孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  「民政移管」新国会が月末召集 期待される民主化勢力の再構築

2011-01-11 21:00:14 | 国際情勢

(彼女に託された国民の大きな期待に応えるために、議会内民主化勢力との連携など、現実的な対応が望まれます。 “flickr”より By newsweekpakistan http://www.flickr.com/photos/57294420@N03/5279461875/

【“一応の”民政移管
ミャンマーでは、昨年11月の総選挙を受けて、新国会が今月31日に開催され、大統領が選出される運びとなっています。

****ミャンマー:国会を31日に招集 2月に新政権が発足*****
ミャンマー軍事政権は10日、昨年11月の総選挙結果に基づいて発足する新国会を31日に招集すると国営放送を通じて発表した。国会で新大統領が選ばれ、2月にも新たな政権が発足する見通し。同国は、1962年の軍事クーデター以来49年ぶりに軍事独裁支配を終結させ、一応の「民政移管」を果たす。

新国会の定数は上院が224、下院が440。憲法の規定でうち75%が総選挙の当選者、残る25%は軍が推薦した議員に割り当てられる。上下院の民選枠議員がそれぞれ1人、両院の軍推薦枠議員が1人の計3人の副大統領を選出し、このうち1人が大統領に就任する。
総選挙では軍事政権翼賛政党「連邦団結発展党」が民選枠の8割近くを獲得。軍推薦枠と合わせると圧倒的多数を軍部寄りの議員が占め、大統領と副大統領2人はいずれも軍部出身者か、軍の強い影響下にある人物が選ばれるのは確実だ。【1月10日 毎日】
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これまでも再三取り上げてきたように、また上記記事にもあるように国会議員の25%は軍が推薦した議員に割り当てられるなど、実質的に軍部支配を維持した形での、“一応の”「民政移管」ではあります。

軍部は民政移管を控えて、基盤強化のため徴兵制度を導入しました。
***ミャンマー、徴兵制を導入 民政移管前に軍基盤強化****
ミャンマー軍事政権が全国民に兵役の義務を課す徴兵制を新たに導入したことが7日、分かった。ミャンマー軍はこれまで志願兵制だったが、昨年11月の総選挙を受けて近く民政に移管されることから、徴兵制の導入は民政移管前に軍の基盤強化を図る狙いがあるとみられる。同国からの情報によると、兵役の義務が課せられるのは男性が18歳から35歳まで、女性は18歳から27歳まで。【1月7日 共同】
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一部与党議員も盗聴計画対象
一方、軍事政権による大規模な携帯盗聴計画も報じられています。
****ミャンマー:軍事政権が携帯盗聴計画 反政権系誌が報道*****
3000人の会話を監視せよ--。反ミャンマー軍事政権系誌「イラワディ」(タイ拠点・電子版)は5日、軍事政権が国内の政治家やビジネスマン、報道関係者などの携帯電話の盗聴計画を進めていると報じた。昨年11月の総選挙に政権翼賛政党「連邦団結発展党」(USDP)から立候補し当選した財界関係者も含まれており、軍部の「身内」以外への不信感も浮き彫りにしている。
同誌は国営電話会社の関係者の話として伝えた。

政権の情報機関が同社に示した盗聴対象リストには、民主化運動指導者アウンサンスーチーさん率いる「国民民主連盟」関係者や、与野党の総選挙当選者、映画監督や人気歌手、国内メディアの幹部や海外メディア現地記者など3000人以上の名前が記されているという。
関係者によると、ミャンマーでは過去にも同様の携帯電話の盗聴がなされていたが、政権の情報機関を率いたキンニュン首相(当時)が失脚した04年ごろ中断されたという。関係者は同誌に「当時は携帯電話の数も少なく盗聴は容易だった。今は数が多く、対象者はいつでも新しい番号に替えることもできる」と話し、盗聴計画の成功に疑問を呈した。【1月5日 毎日】
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上記記事を期待を込めて解釈すれば、与党「連邦団結発展党」(USDP)の議員であっても、100%軍部の意向に沿わない者もあいるかも・・・ということにもなるでしょうか。
更に言えば、軍部出身者であっても、軍服を着ていた頃と、軍服を脱いで選挙を経て議員となったこれからとでは、異なる対応もあるのかも・・・・というのは期待のしすぎでしょうか。

【「国民民主勢力(NDF)」:和解・連携に向けてスー・チーさんと会談
実質的に軍部支配の「民政移管」で、どのように“民意”が反映されるのか注目されます。
民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんが率いる民主化最大勢力「国民民主連盟(NLD)」(総選挙不参加、解党)から分裂して11月の総選挙に参加した政党「国民民主勢力(NDF)」は、上下両院と地方議会あわせて16議席を獲得しています。

わずかながらでも民意を国政に反映させていくためには、こうした議会内の民主化勢力とスー・チーさんらの活動の連携・民主化勢力の再構築が是非とも必要です。
スーチーさんも、解放後の演説で民主化勢力再構築に尽力していく旨を表明しています。

