孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

エジプト  テロの頻発と物価上昇・経済混乱 シシ人気に陰りも

2017-01-25 23:19:42 | 北アフリカ

(エジプトの首都カイロのスーク(市場)で果物や野菜を買い求める客ら。牛肉より安価なラクダ肉を宣伝する横断幕(右上)もあった=2017年1月19日、秋山信一撮影 【1月24日 毎日】)

シナイ半島でも、カイロでも、そして南部でも
私事ですが、3月末から4月初めにかけて、エジプト観光を予定しています。

10年ほど前にカイロからも近いピラミッドとか、白砂漠(日本ではあまりメジャーではありませんが、単なる砂漠だけでなく、なかなか風変わりな風景が楽しめます)などを観光しましたので、今回は、ナイル川をさかのぼって、ルクソールやアスワン・アブシンベルを中心にしたスケジュールを考えています。

いつもの一人旅ですので、現地での移動手段などを日本人が経営する現地旅行会社に手配を依頼しているのですが、“現地発ツアー”の形でセットされたものは時間的にタイトで(早朝3時ホテル出発とか・・・)、“詰め込みすぎ”の間があったので、一部は個人的にオーダーする形に。

アスワンハイダムで有名なアスワンから、有名な神殿のあるアブシンベルへの移動についても、「ガイドブックで見るとバスもあるみたいなので、個人で移動します。」と相談したところ、「バスの時刻については把握できないので、バスステーションへの送迎等も手配できません。安全も保証できません。“現地発ツアー”を利用しない場合は、通常、専用車の“コンボイ”を組んで、警察車両が付き添う形で移動します。」との回答。

“コンボイを組んで警察のガード付き”というのは大袈裟な・・・と思って、改めて地図を確認すると、アブシンベルは殆どスーダン国境も近いエリアです。

エジプトの治安については、北東部シナイ半島でイスラム過激派が跋扈しており、テロも頻発していることは承知してますが、南部のスーダン国境付近というのも、何があっても不思議ではなさそう。

現地発ツアーが“早朝3時ホテル出発”なんてスケジュールになっているのも、深夜の暗闇の中を車をぶっ飛ばして、テロなどの危険を避けようとの狙いもあるのでしょうか・・・・。

素直に、現地旅行会社の勧める“専用車のコンボイを組んで警察のガード付き”をお願いすることにしました。

シナイ半島については、“いつものように”治安当局を狙ったテロが起きています。

****シナイ半島の検問所で爆発、警官ら9人死亡****
エジプトのメディアによると、同国東部のシナイ半島北部にある検問所で9日、車の爆発と銃撃があり、少なくとも警官ら9人が死亡、市民を含む18人が負傷した。
 
爆発したのは数日前に盗まれた清掃車で、大量の爆発物が積まれていた。爆発の後に武装グループが警官らを銃撃した。
 
犯行声明は出ていないが、シナイ半島ではイスラム過激派組織「イスラム国」の関連組織が軍や警察へのテロ攻撃を繰り返している。【1月9日 読売】
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なお、首都カイロでも昨年末に大規模テロが起きています。

****教会でテロ、25人死亡=イスラム過激派の犯行か―カイロ****
エジプトの首都カイロ中心部にあるキリスト教の一派、コプト教の教会で11日午前(日本時間同日午後)、爆弾テロとみられる爆発があり、保健省によると少なくとも25人が死亡、49人が負傷した。
 
殺害の手口から、過激派組織「イスラム国」(IS)などイスラム過激派による犯行の可能性がある。11日はイスラム教の預言者ムハンマドの生誕を記念する祝日だった。在エジプト日本大使館によると、事件に日本人が巻き込まれたとの情報はない。
 
教会はコプト教大聖堂の付近にあり、爆発があった際、日曜ミサのため多くの信徒が集まっていた。地元メディアは「死者の多くは女性だった」と報じている。
 
コプト教徒はエジプトの人口の約10%を占める少数派。たびたび過激派の標的になってきたが、これほどの犠牲者が出るのは最近では異例だ。【2016年12月11日 時事】 
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コプト教会があるエリアというのは、前回旅行の際に散策したエリアです。
上記カイロのテロについては、ISが「神のため、十字軍(キリスト教徒)の集まりの中で爆弾の付いたベルトを爆発させた」との犯行声明を出しています。

