年米国が離脱した核合意の一部を履行しないと発表。その2日後に米国防総省はイランの脅威を理由に、輸送揚陸艦と地対空ミサイルシステム「パトリオット」を派遣すると明らかにした。 【513日 AFP】

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イラン側の動向については“イラン外務省の報道官は、12日に起きたサウジの石油タンカーへの攻撃への懸念を示し、捜査を求めた。イラン学生通信(ISNA)によると、同報道官は、こうした事件は海上輸送の安全にマイナスの影響を及ぼしていると指摘し、地域を不安定にするような策略に対して警戒するよう近隣諸国に伝えた。”【513日 ロイター】とのことで、関与を否定しています。

 

サウジ、UAE両政府とも、誰に襲われたのかという肝心の点については言及していません。

 

一体何が起きたのか?(あるいは起きていないのか?) 皆目わかりません。

わかりませんが、アメリカが原子力空母や戦略爆撃機、輸送揚陸艦、「パトリオット」を派遣するなど、一触即発の地域での話ですから「わからない」では済まされない話でもあります。

 

イランの革命防衛隊などの反米強硬派が動いたのか? 

“イラン国内では米との対決姿勢を強める保守強硬派が勢いを増しているようだ。イランのメディアによると、同国の裁判所は12日までに、米との間で「ハイレベルの取り組み」が必要だ−などと対米交渉を促した改革派の週刊誌「セダ」の発行禁止を命令した。”【513日 産経】といった動きもあります。

 

あるいは、どこかの国が事を起こすために謀略的な情報を流しているのか・・・。

 

サウジアラビアも、カショギ氏殺害事件に見るように、イラン以上に人権とか民主主義とは縁遠い国です。

アメリカ大統領は周囲の意見を聞くことなく、国内支持層受けしか考えず、後先考えず直感で行動し、後でなんとでも説明するような人物です。

 

昨日ブログでも触れたような“第二のトンキン湾事件”のようなことがなければいいのですが。

 

【国際政治的には中国との対立が続くオーストラリア】

でもって、今日はオーストラリアの話。

 

経済的にはオーストラリアは日本同様、あるいは日本以上に中国に“依存”する関係にあります。

 

“中国は2000年代から、鉄鉱石や石炭などへの需要で資源ブームをけん引し、豪経済の成長を下支えしてきた。2000年に1453億豪ドル(約112千億円)だった豪州のモノとサービスの輸出は17年には3866億豪ドルまで拡大。中国への輸出は68億豪ドルから1159億豪ドルと17倍に跳ね上がり、今や輸出の3割が中国向けだ。”【17日 日経】

 

(余談になりますが、“3月分の景気動向指数の基調判断について、内閣府は13日、これまでの「下方への局面変化」から「悪化」に引き下げた。景気が後退している可能性がより高いことを示しており、「悪化」の判断は2013年1月以来、6年2カ月ぶり。中国経済の減速が大きく影響した。”【513日 朝日】ということで、日本やオーストラリアにとって、米中間の対立・中国経済減速は大きな影響があります。経済だけでなく、消費税引き上げや衆参同時選挙など政治的アジェンダにも)

 

そうした中国との強い経済的関係の一方で、政治的には昨年ぐらいから急速に悪化・対立が目立っています。

 

****豪中関係、急速な悪化 ****
豪で規制法案、中国反発「貿易面の影響も」

 

オーストラリアと中国の関係悪化が深刻だ。豪州にとって中国は最大の貿易相手国だが、野党議員のスキャンダルなどをきっかけに反中感情が噴出。ターンブル政権は投資や政治献金を通じて影響力を広げる中国の動きを抑え込む対策を打ち出す。

 

中国側は反発しており、経済的な報復措置に訴える懸念が出ている。21日の外相会談でも沈静化の兆しは見えなかった。(中略)

 

豪州は6月末までに中国の影響力排除を念頭にした「重要インフラ保安法」を施行する。港湾やガス、電力への海外からの投資について「安全保障上のリスクがある」とみなせば、担当相がリスク軽減措置命令を出せるとの内容だ。3月末の法案審議はわずか45分で、野党も目立った反対意見を出さなかった。

 

昨年末には外国団体からの政治献金を禁止する改正選挙法案や、公職経験者が海外の団体に雇用された場合に公表を義務づける「外国影響力透明化法案」を議会に提出した。いずれも豪州での中国の影響力拡大を抑える意図が色濃い。

 

当初は親中派と見られていたターンブル首相が態度を変えたのは2017年後半だ。野党議員が中国人から資金援助をうけ、南シナ海問題で中国寄りの発言をしていたことが判明した。「中国による内政干渉」と豪州世論が猛反発したのがきっかけとなった。

 

ターンブル氏は「中国人民は立ち上がった」という毛沢東の言葉をもじり「オーストラリア人民は立ち上がった」とまで発言。1年以内にある総選挙をにらみ国内世論への配慮もにじむ。

