孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

西アフリカ・ガンビア  奇行の独裁者ジャメ大統領、選挙敗北を認めず居座り 軍事介入の動きも

2017-01-15 21:32:29 | アフリカ

(2013年6月、第5回アフリカ開発会議(TICAD V)に出席のため訪日したガンビア・ジャメ大統領と握手する安倍首相【首相官邸サイト】 “奇行の独裁者”も、中国とのアフリカ支援競争にあっては貴重な1票・・・でしょうか)

【「憲法クーデター」が相次ぐアフリカ
“アフリカ諸国では近年、民主化の進展がみられる半面、一部の指導者が任期制限を撤廃して続投を図る「憲法クーデター」(国際人権団体)が相次ぐ。”【下記 毎日】というなかで、“資源大国”コンゴのカビラ大統領が任期を過ぎてなお選挙を行わず、大統領職へ居座っています。

****<コンゴ民主共和国>居座る大統領、混乱招く****
アフリカ中部の資源大国コンゴ民主共和国で、カビラ大統領(45)が任期切れ後もその地位に居座っている。今年末までに大統領選を実施することで与野党間の合意が成立したが、カビラ氏が実際に退陣するかは依然として不透明だ。混乱は今後も続く可能性があり、武装勢力が入り乱れるコンゴ東部の治安悪化も懸念される。
 
カビラ氏は、父親の前大統領が01年に暗殺された後、大統領に就任、06年と11年の選挙で勝利した。今回は「有権者登録が間に合わない」などとして18年まで大統領選を実施できないと主張し、昨年12月下旬で2期目の任期が切れた後も退陣していない。
 
主要野党は憲法で3選出馬を禁じられているカビラ氏の延命策と批判。退陣を求める抗議デモが各地で起き、国連によると、治安部隊による鎮圧で少なくとも40人が死亡し、460人が拘束された。
 
政情不安が高まる中、カトリック教会が与野党間の協議を仲介。昨年12月31日、17年内の大統領選実施までカビラ氏の続投を容認する一方、移行期間を担う暫定政府の首相職を野党から指名することで合意した。カビラ氏の3選出馬は認めないという。ただ、カビラ氏は署名しておらず、合意が守られるか疑問視する声がある。
 
日本の約6倍の国土を持つコンゴは、コバルトやダイヤモンドなど豊かな天然資源の獲得を巡って紛争が絶えない。1998年に東部を中心に起きた大規模な内戦は、周辺国を巻き込んで「アフリカ大戦」と呼ばれる国際紛争に発展。03年に終結したが、紛争関連の死者は約540万人に上る。
 
東部では政府の支配が十分に及ばず武装勢力が乱立しているが、大統領選を巡る混乱に乗じて武装集団の活動が活発化しているとも伝えられる。ロイター通信によると、昨年12月24〜25日に東部北キブ州の町ベニ近郊などで武装集団が住民を襲い、34人が死亡した。
 
アフリカ諸国では近年、民主化の進展がみられる半面、一部の指導者が任期制限を撤廃して続投を図る「憲法クーデター」(国際人権団体)が相次ぐ。
 
15年には近隣のコンゴ共和国やルワンダで現職の任期延長を認める憲法改正が承認された。ブルンジでは、ヌクルンジザ大統領の3期目続投に対する抗議デモが激化。治安当局による弾圧で数百人が死亡し、30万人以上が周辺国へ避難した。
 
人権団体などから野党弾圧や強権的な姿勢を批判されてきたカビラ氏やその周辺は、実権を手放した後に訴追されることを懸念しているとも指摘される。
 
現地からの報道によると、カビラ氏が譲歩の姿勢を見せたことで政権交代への期待が高まっているが、交渉を仲介した教会関係者は「合意の履行には困難が伴う」と慎重な姿勢を崩していない。【1月11日 毎日】
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遠い“暗黒大陸”アフリカでの出来事ということで、メディア的には殆ど関心が示されませんが、コンゴを舞台に周辺国入り乱れての「アフリカ大戦」で約540万人に上るという途方もない犠牲者を出したのは、つい十数年前の話です。

関心を示さないメディア・欧米社会の一方で、コンゴの豊富な地下資源に周辺国が多大な関心を示した結果が先の「アフリカ大戦」ですが、現在も資源利権をめぐる武装勢力の争いが絶えず、まさに「資源の呪い」に取りつかれているコンゴです。

