孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

不思議なアメリカ  「オバマ大統領再選なら南北戦争再発」発言 エンパイアステートビル前の銃撃戦

2012-08-25 21:49:31 | アメリカ

(24日、容疑者と警官との銃撃戦が行われた事件現場のNYエンパイアステートビル “flickr”より By multimediaimpre http://www.flickr.com/photos/79137904@N07/7851535524/

【“legitimate rape”】
アメリカで根強いキリスト教右派の価値観を代表するエイキン下院議員の「まともなレイプであれば、女性の体は拒絶反応を起こす(ため妊娠しない)」という発言については、8月22日ブログ“アメリカ  大統領選挙に影響しそうな、共和党議員の「まっとうなレイプなら妊娠せず」発言”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120822)で取り上げたばかりです。

****まともなレイプ」発言にパニクる共和党*****
・・・・・問題の発言をしたのは、あらゆる中絶を「例外なく」禁じるべきだと主張している保守派のトッド・エイキン下院議員(共和党、ミズーリ州選出)。8月19日に行われたKTVIテレビのインタビューで、レイプで妊娠した場合でさえ中絶を認めない理由について質問されると、女性の生殖器系には望まぬ妊娠を防ぐ機能があり、レイプされて妊娠するケースは「非常にまれ」だとほのめかした。

「まともなレイプであれば、女性の体は拒絶反応を起こす(ため妊娠しない)。その仕組みがうまく機能しなかった場合には、懲罰が必要だ。だがその場合でも、罰せられるべきはレイプ犯であって胎児ではない」(後略)【8月22日 Newsweek】
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“legitimate rape”(もとまな、本当の、正真正銘の、まっとうなレイプ)という言葉には、レイプ被害者を含めた「例外のない」中絶禁止を求めるエイキン下院議員らの、“妊娠中絶を求めているレイプ被害者は、本当にレイプされたのか? 最後まで抵抗したのか? 結局受け入れたのでは?”といった、レイプ被害女性への不信感が潜んでいるようにも思われます。

【「彼は米国の主権を国連に譲り渡そうとし、最悪の場合は市民の抵抗で内戦が起きる」】
一方、恐らく共和党支持の保守派から、また奇妙と言うかユニークな発言が飛び出して話題となっています。
オバマ大統領が再選されると内戦状態になり、オバマ大統領は鎮圧のため国連部隊のアメリカ侵攻を求める・・・という奇想天外な発言です。

****オバマ大統領再選なら南北戦争再発」?米テキサス州判事が発言****
米テキサス州の判事が、11月の米大統領選でバラク・オバマ大統領が再選されれば、再び南北戦争が起こると「脅す」発言をした。

保安官増員のため増税に賛成するテキサス州ラボック郡のトム・ヘッド判事は、米フォックスニュース系列の地元番組とのインタビューで21日、再選された場合オバマ氏は「米国の主権を国連に譲り渡そうとしている」と批判。もしそうなった場合にはテキサス州民は我慢しないだろうとして、次のように述べた。

「最悪のケースを考えている。市民の抵抗や暴動、内戦までもだ。少々の暴動やデモのことを言っているのではない。レキシントンやコンコードで彼(オバマ氏)を排除するために武器を取る、ということだ」

ラボック郡の危機管理担当責任者でもあるヘッド検事は続けて、「そうしたら、国民がそのように心を決めたら、何が起こるだろう。オバマ氏は国連軍を差し向けるだろう。ラボック郡は国連軍を歓迎しない。私は彼らの戦車の前に立ち『ここからは入れさせない』と宣言するだろう」と語った。
「保安官にも聞いてみた。私を支持するかどうか、とね。もちろん支持すると答えてくれたよ。私が求めているのは新人の束ではない。研さんを積み、高い能力をもち、経験豊富なベテランの保安官だ」

ヘッド氏は地元紙に22日、自分の発言は文脈から切り離されて紹介されてしまったもので、内戦は可能性のある「最悪のシナリオ」として例に挙げただけだと弁明した。【8月25日 AFP】
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アメリカにおいて郡の判事という職がどの程度の影響力を持つものか知りませんが、殆んど病的な妄想の世界です。
まあ、奇人変人はどこの世界にもいるものですが、こうした保守派勢力を相手にしなければならないオバマ大統領も大変でしょう。

