孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

伝統的価値観を強要するハンガリー・ポーランド 皮肉な「ゲイの乱交パーティー」とショパン同性愛者説 

2020-12-16 23:17:26 | 欧州情勢

(ポーランド・ワルシャワで行われた女性の権利擁護を訴えるデモで、与党・法と正義(PiS)党首で副首相のヤロスワフ・カチンスキ氏の写真を掲げる女性(2020年12月13日撮影)【12月14日 AFP】)

 

【ハンガリー 同性カップルが養子を取ることを事実上禁止】

西欧的な「自由主義的民主主義」とは異なる権威主義的・民族主義的な価値観を掲げるハンガリー、ポーランドなどの中東欧諸国と西欧が主導するEU指導部の「法の支配」をめぐる対立はについては、12月11日ブログ”EU イギリスとの交渉は「決裂の可能性高い」 法の支配をめぐるハンガリーなどとの問題は妥協成立”でも取り上げたように、“一応の”妥協が成立したようです。

 

そのハンガリー・ポーランドの国内事情に関する最近の記事をいくつか。

 

ハンガリーでは、オルバン首相が西欧的「自由主義的民主主義」を否定するような、強権支配で民族主義を重視する「非自由民主主義」を主張。具体的にはロシアや中国的なモデルを念頭に置いているとも指摘されています。

 

政府に批判的なメディアを抑圧し、移民・難民に対しては排他的で、性的マイノリティーに対しても伝統的価値観に基づく締め付けが続いています。

 

オルバン首相が常々「目の敵」にしているのが、ハンガリー生まれのリベラル派の大富豪ジョージ・ソロス氏。

 

****ソロス氏をヒトラーになぞらえ、ハンガリー文化庁長官に非難殺到****

ハンガリーの文化庁長官が、リベラル派の大富豪ジョージ・ソロス氏をナチス・ドイツ指導者アドルフ・ヒトラーになぞらえたとして、厳しく批判されている。

 

デメテル・シラード文化庁長官は28日、欧州連合の予算と新型コロナウイルス対策パッケージで「法の支配」についての基準が条件とされたことにハンガリーとポーランドが反発している問題についての記事を政府寄りのニュースサイト「Origo.hu」に寄稿。その中で、「欧州はジョージ・ソロスのガス室と化した(中略)ジョージ・ソロスはリベラルの総統だ」と書いていた。

 

ハンガリーとポーランドは、EUの予算とコロナ対策パッケージに拒否権を行使してEUと対立している。デメテル氏は、この問題に関する記事で、ポーランド人とハンガリー人は「新たなユダヤ人だ」と述べた。

 

デメテル氏は、「こうした『リベラルアーリア人』は今や、われわれがまだ権利を持っている最後の政治的コミュニティーからポーランド人とハンガリー人を締め出そうとしている」と主張した。

 

ハンガリー内外のユダヤ人団体や、ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の記憶を伝える活動をしている団体はデメテル氏を厳しく批判。

デメテル氏は29日、問題の記事を撤回し、自身のフェイスブックのページも削除したと発表した。

 

しかし抗議は29日も続き、ゴルドン・バイナイ元首相やリベラル派のカラーチョニ・ゲルゲイブダペスト市長ら野党の著名政治家らは、オルバン・ビクトル首相にデメテル氏の解任を要求した。

 

オルバン首相は、欧州への移民流入を支援したり、EU予算をめぐる対立の中で欧州議会の議員らにロビー活動をしたりしているとして、ソロス氏への批判を強めていた。

 

ポーランドとハンガリーは今月、欧州連合の1兆8000億ユーロ(約220兆円)の予算と新型コロナウイルス対策の支援パッケージに拒否権を行使していた。

 

オルバン首相は最近のインタビューで、ソロス氏を「世界で最も腐敗した人物の一人」で「経済犯罪者」と呼んだ一方、法の支配基準は移民に反対するEU加盟国に対する「脅し」だという考えを示していた。

 

ハンガリー生まれでホロコーストを生き延びたソロス氏は今月、雑誌「プロジェクト・シンジケート」のインタビューで、「自身の国から好き放題に金を巻き上げる収奪政治制度」をつくり出しているとして、オルバン氏を批判していた。 【11月30日 AFP】

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実際のところはよく知りませんが、オルバン首相・政権・与党としては、ソロス氏が自分たちを排除するためにリベラルな国内野党勢力を支援しているという考えで毛嫌いしているのでしょう。

 

