孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラン  中東情勢変化で影響力低下 核開発加速か トランプ政権の制裁強化で国内改革頓挫の懸念も

2025-01-10 22:36:30 | イラン

(全身を布で覆った女性(イラン・テヘラン)【12月17日 BBC】)

(ペゼシュキアン大統領(左側の両手を合わせた男性)らが描かれた看板の前を通り過ぎる女性たち(10月、テヘラン)【同上】)

【低下するイランの影響力】
イランが対イスラエルで支援してきたパレスチナ・ガザ地区のハマスに続いて、イランの子飼いと言えるレバノンのヒズボラも深刻な打撃を受け、更にはこれまでロシアとともに支えてきたシリア・アサド政権も崩壊・・・という激動の中東情勢にあって、「シーア派の弧」を誇ってきたイランは大きな痛手を被っています。

****アサド政権崩壊で「シーア派の弧」も崩れる イランに大打撃、レバノンへの供給に支障****
シリアのアサド政権崩壊は、中東にイスラム教シーア派のネックワークを構築してきたイランにとって大きな打撃となる。

イランからイラクをへてレバノンに至る「シーア派の弧」がシリアで途絶え、物資供給などが滞る恐れがあるからだ。イスラエルを取り巻く「包囲網」も弱体化する公算が大きく、イランの中東地域に対する影響力の低下は避けられない情勢だ。

イランからレバノンに送る物資や資金の供給に支障が出ると、イランが対イスラエル攻撃の前線拠点として支援してきたレバノンの民兵組織、ヒズボラの活動に影響すると考えられる。

ヒズボラは9月以降のイスラエルによる激しい攻撃で体力を奪われ、アサド政権の崩壊を阻止できなかった。支援が細れば組織の衰退に拍車がかかりそうだ。

イランやイラクで人口の多数派を占めるシーア派はレバノンでも人口の30%前後を占めており、存在感は小さくない。これに対し、「弧」を形成したシリアの事情は異なる。

シリアのイスラム教徒は全人口の90%近くを占めるが、うち70%以上はスンニ派でシーア派の影は薄い。親子2代で半世紀以上、独裁体制を維持したアサド親子も、人口の1割余しかいないイスラム教の一派、アラウィ派の出身だ。

アサド親子は少数派が多数派を支配する統治構造を安定維持する上からも、イランとの関係を深め、その庇護(ひご)を得てきた経緯がある。

例えば、イランで王政が崩壊した1979年のシーア派革命の際にも、他のアラブ諸国がイランからの「革命の輸出」を警戒した中で、シリアは真っ先にシーア派政権を承認した。

シリアの脱落に伴う「シーア派の弧」の弱体化は、「抵抗の枢軸」と称して連携してきたイラクやイエメンの親イラン民兵組織に対するイランの求心力にも影響しかねない。

イランは今年4月と10月、イスラエルと互いに本土を攻撃し合ったが、この間に各地の民兵組織と連動して対イスラエル攻撃を組織することはなく、それぞれの対応に任せる姿勢をみせた。米国やイスラエルの軍事攻撃の標的になるのを避ける狙いがあったとも指摘される。【12月9日 産経】
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アサド政権のあっけない崩壊には、イランも憤懣やるかたない様子。

****イラン外相、シリア軍批判 「やる気なし」で政権崩壊と不満****
ランのアラグチ外相は(12月)8日、シリア内戦で支援したアサド政権が急速に崩壊したことについて「シリア軍はやる気がなかった」と不満をぶちまけた。

「アサド大統領は正確に軍の能力を把握していなかった。アサド氏自身は軍の状況に動揺していた」とも付け加えた。国営イラン放送のインタビューで語った。

アラグチ氏は1日に訪問先のシリアの首都ダマスカスでアサド氏と会談している。

イラン外務省は8日、シリア社会のあらゆるグループが参加する国民対話を開始し、全シリア国民を代表する包括的な政府を樹立することが必要だとの声明を発表。シリアの将来に関する意思決定への他国の介入にも反対を表明した。【12月9日 共同】
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【弱体化したイランが核兵器開発を加速させる懸念】
ただ、イランの影響力低下で情勢が安定するかと言えば、イランのウラン生産は加速していると見られており、アメリカは弱体化したイランが核兵器を製造することを懸念していることを表明しています。

