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(【3月30日WEB RONZA】再生可能エネルギーの急拡大、それに伴うコスト低下は、環境問題抜きにしても、再生可能エネルギーに向かう流れを生み出しています。)
【地球温暖化の研究は税金の無駄?】
かねてより想定されていたように、アメリカ・トランプ大統領が温暖化規制の見直しに着手しています。
****オバマ温暖化規制を見直し、トランプ氏が大統領令に署名 「パリ協定」実現遠のく****
トランプ米大統領は28日、オバマ前政権時代に導入された地球温暖化対策に向けた規制を見直す大統領令に署名した。
米国の温暖化対策の後退は必至で、パリ協定で目標とした二酸化炭素(CO2)排出量の削減も困難になる見通し。トランプ氏は署名に際し「米国の雇用を奪う規制をやめる歴史的な一歩だ」と訴えた。
見直しを指示した規制の中には火力発電所のCO2排出を抑える「クリーン・パワー・プラン」も含まれる。地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」で米国が示したCO2などの温室効果ガス削減目標を達成する中核的な政策で、大幅に見直せば実現が遠のくことになる。
CO2排出量が中国に次ぐ世界2位で、これまで世界の温暖化対策をリードしてきた米国の方針転換は、協定に参加する他国の意欲をそぐなど悪影響を及ぼすことが懸念される。
ただし今回の大統領令はパリ協定の取り扱いに触れていない。政権内では協定からの離脱をめぐって主要メンバーの意見が割れているとされる。
大幅な見直しは環境団体による訴追に発展する可能性が高く、施策に反映させるまで曲折もあり得る。パリ協定で米国は国内の温室効果ガス排出量を2025年までに05年比で26~28%削減する目標を提出。クリーン・パワー・プランは火力発電所からのCO2排出量を30年までに05年比で32%削減するとしていた。
大統領令はこのほか、オバマ前政権が温暖化対策で凍結した国有地での石炭採掘の新規認可も認めた。国内で石油や天然ガスの探鉱や開発も促進するよう指示した。また、前政権下で推進された、炭素を排出することによって生じる社会的な費用・影響の計算もやめる。【3月30日 SankeiBiz】
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トランプ政権の温暖化対策への否定的な見解は、大統領令に先立って、すでに明らかにされていました。
米環境保護局を繰り返し提訴してきたプルイット氏を米環境保護局長官に据えるというのは、その最たるものです。
****米環境長官、温暖化とCO2の関連を疑問視 科学者ら猛反発****
米環境保護局(EPA)の新長官に就任したスコット・プルイット氏は9日、二酸化炭素(CO2)は地球温暖化の主な原因ではないとの見方を示した。気候変動をめぐる科学界の合意と真っ向から対立する見解だ。
化石燃料擁護派として知られるプルイット氏は、オクラホマ州司法長官時代に繰り返しEPAを提訴しており、EPAトップへの起用は大きな論争を巻き起こしていた。
プルイット氏は米経済専門局CNBCに対し、「人間の活動が気候に与える影響を正確に測定するのは非常に困難であり、影響の規模に関しては意見が大きく分かれる。私は、それ(CO2)がわれわれの目にする地球温暖化の主な原因だとする考えに賛同しない」「議論を継続し、見直しと分析を繰り返していく必要がある」と述べた。
この発言を受け、科学界は即座に猛反発。一部の科学者からは、プルイット氏の辞任を求める声も上がっている。米国立大気研究センター(NCAR)のケビン・トレンバース氏は「CO2の増加が地球温暖化の主な要因であることは疑いがない」とし、プルイット氏にはEPA長官を務める資質がないと批判した。【3月10日 AFP】
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温暖化に関する研究は“税金の無駄”とも。
****温暖化研究「税金の無駄」・・・・米政権が方針強調****
米国のマルバニー行政管理予算局長は16日の記者会見で「(地球温暖化の研究に)もうお金は使わない。税金の無駄だ」と述べた。
トランプ米政権が温暖化対策を後退させる方針を改めて強調した。(後略)【3月17日 読売】
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【CO2濃度が主因かどうかについては異論もあるものの・・・】
温暖化が進行しているのはほぼ事実でしょう。
****地球温暖化、これまでの予測を13%上回るペースで進行―米メディア****
世界的な温暖化に、新たな証拠が加わった。 米オープンアクセスジャーナル「Science Advances」が掲載した、中国と米国の科学者が行った共同研究の成果によると、世界的な温暖化のペースはこれまでの予測を13%上回るという。科技日報が伝えた。