同性愛のような西欧リベラリズムが容認する性的マイノリティーも毛嫌いしています。

 

****ハンガリー議会、一連の反LGBTQ法案を可決****

ハンガリー議会で15日、厳しい立場に置かれている国内のLGBTQ(性的少数者)を狙った政策に関する一連の法案が可決された。

 

国家主義的で保守的なオルバン・ビクトル政権を支持する議員らが成立させた新法の一つは、養子縁組できるのは結婚したカップルのみとし、同性カップルが養子を取ることを事実上禁じ、家族問題相が承認した場合のみ例外を認める。

 

政府はここ数か月、反LGBTQ的な姿勢を強めてきた。オルバン首相は10月、同性愛者のキャラクターが登場する子ども向けの本に関する論争の中で、「(同性愛者は)子どもたちに近寄るべきではない」と述べていた。

 

15日、議会は「母親は女性、父親は男性」とする憲法改正も承認した。

 

政府は改憲について、「西欧における新しいイデオロギー的な動き」によって、「起こりうるイデオロギー的あるいは生物学的な干渉から子どもたちを守る」ことが必要になったと説明している。.

 

改正憲法は、子どもの性別を出生時に定められたものと定義し、ハンガリーのキリスト教文化に沿った子どもの養育を保証するとしている。

 

ハンガリーでは5月に合法的に性別を変えることができなくなり、人権団体はトランスジェンダーの人たちが差別される恐れがあると警告している。【12月16日 AFP】

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【首相の盟友、ロックダウン違反の「ゲイの乱交パーティー」参加で警察から警告受ける】

“ハンガリーのキリスト教文化に沿った”と言いつつも、その内情は・・・。

 

****他国でロックダウンに違反し「乱交パーティー」、欧州議会議員が謝罪****

ハンガリーのオルバン・ビクトル首相の盟友で、先週末に辞職を表明した保守系の欧州議会議員が1日、ベルギーで新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)違反となるパーティーに参加し、警察に警告を受けたことを明かし、謝罪した。このパーティーについて現地メディアは、乱交パーティーだったと報じている。

 

ハンガリーの憲法起草にも関わったヨージェフ・スチャヤー欧州議会議員は11月28日、「一身上の都合」により辞職する意向を表明していた。しかし1日、ロックダウン実施中のベルギーの首都ブリュッセルで参加していたパーティーから逃走したところを警察に拘束され、警告を受けていたことを認めた。その際、合成麻薬エクスタシーの所持も発覚したという。

 

ブリュッセルの検察当局によると、11月27日に同市中心部で開催されたパーティーで男性20人が拘束され、それぞれ250ユーロ(約3万2000円)の罰金を科された。参加者のうち、スチャヤー氏と他2人が外交特権を主張した。

 

拘束時、スチャヤー氏の手は血まみれで、逃走しようとしてけがをしたのではないかと検察当局はみている。エクスタシーは、同氏が持っていたバックパックの中から見つかった。

 

現地メディアはこのパーティーについて、ロックダウン前はゲイバーが多いことで知られた市中心部の歴史地区にあるアパートで開かれた「乱交パーティー」だったと報じている。

 

スチャヤー氏は、ロックダウンに違反したことを自らの家族に謝罪したが、性行為に一切言及せず、所持していた錠剤がエクスタシーだとは知らず、違法薬物を使用していないと主張した。

 

欧州議会が免責特権剥奪を決定しない限り、スチャヤー氏が刑事訴追されることはない。同氏の辞任は、12月31日付となる。

 

スチャヤー氏は1990〜2002年の間に4回、ハンガリー国会議員に選出された。2004年からは欧州議会議員を務め、4期目に入っていた。 【12月2日 AFP】

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****「乱交パーティー」でハンガリー反LGBT・保守与党に非難の声、言行相反****

ハンガリーのオルバン・ビクトル首相は2日、「ゲイの乱交パーティー」に参加したとされる盟友の欧州議会議員を非難したが、両氏が所属する保守系の与党フィデス・ハンガリー市民連盟に対しては、言行相反だとの批判の声が上がっている。

 

オルバン氏は、パーティー参加後に辞職を表明したサーヤー・ヨージェフ議員の行動について「容認できず、擁護できない」と評した上で、「われらが党の価値観にふさわしくない」と述べた。

 

反LGBT(性的少数者)的な措置を提唱してきたサーヤー氏は1日、ベルギーで「秘密のパーティー」に参加したと認めた上で、新型コロナウイルス対策に違反したことを謝罪した。
 
