孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラクからエジプトへ拡大  キリスト教徒を対象としたテロ攻撃

2011-01-02 19:44:50 | 国際情勢

(クリスマスに教会で祈るエジプト・カイロのコプト教徒 “”より By Directions to Orthodoxy
http://www.flickr.com/photos/directionstoorthodoxy/4261385402/ )

ISI:「イラクからキリスト教徒を追い出す」】
イラクでは昨年10月末にキリスト教会襲撃事件があり多数の犠牲者が出ていますが、こうしたイスラム過激派による少数派キリスト教徒への迫害によって国外に逃れるキリスト教徒が増加しています。

****イラク:キリスト教徒数千人脱出 相次ぐ襲撃で****
イラクのキリスト教徒が宗教的理由で迫害を受け、居住地から脱出せざるをえないケースが目立っている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、10月末に50人以上が死亡したバグダッドの教会襲撃事件後にキリスト教徒の脱出行が増加。治安が比較的安定している北部クルド人自治区や隣国のシリア、ヨルダンに数千人が逃れたという。

10月の事件は国際テロ組織アルカイダ系の「イラク・イスラム国(ISI)」が犯行声明を出した。ISIは今月21日にもキリスト教徒攻撃を続けるという声明を発表。これを受け、クリスマスのミサを中止する教会も出た。
イラクでは、少数派宗教の信徒が暴力の標的になるケースが続いている。キリスト教徒に対しては、バグダッド以外でも中部ディヤラ、北部サラハディン、ニネベの各県などで攻撃事件の報告が目立っている。03年のイラク戦争前は総人口の約3%がキリスト教徒だったが、相次ぐ襲撃で脱出する人が多く今では1%を割り込んだという推計もある。

しかし、最近は欧州からの難民送還も目立つようになってきた。今月15日にはスウェーデンがバグダッド出身のキリスト教徒5人を強制送還したが、うち1人は07年に民兵に殺害を警告され出国していたという。こうした事態を受けて、UNHCRは「危険地域からの脱出者は送還すべきでない」として、各国に送還を見合わせるよう要請している。【10年12月25日 毎日】
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イスラム過激派にとって、民兵組織など自衛手段を持たないキリスト教徒は容易に攻撃できて、「戦果」を誇示できる格好の対象となっています。
また、イラク新政権樹立が難航し、政府による十分な対策が講じられてこなかったことも背景にあると指摘されています。

****アルカーイダ系がテロ扇動、国外移住加速も イラク、キリスト教徒受難****
(「イラク・イスラム国(ISI)」の「すべてのキリスト教徒はジハード(聖戦)の正当な標的だ」とする)声明を受け、イラクに信者が多いシリア正教会のダウード大主教は7日、活動拠点の英国で、「(キリスト教徒は)殺される前に国を出るべきだ」と呼びかけ、欧州各国にも協力を要請。こうした声に応じたフランス政府は、治療のために事件の負傷者35人を緊急に受け入れた。

アルカーイダと対立するイスラム教シーア派のマリキ・イラク首相は9日、現場の教会を訪問して事件を非難し、キリスト教との融和姿勢をアピールした。
ただ、イラク政府は現在のところキリスト教徒保護のための十分な対策を講じられていない。治安部隊の養成が進んでいない上、3月の国民議会選後の新政権樹立交渉が長期化したことも対策の遅れを招いた。
イラクのキリスト教徒は民兵組織など自衛手段も持っておらず、声明で「(イラクから)キリスト教徒を追い出す」と宣言しているイラク・イスラム国にとっては容易に攻撃できる対象だ。キリスト教徒の国外避難がさらに増えれば、それを「戦果」として強調し勢いを増す懸念もある。【10年11月17日 産経】
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矛先はエジプト・コプト教徒へも
国際テロ組織アルカイダ系武装勢力はキリスト教徒への攻撃を扇動、その矛先はエジプトのキリスト教の一派コプト教会にも向けられています。
新年早々、エジプト・アレキサンドリアで、キリスト教の一派コプト教徒を狙った自爆テロが起き、少なくとも21人が死亡しています。

****エジプト:キリスト教会前で爆発 21人死亡、43人負傷*****
エジプト北部アレキサンドリアで1日未明、キリスト教の一派コプト教の教会前で車が爆発し、エジプト国営通信などによると信徒ら少なくとも21人が死亡、43人が負傷した。使用された爆薬はエジプト製で、治安当局は自爆テロの可能性が高いとみている。事件前、イラクのアルカイダ系組織「イラク・イスラム国(ISI)」がコプト教会の攻撃を予告する声明を出していた。