そうした状況を脱却するための第1歩が、中央政府における民主的ルールの確立にあると言えますが、退任後の訴追を警戒しているのか、カビラ大統領の居座りが続いています。

なお、記事にある年末合意に関しては、その後の情報は得ていません。

アフリカの国々がすべて、こうした混乱にある訳ではありません。
西アフリカ・ガーナでは、昨年末に選挙による政権交代が実現しています。

****野党アクフォアド氏勝利=現職マハマ氏破る―ガーナ大統領選****
7日投票のガーナ大統領選で、選管当局は9日、野党・新愛国党のアクフォアド元外相(72)が、与党・国民民主会議から再選を目指したマハマ大統領(58)を破って勝利したと発表した。
 
1992年にガーナで複数政党制が認められて以降、現職大統領が負けるのは初めて。3度目の大統領選出馬で勝利したアクフォアド氏はツイッターで、マハマ氏から祝福の電話を受けたことを明らかにした。【2016年12月10日 時事】 
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ジャメ大統領 敗北を認めた後、一転、再選挙を求める
しかし、残念ながら、“ルール無視”の政権居座りはコンゴだけではありません。

ガーナと同じ西アフリカにあって、セネガル中央部に深く串刺しするような細長い形状の国、ガンビアでもジャメ大統領が選挙敗北を認めず、居座りを決めこむ様相で、周辺国による軍事介入の可能性も浮上しています。

****ガンビア危機、現大統領への退任圧力強まる 軍事介入観測も浮上****
アフリカ西部ガンビアのヤヤ・ジャメ大統領が、一度は敗北を認めた昨年12月1日投票の大統領選の結果に異議を唱えて大統領職にとどまる姿勢を示している問題で、アフリカ西部マリのイブラヒム・ブバカル・ケイタ大統領は14日、ジャメ氏に退陣するよう呼び掛けた。

ケイタ大統領は、ジャメ氏の権力への執着がガンビアへの軍事介入が必要になる事態を招きかねないとして、無用な「流血の事態」を回避するよう促した。
 
ガンビア大統領選は野党連合候補のアダマ・バロウ氏が勝利した。バロウ氏はジャメ氏の任期が終わる今月19日に就任する予定だがジャメ氏は権力移譲を拒んでいる。
 
バロウ氏はマリの首都バマコで開かれた「仏・アフリカ・サミット」に突然姿を見せ、ガンビアの政治危機打開策を話し合っていた西アフリカ各国の指導者と対面した。

同氏は13日にガンビアの首都バンジュールで、ナイジェリアのムハマドゥ・ブハリ大統領、リベリアのエレン・サーリーフ大統領、ガーナのジョン・ドラマニ・マハマ大統領と協議し、その後予告なしにバマコを訪れた。
 
サミットには少なくとも30か国の指導者が出席。当初はアフリカ大陸におけるイスラム過激派の活動や、欧州の移民危機にアフリカが与えている影響について意見を交換する予定だったものの、ガンビア情勢が最大の焦点になった。
 
西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の15か国はジャメ氏に対して、大統領選の結果を尊重し22年維持した政権の座を去るよう再三促している。

国連(UN)とアフリカ連合(AU)はここ数日、速やかに危機を打開できない場合は地上軍派遣を承認する可能性を示唆しており、軍事介入の観測も浮上している。【1月15日 AFP】
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そもそも、ジャメ大統領が、選挙前に「全ての有権者は、それぞれの支持者に投票する権利がある。私に投票しなければならないという義務は一切ないのだ。」と「自由でオープン」な選挙を呼びかけたことも、昨年12月1日の投票直後にいったんは敗北を認めたことも、これまでのジャメ大統領の“エキセントリック”な言動からすれば大変な“サプライズ”でした。【ンボテ★飯村氏ブログ「ガンビアという国(9)」http://blog.goo.ne.jp/nbote/e/93adf03134b10194a0b32707dccb7ac5より】

****ガンビア大統領選、野党連合候補勝利 22年間のジャメ体制に終止符****
アフリカ西部ガンビアで1日に行われた大統領選で、野党連合候補のアダマ・バロウ氏が番狂わせの勝利を収め、22年にわたった現職ヤヤ・ジャメ大統領による体制についに終止符が打たれた。