 

一方、中国の成競業・駐豪大使は4月、豪メディアの取材で「昨年後半から中国に無責任かつ否定的な発言が目立つようになった」とターンブル政権を批判。「(貿易で)望ましくない影響が出るかもしれない」と豪州産品への輸入規制を示唆した。関連は不明だが豪ワイン最大手のトレジャリー・ワイン・エステーツは5月、中国向け輸出の一部に手続きの遅れが出ていると発表した。

 

オーストラリアの対中警戒は長年くすぶり続けている問題である。16年には米軍が巡回駐留する北部の要衝、ダーウィンの港を長期賃借する中国企業「嵐橋集団」の顧問に豪元閣僚が就いたことが発覚。中国からの投資マネーが豪州の近年の住宅価格高騰の一因ともされ、世論の硬化に拍車をかける。

 

ただ豪産業界からは緊張緩和を求める声が出ている。豪鉄鉱石大手、フォーテスキュー・メタルズ・グループのアンドリュー・フォレスト会長は「分断や狂信を招き、尊敬を失う行為」と政府を批判した。5月中旬には貿易関係への悪影響回避をめぐり、ターンブル氏が年内に中国を訪問するとの報道も出た。

 

豪州は米国との関係もギクシャクしたままだ。ターンブル氏は17年初め、最初の電話協議でトランプ米大統領と決裂。5月の首脳会談でトランプ氏は「(決裂は)偽ニュース」と良好な関係を演出したが、会談に大幅に遅刻し「豪州を冷遇」との報道も出た。中国との摩擦に加え、米国との間に吹くすきま風も懸念となっている。【2018522日 日経】

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モリソン首相に代わった現在でも、南シナ海問題や米中間の5G・ファーウェイをめぐる対立などでオーストラリアはアメリカに与する形で中国との対立が続いています。

 

****中国、豪からの石炭輸入禁止 両国関係の悪化背景か ****

中国の税関当局が東北部にある遼寧省大連など5つの港で、オーストラリアからの石炭輸入を無期限の禁止にしたことが明らかになった。ロイター通信が伝えた。

 

豪州にとって中国は石炭の主要な輸出先で、今回の措置は豪経済への一定の影響が避けられそうにない。(中略)

 

豪政府は中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)に対し、次世代高速通信「5G」への参入を事実上禁止している。また、豪州での多額の政治献金で知られる中国人実業家の永住権を取り消すなど両国関係の緊張が高まっており、今回の措置は中国による豪政府への圧力との見方もある。(後略)【221日 日経】

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****豪政府、中国人富豪の居住権剥奪 内政干渉対策に本腰****

オーストラリア政府が、中国による内政干渉に警戒を強めている。

 

経済交流の活発化を受け、豪州国内には中国から大勢のビジネスマンや留学生が流入したが、中国共産党がこれらの中国系住民を使い、政治的圧力を豪州に加え続けているためだ。モリソン政権は、中国を念頭に整備した反スパイ法なども使い、厳格な対応を粛々と進めている。

 

豪ABC放送(電子版)によれば、豪州政府が8日までに、同国内で事業を拡大しながら、巨額の政治献金を行っていた中国人の黄向墨氏の居住権を剥奪したと伝えた。中国共産党とつながって「内政干渉」を行い、スパイ活動の疑惑があったという。(中略)

 

豪州では、中国でのビジネス経験があり、「親中派」ともされたターンブル前首相が、黄氏ら国内の中国人実業家らによる内政干渉疑惑の持ち上がりを受け、対中強硬姿勢に転換。連邦議会は、外国からの政治献金を禁止する改正選挙法を可決させ、外国からのスパイ活動などを阻止するための法律も成立させた。

 

後継のモリソン首相も、ビジネスを名目にした中国によるスパイ活動の防止に向け、本腰を入れ始めた形だ。

 

豪州政府の一連の措置について、黄氏はメディアに対し「偏見に満ちた根拠のない臆測に基づいた措置だ」と批判している。【28日 産経】

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【国内総選挙で存在感を増す華人票の行方】

国際的な中国との関係という点では、上記のような緊張がありますが、一方で、「移民の国」オーストラリアは人口の5%ほどが華人という国です。

 

おりしも、オーストラリアは18日に総選挙が行われます。

 

****豪、6年ぶり政権交代の公算 18日総選挙、与党も追い上げ****

18日のオーストラリア総選挙まで1週間を切った。

 

最大野党労働党が優勢で、約6年ぶりの政権交代の公算が高まっている。

モリソン首相が率いる自由党主導の与党保守連合(自由党、国民党)も追い上げているが、政権奪還した2013年以降、自由党の内紛から首相が2回交代したことに有権者は冷ややかな目を向ける。

 