論文の筆頭著者、中国科学院大気物理研究所副研究員の成里京氏は、記者の取材に応じた際に「温室効果ガスの排出により、地球には多くの熱が留められることになり、その温暖化を直接促す作用を及ぼしている。これらのエネルギーの9割以上が海の中に留められている。そのため海洋の熱含量の変化は、気候変動の重要な指標だ」と指摘した。(後略)【3月17日 Record China】
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大気中のCO2も確実に上昇しています。
****大気中のCO2濃度、16年に史上最高 今年も上昇中 米海洋大気局****
米海洋大気局(NOAA)は10日、大気中の二酸化炭素(CO2)の濃度が2016年に観測史上最高を記録し、今年1~2月にも上昇を続けているとの報告書を発表した。(後略)【3月11日 AFP】
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問題は、進行する温暖化がCO2などの温室効果ガスの増加によってもたらされているかどうかの判断です。
この点に関しては、必ずしも自明ではないとの指摘もあるようです。
****米政権交代で弾み? 「温暖化CO2主因説」の再検証****
二酸化炭素(CO2)による地球温暖化を否定するトランプ米大統領が、火力発電所に対するCO2排出規制の撤廃に踏み出した。去年の大統領選以降、米科学界はトランプ氏の姿勢について「科学の軽視は許されない」と猛反発しているが、人為的なCO2の排出を気候変動の主因とする温暖化論はいまだ仮説の域を出ていない。CO2以外の気候変動のさまざまな要因を検証する研究が進められており、異論も出ている。
■大きな自然変動要因
3月18日、都内で開かれた北極域の研究報告会で、国立極地研究所国際北極環境研究センター長の榎本浩之教授(雪氷学)は、北極研究を富士登山に例えると何合目に達したかと司会者に問われ、「少し登ったつもりでもまだ麓をうろついているだけ。何かが分かったと思うのは間違いだ」と、科学的な知見がまだ乏しいことを素直に認めた。
その端的な例として榎本教授が示したのは、最近、英科学誌に掲載された米カリフォルニア大学の論文だ。最近の北極海氷の減少の半分近くは自然変動がもたらしているという内容で、定量的な分析は初めてという。北極域は地球温暖化の影響が最も現れていると見なされてきたが、自然変動要因がこれほど大きいとなると、温暖化の解釈は容易ではなくなる。
20世紀末から観測された地上気温の停滞(ハイエイタス)は、CO2濃度が高くなると気温が上がるとする単純な温暖化シミュレーションが通用しないことを物語った。大気と海洋の相互作用を加味すると、気温の再現性が改善されることが分かった。この場合、人間の手が直接及ばない海洋の影響がやはり半分ほどになるという。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、人為的な温暖化ガス排出のリスクを評価し、実質的にはパリ協定を通じて各国に対策を促している。しかし、温暖化ガス以外の気候変動要因を深く検証することはせず、むしろ軽んじてきたのが実情だ。この結果、シミュレーションでは再現できないハイエイタスのような現象に向き合いにくい。
■太陽や宇宙線の影響も
気候変動要因として、ずっと以前から取り沙汰されているのが太陽の影響だ。名古屋大学の草野完也教授(天体物理学)は「太陽からの総放射量の変動幅は0.1%ほどだが、紫外線は数%から10%。成層圏から対流圏への波及が考えられる」と話す。活発な時期に大量に放出される太陽風は大気上層の空気をイオン化し、大気の化学組成を変えるという。
草野教授は「こうした要因はこれまでのシミュレーションにほとんど入っていない」と指摘したうえで「複雑な科学を十分に吟味した上で政策に反映してもらいたい」と注文をつける。同氏は約1000年前に現代ほど暖かだった中世温暖期も太陽の影響が大きかったとにらんでおり、実証を目指している。
はるか宇宙のかなたから飛来する放射線の働きも分かってきた。立命館大学の北場育子准教授(古気候学)らは、地球の磁場が弱まると宇宙放射線が雲のもととなり、太陽光を跳ね返して気温を下げる効果があることを、数十万年前の大阪湾の堆積物から解明した。現在、地球磁場はゆるやかながら減少しており、雲と宇宙放射線の関係はさらに注目されそうだ。【4月3日 日経】
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素人がとやかく言える話ではありませんが、上記のような異論がある一方で、多くの専門家・科学者がCO2濃度の温暖化への作用を肯定しているのも事実であり、もしCO2濃度が主因であるとしたら、対応への時間低余裕が残されていない現状にあっては、政策決定者は異論より主流派見解に基づいて行動をするのが合理的でしょう。