****イランのウラン生産加速、重大な懸念 交渉再開宣言と矛盾=関係筋****
西側諸国の外交筋は7日、イランが濃縮度を高めたウランの生産ペースを加速させていることは重大な懸念であり、同国が核問題を巡る交渉に戻るという宣言と矛盾していると述べた。

イラン外務省は同日、同国の核開発計画は引き続き国際原子力機関(IAEA)の監視下にあると述べた。

匿名を条件に語った西側外交筋は、濃縮度の加速は「信頼できる交渉に戻るというイランの宣言と矛盾している」とし、「これらの措置には信頼できる民生用の正当な理由がなく、逆に、イランがその決定を下した場合、軍事核計画を直接助長することにつながる可能性がある」と語った。

IAEAは6日、加盟国への報告書で、イランが濃縮度を60%に高めたウランの生産ペースを大幅に加速させていると明らかにした。

イラン外務省の報道官は7日、イランの核開発計画は核拡散防止条約およびその他の保障措置の枠組みの中で「完全に透明性のある方法によりIAEAの監督の下で」実施されていると述べた。イラン国営メディアによると、同報道官は「最近の活動もIAEAに提供された詳細な情報に基づいて実施されており、IAEAの継続的な監督下にある」と主張した。【12月9日 ロイター】
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****弱体化したイラン、核兵器製造する可能性=米大統領補佐官****
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は(12月)22日、バイデン政権は弱体化したイランが核兵器を製造することを懸念していると語った。トランプ次期政権のチームにもそのリスクについて伝えたという。

イランが支援するイスラム組織ハマスとレバノン拠点のイスラム教シーア派組織ヒズボラをイスラエルが攻撃し、イランと同盟関係にあったシリアのアサド政権が崩壊したことで、イランは影響力低下に見舞われている。

サリバン氏はCNNに対し、イランのミサイル工場や防空施設などへのイスラエルの攻撃でイランの通常軍事能力が低下したと発言。イラン国内で、今すぐ核兵器を持つべきだ、核ドクトリンを見直す必要があるかもしれないといった声が上がっても不思議ではないと語った。

イランは自国の核開発は平和的目的に基づくものと説明しているが、トランプ前政権が制裁緩和と引き換えにイランの核開発に制限を加えるという核合意から離脱して以来、イランはウラン濃縮を拡大している。

サリバン氏は、イランが核兵器を製造しないという約束を放棄するリスクがあると警告。「それは、私たちが今警戒しているリスクであり、私が個人的に次期政権チームに説明しているリスクだ」と述べ、米国の同盟国イスラエルとも相談したと語った。

来年1月20日に就任するトランプ次期大統領は、イランの石油産業への制裁を強化し、強硬なイラン政策に回帰する可能性がある。

サリバン氏は、イランの弱体化を考えれば、「トランプ氏は今度こそ、イランの核開発を長期的に抑制する核合意を実現できるかもしれない」と語った。【12月23日 ロイター】
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アメリカはイランが核兵器開発を進めれば、イランの核関連施設を攻撃する可能性も選択肢のひとつとしています。

****「バイデン政権がイラン核施設攻撃の可能性を議論」国家安全保障担当補佐官がバイデン大統領に対応策の選択肢として提示か 米ニュースサイト報道****
アメリカのバイデン政権がイランの核関連施設を攻撃する可能性について議論していたと、アメリカメディアが伝えました。

アメリカのニュースサイト「アクシオス」は2日、国家安全保障を担当するサリバン大統領補佐官がおよそ1か月前、イランが核兵器の開発を急速に進めた場合、アメリカとしてとりうる対応策についてバイデン大統領に説明したと伝えました。

その中では、イランの核関連施設をアメリカが攻撃する可能性も選択肢のひとつとして示されたということです。

バイデン氏とサリバン氏ら国家安全保障チームの議論の中では、▼バイデン氏は核関連施設への攻撃を承認しなかったほか、▼対応策について最終的な決定を下すこともなかったとしています。

