(ヤフオクに2017年8月23日現在出品されているパキスタン軍統合情報局 ISI部隊章 “あのオサマ・ビン・ラディンを匿っていたとされ、タリバンやアルカイダの黒幕として現在世界的な注目を浴びているパキスタン軍統合情報局の実物部隊章、未使用放出品です。”“陸軍(赤)・海軍(紺)・空軍(空色)三軍の統合” また、“海外、特にパキスタン/アフガニスタン国内での着用はお控え下さい”とも・・・命にかかわります。)
【「世界の火薬庫」】
パキスタンの国際的立ち位置について最も簡単に言えば、建国以来の宿敵インドとの対立、そして対テロ戦同盟国としてアメリカの軍事支援を受けつつも、最近の中国との接近があります。
****パキスタン独立70年、続くインドとの軍事的緊張 強まる中国の影響力 「世界の火薬庫」戦略地図に変化****
パキスタンは14日、独立記念日を迎えた。インドでは15日が独立記念日に当たり、両国は1947年の英国からの分離独立から70年となった。
カシミール地方の領有権問題などで核武装して対立し、軍事的な緊張が続く両国の関係に改善の兆しはない。
一帯が世界の危険な「火薬庫」となり続ける中、パキスタンでは中国の影響力が強まり、インドは日米とのいっそうの連携を探っている。
「中国はパキスタンの独立と主権、結束の維持と強化への努力を支え続ける」
イスラマバードでのパキスタン独立記念日の式典に招かれた中国の汪洋副首相は、「ヒマラヤより高く、海よりも深い」と形容される両国の蜜月を訴えた。
中国西部からカシミール地方のパキスタン支配地域を通り、パキスタン南西部グワダル港へ至る「中パ経済回廊」は、中国の支援で整備が続く。
この事業を含む中国の現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」に、インドは異を唱える。しばしば、パキスタンからのイスラム過激派による越境テロを非難し、過激派指導者の1人を国連制裁リストに載せるよう主張しているが、これを阻止する中国に反発している。
この70年で、印パを取り巻く外交の戦略地図は変化してきた。パキスタンはかつて、旧ソ連のアフガニスタン侵攻で米国から援助を受け、今も対テロ戦同盟国として軍事支援を受ける。
しかし最近、中国の存在感は高まるばかりだ。昨年には、ロシアとの初の合同軍事演習を実施、ロシアは旧ソ連時代からのインドの友好国で、かつてパキスタンとは対立していた。
インドは、ロシアを主要な武器供給国としてきたが、近年は、調達先を欧米やイスラエルへと多様化させている。
6月16日に始まった中印ブータン3カ国境界付近での中印両国軍の対峙(たいじ)は収まる気配がない。中国の軍事的圧力を前に、海上共同演習「マラバール」などを通じ、日米との安全保障上の協力も深め、従来の非同盟主義から一歩踏み出しつつある。
独立後、3度の戦争となったインドとパキスタンの間では、カシミール地方の実効支配線をはさみ、交戦が散発的に発生している。元インド軍高官は「インド軍の戦力の6割は対パキスタンで、4割は対中国だ」と打ち明けた。
モディ印首相は2014年の首相就任式に、パキスタンのシャリフ首相を招き、緊張緩和の糸口を探った。
インドとの経済関係の正常化に動こうとした実業家出身のシャリフ氏にパキスタン軍は不満を募らせ、先月、首相を失職させられたシャリフ氏に対する最高裁の判断には、隠然とした政治力を持つ軍の関与を疑う声が上がる。
米中のパワーゲームが続く中、今後も両国の緊張状態が続くことは間違いない。【8月14日 産経】
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微妙なのがアメリカとの対テロ戦同盟国という立場で、そうした立場の一方でパキスタン(特に、国軍、その中核たる三軍統合情報局ISI)が隣国アフガニスタンのタリバンなどイスラム過激派を支援しているという指摘が常々なされています。
パキスタンの意図は、隣国アフガニスタンにインドの影響力が強まることを排除する狙いがあると言われています。
【ようやく発表されたアメリカのアフガニスタン新戦略】
アメリカのアフガニスタンに関する戦略において、このようなパキスタンにどう向き合うかが大きな課題となっていました。
アメリカ・トランプ政権はタリバンの攻勢が強まるばかりのアフガニスタンにおいて、オバマ前政権が示したように撤退するのか、それとも関与を続けるのか、戦略見直しを迫られていました。