自分にとって“好ましい”異論に固執するのは合理的判断とは言えません。
少なくとも、主流派見解に逆らってCO2濃度が主因でないと考えるのであれば、それこそ税金を大量に投入してそのあたりの検証に努めるべきであり、温暖化研究を「税金の無駄」とするような発想は、科学的根拠を全く欠いた独断・偏見にすぎません。
【石炭産業の雇用を救済するため人類的課題を放棄? 主導権を狙う中国】
その結果、アメリカが被害をこうむるというのであれば自業自得ですが、世界第2位のCO2排出国であるアメリカの対応によって全世界が影響を受けることいにもなり、迷惑千万な話です。
ましてや、言われているように“石炭産業の雇用を救済するため”になされた大統領令・・・という話であれば、無責任としか言いようがありません。
****<温室効果ガス>米の削減目標達成「無理」 NGO分析****
トランプ米大統領が出した大統領令によってオバマ前政権の地球温暖化対策がまったく実行されない場合、米国が掲げる温室効果ガスの削減目標を「達成できないことはほぼ確実」とする分析結果を、科学者らで作る国際NGO「クライメート・アクション・トラッカー(CAT)」が発表した。
米国は温室効果ガスを2025年までに05年比26〜28%削減する目標を掲げているが、「6%の削減にとどまる」と指摘している。
オバマ前政権は、火力発電所からの二酸化炭素(CO2)排出量を制限するよう義務づけ、CO2排出量の多い石炭火力の新設を事実上不可能にした「クリーンパワー計画」を掲げた。トランプ氏の大統領令は、同計画に基づく一連の政策を「停止か、修正か、取り消す」よう環境保護局に命じ、石炭などの採掘規制も緩和する。
CATの分析では、同計画を完全に実施すれば25年に05年比で9%削減できるとした。オバマ前政権が決めた「気候行動計画」で車両の燃費改善などが進めばさらに約17%を削減でき、目標の達成が可能とした。しかし、トランプ大統領はどちらの計画も実行しない方針で「今後の排出削減は見込めない」とした。
米国は世界第2位の排出国で、温暖化対策の国際枠組みのパリ協定が骨抜きになることが懸念される。
ただし、CATは「クリーンパワー計画の廃止には多大な手続きと時間がかかる上、太陽光や風力発電などの低コスト化で、市場は再生可能エネルギーにシフトし始めている。大統領令で大幅に化石燃料の使用が増えるかは不透明だ」とも指摘している。【4月4日 毎日】
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アメリカが温暖化対策から撤退することは、人類的課題への対応・責務を放棄し、中国がこの分野での主導権を握るという話にもなります。
****温暖化対策の主導権が中国へ?トランプ大統領令で****
CO2削減で大きく後退する米国、大気汚染対策に熱心な中国
トランプ米大統領は3月28日、オバマ政権時代の気候変動対策を大幅に見直す大統領令に署名した。この問題で世界をけん引してきた米国は表舞台から立ち去ろうとしている。代わりに、今後は中国が温暖化対策で主導権を握ることになりそうだ。(中略)
「今回の大統領令は、石炭産業の雇用を救済するためだと言われています。簡単に言えば、そういうことです」。石炭火力発電を支持する企業で組織された電力信頼性調整委員会(ERCC)のスコット・シーガル氏はいう。(中略)
一方、中国のリーダーたちは石炭による発電を減らす方向へ動いており、炭素排出量を削減するには世界的に足並みをそろえる必要があるとの姿勢を改めて強調した。(中略)
ビジネスチャンスを逃す米国
気候変動に関する政策がどうであれ、再生可能エネルギーは、価格が急上昇することもある化石燃料への緩衝材となり、また回復力のある電力網を構築し、大気もきれいにとして注目が集まっている。ブルームバーグ・ニュー・エネルギー・ファイナンスによると、2040年までに世界で8兆ドル近くが再生可能エネルギーに投資される見通しだ。
米国も、その市場シェア獲得に奔走している。(中略)ここでもおこぼれにあずかるのは、世界有数の風力発電と太陽光発電の製造工場を有する中国だろう。コーテンホースト氏は警告する。「再生可能エネルギーへの移行から米国が手を引くなら、空から降ってきた市場機会を、中国がこれ幸いとさらっていくでしょう」【3月31日 NATIONAL GEOGRAPHIC】
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中国が温暖化対策に積極的になりだした理由、中国の対応の問題点などは今回はパスします。
温暖化対策でも、自由貿易でも、中国が主導権という奇妙な話です。
【エクソンモービルも石炭大手もパリ協定離脱に反対】
