孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

スーダン  南部独立を問う住民投票を9日から実施 西部ダルフールで高まる緊張

2011-01-05 22:01:47 | 国際情勢

(分離独立を熱烈に支持する南部住民 ただ、独立に向けた体制・準備が南部側で整っているのか、独立してやっていけるのか・・・と言えば、危ぶむ声もあるのも事実です。南部自治政府の独立後の責任は重大です。国の運営には熱狂ではなく地道な努力が求められます。
“flickr”より By Al Jazeera English http://www.flickr.com/photos/aljazeeraenglish/5323503164/ )

【「南北関係は当面、緊張をはらんだものになるだろう」】
実施が危ぶまれていたスーダン南部の分離独立の是非を問う住民投票が9日から始まるようです。
スーダンはアラブ系イスラム教徒中心の北部を基盤とする政府軍と、キリスト教徒や土着宗教信者などが多い南部の黒人系民族の反政府勢力の間で長く紛争が続き、その犠牲者は200万人とも言われています。
南北間の紛争は05年の包括和平合意で一応終息し、今回の南部独立を問う住民投票はその包括合意に定められているものです。住民投票が実施されれば、“分離独立”の結果がでると思われています。

当然ながら北部中心の・バシル大統領は南部独立には消極的ですが、南部に石油資源が存在することも影響しています。特に、南北境界付近に存在する油田地帯のアビエイ地区については、どちらに含まれるのか線引きも定かではありません。
なお、石油権益については“バシル氏にとって重要なのは北部で権力を維持することだ。南部には有力な油田があるが、パイプラインなど石油の輸出用設備はすべて北部にある。仮に油田すべてが南部のものになっても使用料などが入る。南部の石油権益をすべて失うことにはならない。”【10年4月28日 朝日】との現地識者の指摘もあります。

ダルフール紛争の責任を問われて国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているバシル大統領の欧米での評価は劣悪で、本当に南部独立を認める気があるのか懸念されています。
今朝のTVニュースによれば、バシル大統領は南部スーダン自治政府の首都ジュバを訪れ、「我々与党は統一を支持しているが、住民投票の結果が統一になろうが、独立になろうが、南部住民の意思を尊重する。もし分離独立とういうことになれば、それにともなう混乱の要素への対応の準備はできている。線引きが未確定のアビエイ地区などについては、話し合いで解決できると考えている・・・・」といった住民投票結果を尊重する主旨の発言をしていました。

****スーダン南部、9日から住民投票 独立濃厚も油田争い火種****
20年余に及ぶ内戦を終結に導いた2005年の包括和平合意に基づき、スーダン南部の分離独立の是非を問う住民投票が9日から始まる。独立賛成が反対を上回るのはほぼ確実で、アフリカで54番目の国家が誕生する公算が大きい。しかし、南部が石油の産地であることなどから、北部に拠点を置く中央政府は独立に必ずしも前向きでなく、対立の火種は消えていない。

「9日は偉大な日だ」
南部自治政府を主導するスーダン人民解放運動(SPLM)関係者からは早くも、独立を前提とした発言が相次いでいる。住民投票をめぐっては一時、事務作業の遅れなどから延期も取り沙汰されただけに、国連や関係各国にも一応の安堵(あんど)感が広がる。
しかし、専門家らの間では、今後の情勢は決して楽観できないとの見方が大勢を占める。
スーダンでは1983年、アラブ系イスラム教徒中心の北部の政府軍と、キリスト教徒などが多い南部の黒人系民族との間で第2次内戦が勃発、2005年の和平合意までに約200万人が死亡したとされる。
その際の激戦地の一つとなった中部の油田地帯・アビエについて、和平合意では南部住民投票と同時に、南北どちらに帰属するかを問う住民投票を行うとしていた。しかし、北への残留を主張するアラブ系遊牧部族ミッセリアを有権者に含めるか否かをめぐる南北の協議が難航、実施のめどは立っていない。
南北双方ともアビエの自領への組み入れを狙っており、「対立が続けば、北の支援を受けるミッセリアとSPLMが衝突し和平合意崩壊の導火線になりかねない」(スーダン人ジャーナリスト)との指摘もある。