しかし、政権内には辞任に追い込まれたバノン氏に代表される「アメリカ第一」の立場から撤退を指示する勢力と、軍を中心にした増派で関与を強めることを主張する勢力があり、決定が遅れていました。
トランプ氏自身の内部にあっても、本音としてのアフガニスタンなどにはかかわりたくないという思いと、今手を引けば“敗北”に終わってしまうという不安が交錯しているようです。(そのあたりの経緯は、長くなるので割愛します)
その新たな方針が21日、ようやく発表され、駐留を継続する決定がなされました。
****米軍、アフガン駐留を継続へ トランプ氏が撤退方針転換****
トランプ米大統領は21日、バージニア州で演説し、新たな対アフガニスタン戦略を発表した。
「早急な撤退はテロリストがはびこる空白をうむ」と話し、関与を続ける方針を示した。オバマ前政権は完全撤退を目指してきたほか、トランプ氏自身も就任前は撤退に賛成していたが、翻意した。
トランプ氏は米軍撤退による影響について「予想可能であり、それは受け入れ難い」と述べ、治安悪化が避けられないとの見方を示した。就任直後を振り返り、「私の直感は撤退だった」としたが、状況を知り考えを変えたことを明らかにした。
トランプ氏は「部隊の数や将来の計画は言わない」とし、今後の駐留規模に言及しなかったが、米メディアはトランプ氏が約4千人の追加派遣を承認したと伝えている。
さらにトランプ氏は「はるか遠い国の民主主義を作るために米軍の力は使わない」と発言。「テロリストは殺すが、国の建設はしない」と強調し、役割を限定する考えを示した。
アフガンでは、反政府武装組織タリバーンや過激派組織「イスラム国」(IS)によるテロが頻発している一方、財政難などで治安組織の整備が遅れている。
アフガンには現在、治安部隊への訓練や助言、テロ対策などの任務で約8400人の米兵が駐留している。地上の戦闘部隊は派遣しておらず、この方針はトランプ政権でも維持されるとみられる。
米国は同時多発テロが起きた2001年にアフガンで「テロとの戦い」を開始し、最盛期には約10万人が駐留した。「米国史上最長の戦争」と言われたが、オバマ前大統領が16年末までの完全撤退を表明。
しかし、治安の悪化を理由に度々計画が頓挫し、任期内の撤退は実現しなかった。アフガンの出口戦略はトランプ政権に委ねられていた。【8月22日 朝日】
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【パキスタンに対しては、「これまでの対応を変える」】
「新戦略が意味するところが(攻撃力の)増強なのか、削減なのかを判断するのは時期尚早だ」(米空軍のゴールドファイン参謀総長)というように、増派の規模や内容は不透明ですが、そのあたりの話は今回は割愛します。
今回取り上げるパキスタンの関連では、“国内にタリバン幹部をかくまっているとされるパキスタンに対しては、「これまでの対応を変える」と明言。「アフガンで米国と協力して多くを得るか、テロリストを保護し続けて多くを失うかだ」と述べ、タリバンに対する影響力を行使するよう圧力をかけた。”【8月22日 時事】と、これまで以上に厳しい姿勢で臨むことを明らかにしています。
****米長官、同盟国待遇剥奪も示唆=アフガン問題でパキスタンに圧力****
ティラーソン米国務長官は22日、トランプ大統領が21日に公表したアフガニスタン新戦略に関し、パキスタンがテロ組織に対する姿勢を改めなければ、「同盟国」待遇の剥奪や支援停止も検討すると示唆した。
パキスタン当局はアフガンの反政府勢力タリバン幹部を国内にかくまい、越境テロ攻撃を暗に支援しているとされる。タリバンに影響力を持つパキスタンに「制裁」をちらつかせることで、アフガン和平での協力を引き出したい考えだ。
ティラーソン長官は記者会見で「アフガン駐留米軍に攻撃を仕掛け、アフガン安定化を妨害するテロ組織がパキスタン国内でかくまわれており、米国とパキスタンの信頼関係はここ数年で崩壊しつつある」と指摘。その上で「パキスタンはテロ組織に対する姿勢を変えなければならない」と繰り返し訴えた。
さらに、パキスタンへの資金支援と今後の米パキスタン関係に条件を付けると発言。パキスタンが国内のテロ組織を一掃するとともに、タリバン幹部に影響力を行使してアフガン政府との和平交渉のテーブルに着かせなければ、「北大西洋条約機構(NATO)非加盟の主要同盟国」待遇の取り消しも視野に入れると述べた。【8月23日 時事】