バロウ氏は2日、「新たなガンビア」を祝った。ガンビアの人々は街頭に繰り出し、1994年のクーデターでジャメ氏が権力を掌握して以来最大の番狂わせを祝った。
 
大統領選の公式結果によると、バロウ氏は得票率45.54%で快勝。バロウ氏は実業家で半年前まで政治的には無名だったが、野党が連合して選出した初めての大統領候補で、かつてない民衆の支持を受けて当選した。
 
ガンビアの独立選挙管理委員会(IEC)によると、現職ジャメ氏の得票率は36.66%、第3党候補のママ・カンデ氏は17.80%だった。投票率は約65%。
 
ここ数年間、野党や批判勢力に対する弾圧でしばしば非難されてきたジャメ氏は、テレビ演説で敗北を認め「(ガンビア国民は)私が席を譲るべきだと判断した」と述べた。

5期目を目指していたジャメ氏はかつて、神が望むなら10億年間君臨し続けると述べたこともある。しかし、今回の選挙結果は神の意志で、尊重するつもりだと述べた。【2016年12月3日 AFP】
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普段のジャメ大統領からは考えられない“良識”です。

従って、その後「重大で受け入れ難い不正があった」として態度を一転、選挙のやり直しを求めている・・・というのは、「やっぱりね・・・・」といったところです。
(権力周辺に群がり甘い汁を吸ってきた既得権益層の突き上げがあったのでしょうか)

なお、ガンビアの選挙は、政党別に色分けされた樽にビー玉を入れる方式とか。

エイズ治療薬に魔女狩り “奇行の独裁者”】
普段のジャメ大統領の“エキセントリック”な言動がどんなものか・・・いくつか過去の記事を。

****ガンビアで大々的な「魔女狩り」、政府が支援か****
西アフリカのガンビアでは、政府が支援していると見られる「魔女狩り」が今年の初めから数か月間続き、全土を震え上がらせた。魔女狩りが終わって7か月が経過するが、深刻な健康被害に苦しんでいる人がいまだに大勢いると、病院関係者が13日語った。

魔女狩りが明るみになったのは、今年5月。ガンビアで自称「呪術師」らが1000人以上の村人たちを誘拐・拘束した事実が明らかになった。これら「呪術師」らには、政府の命令により、武装した男たちが護衛についていたという。

誘拐された村人たちは、幻覚剤のようなものを飲まされたという。そうした薬を飲まされて意識がもうろうとなったところを「呪術師」にレイプされたとする報告もいくつか寄せられている。幻覚剤の影響で腎臓や胃に障害が起きた被害者も多い。

こうした「魔女狩りキャンペーン」は既に終わっているが、今も精神的・肉体的な後遺症に苦しんでいる人は多い。これまでに幻覚剤による腎臓障害で死亡した人は、少なくとも8人にのぼっているという。

ガンビアのメディアは、魔女狩りを行っているのはギニア人たちで、今年始めにヤヤ・ジャメ大統領のおばが死亡した直後に呼び寄せられたと報じている。ジャメ大統領は、おばの死を魔女のしわざだと話していたという。

アフリカ大陸で最も面積が小さいガンビアは、1994年の無血クーデターで政権をとったジャメ大統領が、現在も政権の座にある。

ジャメ政権は近年、政敵や自身に批判的な人物への拷問や違法逮捕といった人権侵害を日常的に行っているとして、人権団体などから激しい槍玉に上がっている。【2009年11月17日 AFP】

「魔女狩り」については、以下のようにも。

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・・・・昨年、ジャメが奇妙な「魔女狩り」に傾倒しているとして欧米メディアで騒がれた。

目撃者などの証言によれば、ある日、村に銃を携えた「グリーンボーイズ」と呼ばれる大統領の民兵が現れる。「グリーンボーイズ」と呼ばれる理由は、彼らが緑の服を着用し、時に顔を緑にペイントしているからだ(緑は大統領の政党「再指針と構築フための愛国同盟」のカラー)。

そして何百という村民がバスに詰め込まれ、連行される。人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルによれば、魔女の疑いをかけられ連れ去られた人々は当時1000人に上った。
 
さらにおぞましいのは、拘束された村人たちは「秘密」の強制収容所で、悪臭を放つ秘薬を飲まされること。魔女や悪魔の妖術師が国家に害を与えていると説明を受け、体を清めるために飲むことを強要されるのだ。