また記事は、現在、ホワイトハウスの中で核関連施設の攻撃をめぐる活発な議論は行われていないとする関係者の話も伝えています。【1月3日 TBS NEWS WIG】
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【トランプ次期政権で予想される対イランの締め付け強化】
そうした核関連施設への攻撃まではいかなくても、かつて核合意から離脱したトランプ氏の復権で、イランは今以上に厳しい状況に置かれることが予想されます。

イランにしても、ロシアにしても、制裁措置に対しては一定に「適応」は示してはいるものの、そうは言っても・・・・ということで、現状でもイランは相当に苦労はしているようです。

****イラン、中国で貯蔵の原油2500万バレル回収へ=関係筋****
イランが、中国の港に貯蔵された2500万バレルの自国産原油の回収作業を進めていることが分かった。事情に詳しい両国の複数の関係者が明らかにした。当時のトランプ米大統領が科した制裁措置により、イラン産原油は2018年から6年間、中国の港に取り残された状態になっている。

アナリストは、今月大統領に復帰するトランプ氏がイラン産原油に対し再び制裁を強化するとみている。

中国は一方的な制裁措置を認めないとしており、近年はイランが輸出する原油の約90%を割安価格で購入。中国の製油業者は数十億ドル規模の経費を節約している。

ただ、原油が中国の港に取り残されている現状は、イランが中国相手でさえ原油の売却に苦心していることを示唆している。残された原油は、現在の為替レートに換算すると17億5000万ドル分に上る。

西側諸国はイラン産原油に対し厳しい制裁を科しているが、中国に売却されるイラン産原油の多くは他国産に偽装されている。

関係者によれば、港に取り残されている原油はトランプ氏がイラン産原油を制裁対象から一時除外したことで、イラン産として中国に輸送。その後再び制裁対象となったため、売却が不可能となり、貯蔵タンクに保管されたままになっているという。【1月9日 ロイター】
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【アメリカの強硬姿勢がイラン国内の反米保守強硬派を刺激し、国内改革が頓挫することも】
問題は、イランに対するアメリカ・トランプ次期政権の強硬姿勢が、イランを譲歩の方向に向かわせるのか、あるいは、アメリカへの反発が強まり、国内的に保守強硬派の台頭を招くのか・・・という問題です。

改革派のペゼシュキアン大統領の国内統治の状況に関しては情報が少ないですが、下記記事など見ると一定にその色合いを出してはいるようです。

****ヒジャブ着用の厳格化法「施行できず」イラン大統領が最高指導者に伝達 現地メディア****
イランで頭髪を覆う「ヒジャブ」の着用を巡り、罰則を強化した法律について、大統領が「施行できない」と最高指導者・ハメネイ師に伝えたと改革派メディアが報じました。

イランでは「ヒジャブ」の着用などを巡り、罰金や懲役刑を厳しくした新しい法律が13日に施行される予定でしたが、国際社会などの反発を受けて14日に施行延期が発表されました。

改革派メディアによりますと、イランのペゼシュキアン大統領は最高指導者・ハメネイ師に「ヒジャブを巡る新法は国の体制に悪影響を及ぼすので施行できない」と伝えたということです。

ペゼシュキアン大統領は7月の大統領選挙期間中に新法への反対を表明していました。

ペゼシュキアン大統領はヒジャブ着用を義務付けるために警察がパトロールすることに反対するなど、改革派として知られています。

国際人権団体のアムネスティインターナショナルは、この新法について「女性などが差別や虐待を受けてしまう」とイラン当局に施行の中止を求めています。

ヒジャブを巡っては、イラン出身の女性歌手パラスツー・アフマディさんがヒジャブを着用せずにオンラインライブを配信したとして14日に一時拘束されました。【12月16日 テレ朝news】
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しかし対米保守強硬派が勢いを増すと、上記のような改革路線の実行は困難となります。対米関係の悪化から国内改革が頓挫するというのはこれまでも見られたことですが、トランプ次期政権のもとでそうした現象が再現することを懸念しています。
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