両者は、年末の先月30日に初めての会談を行っています。
この日の会談では、「個人的な会談で、政治の話はしなかった。我々は今後も話し合いを続ける」(NDF幹部キン・マウン・スエ氏)とのことで、分裂の解消やNLD・NDF両党協力へ向けた具体的な協議には及ばなかった模様です。

****民主化勢力再構築へ一歩 スー・チーさん、NDF幹部と会談****
ミャンマーの民主化運動指導者、アウン・サン・スー・チーさんは30日、先の総選挙にあたってスー・チーさん率いる旧野党国民民主連盟(NLD)から分かれて選挙に参加、16議席を獲得した国民民主勢力(NDF)の幹部と、解放後、初めて会談した。軍政主導の選挙への対応をめぐって分裂した民主化勢力の再構築に向けた第一歩になることが期待される。

会談はNDF側からの呼びかけを受け、NLDのティンウー副議長宅で、約1時間行われた。出席したNDF幹部のキン・マウン・スエ氏は「個人的な会談で、政治については話していない。また会うだろう」と語った。
NDFのタン・ニェイン議長は会談後、フランス通信(AFP)に対し、「(スー・チーさんは)われわれNDFの立場を理解している。そうでなければわれわれと会うことはなかった」と語り、会談が良い雰囲気で終わったことを強調した。同議長は、先の産経新聞とのインタビューで、同国の民主化実現のため、スー・チーさんに党の枠組みを超えて一緒に活動するよう働きかける考えを示していた。【12月31日 産経】
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【「彼女が現実の政治から離れている間に物事は大きく変わった」】
NLDから分裂し、スー・チーさんの指示に反して総選挙に参加した国民民主勢力(NDF)ですが、今後の活動のためには国民に大きな影響力を持つスー・チーさんとの協力が必要です。
キン・マウン・スウェ氏はこれまで「スー・チーさんの指示に従う」【12月30日 朝日】と発言しています。
昨年末のインタビューで、NDFのタン・ニェイン議長は、「彼ら(旧NLD)にその気があるなら、和解することはやぶさかではない」「彼女(スー・チーさん)の国への愛情、国民のために犠牲となることをいとわない決意と勇気には疑問の余地はない。」と連携に期待する発言していますが、一方で「彼女が現実の政治から離れている間に物事は大きく変わった。彼女がそれに気づき、われわれと一緒に民主運動を引っ張っていくことを期待している」「従来の野党のように、単に与党と対立するだけでなく、責任ある立場から国民の利益のために行動する」とも。

****ミャンマーNDF議長 民主化運動、スー・チーさんとの連携期待*****
■国会に足場「野党連合」
ミャンマーの野党、国民民主勢力(NDF)のタン・ニェイン議長は21日までに、産経新聞のインタビューに応じ、2月までに招集される新たな国会では、他の民主化勢力や民族政党との野党連合を結成し、国軍与党と対峙(たいじ)していく方針を明らかにした。また、民主化運動指導者のアウン・サン・スー・チーさんに対し、彼女が率いた旧国民民主連盟(NLD)の枠を超え、ともに民主化運動を進めることに期待を示した。

NDFは、選挙のボイコットをNLDが決めたことに反発、同議長や幹部のキン・マウン・スエ氏らが立ち上げた政党で、先の総選挙では、最大都市ヤンゴンを中心に16議席を獲得した。選管の最終発表はないが、国軍の代理政党とされる連邦団結発展党(USDP)は下院で79・6%にあたる259議席を確保したとされる。
今回の選挙結果について、同議長は「予想以上に少ない議席だが、NDFが政治的な目的を実現するための足場ができる。そこで民主勢力を統合し国民の困窮や必要なもの、望むことについて質問し、修正を求めていく」と述べた。
具体的には、野党のラカイン民族開発党、連合民主党、統一民主党、さらにモンやチン族の民族政党と国会内での協力を進める方針だ。同席したキン・マウン・スエ氏によると、野党共通の課題として、全政治犯の釈放や経済改革、健康・社会問題をとりあげていくことで一致したという。
議長はさらに「従来の野党のように、単に与党と対立するだけでなく、責任ある立場から国民の利益のために行動する」と語った。

一方、選挙参加をめぐる路線対立から分派した旧NLDとの関係について、同議長は「旧NLDが選挙をボイコットし、政党登録をしないと決めたのに対し、われわれは仮に法律が不公正でも、真の民主政党は戦うためには法に従い、存在すべきだと考えた。それが彼らとたもとを分かった理由だ。彼らにその気があるなら、和解することはやぶさかではない」と述べた。
同時にスー・チーさんについて議長は「彼女の国への愛情、国民のために犠牲となることをいとわない決意と勇気には疑問の余地はない。ただ、彼女が現実の政治から離れている間に物事は大きく変わった。彼女がそれに気づき、われわれと一緒に民主運動を引っ張っていくことを期待している」と述べた。【12月22日 産経】
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一方、スー・チーさんの側も、公的にはNLDが解党状態になっていますので、議会内のNDFとの共闘は不可欠でしょう。
これまでのいきさつ、わだかまりを捨てて、国民のための視点からの対応が望まれます。

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