野党・民主連合のフェレンツ・ジュルチャーニ党首は、「フィデスの政治家はキリスト教や家族、伝統的な男女の役割、道徳規範について説いているが、実際には口にしている価値観からかけ離れた、全く異なる生活を送っている」と批判した。

 

ベルギーメディアによると、サーヤー氏が参加したパーティーは、全裸の男性25人が参加するものだったという。

 

サーヤー氏は、与党の保守的な政策を推進する上で重要な役割を果たし、結婚を「男性1人と女性1人によるもの」と定義する条項を盛り込む憲法改正を後押ししてきた。それだけに、こうしたパーティーに参加したことの発覚は、特にきまりが悪いものとなった。

 

調査報道サイト「Direkt36」の記者はサーヤー氏について、「自身はLGBTにフレンドリーなブリュッセルで楽しむ一方、ハンガリーで暮らすLGBTの人々の生活を悲惨なものにしてきた」とツイッターに投稿した。 【12月3日 AFP】

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どこの国・時代でも、人々に厳格な道徳観を強要する権力者の内実は得てしてこんなものですけどね・・・。

 

【ポーランド 人工妊娠中絶の要件を更に厳格化 「女性の権利や自由を奪う」と連日の抗議デモ】

カトリック教会の影響が強いポーランドでは、憲法裁判所は10月22日、胎児に先天的な異常がある場合の人工妊娠中絶は違憲との判断を下しました。

 

****人工妊娠中絶の要件厳格化に抗議 ポーランドで連日デモ****

ポーランドの憲法裁判所が人工妊娠中絶の要件を厳しくする判決を出し、首都ワルシャワなど各地で市民が連日、抗議活動を繰り広げる事態になっている。

 

同国はキリスト教カトリックの影響が強いが、「女性の権利や自由を奪う」などといった反発が広がり、批判の矛先は保守的な政権与党にも向かっている。

 

同国では胎児の先天性異常を理由とした中絶が認められてきたが、憲法裁は22日、この法律について「違憲」と判断。保守政党の与党「法と正義」(PiS)の議員が昨年、違憲だとして提訴していた。

 

もともとポーランドは欧州でも中絶の条件が厳しく、認められる場合の大半が胎児の障害を理由にしたものとされる。この判決を受け、母体の健康が脅かされる場合やレイプなどで妊娠した場合を除き、中絶は認められなくなった。

 

ワルシャワでは22日、判決への抗議デモが発生。憲法裁のほか、PiS本部やカチンスキ党首の自宅にまでデモ隊が押し寄せた。

 

警察当局は、新型コロナウイルスの感染防止のため多数で集まることを禁じた措置に違反したなどとして、参加者を拘束したが、抗議活動は若者を中心に全国に波及。グダニスクやクラクフ、ウッチなど全国の主要都市で連日、デモが続き、今後も予定されている。【10月28日 朝日】

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抗議デモは、今も続いているようです。

 

****中絶ほぼ全面禁止に抗議 ポーランドで数千人デモ****

ポーランドで13日、例外的な状況を除いて中絶をほぼ全面禁止とする憲法裁判所の10月の判断に抗議するデモが行われ、首都ワルシャワの街頭に数千人が繰り出した。

 

デモ参加者の大部分は女性や若者で、デモ隊はヤロスワフ・カチンスキ副首相の自宅に向かってワルシャワを横断した。カチンスキ氏は今回の憲法裁の判断に関与したと専門家から指摘されており、同氏宅は最近行われたデモで何度か標的となっていた。

 

警察はデモ隊がカチンスキ氏の自宅に達するのを防ごうと、複数回にわたりデモ行進の妨害を試み、最終的に同氏宅のある通りを封鎖した。

 

デモが夜通し続く中、政府が農業製品価格の下落を食い止める対策を何もしなかったと非難する農民グループは、通りにブタの死骸を投棄し、ジャガイモや卵をまき散らした。

 

10月22日、憲法裁は胎児の先天的な異常を理由とした中絶を違憲とし、中絶をほぼ全面的に禁止とする判断を下した。この判断以来、活動家たちはこれまでに何度も抗議デモを主催してきた。

 

この判断はまだ正式には発表されていないためまだ適用されないが、医師たちは法律違反となることを恐れて予定していた中絶手術を取り消している。

 

