
(野外に用を足しに出て、集団レイプされ木に吊るされた2少女のひとりの母親 【6月3日 AFP】)
【家にトイレがある人より、携帯電話を持っている人の方が多い】
5月28日早朝、インド北部の村で、5人の男に集団レイプされた10代の少女2人が、木に首をつった状態で死亡しているのが見つかりました。
“少女らが自殺したのか、犯人たちがレイプ後に口封じのために2人の首をつったのかはいまだ判明していない”【5月30日 AFP】とのことでしたが、下記【6月3日 AFP】では“集団レイプされた末に殺害された”とされています。
****インド貧困女性を襲う「トイレの恐怖」、2少女レイプ殺人で明らかに****
インド北部カタラサダトガンジ村の女性たちにとって、夜のとばりが下りた後に家の裏に広がる野を歩くことは、普段から身の危険を感じる恐ろしい体験だ。
しかし先月27日、野外に用を足しに出た少女2人が連れ去られ、集団レイプされた末に殺害された事件は、日々の試練に新たな恐怖をもたらした。
農場労働者としてのわずかな収入で生活する5児の母マハラニ・デビさん(40)は「事件があってから、私たちは以前よりもさらに恐怖を感じるようになった」と語る。デビさんが住む3部屋からなる家には、この地区の大半の家と同様、トイレがない。
先週に起きた12歳と14歳の少女殺害事件は、2012年12月に首都ニューデリーで個人バスに乗り込んだ女子学生が集団レイプされ死亡した事件が生み出した激しい抗議運動と共鳴し、国内外で広く報じられた。
しかし、野原で襲撃された少女らが置かれていた危険な状況は、インドでは珍しくない。法的理由から氏名が伏せられている被害少女らは事件の夜、自宅にトイレがなく、村にも公衆トイレがないために2人で野原に出かけた。
国連児童基金(ユニセフ、UNICE)によると、インド人口の半分近い約5億9400万人が野外をトイレ代わりにしている。事件が起きた村があるウッタルプラデシュ州バダユン県のような農村部の貧困地域では特に状況はひどい。
インドのトイレ事情を調査した非政府組織(NGO)「ウォーターエイド」のキャロリン・ウィーラー氏によれば、日が暮れてから野外で用を足すことを強いられているインド人女性は全体の約3分の1で、彼女らはトラブルに巻き込まれないよう、大抵は見張り役の友達と2人で連れ立って出かける。
「女性が一番危険にさらされやすく、無防備な時。こんなに多くの女性が毎日、野外で用を足すという危険を冒しているということは衝撃だ」とウィーラー氏はAFPに語った。
被害少女の親族の女性はAFPのインタビューに対し「自分も野外に用を足しに行くときに怖い」と語った上で、当局には加害者をきちんと法で裁くことを望み、政府には村に公衆トイレを作ってもらいたいと訴えた。
しかし、野外での用足しをなくすことは、インドの新政権にとって難しい挑戦だと専門家たちは指摘する。
トイレの問題は、困窮するインドの地方部が多く抱える社会開発問題のうちの1つに過ぎない。
カタラサダトガンジを含むバダユン県の村々に電気が通るのは毎日2、3時間。未舗装の泥道には汚水や下水がそのまま流れている。
また被害者の少女たちは、地方部では根強く残っているインドの身分制度カーストの中の低い位置に属していた。一方、少女を襲った男らのうち何人かは、同じく身分は低いがウッタルプラデシュ州で影響力の強い「ヤダブ(Yadav)」といわれるカーストの出身だった。
少女らの遺族は地元警察が、女性を軽んじることに加え、下層カーストに対する偏見から適切な対応を怠ったと非難している。【6月3日 AFP】
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インドで女性が被害者となる性的な事件が多発していることは、12年12月のニューデリーで起きたバス車内女子学生集団レイプ事件を契機に国内で大きな問題となっています。
また、インドの貧困の象徴としてトイレ問題があることは、2013年12月28日ブログ「“変わるインド” “変わらぬインド”」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20131228)でも取り上げました。