爆発は午前0時半ごろ、新年のミサのため約1000人が集まっていたアレキサンドリアのクッデスィーン(聖人)教会前で発生。ミサ終了後に外に出てきた教徒らが巻き込まれた。車の下か中に置かれた爆弾が爆発したものとみられる。
保健省幹部は国営テレビに、死者が21人に達したと明らかにし、「アルカイダがエジプトの教会を攻撃すると脅していた」と述べた。エジプト大統領府は声明で爆発を「テロ攻撃」と断定。ムバラク大統領はコプト教徒とイスラム教徒に対し「協力して国家の安全と安定を脅かす攻撃に対処しよう」と呼びかけた。
地元テレビは、同教会前に黒焦げになって転がった車の映像を放映した。現場周辺は警官ら多数が封鎖しているという。

目撃者がAP通信に語ったところでは、事件後、怒ったコプト教徒が警官と小競り合いになり、近くのモスクでイスラム教徒と衝突した。
エジプトのコプト教会に対しては、ISIが「イスラム教に改宗した女性を拘束している」と主張、解放しなければ攻撃すると警告していた。ISIは10月末にバグダッドでキリスト教会襲撃事件を起こし、50人以上が死亡している。
エジプトは人口の約1割がコプト教徒とされ、イスラム教徒との衝突が起きていた。昨年1月7日には乱射事件でコプト教徒7人が死亡、イスラム教徒の男3人が逮捕された。首都カイロでも11月に教会の建設をめぐり暴動騒ぎが起きている。【1月1日 毎日】
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エジプト内務省は、犯行の手口から「外国勢力」が関与した可能性があると指摘、事前にコプト教会攻撃を言明していた国際テロ組織「アルカイダ」関係者の犯行との見方を示しています。

上記記事にある“ISIが「イスラム教に改宗した女性を拘束している」と主張”している件については、イスラム教スンニ派最高権威のアズハル機構が昨年9月、改宗はデマだと示唆し、エジプト国内ではいったん幕引きが図られましたが、イスラム過激派はこれを利用してコプト教徒への攻撃を正当化しようとしています。

****アルカーイダ系がテロ扇動、他国の問題に干渉****
イラクの教会襲撃は、コプト教徒が人口の約1割を占めるとされるエジプトにも波紋を広げた。イラク・イスラム国が犯行声明で、襲撃は「コプトに捕らわれたイスラム教徒の女性を救う」のが目的だと言明、コプト教徒への攻撃を予告したためだ。
ここで言及された女性は、エジプトで今夏、失踪(しっそう)したコプト教司祭の妻、カメリア・シェハタさんのことだ。失踪は家庭問題が原因だとされているが、一部のイスラム教指導者が「彼女がイスラムに改宗したのでコプトに拉致された」と主張。イスラム教徒による抗議デモが頻発した経緯がある。
エジプトでは過去にも同様の改宗騒ぎがあり、抗議デモが繰り返されている。宗教問題に詳しいエジプト人ジャーナリストは、当局はそうしたデモを一定の範囲内で容認し、「一部の国民の反コプト感情のはけ口として利用してきた」側面もあると指摘する。

シェハタさん問題では結局、イスラム教スンニ派最高権威のアズハル機構が9月、改宗はデマだと示唆し、エジプト国内ではいったん幕引きが図られた。しかし、犯行声明を機に、イスラム過激派系サイトでは「コプトを処刑しろ」などの書き込みが続出。実際のテロの可能性は低いとみられるものの、当局は教会側への配慮などから反コプト・デモを当面、禁止した。
政府系シンクタンク、アハラム戦略研究所のイスラム運動専門家、アムル・ショバキ氏は「声明は、他国の問題に干渉し社会不安をあおる戦術だ」と分析。「エジプトでは政権への信頼低下から宗教回帰が進み、両宗教の関係が悪化している。テロ組織がそれを利用しようとしているのは間違いない」と話している。【10年11月17日 産経】
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不寛容の時代
「9.11」、イラク・アフガニスタンでの戦争以来、アメリカ国内においては「嫌イスラム」の風潮がひろがり、イスラム過激派はイラク・アフガニスタンから各地に拡大し欧米社会への敵対行動を更に過激化させています。
一方、欧州では「嫌イスラム」の風潮に移民増加が重なり、排外主義的な動きもつよまっています。
そして、今日取り上げたように、中東では少数派キリスト教徒わ対象としたテロの増加があります。
今年も“「不寛容」の時代”が一層強まることが懸念されます。


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