この判断が法制化されれば、同国での中絶は、性的暴行または近親相姦(そうかん)、母体に命の危険が及ぶ場合に限って認められることとなる。 【12月14日 AFP】

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【国民的作曲家ショパンは同性愛者?伏せられる真実】

”ポーランド政権はカトリックの価値観を重視する保守政党「法と正義(PiS)」が率い、憲法裁の裁判官の多くが同党の指名で就任した。政権はLGBTなど性的少数者の権利拡大に公然と反対し、欧州連合(EU)と対立。各国との溝がさらに広がる可能性がある。”【10月23日 共同】とのことですが、そのポーランドの国民的作曲家ショパンが同性愛者だったという“不都合な真実”が論議を呼んでいるとか。

 

****ショパンは同性愛者だった? LGBTQに風当たりの強いポーランドで物議****

 欧州の中でも特にLGBTQ(性的少数者)に対して風当たりの強いポーランドで、国民が敬愛するロマン派の作曲家ショパンが同性愛者だったという説が大々的に報じられ、論議を巻き起こしている。

 

210年前、首都ワルシャワ西部の小さな村に生まれたショパンの名は、全土の至る所に刻まれている。

毎月100万人以上が利用する首都ワルシャワの空港はショパン空港。生家には記念碑が飾られ、主要都市に胸像や銅像があり、ショパンの名が付いた公園や通り、ベンチや建物が各地に存在する。1849年に39歳で死去した後、心臓はアルコール保存されてワルシャワの聖十字架教会の壁に収められた。

 

ところがショパンの私生活に関して、保守性の強いポーランドの伝統や右派の指導部とは相いれない説が脚光を浴び、国民が幼い頃から聞かされてきたショパンの物語が真実だったのかどうかという疑問が浮上した。

 

スイスのラジオ局のドキュメンタリー番組によると、ショパンは複数の男性と関係を持っていたとされる。しかしそうした関係は、歴史家や伝記作家によって歴史から追いやられてきた。

 

スイスの放送局SRFの番組に出演した音楽ジャーナリスト、モリッツ・ウェバー氏は、ショパンが男性の友人宛てに出した手紙を調べたところ、性的に露骨な内容やロマンチックな内容が書き記されていたことが分かったと語った。

 

さらに、後に伝えられた伝記や再現された手紙では、男性名詞が女性名詞に入れ替えられ、意図的かどうかを問わず、ショパンの男性との関係が取り上げられていなかったことも分かったという。

 

ウェバー氏はCNNの取材に対し、「ショパンは男性との愛情について非常に直接的に語っていた」「学者や有名伝記作家はなぜ、そのことに疑問を投げかけなかったのか」と問いかけた。

 

ショパンについては伝統的に、女性との恋愛関係が語り継がれてきた。中でも作家のジョルジュ・サンド(本名アマンティーヌ・リュシル・オーロール・デュパン)との関係は最も有名だった。

 

しかしウェバー氏が調べた手紙は違う内容を物語っていた。ショパンは女性には全く手紙を出していなかったといい、女性と恋愛関係にあったと断定できるような内容も書き残していなかったという。

 

「明らかなのは、男性の友人に向けてラブレターを書き送っていたことだった。最も情熱的なのは、ティトゥス・ボイチェホフスキに宛てた手紙だった」。ボイチェホフスキはポーランドの活動家でショパンの長年の友人だった。ショパンはほかにも多数の男性に宛てて同じような手紙を送っていたという。

 

ショパンが男性を愛したという説は新説ではない。しかしここ数日の間にポーランドの複数の新聞が「ショパンはゲイだった?」と問いかける記事を掲載し、「ショパンが友人にキスをしたからといって、ゲイだったことになるのか?」と疑問をぶつける新聞もあった。

 

ポーランドは欧州の中でもLGBTQにとって最悪の国といわれる。政府は極端な同性愛嫌悪の表現を頻繁に使い、首相は「同性愛計略」が祖国を脅かすと言い放つ。

 

カトリック教徒が多く、教会が強い影響力を持つことから、LGBTQの権利拡大には宗教指導者が抵抗する。

LGBTQを非難するアンジェイ・ドゥダ大統領は今年、この問題を公約の中心に掲げて再選された。

 

同国の活動家は、ショパンの恋愛関係が改めて脚光を浴びたことで、そうした姿勢に変化が起きることを期待する。「公言しよう。ショパンは少なくともバイセクシュアルだった」。同国でLGBTQ運動の前線に立つ活動家はそう記している。【11月30日 CNN】

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