
(シルトでの衝突(2016年11月撮影)。【1月27日 AFP】)
【「統一政府」部隊、ようやくIS拠点のシルトを制圧】
北アフリカ・リビア情勢について“超簡単”に言えば、カダフィ政権崩壊後、西のイスラム主義主導のトリポリ政府と東の世俗主義主導のトブルク政府が対立していましたが、国連仲介で一応は大統領評議会がつくられ、「統一政府」への権限移譲が図られました。
その結果、西では一応権限移譲が進んでいるものの、東のトブルク政府側は未だ「統一政府」を承認せず、二つの政府が並立する形になっています。
また、西についても、民兵組織のなかには「統一政府」に従わない勢力もあるようです。(従って、現在ある政府は“二つ”なのか、西も含めて“三つ”なのかも定かではありません)
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リビアでは11年の内戦でカダフィ政権が崩壊し、反カダフィ派による内紛が続く。
大統領評議会は首都トリポリ近辺を支配しているだけで、統一政府樹立交渉は停滞。東部ではカダフィ氏の側近だったハリファ・ハフタル将軍傘下の民兵が油田地帯などに実効支配を広げ、評議会と対立する。
西部トリポリでも今月、評議会の部隊と反評議会派の民兵が衝突するなど、政情不安が続いている。【2016年12月6日 毎日】
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リビアでは二つだか三つだかの政府、部族を背景にした非常に多くの民兵組織のほかに、ISなどイスラム過激派も勢力拡大を狙っていましたが、「統一政府」主導の部隊が、ISの拠点都市シルトをようやく攻略したと報じられています。
****リビアのISに打撃 最後の主要拠点、政府側が奪還****
リビア統一政府側の部隊は5日、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に掌握されていた中部の沿岸都市シルトを完全制圧したことを明らかにした。数か月にわたり同市で抗戦を続けていたISにとって、大きな打撃となった。
国連(UN)が支持する統一政府側の部隊の報道官はAFPに対し、「われわれの部隊がシルトを完全制圧」し、「ダーイシュ(Daesh、ISのアラビア語名の略称)の完全崩壊を確認した」と伝えた。
シルトは、ISがリビア内で掌握していた最後の主要拠点だった。その奪還作戦では、政府側部隊の数百人が犠牲になった。IS側の死者数は不明。
今年8月には米軍が空爆による支援を開始し、今月1日までに戦闘機や無人機、ヘリコプターによる470回の攻撃を実施した。【12月6日 AFP】
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「統一政府」部隊のシルト制圧については、2016年8月23日ブログ“リビア カダフィ政権崩壊から5年 IS拠点シルトを“ほぼ”制圧 進まない「統一政府」樹立”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160823でも取り上げました。
そのときの“ほぼ”制圧から今回の“完全制圧”まで、3か月以上を要しています。
IS側の抵抗の激しさもあるでしょうが、「統一政府」部隊の実力にも疑問が生じます。
シルトが陥落してもISが一掃された訳ではなく、各地に“散った”ということのようです。
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シルトに対する攻撃は5月に始まり、政府側で死者600、負傷者3000を出したとのことですが、ISの方では何人が殺され、どの程度が逃げ延び、どこへのがれたかは不明(少し前に、シルトが陥落すると、ISが周辺お国に拡散し、却って北アフリカの治安が不安定になるとの記事があったかと思う)【2016年12月6日 「中東の窓」】