“2011年の国勢調査によると、インドの半数近くの世帯はトイレがなく、住民は屋外で排便せざるを得ない。インドでは、家にトイレがある人より、携帯電話を持っている人の方が多い。子供の4割が栄養失調に陥っている最大の原因は、食料不足ではなく、お粗末な衛生状態だ。”【5月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙】
****トイレをつくれ!=野外排せつ6億人、女性立ち上がる―インド****
インドで野外排せつの根絶を目指す市民運動が大きなうねりになりつつある。
政府は27年前に衛生向上計画を打ち出したが、いまだ約6億4000万人が日常的に野外で排せつする。業を煮やした女性らが各地でトイレ設置のために立ち上がった。
首都ニューデリー中心部、車道脇には「立ち小便」をする男性が並び、その脇では半裸の少年が用を足す。地方の状況はさらに劣悪だ。ネパール国境に近い北部バワニプール村に住むマノラニ・ヤダブさん(40)は「全住民が野外で用を足している」と話す。
世界保健機関(WHO)は11月、インドにはテレビがあってもトイレがない家庭が多いと指摘。人口の半分以上が日常的に野外で排せつ行為を行っており、コレラや腸チフスのまん延につながっていると警告した。
政府は2022年までの野外排せつ根絶を目指すが、その歩みは遅い。特に女性は排せつ時に性的被害を受ける危険におびえ続けてきた。「こんな状況は耐え難い」。12月上旬、ヤダブさんは自分の土地を政府に寄付し、公衆トイレの設置を要請した。
中部マディヤプラデシュ州に住む新婦アニータ・ナルレさん(30)は家にトイレがないことを理由に2年前、夫に別居を告げた。これが引き金となり、女性が各地の村でトイレ設置を求めるデモを展開。この運動は国連児童基金(ユニセフ)の目に止まり、8月に映画化された。
専門家は「若い世代の台頭で社会変革の波が起きつつある」と指摘するが、道のりは長い。ヤダブさんは「人々の熱意がインドの日常風景を変える日」を待っている。【12年12月28日 時事】
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カタラサダトガンジ村で起きた二人の少女の悲劇は、インドが抱える性犯罪と貧困という二つの大きな問題の結果でもあります。
更に言えば、もうひとつのインドの抱える大きな問題も絡んでいます。
死亡した2人は14歳と15歳のいとこ同士で、カースト(身分制度)の枠外に置かれる最下層「ダリット(Dalit)」の出身とされています。
そうしたカーストの問題もあって、“遺族や村の住民らは、2人の遺体が28日早朝に見つかった当初、警察は取り合わなかったとして、強く抗議している”【5月30日 AFP】とのことです。
警察組織の腐敗という意味では、4つ目の問題もあるとも言えます。
【モディ氏はトイレに専念し、寺院のことは僧侶に任せておくべきだ】
新首相に就任したモディ氏は、ヒンズー至上主義者としての側面が懸念される一方で、その経済手腕に大きな期待がよせられています。
モディ氏は選挙において、「寺院よりトイレ」を支持すると宣言しています。
宗教的情熱に費やすお金を減らしてでも、衛生にかけるお金を増やすべきだとの主張ですが、まったくの正論です。
ただ、本当にモディ首相が“寺院”に深入りせず、宗教間の対立を煽るようなことがないか・・・まだ疑念はあります。
****インドのモディ氏、「寺よりトイレ」の誓いを貫け*****
モディ氏は、インドの経済的な目覚めを遠くから垣間見てきた何百万人もの国民が抱く積もり積もった切望を呼び覚ました。
また、狭義のヒンドゥー主義に基づくアイデンティティ政治の誕生を夢見る人たちにも希望を与えた。
前者は歓迎すべきことだ。後者は断然、歓迎されない。
モディ氏はトイレに専念し、寺院のことは僧侶に任せておくべきだ。【5月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙】
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