孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  大統領選挙を決める“有権者の4%、91万人”

2012-08-04 22:12:09 | アメリカ

(キャメロン英首相との会談では一転してロンドン・オリンピックを称賛してみせたロムニー氏ですが、キャメロン首相の怒りは収まらなかったようです。もっとも無難な訪問先で、最大の同盟国を怒らせるロムニー氏の外交センスのなさが話題となりました。“flickr”より By The Prime Minister's Office http://www.flickr.com/photos/number10gov/7650320466/

大勢の米国人が、オバマ氏はイスラム教徒であることを隠しているかもしれないと疑念を抱いている
アメリカ大統領選挙は11月6日に投票が行われます。
部外者的には、前回選挙におけるオバマ対ヒラリーの民主党予備選挙はかなり面白い争いでしたが、今回の共和党予備選挙は、“死んだかと思えば生き返るヴァンパイア”対“生気なく歩き回るゾンビ”の戦いとも揶揄されたように、すこぶるしまらないものでした。

そんな“ゾンビ”ロムニー候補相手にオバマ大統領の楽勝か・・とも思われたのですが、オバマ対ロムニーの形で決着してからは、ロムニー陣営も共和党支持者を一本化し、かなり拮抗した選挙戦になっているようです。

共和党支持者には、オバマ大統領に対する根深い不信感があります。
銃に対する頑なな執着など、アメリカ国民の意識は日本人的にはよく理解できない部分がありますが、いまだに、オバマ大統領がイスラム教徒であると信じている人の割合が17%、保守派共和党員の30%にのぼる・・・というのも、そういった部分です。

****オバマ大統領はイスラム教徒」、米国に根強い誤解 世論調査****
米共和党を支持する保守派有権者の30%以上が、いまだにバラク・オバマ米大統領をイスラム教徒であると信じている。このような調査結果を、米非営利調査機関ピュー・リサーチ・センターが26日、発表した。

ピュー・リサーチ・センターのシニア・リサーチャー、グレッグ・スミス氏は、AFPの取材に「オバマ氏がイスラム教徒であると信じる米国人の数は2008年よりも高く、2010年と同程度になっている」と説明した。
オバマ氏がキリスト教徒であることは、熱心に教会に通う大統領自身が幾度となく強調してきた。それにもかかわらず、オバマ氏がイスラム教徒であると信じる保守派共和党員の数は、2008年から2010年にかけて倍増し、その後2012年まで横ばいが続いている。

■「オバマ氏はイスラム教徒」、有権者全体でも17%
また、ピューが6月と7月に実施した米国有権者全体を対象にした3000人への調査によると、オバマ氏がイスラム教徒だと信じる人は17%に上った。これは2008年より5%高く、2010年よりは3%低い数字で、いずれも調査の許容誤差内に収まっている。

オバマ大統領は、ケニア出身のイスラム教徒を父親に持ち、ミドルネームがフセイン(Hussein)で、幼少期をイスラム教徒が多数派のインドネシアで過ごした。

複数の調査によると、大勢の米国人が、オバマ氏はイスラム教徒であることを隠しているかもしれないと疑念を抱いている。このような疑念が広がった理由の1つに、共和党支持者らが、保守派ブログや保守派のラジオ司会者らにたきつけられたことがあげられる。

ピューの調査で、オバマ氏がキリスト教徒であると正しく認識していた人は全体の49%だった。また31%は「わからない」と回答した。一方、11月の大統領選でオバマ氏と争うことになる共和党候補のミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事がモルモン教徒であることを正しく認識していた人は約60%に上った。【7月29日 AFP】
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【勝敗に影響を与えるのは有権者の4%である91万6643人】
オバマ陣営からすれば、こうしたコアなオバマ批判層はどんな選挙運動をしようが変わらない部分となります。
アメリカの大統領選挙は州ごとに選挙人を選び、その選挙人が大統領を選ぶ間接選挙で行われますが、原則として州ごとの“総取り制”となっています。
そうした選挙制度を前提にすれば、実際のところ大統領選挙の帰趨は、有権者の4%ほどの91万人程度の投票行動にかかっているとのことです。