スーダンのバシル大統領が昨年12月、南部独立が実現すれば、北部で施行されるイスラム法(シャリーア)を強化するとの考えを表明したことも懸念材料だ。北部に多く居住する非イスラム教徒からの反発は必至で、野党勢力は「SPLMの影響が強い地域が、南部への編入を主張し始める恐れがある」と、国のさらなる分裂を警告する。
こうした問題に加え、約20%が未画定の南北境界線や、南部に集中する石油資源からの収入の配分についても、今後、両当局間で話し合いが行われる。南部から武器が流入しているとの指摘もある西部ダルフール地方の反政府勢力と政府との紛争も、解決の糸口は見えていない。
スーダン問題に詳しい隣国エジプトの「アラブ・アフリカ研究所」のヘルミー・シャラウィ副所長は、情勢の変化を注視する必要があるとした上で、「南北関係は当面、緊張をはらんだものになるだろう」と予測している。【1月5日 産経】
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世界に忘れられたダルフール
南北間の問題とは別に、スーダンは西部ダルフールでの紛争も抱えています。
ダルフール紛争は昨年2月、政府と主要反政府勢力「正義と平等運動」(JEM)が和平実現に向けた枠組み合意に調印して停戦に入りましたが、5月にJEMが和平交渉を打ち切ってから戦闘はむしろ激化しているとも報じられています。

****スーダン 世界に忘れられたダルフールで続く悲劇*****
国連・アフリカ連合合同活動(UNAMID)の報告によると、スーダン西部ダルフール地方で5月に殺された犠牲者の数は約600人。07年に国連が介入して以降、最大の数字だが、なぜかあまり注目されていない。世界はダルフールヘの関心を失ったのか。
反政府組織「正義と平等運動」(JEM)は最近、政府軍の兵士35人を拘束した(6月9日に解放)。今年4月に行われた大統領選挙と総選挙を前に、政府とJEMの間では2月、和平に向けた枠組み合意が結ばれ、停戦が期待された。だが、5月にJEMが和平交渉を打ち切ってから戦闘はむしろ激化していると、英BBCは報道している。
人道危機は深刻で、「紛争地域への支援が圧倒的に不足している」と、国連の報告は警告している。国連の推定では03年以降、ダルフール紛争による同地域での死者は30万人に上り、260万人の難民が発生している。犠牲者数が増加した程度では誰も驚かなくなってしまったのかもしれない。【6月23日号 Newsweek日本版】
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混とんとしつつあるダルフール情勢
今回の南部独立を問う住民投票が、ダルフールの緊張を更に高めているとの報道もあります。

****スーダン:ダルフール緊迫 「南部独立」住民投票に影*****
南部の独立を問う住民投票が来月9日に行われるアフリカ・スーダンで、南北の対立とは別に、西部ダルフール地方の紛争が再燃する兆しを見せており、住民投票への波乱要因になっている。先週にはダルフールで政府軍と反政府勢力による戦闘が発生、反政府側の40人が死亡した。
背景には独立を目指す南部との微妙な駆け引きにダルフール紛争が影響を及ぼさないよう、バシル大統領が軍事攻撃を含めた“解決”を目指し、強硬になりつつある事情がある。これを受け、分裂していた反政府勢力は結集しつつあり、情勢は混とんとしつつある。

アラブ系の中央政府に対し、黒人住民らの反政府勢力が対立していたダルフール紛争は今年2月、政府と主要反政府勢力「正義と平等運動」(JEM)が和平実現に向けた枠組み合意に調印した。しかし、他の反政府勢力などとの足並みがそろわず、断続的な交渉は続くものの最終合意には至っていない。
(12月)24日にダルフールで起きた戦闘では、JEMなど複数の反政府勢力が数年ぶりに結集し、「政府軍に重大な損失を与えた」と発表した。直接的には関係のない南部住民投票を機に、ダルフールの反政府勢力がまとまりを見せ始めている。

バシル大統領にはダルフール紛争での「戦争犯罪」などの容疑で09年、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出されている。南部住民投票の結果を認めるよう国際的に圧力を受け、南部と交渉を続けなければならないバシル大統領にとってはダルフール紛争の解決は急務だ。
バシル大統領は29日、「反政府勢力側が最終合意に至らないなら(中央政府は)和平交渉から退くことになる」と警告した。
国連によると今月10日以降、西部での戦闘で新たに推定3万2000人が避難民化しており、事態悪化が懸念されている。

一方、住民投票は来月9~15日に実施される。AFP通信によるとバシル大統領は29日、「南部の同胞の決定を否定しない」とし、分離・独立が決定した場合でも「新たな同胞国家として最初に承認する」と述べた。21日にはキール南部自治政府大統領を交え、隣国エジプト、リビア両首脳と会談。平和な投票実施を呼び掛ける共同声明も発表した。
しかし、南北の境界線画定や石油資源の利益配分などを巡り、南北間の対立は解消されていない。住民投票を支援する米国はバシル大統領に対し「予定通りの実施」「結果の受け入れ」を求め、圧力を強めている。【12月30日 毎日】
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南部にしても、西部ダルフールにしても、どこから火を吹いてもおかしくない火薬庫を抱えたスーダンですが、とりあえずは南部住民投票の公正な実施と、その結果受け入れをバシル大統領には期待します。
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