(1966年 カンボジアで枯葉剤を散布する米軍 “flickr”より By 2612design http://www.flickr.com/photos/33346218@N02/4661785890/ )
【ウガンダ「うなずき病」 原因・治療法も未だ不明】
アフリカ中部ウガンダで、小児児童のみに発症し、食事をすると激しくうなずくような動作を行い、時に死に至るという、通称「うなずき病」という奇病が広まっているそうです。
****ウガンダの子供たちを襲う謎の奇病「うなずき病」、原因も治療法も不明****
アフリカ中部ウガンダの小村トゥマングでパトリックくん(14)は、真昼のうだるような暑さのなか裸の体を丸めて横たわり、自宅前で遊ぶ弟や妹たちを見上げようとして、できずにいた。1分ほどかけてようやく顔を上げた、そのとたん、パトリックくんの頭は前方へと崩れ落ちるように倒れ、やせ細った体はひきつけを起こした。
ウガンダ北部で今、3000人以上の子供たちが謎の奇病、通称「うなずき病」に苦しんでいる。トゥマングでは、ほぼ全家庭にうなずき病の患者がいる。
■衰弱していく子供たち、なすすべなく諦める人々
地元の人々によればこの数年で数百人の子供がうなずき病で死んだ。だが、病気の原因も、治療法もまだ見つかっていない。分かっているのは、発症するのは子供のみで、繰り返す発作、発育不良、手足の衰え、精神障害、飢えなどによってひどく衰弱していく病気だということだけだ。
パトリックくんも2年前に兄弟の1人をうなずき病で失っている。母親のルジーナさんは、もう1人のわが子の命が失われていくのを見守ることしかできない。「看病のため、必ず誰かが家にいなければなりません。あの子は病気のせいで、1人では食べることも水を飲むこともできないのです。恐ろしい病気です」
首都カンパラから450キロ北にあるトゥマングで医療活動に取り組むボランティアのジョー・オットーさん(54)によると、人口約780人のこの村で現在、うなずき病を患っているのは97人。数キロ離れた保健センターに医薬品が届いたと聞けば、オットーさんは自転車をこいで受け取りにいく。だが、そうして入手した薬も効果は一時的でしかない。「カルバマゼピンなどの抗てんかん薬を処方していますが、この病気はてんかんではありません」
村人たちはもはや恐れを通り越し、諦めの境地に至っているという。「今では、亡くなった人は治ったのと同じだ、ついに病の苦痛から解放され安らかな眠りについたのだから、と話しています」とオットーさんは教えてくれた。
■全力の原因究明、いまだ効果なく
伝染病学者や環境問題の専門家、神経学者、毒物学者、精神科医――幅広い分野の専門家たちが2010年以降、うなずき病の治療法を求めてさまざまな試験に取り組んでいる。原因についても、河川盲目症を引き起こす寄生虫や栄養不良から、数十年に及んだ内戦の後遺症まで、関連し得るあらゆる可能性が調査されている。
しかし「残念ながら、これという寄与因子もリスク要因も、まだ特定できていません」と、カンパラで疾病予防対策に取り組む世界保健機関(WHO)のMiriam Nanyunjaさんは話す。研究を進めれば進めるほど、答えに近づくどころか、むしろ謎が深まるばかりだという。
隣接する南スーダンやタンザニアでも類似の病気が流行しているが、ウガンダのうなずき病と関連があるのかは分からない。うなずき病がまだ拡大していくのか、それとも既にピークを迎えたのか、また、なぜ特定のコミュニティー内だけで発生するのか、いずれも定かではない。
地元議員らの要請を受けて、ウガンダ政府も動き出した。保健省は前月、うなずき病の原因特定と拡大阻止に向けた緊急時対応計画を策定した。
だが、原因や治療法が見つかるまでは、医師にできることは症状を緩和することだけだ。そしてパトリックくんには、どのような対策も手遅れかもしれない。それでも母親のルジーナさんは言う。「お医者さんたちが、治療法を見つけてくれると願っています。病気にかかってしまった子供たちの多くに、もう未来はありません。それでも、より幼い子供たちを救ってほしいです」【2月20日 AFP】
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“特定のコミュニティー内だけで発生する”ということですから、細菌・ウイルス・寄生虫などによる弱い伝染性の疾患か、あるいは環境汚染などの環境因子からくる疾患が想像されます。
水俣病やイタイイタイ病など、日本の公害も当初は原因不明とされていました。
“幅広い分野の専門家たちが2010年以降、うなずき病の治療法を求めてさまざまな試験に取り組んでいる”とのことですが、発生地域が欧米や日本だったら、もっと違う展開になったのでは。
WHO指導のもとでの更に調査研究を加速させてもらいたいものです。
【ナイジェリア 近現代史において最悪の鉛中毒拡散】
同じアフリカでの子供の病気としては、ナイジェリアで、金鉱の違法採掘の影響を受けて、子供の鉛中毒死亡が多発しているとの報道がありました。
****ナイジェリア北部の鉛汚染は近現代で最悪、死者400人 人権団体****
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは7日、ナイジェリア北部ザンファラ州の金鉱の違法採掘により、これまでに子供400人が鉛中毒で死亡、数千人の子供が緊急治療を必要としていると報告した。鉛中毒の拡散の度合いは、近現代史において最悪だという。
汚染された多くの地域では、除染さえ始まっていない。HRWのリサーチャー、ジェイン・コーヘン氏は、「緊急に必要とされているのは村の除染だ。除染には400万ドル(約3億円)ほど必要になるだろう」と述べ、ナイジェリア政府、ザンファラ州政府、海外の援助国が一致団結して鉛汚染の問題に取り組まなければならないと強調した。