で、今回私が行く予定の南部は・・・というと、南部でもテロが起きています。それも、つい最近です。

****銃撃で警官8人死亡=エジプト****
エジプト南部の砂漠地帯で16日、武装集団が検問所を襲撃し、警官8人が死亡した。内務省が明らかにした。反撃で武装集団側の2人も殺害されたが、実行犯の一部が逃走した可能性もあり、治安当局が行方を追っている。【1月17日 時事】 
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事件が起きたのは、スーダン国境だけでなくリビア国境も近い南西部にあたり、アブシンベルとはだいぶ距離はありそうです。(たぶん・・・・)

要するに、首都カイロだろうが、シナイ半島だろうが、南部砂漠地帯だろうが、今のエジプトはどこでもテロの危険がある・・・ということです。

ロシア航空機墜落事故や相次ぐテロで、エジプトを訪れる観光客は大幅に減少し、観光業を基幹産業とするエジプト経済にとって大きな問題となっています。

観光客が減少しているので、ホテル代や移動費用も安くなるかも・・・なんてことも考えたのですが、そういう問題ではなさそうです。

通貨下落による輸入品価格上昇 シシ大統領の人気にも陰りが
今回のエジプト旅行手配でやや困惑しているのはホテルの支払い。
ホテルについては、現地旅行会社手配ではなく、個人でネットのホテル検索サイトから予約しました。

通常、こういうサイトを利用すると、支払いはクレジットカードで決済することが多いのですが、エジプトのホテルは“現地で現地通貨で支払い”という形が多いようです。

予約サイトの金額は日本円で表示されています。“現地通貨”で支払いという話になると、その時々のレートで換算する話になるのでしょうが、そのレートは誰がどういうルールで決めるのか?

エジプトという国は、日本のように“外国人観光客に親切な国”というよりは、多くの国々同様、“外国人観光客からは取れるだけふんだくる”といった国です。ホテルが“適切な”レートを提示してくれるのでしょうか?

ホテル検索サイトに確認しても、現地通貨支払なのか、米ドル支払なのかはっきりしない様子。現地確認したところ、やはり現地通貨で・・・という話になっています。「だったら、現地通貨建ての予約価格を教えて」と、一応は聞いてはありますが・・・。予約確認書にその金額が表示されないのも不思議な話です。

現地で“おかしいな・・・”と思っても、言葉の面で交渉・喧嘩するのも難しいので、どうなるのか不安です。

実は、エジプトは財政危機にあり、IMFの指導によって昨年11月から変動相場制に切り替わったばかりです。
そういう事情もあるので、ホテルでの“レート”交渉はてこずるかも。

まあ、私の個人的不安は別にしても、変動相場制移行でエジプトポンドが大幅に下落し、輸入品価格が上昇し、これまでの物価上昇に更に拍車がかかっているという大きな問題にもなっています。

****<エジプト>革命6年 物価上昇加速で民衆の不満蓄積*****
エジプトで民主化要求運動「アラブの春」による革命時に大規模なデモが始まって25日で6年を迎える。民衆は「自由、パン(経済立て直し)、社会正義(不正廃絶)」を叫んで独裁政権を打倒したが、昨年後半から物価上昇が加速し不満が高まっている。シシ政権は強権的で、自由や社会正義の実現も程遠い。
 
「牛肉は高くて買わない。砂糖も半年で3倍に値上がりした」。カイロの主婦、ライラ・サイードさん(48)はため息をつく。

牛肉は1キロ130エジプトポンド(約780円)と数年前の倍だ。近所の市場ではより安価なラクダ肉が人気。紅茶にたっぷり砂糖を入れて飲む習慣があるだけに砂糖の価格高騰は井戸端会議でも不満の種だ。
 
国際通貨基金(IMF)によると、2007〜11年の物価上昇は10%超。革命の一因となったとも言われる。革命後の12〜13年は10%以下だが、シシ氏が大統領に就任した14年以降は10%を超えた。
 
通貨ポンドも下落。革命後の混乱で外国からの観光客や投資が減少し財政赤字が膨らんだ。政府は、輸入に頼る食品や医薬品の価格上昇を防ぐため、事実上の固定相場制を採用し、IMFに財政支援をあおいだ。
 
だがIMFは投資家らの信用を得るため変動相場制への移行を要求。政府は昨年11月に変動相場制を導入し対ドルレートは約2カ月半で1ドル=約9ポンドから約19ポンドに暴落した。物価上昇は続き昨年12月は前年比25%超だ。
 