「強い経済を継続させる政策を持つ(保守連合)政権か、弱体化させるであろう労働党かの選択だ」。モリソン氏は現政権が昨年、若年層向けに10万以上の雇用を創出し、失業率も下がったとして経済運営の実績を強調するが、景気には減速感が出ている。【511日 共同】

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“景気には減速感が出ている”のも、恐らく米中対立・中国経済減速が大きく影響しているでしょう。

 

二大政党が得票を争う形になると、華人票の行方が存在感を増します。

 

****豪州、華人票を狙え 首相ら中国語で発信/華人対決の選挙区も 総選挙***

18日に投開票されるオーストラリアの総選挙で、各党が華人(中華系)の支持獲得に躍起になっている。

 

人口約2500万人の豪州で、華人は年々増えて現在約120万人。移民が多い大都市部では当落を左右する存在になっている。メルボルンでは「華人対決」の選挙区も現れた。

 

台湾系VS.香港系

8日朝、メルボルン東部の下院チズム選挙区。公民館でマージャンを楽しむ華人の高齢者たちの前に、最大野党・労働党のグループがやって来た。「政権を獲得したら、この地区に華人向けの高齢者福祉施設をつくる」という公約の発表の場にここを選んだのだ。

 

「華人の地域での貢献に感謝しています。華人の高齢者が母語に戻れる場所があるべきです」。チズム選挙区に立候補した労働党のジェニファー・ヤン氏(42)が党幹部の言葉を中国語に訳すと、華人のお年寄りが拍手をして喜んだ。ヤン氏は台湾出身。地元市議や市長をへて、今回は国政に挑んでいる。

 

労働党は日程を地元の中国語メディアに伝えており、報道陣にも華人が目立った。公約発表後も、ヤン氏は中国語であいさつを繰り返した。「私は華人の声をくみ取れる。同時にこの地域に長年住み、公衆衛生や教育など地域の問題を熟知している。選挙区民全員の代表になれます」

 

チズム選挙区の期日前投票所の前では、連日、「最後のお願い」をする女性がいる。与党・自由党から立候補した香港出身のグラディス・リウ氏(55)。8日昼も「私はグラディス。自由党の候補者です」と一人一人に声をかけていた。

 

チズム選挙区には9人が立候補しているが、事実上、ヤン氏とリウ氏の戦いになっている。両氏が参加した4月14日の公開討論会は、英語と中国語が飛び交う舌戦になった。

 

チズム選挙区には漢字で表記された店の看板が並ぶ。2016年の国勢調査によると、同選挙区の住民約16万4千人のうち華人は4万1千人で約2割を占める。ヤン氏かリウ氏のどちらが勝っても、豪州で初めて華人女性の下院議員が誕生することになる。リウ氏は「歴史的なこと」とその意義を強調する。

 

ヤン氏とリウ氏の接戦を選挙区の住民はどう見ているのか。中国・上海出身の新聞店主カトリーヌ・ルーさん(45)は「私たちの声を政治に伝えられる」と歓迎する。期日前投票に訪れた白人のグラハム・バウンドさん(70)は「2人とも豪州国民だ。アジア系が多い地区だから、彼らの代表が必要だ」と語った。

 

「竹の天井」破る?

豪州の16年の国勢調査によると、アジアや中東アフリカなどの「非欧州系」の人口は21%。だが、民間シンクタンク「パーキャピタ」によると、上下両院議員の非欧州系の割合(18年)は6%にすぎない。

 

豪州で「竹の天井」と呼ばれるアジア系の出世を阻む状況は政界にもあり、下院チズム選挙区はそこに風穴を開ける可能性があると期待されている。

 

豪州では欧州系が多数派を占める選挙区が大半で、非欧州系は各党の候補者選びで落とされるケースも目立つ。ただ、各党は候補者が欧州系の選挙区でも、非欧州系の主要グループである華人の支持獲得には全力を傾けている。接戦になれば、華人の得票が勝敗を決める可能性が高いからだ。

 

「私は莫里森(モリソン)。自由党党首です」。モリソン首相は今年2月から華人が使う無料通信アプリのWeChat(微信)で中国語での発信を始め、「多様な文化を受け入れる社会の推進」などの政策をアピールしている。チズム選挙区など華人が多い大都市部の選挙区をまわり、同党候補を応援している。

 

これに対抗し、労働党のショーテン党首も今年3月にWeChat上で質問を受け付け、中国語で回答した。また、今月1日には中国語が堪能な同党のラッド元首相が中国語で政策を訴える動画もWeChatに投稿した。

 

だが、政治家がWeChatを使うことについて、安全保障の専門家からは「WeChatは中国当局が厳しく管理しており、アカウントは監視されている可能性が高い」(豪マッコリー大のベン・シュリエ教授)と懸念する声も出ている。【513日 朝日】

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首相や野党党首が中国語で国内華人にアピールする・・・という、国際的な中国との関係とはまた別の世界が国内的にはあるようで、興味深く思われた次第です。

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