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当然ながら、パキスタンはこうした名指し批判に反発しています。
****パキスタン、米国から名指し非難受け声明****
トランプ米大統領のアフガニスタン新戦略について、名指し非難されたパキスタンは22日、「(米大使に)アフガンの平和と安定を望んでいるとの立場を説明した。テロとの長い戦いで多大な犠牲を払っていることを強調し、テロの脅威を排除するため国際社会と引き続き協力していくとの考えを示した」との慎重な声明を発表した。
アフガンのガニ大統領は「この世界的な紛争で、アフガンのなくてはならないパートナー国による長期的な取り組みを示すものだ」と歓迎した。
米軍との戦闘を続けるイスラム原理主義勢力タリバンは、「米国は、自分たちの最も長い戦争をまだ終わらせようとしていないようだ」「米国が部隊を撤収させないなら、アフガンが米帝国の墓場になり、米指導者がそれを理解する日は遠くない」と表明した。【8月23日 産経】
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【パキスタンが中国との関係を一層深化させる懸念はあるものの、避けては通れない道】
アメリカのパキスタンへの厳しい姿勢が功を奏するのかという疑問、最近強まっている中国との接近を更に促すことになるのでは・・・との指摘もあります。
****米アフガン新戦略、パキスタンの中国傾斜リスクも****
米トランプ政権が発表した対アフガニスタンの新戦略は、反政府勢力のタリバンと戦うアフガニスタン当局者を勇気づけた。
だが、米国が新戦略でパキスタンに対してより強硬なアプローチを取るという新たなスタンスについて、パキスタンの首都イスラマバードの当局者やアナリストは、パキスタンが中国との関係を一層深化させるのを促し、16年間に及ぶアフガン戦争をさらに悪化させかねないと警告している。
ドナルド・トランプ大統領が21日、アフガニスタンへの軍事的関与拡大を発表したことを受け、アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領は22日、米国の関与拡大がタリバンとの戦いに役立つだろうと述べた。タリバンはここ数カ月間、支配地域を拡大している。
ガニ大統領は「米・アフガン協力関係は、われわれすべてを脅かしているテロリズムの脅威を克服する上で、かつてなく強固になる」と述べ、「われわれの治安部隊の強さは、タリバンやその他の勢力の軍事的勝利があり得ないことを示すだろう。平和を目指すことが最も重要だ」と付け加えた。
しかし、パキスタン当局者らは、アフガン戦争に軍事的解決は一切ないとみており、必要なのはタリバンとの和平協議であって、トランプ氏が発表した「勝利のために戦う」姿勢でも米軍の増派でもないと考えている。
パキスタン議会上院国防委員会のムシャヒド・フサイン委員長は、「発表されたトランプ氏の新方針は不安定化のためのレシピだ。うまくいかないだろう。それは、これまでに何回も試しては失敗してきたものだ」と話した。
パキスタン当局者は22日、トランプ氏の発言への苛立ちをもあらわにした。トランプ氏は、パキスタンが「混乱分子」をかくまい続けていると指摘し、それが変わらなければ米国からの支援打ち切りも辞さないと脅した。
アフガニスタンと欧米の同盟諸国は長年、パキスタンを批判し、同国がひそかにタリバンに支援を提供し、指導者らをかくまっていると主張してきた。パキスタン政府はこれを否定しているものの、タリバン関係者に一定の影響があることは認めている。
パキスタン、インドのプレゼンスを懸念
パキスタン当局者によると、パキスタンは米国のテロとの戦いに参加したことで、何万もの人命を犠牲にし、膨大な経済的損失を被ったという。
パキスタン外務省は22日、「テロリズムの脅威と戦うために、世界中でパキスタンほど貢献した国はない。米国が発表した新方針の中で、パキスタン国民がこの取り組みのために払った多大なる犠牲を無視していたことは残念だ」と述べた。
同省によると、ホワジャ・ムハンマド・アシフ外相は22日、デービッド・ヘール米国大使との会談で、パキスタンが「アフガニスタンの平和と安定を望んでいる」ことを改めて強調したという。アシフ外相は数日後に米国を訪問し、レックス・ティラーソン外相と会談する予定だ。
アナリストらは、パキスタンが新たに圧力を受ければ、パキスタンと中国との連携が深まるだろうと指摘する。それは、トランプ氏が21日に「アフガニスタンで一層の協力」をインドに求めたことも同様で、そうした動きに拍車がかかるだろうという。