一方、シシ大統領の人気には影が差している。民間調査機関バシーラセンターの調査では、シシ氏の政権運営に「満足」な人は昨年5月に91%だったが同10月には68%に急落。不満の理由の74%は物価高だった。「明日大統領選があればシシ氏に投票する」と回答した割合も、81%から59%に落ちた。
 
シシ政権は政権に批判的な勢力を弾圧、メディア規制も復活した。腐敗体質は革命前と同様だ。カイロ大学のハッサン・ナファ教授(政治学)は「国民の我慢にも限度がある。18年の次期大統領選までに新たな政治的動きが出てくる可能性がある」と分析している。【1月24日 毎日】
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軍部出身のシシ大統領は、クーデターによる権力奪取やその強権的政治手法に関して、アメリカ・オバマ政権や人権団体などからは批判されてきましたが、国内的にはムバラク政権崩壊以来の混乱を鎮めてくれる・・・ということで高い人気がありました。

しかし、今後の物価情勢次第では、その人気にも陰りが・・・という話です。

支持率低下に関しては、以下のようにも

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エジプト政府に近いと目されるNGOのbaseeraセンターの行った世論調査(先月電話で1515名を対象に行った由)では、シーシ大統領の支持率が一貫して下がっている。
彼は現在でも最も望ましい政治家とされてはいるが、その支持率は2014年の54%から、2015年の35%と、更に2016年では25%と一貫して下がってきている。【1月5日 「中東の窓」】
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もっとも、“シシ大統領に代る政治家も今のところはいない”という状況のようです。

旅行には米ドルを多めに持参するのがいいかも。ホテル支払いも米ドルの方が歓迎されるかも。

通貨下落・輸入品価格上昇による一番深刻な影響を受けているのが医薬品のようです。
製薬会社は薬の原料の9割を輸入に頼っているため医薬品の値段が急騰。シシ大統領は“半年たてば状況よくなる”と語っているようですが。

****エジプトの薬危機****
エジプトでは、通貨のフロート等から諸物価が値上がりしたり、必需品が姿を消すという、深刻な状況が生じていますが、この問題をの直撃を受けたのは医薬品の分野のようです。

12日付のal arabiaya netは、エジプト国民は医薬品の価格が15~26%引き上げられると予想していると報じるとともに、重要な薬品が薬局の棚から姿を消し、闇市場では手に入るが、薬局での購入価格の100%以上の価格をつけているとして、特に慢性病患者や所得の低い階層にしわ寄せが行っていると報じていました。

しかるに16日付の同ネットは、その日12日に保険大臣が声明を発して、薬品の製造業者及び輸入者と合意に達したが、その薬品の種類は3000に上ると発表したよし。

さらに保健省内の薬局組合に対して、474の製造者からの新価格が提示された由。

これに対して、薬局組合はこの通知を不満として、部分的ストライキを15日から1週間行うこととしていたが、当局が彼らの不満にこたえないのであれば(何が具体的不満かの説明はない!)、2月1日から全面的に薬局を閉鎖することもありうるとしている由。

これに対して大統領府が介入してきて、大統領は価格引き上げが29%にもなるとの報道を否定し、また価格監視の体制を整えると約した由。

al arabiya が聞いて回ったところでは、大部分のエジプト人は、医薬品は市場の価格変動に任せられるべきではなく、政府は十分な薬品が適正な価格で、国民に提供されるべきであると考えている由。

シーシは先日の大新聞の編集長たちとの会見で、エジプト政府は3年前から政府としての製薬工場を建設中で、工場は6月30日に完成予定で、工場はエジプト国民に対して十分や薬品を提供するであろうと約束した由(後略)【1月17日 「中東の窓」】
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今日ののTVニュースでも、この医薬品問題を取り上げていました。
価格が上がって医薬品が手に入らなくなった一般市民の間で、伝統的なハーブ(一種の漢方薬みたいなものでしょう。正確には生薬ですが)が大人気だそうです。

旅行には、薬も忘れずに用意した方がよさそうです。

治安の不安にしても、経済の混乱にしても、旅行中にそういう問題に触れる機会があればむしろ上出来なのでしょうが(もちろん、テロに巻き込まれるのは論外ですが)、実際のところは単なる観光旅行ですから、観光地めぐりに終始するのでしょう。
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