****大統領選を決する4%票の正体****
中南米系の若い女性に1人2000ドル渡したほうが効果的?

アメリカ大統領選は直接選挙ではない。建国の父たちがへまをしたおかげで、州ごとに選挙人を選び、その選挙人が大統領を選ぶ間接選挙がいまだに採用されている。原則として州ごとの総取り制で、その州で1票でも多くの票を得た候補が、州ごとに割り当てられた選挙人という「票」をすべてもらえる。

選挙人の数が多いカリフォルニア州やニューヨーク州、イリノイ州(どの州も現職バラク・オバマを支持することが確実)、テキサス州(圧倒的に共和党が強い)では結果は見えたも同然。つまりアメリカ国民のほぼ3分の1に当たる、9540万人分の票の行方はもう決まっている。

それだけではない。アラスカ州は共和党のミット・ロムニー候補が圧倒的に優勢。ハワイ州はオバマ応援団だし、ユタ州はロムニー王国で、マサチューセッツ州はオバマで結束している。実は44もの州で11月の大統領選の帰趨は決定済みと言え、最終結果は残りの6州に懸かっている。東海岸のバージニア州とフロリダ州、中西部のオハイオ州とアイオワ州、南西部のニューメキシコ州とコロラド州だ。

ただしこの6州ではオバマとロムニーの支持率はほぼ48%ずつなので、勝敗に影響を与えるのは有権者の4%である91万6643人。カリフォルニア州サンノゼ市の人目と同じくらいだ。

そうなると、問題は浮動票層の91万6643人にいかに訴えるかだ。政党や両候補の選挙対策本部、応援団体がこのほんのわずかな人々の心をつかむために費やす金額は計20億ドル。1票当たり2187.87ドルの計算だ。

世論調査の専門家によれば彼らの大半が女性で、しかも比較的若い。年長の有権者ほど自分のやり方や考えにこだわるが、若者は何事についても説得を受け入れやすい。浮動票層の多くは高卒で、かなりの数のヒスパニック(中南米系)が含まれる。

失言なんて気にしない
だから重視すべきなのは、自分で生計を立て、子供を育てているために大学に進む余裕がない中南米系の若い女性だ。ロムニーから彼女へのメッセージはこうだ。「オバマが君の生活をめちゃくちゃにした。彼は何億ドルも浪費したが、君の暮らしは悪くなった。私は実業家だから、この状況を正すことができる」。まあ、ここまではいいとしよう。
だがオバマを個人攻撃するだけで、将来に向けた明確な経済政策を打ち出さなければ、ロムニーの選挙運動は的外れな方向へそれていくだろう。

一方のオバマは、高卒の働く母親にこう訴える。「めちゃくちゃな状況は前政権から引き継いだものだ。われわれは自動車産業を救い、公正貨金渋を成立させ、430万人分の雇用を創出するなど事態を好転させている。だがロムニーが選ばれたら、富裕網向けの減税を行い、教育やメディケア(高齢者医療保険制度)など中流網を支える制度を骨抜きにするような、かつての失政に戻るだろう」

オバマがやるべきでないのは、業績を誇示すること。生活が厳しい時代には、「すごい業績を挙げた」などという話は聞きたくないものだ。浮動票網が知りたいのは、自分のために何をしてくれるか。ここでも、将来を見据えた発言が重要だ。

浮動票網がすぐに動きだすことは期待しないほうがいい。彼女たちは政治好きな人ほど失言や世論調査を気にしない。党大会の様子や討論会の一部をちらりと見て、投票日の11月6日になったら、どちらが自分のような中流層のために経済を立て直してくれるかと考えるだろう。
結局彼女たちは候補者がテレビCMを中止して、2187.87ドルを分け与えてくれるほうがうれしいのではないか。 
【7月25日号 Newsweek日本版】
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その勝敗を分ける激戦州である南部フロリダ、中西部オハイオについては、現在のところオバマ大統領が優位にあるとの調査が出ています。

****最重要2州でオバマ氏リード=「生活への理解度」で優位―米大統領選****
米キニピアック大学は1日、11月の大統領選で勝敗のカギを握るとして民主、共和両党から最重要視される南部フロリダ、中西部オハイオ両州で実施した世論調査結果を発表した。

それによると、オバマ大統領と共和党のロムニー前マサチューセッツ州知事の支持率はフロリダ州で51%対45%、オハイオ州で50%対44%となり、いずれも大統領が6ポイントのリードを奪った。
今回の調査は7月24~30日に行われた。4月下旬の調査では、大統領が1~2ポイント差をつけるにとどまっていた。