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【アメリカ ステルス爆撃機でISキャンプを空爆】
その残存するIS戦闘員に対し、1月18日、アメリカが2機のステルス戦略爆撃機B2をアメリカ本土から出撃させて徹底した空爆を行うという“異例の作戦”が行われています。
****米ステルス爆撃機、リビアでIS戦闘員80人超殺害 異例の空爆作戦****
アシュトン・カーター米国防長官は19日、リビアにあるイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の複数の訓練キャンプを米軍が空爆し、IS戦闘員80人以上を殺害したと発表した。死者の中には、欧州での攻撃を企図していた者らも含まれていたという。
国防総省は、2機のステルス戦略爆撃機B2を米中西部ミズーリ州の基地から出動させ、34時間かけて北アフリカ入りさせるという、極めて異例の作戦に踏み切った。
コウモリのような形状が特徴的な同機が前回リビアに派遣されたのは2011年。この作戦は、同国で長期の独裁体制を敷いていたムアマル・カダフィ大佐の失脚につながった。
18日に実施されたこの大規模な空爆では、B2爆撃機2機に加え、複数の無人攻撃機「リーパー」が合わせて約100個の爆弾をISの訓練キャンプに投下。死亡した戦闘員の数よりも多い爆弾が使用された計算になる。
標的となったキャンプは、中部の沿岸都市シルトから約45キロ南西に位置する。シルトはカダフィ大佐の出身地で、リビアで勢力拡大を狙ったISが一時拠点としていた場所でもある。【1月20日 AFP】
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突然のごとくアメリカが、しかもステルス爆撃機を米本土から飛ばして空爆・・・一体何事か?と思ってしまいす。
そもそも、IS攻撃に“ステルス”がどれほどの意味があるのでしょうか?(ISがレーダー監視設備を持っているとも思えませんが・・・・周辺国からのISへの情報を警戒したのでしょうか?)
シリア空爆でロシアがいろんな兵器を“披露”した(武器輸出のための“広告”にもなるようですが)ように、アメリカもB2の存在をアピールしたということでしょうか?
アメリカ側は、ベルリンのトラックテロの犯人と連絡を取っていた者(複数)が滞在しているとの情報があり、ISが新たな欧州でのテロを計画していた・・・・と説明しているようです。
【トブルク政府はベンガジのイスラム過激派を攻撃】
一方、東のトブルク政府の方は、ベンガジのイスラム過激派を攻撃しているようです。
****過激派との戦闘(リビア)*****
・・・・もう一つの戦闘は、トブルク政府軍(haftar将軍)が、同じく19日から、ベンガジの過激派に対する攻撃を行っていることです。
ベンガジでは、過激派を中心に地方勢力が革命評議会なる組織を作り、これをhaftar将軍指揮下のリビア軍が長いこと攻撃していて、トブルク政府によれば、その大部分は奪還したとのことですが、まだ過激派の支配するポケットが残っていて、これを攻撃している由
過激派にはアルカイダに近いansdar al sahria とIS要因が含まれている由【1月20日 「中東の窓」】
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【“エジプト・カイロで「統一政府」代表のセラジ首相と、トブルク政府のハフタル将軍が対談する”との報道】
「統一政府」部隊、米軍、そしてトブルク政府軍がそれぞれ“邪魔者”イスラム過激派を攻撃・制圧したことで、政府間の統一交渉の舞台も整ってきた・・・とも言えます。
そんななかで、“エジプト・カイロで「統一政府(トリポリ)」代表のセラジ首相と、トブルク政府のハフタル将軍が対談する”という情報が報じられています。