■鉛汚染の経路
HRWが2011年後半に行った現地調査では、鉱山で鉱石を扱う時、炭鉱労働者の家族が鉛ダストにまみれて帰宅した時、あるいは鉱石が自宅で砕石される時に、子供たちが鉛ダストを吸いこんでいることが分かった。また、汚染された水や食べ物を通じて有毒な鉛を摂取している可能性も明らかになった。
ナイジェリア北部における鉛中毒の拡散は、2年前に明るみになった。国境なき医師団によると、地元の集落は当初、当局が採掘を禁止することを恐れて集落ぐるみで鉛中毒の実態を隠し、死者が出たことなども否定していたという。
貧しい農村では、農業よりも違法な金採掘の方が、もうかる職業となっている。【2月8日 AFP】
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【「顧みられない熱帯病」に製薬大手もようやく動く】
アフリカなど熱帯地域の途上国の貧困層が多く罹患する疾病と言えばマラリアがその代表ですが、マラリア以外にもそうした熱帯病は多数存在しますが、薬剤の購買力がない貧困層が対象ということで、製薬会社の対応も不十分で、治療体制が整っていないのが実情です。
そのような「顧みられない熱帯病」に対する大手製薬会社などの取組がスタートしたそうです。
遅きに失した感はありますが、今後の活動を期待します。
****「顧みられない熱帯病」根絶へ官民連携 エーザイが参加****
途上国の貧困層を中心に感染が広がりながら、治療薬が足りず「顧みられない熱帯病」と呼ばれる感染症の根絶に向け、世界の製薬大手13社と米英政府、世界保健機関(WHO)などが30日、治療薬の提供や新薬開発で協力し合うことで合意した。日本からはエーザイが参加した。
「顧みられない熱帯病」はトラコーマ、リンパ系フィラリア症(象皮病)、住血吸虫症など寄生虫や細菌による感染症。アフリカや南米、アジアなどで14億人が感染しているとみられるが、マラリア、エイズ、結核より知名度が低く、国際的な治療体制が十分に整備されていなかった。
同日、ロンドンで開かれた会議では、2020年までに10の疾病の根絶を目指すことで合意。マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏夫妻の財団や米英政府などが資金を出す。エーザイは足などが象のように膨れあがるリンパ系フィラリア症の治療薬22億錠を生産、WHOに無償提供する。同社の内藤晴夫社長は「途上国が疾病を克服して経済力をつけ中間層が増えれば、私たちの市場にもなる。社会貢献だけでなく、ビジネス面での意義も大きい」と話した。【1月31日 朝日】
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【枯葉剤は「アメリカと同盟国の兵士の命を守る」ために作られた“愛国的な化学薬品”】
冒頭の「うなずき病」に関する記事のなかで、原因のひとつの可能性として“数十年に及んだ内戦の後遺症”ということも挙げられていますが、内戦後遺症ということで思い出すのはベトナム戦争で使用された枯葉剤による奇形児や障害児の発生です。
当然、枯葉剤を製造した企業の社会的責任が問われるべきでしょう。
ところが、“ベトナムでは枯葉剤によって40万人が死亡し、50万人の奇形児や障害児が生まれ、200万人にさまざまな後遺症を残した”とのことですが、その枯葉剤を製造したモンサント社がベトナムに「帰還」する準備を進めているそうです。
****枯葉剤のモンサントがベトナムに進出?****
遺伝子組み替え作物の種子の世界シェア90%を誇るアメリカの総合化学メーカー、モンサント社がベトナムに「帰還」する準備を着々と進めている。
ベトナムでモンサントの名はそれほど知られていない。しかし同社がかつて開発し、ベトナム戦争で米軍の枯葉作戦で使用された、悪名高き「エージェントオレンジ(枯葉剤)」の名は誰もが知っている。
ベトナムのタインニエン紙によれば、国内の活動家たちはモンサントにベトナムで事業を行う資格はないと反対の声を上げている。ベトナムでは枯葉剤によって40万人が死亡し、50万人の奇形児や障害児が生まれ、200万人にさまざまな後遺症を残した。
モンサントが現在ベトナムで関心を抱いているのは農業分野だ。遺伝子組み換え技術で農作物の収量を上げる技術を持つモンサントを、ベトナム政府が誘致しようとしていると、タインニエン系列の週刊誌が報じた。
ベトナムとアメリカ両国の枯葉剤犠牲者から訴えられているモンサントは、もちろん過去を忘れたわけではない。米軍からの発注で製造した枯葉剤は、植物を枯らしてジャングルに潜む共産ゲリラをあぶり出して掃討するために散布された。
モンサント社の冊子は、枯葉剤は愛国的な化学薬品だったと紹介しいる。「アメリカと同盟国の兵士の命を守る」ために作られたものであり、係争中の裁判については「当事者だった政府によって解決されるべきだ」と主張している。
モンサントのベトナム進出を阻止しようとする活動家たちの戦いは、すでに苦戦を強いられているようだ。タインニエン紙によれば、ベトナムの元副国防相が国会でこの問題を取り上げようとしたが、政権側に発言を妨げられたという。【2月8日 Newsweek】
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“枯葉剤は愛国的な化学薬品”とは、なんともあきれた言い様です。
しかし、“遺伝子組み替え作物の種子の世界シェア90%”ということになれば、モンサント社抜きに今後の農業は語れないのも現実でしょう。そういう点ではベトナム共産党政権は非常に現実的です。
ただ、そうは言っても・・・という感が、やはり残ります。