大統領とロムニー氏の「国民生活への理解度」を尋ねた質問では、大統領は国民生活に理解があると思う人は両州とも55%。これに対し、ロムニー氏が理解していると思う人はフロリダ州で42%、オハイオ州で38%にとどまり、億万長者ぶりに焦点が当たるロムニー氏を敬遠する空気が広がっている様子を示した。【8月2日 時事】
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ロムニー氏、外交センスのなさを露呈
ロムニー候補がオバマ大統領に優位に評価されているのは経済的手腕ですが、逆に劣っているのが上記の“一般庶民の暮らしが理解できない億万長者”という評価です。
もうひとつの弱点は外交手腕ですが、このウィークポイントをカバーしようとして、イギリスやイスラエルを訪問しました。

「両国は国益だけでなく価値観も共有してきた」といった親イスラエルの姿勢は、共和党の方針からも、伝統的に民主党寄りといわれる「ユダヤ票」の切り崩しを狙うという観点からも予想されたところです。(ロムニー氏とネタニヤフ首相は、かつてアメリカの同じコンサルタント会社に勤務していた同僚だそうです)

しかし、最も無難な“同盟国”イギリスでは、オリンピック成功に向けて取り組むイギリスに冷や水を浴びせて国民・首相の怒りを買い、更には、諜報機関MI6の長官と会談したという機密事項を平然とメディアに明かすなど、外交センスのなさを暴露した・・・との散々な評価です。

****英国を敵に回すロムニーの外交センス****
8月末に迫った共和党大会を前に、イギリスを訪問して外交手腕をアピールしようとした米大統領候補ミット・ロムニー。だがとんだ外交音痴ぶりをさらけ出してしまった。

キャメロン首相との会談直前に米NBCのインタビューに答えたロムニーは、会場警備の手薄さなどを例に挙げてロンドン五輪の準備不足を指摘。国民は「一丸となって祝福しているのか?」と、国民の熱意も疑ってみせた。

英メディアはこれに猛反発。大衆紙デイリー・テレグラフは「ロムニーがイギリスを嫌うのなら、相手にするな」という論評記事まで掲載した。慌てたロムニーは会談では一転して開催体制を称賛したようだが、キャメロンの怒りは収まらなかった。
会談後キャメロンは、02年のソルトレークシティー冬季五輪で組織委員会会長を務めたロムニーを明らかに意識して、「辺ぴなド田舎でオリンピックをやるなら、もっと簡単に決まってる」と皮肉った。

最も近しい同盟国をなぜあえて敵に回したのか、ロムニーの真意は定かでない。だが当分の問、オバマ外交を批判できないことだけは明らかだ。【8月8日号 Newsweek日本版】
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資金力ではオバマを圧倒
なお、ロムニー候補は資金集めではオバマ大統領を圧倒しているそうで、今後大量に流されるCMが浮動票獲得に効果を発揮するかもしれません。

****集金マシンの異常にオバマの焦り****
・・・・今回の選挙では、献金額の上限が適用されない特別政治活動委員会(スーパーPAC)が、大規模なネガティブキャンペーンの先頭に立っている。

PACは、特定の政治家や党を支持する人(や企業)が、献金額に上限のある選挙事務所や党全国委員会とは別に、その政治家や党を支持する団体に献金することで応援できるようにつくられた政治資金団体だ。
ところが10年の最高裁判決で、一定の条件を満たすならPACへの献金額には通常の上限が適用されないことが判示されると、PACは巨額の献金を集めるようになった(このためスーパーPACと呼ばれる)。

その資金の多くは、対立候補を厳しく批判するCM制作とCM枠の購入に充てられてきた。ターゲットはアイオワをはじめとする約10の激戦州だ。ロムニーを応援するスーパーPACは、オバマ系スーパーPACの4倍もの資金を集めてきた。

11月が近づくにつれて、そのギャップはもっと拡大しそうだ。ラスベガスのカジノ王シェルドン・エーデルソンは最近、ロムニーを応援するスーパーPACに1000万げを献金。オバマを倒すため、最終的に1億ドル献金する用意があると語っている。
民主党にはこれはどの大口献金者はいない。今のところ最大の献金は、映画製作会社ドリームワークスのジェフリー・カッツェンバーグCEOによる計230万ドルだ。(後略)【8月8日号 Newsweek日本版】
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