****『リビア状況進展セラジ・ハフタル会談近い』*****
リビアの混乱状況が、鎮静化の兆しを見せている。先にリビア軍が、シルテ市をIS(ISIL)の手から解放したが、次いでベンガジ市の解放が近いようだ。リビア軍がベンガジ市に立てこもる、アルカーイダ系テロ組織や、IS(ISIL)と戦闘を展開しているが、大分リビア軍の支配地区が、拡大しているようだ。
合わせて、カイロでリビアの統一政府(トリポリ)代表のセラジ首相と、トブルク政府のハフタル将軍が、対談することが、予定されている。この対談は、セラジ首相とハフタル将軍が、直接二人きりで行う場面もある、と報じられている。
この会議に先立ち、チュニジアのバージー大統領がカイロを訪問し、二国間関係に加え、アフリカ首脳会議でリビアの問題を、話しあうことで意見交換を、行っている。
なお、セラジ首相とハフタル将軍との話し合いには、エジプトとロシアの後ろ盾がある、ということだ。ロシアとすれば、アスタナで開催された、シリアの和平会議が、ほぼ成功したことに合わせ、リビアの問題解決も成功させたい、ということであろう。
こうなると、ロシアはシリアに次いで、リビアに軍事基地を、持つことになろうし、中東での発言力も拡大し、アラブ各国との関係も、進展するということになろう。それは、アメリカの民主党や軍産複合体にとっては、不愉快な動きということになろう。【1月27日 佐々木 良昭氏 「中東TODAY]】
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ロシアの関与については上記記事以上のことは知りませんが、リビアに隣接するエジプト、チュニジア、アルジェリア3国の和平に向けた動きと連動しているようです。
シリア同様、アメリカ抜きで事態が進展する・・・という話でしょうか。
【少ない情報 リビアでの取材の困難さ】
とにかく、リビアに関しては情報が少なく、書いていてもよくわからないことが多々あります。
情報が少ないのは、いついまでたっても分裂状態がおさまらず、世界の関心がもはやリビアから離れてしまっているということもありますが、非常に多くの勢力が跋扈するリビアにおいて取材することが難しいということもあります。
****【AFP記者コラム】分裂と混迷のリビアから続ける報道****
今リビアから報道するということは、控えめに言っても難題だ。敵対し合う2つの政府が国内の異なる場所に樹立されている。何十もある武装組織が、それぞれの縄張りで幅を利かせている。
これらのいずれかが世界に何かを発信しようとするときには、ソーシャルメディア、主にフェイスブック(Facebook)を活用する。だがこれらの発表が、実際に起こっていることを本当に反映していると確信することは決してできない。
そのせいで混乱が生じることもある。特にここでは国民の大半がフェイスブックからニュースを得ているのだからなおさらだ。
私が毎日最初にしなければならないことの一つは、こちらとあちらの政府、さらにこちらとあちらの民兵組織のそれぞれについて、その日の担当者を特定することだ。連絡先はころころ変わる。幹部や広報担当者もしかりだ。
おまけに国家は二分されている。国際社会が後ろ盾となっている政府は西部に位置する首都トリポリにあり、一方、元リビア軍将官ハリファ・ハフタル(Khalifa Haftar)氏と近隣諸国の支持を受ける政府は東部を拠点としている。
両政府がそれぞれ独自の通信機関を抱えているが、名称はどちらも「国営リビア通信(LANA)」だ。両方のLANAがそれぞれの政府の声明文を発表し、さらに相手側の信頼性をおとしめようとする。
よって私の仕事には困難が付きまとう。例えば、東部の政府がトリポリで起きた衝突の死者数を公表したとする。トリポリの政府からはまだ衝突に関する発表さえない。その場合、私は東部政府の発表をうのみにして良いのだろうか?