問題は、温暖化対策に後ろ向きな対応をとることは、上記記事最後に指摘されているように、経済的にもビジネスチャンスを失い、技術革新のきっかけを失いという高い代償を支払うことにもなるという点です。
このため、アメリカ国内にあっても、経済界はむしろトランプ政権の「環境より経済」という対応に反対しているとのことです。
****トランプの「反・温暖化対策」に反対する意外な面々****
・・・・しかし今回、意外なところから反発の声が上がっている。米経済界だ。
「温暖化はパリ協定のような多国間合意により世界規模で取り組むべき問題だと考えている」と、米経済界を代表する1人であるGEのジェフリー・イメルトCEOは29日、社内向けのブログに書いた(ブログ投稿を入手したポリティコが報じた)。「アメリカがこれからも建設的な役割を果たすことを願っており、GEはテクノロジーと行動を通じてこの取り組みをリードしていく」
イメルトによれば、地球温暖化は「広く認められた」科学であり、この問題に対処する環境技術は、環境保護だけでなく企業利益の点からも理にかなっている。
GEだけではない。米大手食品会社のマース、オフィス用品の全米チェーンであるステープルズ、衣料品の世界大手GAPなどが、英ガーディアンの取材に大統領令への反対を表明している。「トランプ政権がクリーン・パワー・プランのような規制を後退させる決断をしたことに失望している」と、マースの広報幹部エドワード・フーバーは言う。
ティラーソン国務長官の古巣エクソンモービルも
極めつけは、エクソンモービルだろう。テキサス州に本拠を置くアメリカ最大のエネルギー企業である同社も、反対意見を表明しているのだ。
トランプ政権からパリ協定に対する見解を求められたエクソンモービルは、3月22日、ホワイトハウスに書簡を送り、パリ協定は「気候変動のリスクに対処する効果的な枠組み」であり、アメリカは脱退すべきでないと伝えていた。かつて石油メジャーと呼ばれ、温暖化についても世論誘導などで批判を受けたこともある同社が、である。(中略)
確かに、アメリカでは今も地球温暖化に懐疑的な意見が根強いが、「環境より経済」を掲げる大統領の「反・地球温暖化対策」に対して、経済界から批判が相次いでいるのは皮肉という他ない。【3月30日 Newsweek】
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実際、温暖化対策で主導権を狙う欧州市場などでは、温暖化対策をとっていない企業は入札にも参加できない状況にもなっています。【3月30日 「温暖化対策、このままでは日本企業は世界の孤児に」 WEB RONZAより】
そうした世界市場からの圧力に加え、再生可能エネルギーの急速な普及により発電価格が劇的に下がっているという事実もあり、温暖化対策や再生可能エネルギー対応への努力を怠ることは世界の潮流に乗り遅れることにもなります。
そうした事情もあってか、トランプ政権の化石燃料重視政策の恩恵を一番受けると思われる石炭産業大手も、パリ協定離脱を思いとどまるように求めています。
*****パリ協定にとどまるべき、米石炭大手がトランプ政権に訴え****
地球温暖化対策の新たな国際的枠組み「パリ協定」からの離脱を検討している米トランプ政権に対し、米石炭生産大手は、各社の国際的な利益を守るために離脱を思いとどまるよう政府に働きかけている。
ある政府当局者によると、クラウド・ピーク・エナジー<CLD.N>やピーボディ・エナジー<BTU.N>などは、パリ協定にとどまれば、米国は多様なエネルギー源を組み合わせて電源構成を最適化する将来の「エネルギーミックス」構想において、石炭の活用を推進することができると政府に主張している。
政府当局者は「未来は海外市場にある。石炭生産会社として米国のパリ協定離脱は最も避けたいことだ。離脱すれば、気候変動に関する国際議論の場で米国は発言する場を失い、欧州勢がこの問題で主導権を握ることになる」と語った。(後略)【4月5日 ロイター】
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なお、“トランプ大統領は昨年の選挙戦でパリ協定離脱を主張していたが、就任後はこの問題にさほど触れず、態度をやや軟化させたとみられる。”【同上】とも。
【地球を人工的に冷やす】
なお、以下のような興味深い話も。
、
****“地球を人工的に冷やすことは可能か!?世界初の屋外実験がスタート****
<“火山の冬”を人為的につくりだし、地球温暖化を緩和しようという気候工学(ジオエンジニアリング)が注目を集めているが、屋外実験がはじめて行われる>
“火山の冬”とは、大規模な火山噴火によって二酸化硫黄ガスが成層圏に達し、これと水とが反応してできた雲が太陽光を遮ることで、地表と下層大気の温度が低下する現象のこと。”(後略)【4月5日 Newsweek】
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