負傷者の幾人かは警官の撃った流れ弾に当たった可能性
ところで、アメリカ・ニューヨークのエンパイアステートビル前で発砲事件があったことが報じられています。
“銃社会アメリカ”ですから、多少の発砲事件は珍しくも何ともありませんが、あの(キンコングでも有名な)エンパイアステートビル前でハリウッド映画さながらに多数の市民を巻き込んでの銃撃戦・・・ということで話題になっています。

****NYエンパイアステートビル前で発砲、11人死傷****
米ニューヨーク中心部のエンパイアステートビル前で24日朝、発砲事件が発生し、容疑者の男を含む2人が死亡、9人が負傷した。容疑者は解雇された婦人アクセサリー・デザイナーで、元同僚を射殺した後、駆け付けた警察との間で短い銃撃戦になり射殺された。
米連邦捜査局(FBI)は即座に、テロの可能性を否定した。

負傷者はいずれも軽症だが、人気の観光名所でラッシュ時に起きた事件だけにもっと死者が出てもおかしくない危険な状況だったと、記者会見したニューヨーク市警のレイモンド・ケリー本部長は述べている。
ケリー本部長によると、男は婦人服ブランド「ヘイザン・インポート」の元従業員、ジェフリー・ジョンソン容疑者(58)。婦人用アクセサリーのデザイナーとして6年勤務していたが1年前に人員整理で解雇され、そのことを恨んでいたという。

ジョンソン容疑者は朝9時(日本時間同日午後10時)ごろ、ちょうどエンパイアステートビル周辺の路上が通勤客や観光客で混雑していた際、元同僚の男性に近付き口論となった。やがてジョンソン容疑者が45口径の拳銃を取り出し、至近から元同僚の頭を3発撃ったという。米メディアによると、相手はヘイザン・インポートの販売を担当副社長(41)だという。

マイケル・ブルームバーグニューヨーク市長は会見で、ジョンソン容疑者は拳銃をしまって逃走しようとしたが通報を受けた警官2人に制止され、銃を向けたため警官が応戦したと説明した。このとき容疑者が発砲したかどうかは不明で、負傷した通行人のうち幾人かは警官の撃った流れ弾に当たった可能性があるという。

エンパイアステートビルは、自由の女神像やブルックリン橋と並ぶニューヨークの主要観光スポット。米国では7月、コロラド州の映画館で男が銃を乱射。8月にはウィスコンシン州のシーク教寺院でも乱射事件があり、いずれも死傷者を出している。【8月25日 AFP】
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この事件の注目すべき点は、“このとき容疑者が発砲したかどうかは不明で、負傷した通行人のうち幾人かは警官の撃った流れ弾に当たった可能性があるという”というところです。

“当局はジョンソン容疑者が警察官に対して発砲したかどうかをまだ最終確認中だが、付近にあった防犯カメラの映像には同容疑者が銃を向けている姿が鮮明に記録されているという。また、当局によると巻き込まれて負傷した9人の通行人は警察官の発砲した銃弾に当たった可能性が高いという。”【8月25日 ウォール・ストリート・ジャーナル】

今朝のTVニュース(ABC)でも、キャスター(ダイアン・ソイヤー)は“負傷者の全員が警官の発砲によるかも”とし、記者との間で、“警官は、こうした状況でも発砲するように教育されているのですか?”“ええ”“大勢の市民がいてもですか?”“はい”といったやり取りがあったように記憶しています。

日本のTV・映画では、市民のいる街中での発砲を刑事が躊躇する・・・といったシーンがよく見られますが、“銃社会アメリカ”でそんなことをしていたら命がいくつあっても足りません。危ないと思ったら撃つまでです。

また、こうした発砲事件が起きても、銃規制強化の動きは見られない・・・というのもアメリカ社会の実情です。
むしろ、発砲事件が起きると、自分の身を守るために市民が銃を買い求める・・・ということのようです。
今後は、まっとうなアメリカ市民は、犯罪者だけでなく警官の発砲にも銃で立ち向かう必要があるようです。

そのうち、ニューヨクの街中で容疑者を追う警官が銃を構えると、周囲の大勢の市民も一斉に銃を取り出し、弾丸があたりに飛び交う大銃撃戦が展開される・・・といった、コントで観たような世界が現実のものになるのかも。
外部の人間からは、銃依存はアメリカ社会の病的な側面にも思えるのですが。
コメント (1)
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