それを飲んだ者は、幻覚を起こし、床に穴を掘ろうとする者や、壁をよじ登ろうとする者、そのまま死亡する者までもいるという。謎の飲み物の中身は不明だが、アムネスティによれば、少なくとも6人がそれを飲んで死亡した。
 
ある村では住民が捕まらないようにパニックになって逃げまどい、隣国セネガルに逃げ込んだり、村人全員が逃げて村がゴーストタウンになったというケースも報告された。さらに赤い服を着た工作員まで現れ、「国内に魔女がいて、大統領命で国民を捕まえて殺している」と平然と説明したという。
 
魔女狩りを批判した野党の党首は投獄され、国民も魔女狩りについて話せば拘束されるなどの仕打ちがあるから、みな黙って逃げるしかなかった。【2010年6月24日 Newsweek】
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****魔女狩りの国でクーデター計画****
アフリカ大陸の西部に位置するガンビアで、数年前にクーデターを企てたとして6月18日までに元軍人2人が起訴された。
 
ほとんどニュースにもなることのないガンビアだが、かなり異質な国だ。
 
人口180万人ほどで、国民の平均寿命は54歳。主要産業はピーナッツ栽培だ。
 
ガンビアを統治するのはヤヤ・ジャメ大統領。94年に無血クーデターで大統領の座についてから15年近く独裁者として君臨している。

ジャメは国民に自分のことを「将軍様」ならぬ、「偉大なる博士アルハジ・ヤヤ・ジャメ大統領」と呼ばせ、国内でやりたい放題だ。

たとえば、ジャメはエイズを数日間で治すことができると公言し、エイズ患者にはハーブとバナナを混ぜて飲ませる治療を施す。

同性愛者は打ち首にすると宣言し、クーデターの記念碑であるアーチが掲げられた道路は大統領以外、通行することが許されない。
 
言論統制にも抜かりがない。行方不明になるジャーナリストや反体制派には数知れず。投獄されると、ナイフで斬りつけられたり、タバコを押し付けられたり、電気ショックを与えられるなど、拷問も普通に行われるという。そんな状況だから、亡命するジャーナリストが後を絶たない。
 
悲惨なのは残された国民だ。(後略)【同上】
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【“内政不干渉”のアフリカ諸国も許容の限界?】
こうしたジャメ大統領が自由でオープンな投票を呼びかけ、戦後に敗北を認めるというのは“何か(良識ある)魔が差した”としか思えません。

ガンビアというアフリカ最小の国は資源大国コンゴと違って、ピーナッツ以外に資源も何もない国です。
それゆえ、ジャメ大統領の奇行にもかかわらず、国際社会も特段の関心も示さずほったらかしにしてきたのでしょう。

しかし、選挙結果を認めず居座るという事態に、普段は他国の強権支配などにも“内政不干渉”というか、関心を示さないアフリカ諸国・AUも、さすがに「いいかげんにしろよ!」といったところのようです。(と言うか、これからのアフリカのためには、こういう「古いアフリカ」は邪魔になってきたということでしょうか)

国の中央部を奥深くえぐられているセネガルも「やっと厄介者がいなくなる」と思っただけに面白くないでしょうし、西アフリカの地域大国ナイジェリアも“万が一の介入に備え、800名の軍がスタンバイしているという。またナイジェリアではジャメ氏の保護、つまり「亡命受け入れ」の用意があるとしている。”【ンボテ★飯村氏ブログ「ガンビアという国(13)」http://blog.goo.ne.jp/nbote/e/bff33e6ce254bdb57e5537edb49a5093】とのことです。
(ナイジェリアも国内のボコ・ハラムで手いっぱいでしょうに・・・“地域大国”としての責任感あるいは面子でしょうか)

なお、ンボテ★飯村氏ブログによれば、選挙後に軍や治安組織は新大統領への忠誠を宣言したそうですが、ジャメ大統領の居座り宣言で、どう動くのかは不透明です。

また、選挙に勝利したバロー氏は退任後のジャメ氏を追求したり、旧体制の「魔女狩り」を行うようなことはしない、と述べていました。【ンボテ★飯村氏ブログ「ガンビアという国(11)」より】

ガンビアに関心がある方(そんな人はあまりいないでしょうが、アフリカの現状に関心のある方)は、上記「ンボテ★飯村氏ブログ」をご覧ください。
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