真の状況を見極めるため、複数の情報筋(5~6つあるのが理想)を確保するようにしている。そうして初めて、情報を外に出すことができる。
私が仕事をするのは大抵夜だ。リビア人は就寝するのも起きるのも非常に遅い。だから情報の大半は夜入ってくる。だから事件が起こって現場に向かおうとすると厄介なことになる。全土に無数の検問所があり、犯罪率は異常に高く、誰の慈悲を乞わざるを得なくなるか知る由もない。
リビア人にとって、ニュースの主な入手源はソーシャルメディアだ。ここでは誰もが携帯電話を持っている。だがインターネットにアクセスできるからといって、十分に情報を得ていることを意味するわけではない。当局者らは、あるメディアに対して発した声明を、その直後に別のメディアに否定してみせることもままある。
■真実とうそ、そのはざまにある何もかも
真実とうそ、そしてそのはざまにあるありとあらゆる情報──とにかく全てがフェイスブックに投稿される。
ネットへのアクセスが遮断されれば、この国の状況はましになるのではという気さえすることもある。そうすれば人々はうわさにもアクセスしなくなる。そもそも出回っている情報の約9割がうわさ話なのだ。(中略)
国の治安部隊の不在も事態を複雑にしている。国連(UN)とトリポリの政府は、政府機関や大使館の警護に当たる「大統領警備隊」なる組織の創設を検討している。
どこかで何かが起きた場合に情報を得るには、その区域を牛耳っている民兵組織を通す必要がある。ただし民兵組織は支配地域内の秩序維持という名目で政府から財政支援を受けているため、自分たちの縄張り内で衝突が発生した場合を除き、毎度口を開いてくれるとは限らない。
現場で直接情報収拾に当たってみることももちろん可能だが、外国人にとっては危険を伴う。私のようにチュニジア出身で、リビア国内でも同姓が見つかる「近場の外国人」でもそうだ。民兵組織の支配地域は常に変化し、検問所は林立し、スパイ容疑をかけられることも珍しくない。
こういうジグソーパズルのような状況の中で働くには、一定のノウハウが必要だ。例えばシルトでは、帳面よりもカメラで仕事をした方が良い。地元民兵らは私が鉛筆を出して何をしているのかといぶかしみ、スパイに違いないと断定されてしまう。
それはムアマル・カダフィ政権下でも同じだった。カメラを持っていたおかげで危機的状況を回避できたこともあった(ジャーナリストならばカメラを持っているはずだと思われたようだった)。ところが首都トリポリでは真逆だ。どんな場合でもカメラを取り出してはいけない。
首都には首都ならではの難しさがある。表立って取材して良い時と、用心すべき時をわきまえなければならない。市内に民兵組織がいくつあるのか、またそれぞれの支配地域はどこなのか、誰も正確には把握していない。
数十の組織が存在し、複数のグループを取り仕切る上部組織が少なくとも5つあるのは間違いない。だが厳密にはいくつあるのか、答えられる人間はいない。その点、地方都市は1つまたは2つの地元部族を主とする民兵組織が取り仕切っているので分かりやすい。(中略)
犯罪率は極端に高く、とりわけ外国人が狙われる。リビア人は大半が武装しているため、泥棒も地元住民の家に侵入する危険は冒さない。ロケット発射装置を備え付けてある家に入ってしまうかもしれないのだから…。(中略)
2011年のリビアでは、記者はどこへ行っても歓迎された。だがそれはもう遠い昔の話だ。今は私が話す相手の多くが、私のことをフランス政府のスパイだと思い込んでいる。
苦労しているのは私だけではない。記者仲間の多くがこの国を去っていった。停電や電話回線の遮断のせいで、仕事環境はますます厳しくなっている。
私が最も恐れているのは空港の閉鎖だ。民兵組織が統制しているため、急いで出国したい時に問題になりかねない。ある意味、今のリビアは何もかもが偶然的だったカダフィ時代と変わらない。しかも今はそこに、治安上の混乱が加わっている。
民兵組織は、地元の「有力者ら」からなるどちらかの政府から資金を得ている。中には密航に関わって金もうけをしている民兵組織もある。
彼らは沿岸警備を担うが同時に、欧州行きを切望する移民らがひしめく船の出航も管理している。時には密航あっせん業者を阻止し、自分たちの「仕事」を続けるためとして政府に金銭を要求することもある。
一方でリビアは素晴らしい国でもある。優美な景観に恵まれ、生活のリズムはゆったりしており、古代ローマ時代にさかのぼる遺物の保存状態も良い。
この国の最大の問題は、国よりも地方、地方よりも部族が優先されることにある。おのおのに強烈な独立心があるため、国の一致団結を保つ集合体が生まれにくいのだ。【1月27日 AFP】
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リビア人と区別がつかないチュニジア出身記者でも上記のように取材には苦労していますので、欧米系記者が動ける余地は殆どないでしょう。
そうした情報不足のなかでの前出“統一政府代表のセラジ首相と、トブルク政府のハフタル将軍の会談”報道ですが、ぜひとも実現し、事態進展に寄与することを望みます。