パキスタンの前駐アフガン大使のルスタム・シャー・モフマンド氏は、「パキスタンは米国に『われわれを追い込み過ぎるな』と伝えるだろう」と話した。
中国はパキスタンで、550億ドル(約6兆0500億円)規模のインフラ建設計画を請け負っている。中国外務省は22日、「パキスタンはテロとの戦いの最前線に立っており、多大な犠牲を払って貢献している。国際社会はパキスタンの努力を全面的に肯定すべきだ」との声明を出した。
一方、パキスタンは、宿敵であるインドがアフガニスタンを利用して、ジハーディスト(聖戦主義)的・分離主義的な反パキスタン戦闘員を支援していると非難している。1990年代にはアフガニスタンでの影響力を求めるパキスタンとインド両国間の代理戦争によってアフガニスタンは内戦状態に陥った。
イスラマバード在住の防衛アナリスト、リファート・フサイン氏は「パキスタンで本当に懸念されているのは、米国がアフガニスタン国内でインドのプレゼンスを使おうとすることだ。それは、インド自身の諸般の理由のために、そして『中国・パキスタン経済回廊(CPEC)』をとん挫させることができるという理由のために、パキスタンに対して代理戦争を仕掛けようとするものだ」と語った。
インドは、アフガニスタンで支援を強化する用意があると述べた。インド外務省は、インドがダム、道路、政府の建物、その他のインフラを建設しており、今後もアフガニスタン再建の取り組みを続けると述べた。インドはアフガニスタンに数百万ドルの援助を提供しており、アフガニスタン治安部隊に対する訓練も行っている。
インド外務省は、「テロリストらが(パキスタンから)享受しているセーフヘイブン(安全な避難地)や、その他の越境支援という難問に立ち向かう」トランプ氏の発言を歓迎した。
しかし、インドは同時にパキスタンとの緊張激化を警戒している。アフガニスタン駐在インド大使だったビベク・カチュ氏は、インドはトランプ氏がパキスタンに対する厳しい発言をどう履行しようとしているのか見極めようとするだろうと述べた。(中略)
アフガニスタン人のなかには、トランプ政権のプランを懐疑的に見る向きもある。米軍の今後想定されるアフガニスタンでの役割があいまいだし、パキスタンからどのように協力強化を取り付けるのかはっきりしないというのだ。
アフガニスタン軍の退役将軍で安全保障アナリスト、アティクラ・バリャライ氏は「パキスタンが引き続きテロリストをかくまうとすれば、どのような行動がパキスタンに対して講じられるのだろうか。何が彼(トランプ氏)の圧力ツールになるのか」と問い掛けた。そして「彼の政策はあいまいで不透明なようにみえる。この間、アフガニスタンで戦争は続く。それは日に日に激化している」と語った。【8月23日 WSJ】
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パキスタンがイスラム過激派への掃討を強めると、国内でテロが頻発し“テロ地獄”とも呼ばれる状況になるのは事実です。結果、これまでも多大な犠牲者を出していることも事実です。(ただ、それはイスラム過激派を野放しにしてきた結果でもあります)
また、アメリカにとって、中国やインドの関与があるなかでパキスタンを思う方向に向かわせるのは非常に難しいことではあります。
ただ、アフガニスタンの戦闘がここまで長引いているのはパキスタンのタリバン等への支援があったことが最大の理由であり、パキスタンの対応をどうにかしない限り、いくらアフガニスタンに増派しても穴のあいたバケツで水を汲みだそうとするようなものです。
また、(アメリカが関与する、しないに関わらず)アフガニスタンに民主的な政府が持続的に存続することも不可能です。
今回のアメリカの新戦略で、パキスタンのアフガニスタンにおける行動が変化することを期待します。
****アフガンでタリバン自爆テロ、45人死傷=米の「関与継続」表明後初****
アフガニスタン南部ヘルマンド州の州都ラシュカルガで23日、反政府勢力タリバンの自爆テロが発生し、地元警察当局によると、少なくとも5人が死亡、40人が負傷した。
トランプ米大統領がアフガンへの関与を継続すると表明した21日の演説後、初のテロ事件で、タリバンの抵抗が根強いことが浮き彫りになった。(後略)【8月23日 時事】
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