(殺害されたジャーナリストであり、活動家でもあったマララ・マイワンドさん【12月11日 BBC】)
【タリバンが設置する学校とは?】
今日、気になったニュース。
****タリバンとユニセフ、「学校」設置で合意 支配地域に4000校 将来の政権参加狙い****
アフガニスタンの旧支配勢力タリバンと国連児童基金(ユニセフ)は、タリバンが支配したり影響力を持ったりしている地域で、4000の非公式の学校を設けることで合意した。英紙デーリー・テレグラフ(電子版)が17日報じた。
タリバンとアフガン政府の和平協議が進む中、タリバンには国際社会と協働する姿勢を示すことで、将来政権に参加する場合に重要な役割を担えるとアピールする狙いがあるとみられる。
デーリー・テレグラフ紙によると、民家などで運営される非公式の学校が、ヘルマンド▽カンダハル▽ウルズガン▽ファルヤブ――の各州に設けられ、小学校3年までの教育が行われるという。既にこの地域には680の同様の学校があり、今後、大幅に増設していく方針だ。
ユニセフの担当者は同紙に対し、今年2月にタリバン側から学校設立を持ちかけてきたと明らかにしたうえで、「我々にとって大きな進展であり、とても興奮した」と語った。
ユニセフによると、アフガンでは推定で370万人に上る子供が学校に通っていない。今回の合意で、女子を含む12万人以上の子供の就学が期待されている。タリバン政権(1996〜2001年)下では女子の教育が制限され、タリバンは国際社会から批判を浴びた経緯がある。
タリバンは9月からアフガン政府と和平協議を行っている。だが協議の進め方を巡る対立が長引き、恒久的な停戦や今後の政治体制の在り方などの本格的な議論まで進めていない。
この間もタリバンは政府への攻撃を強化し、譲歩を引き出そうとしている。協議を仲介する米国や、タリバンに影響力を持つパキスタンは、タリバンに暴力行為の抑制や停戦に応じるよう求めている。【12月20日 毎日】
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上記記事だけでは、「学校」なるものの詳細はわかりません。
タリバンがつくるものでしょうか? それにユニセフが何等か関与するのか?
女子教育の話も出ているので、男女ともに学べる学校でしょうか?
教育内容はイスラムの教えに偏ったものではなく、普通の学校でしょうか?
わからないことは多々ありますが、女子教育にタリバンが積極姿勢を見せたということであれば、喜ばしいことでしょう。
米軍が撤退するなかで、遅かれ早かれタリバンがアフガニスタン統治に参加してくるのは目に見えている感もありますので。
その形が、現在のアフガニスタン政府に参加するような形なのか、あるいは、現在の政府をやがては駆逐して、タリバンの単独支配の形になるのか・・・そこらはまだよくわかりませんが。
【進展しない交渉 暴力で圧力をかけ続けるタリバン】
タリバンとアフガニスタン政府の交渉は、目立った進展と言えるようなものは報じられていません。
****アフガン和平協議の進め方や規則で合意 政府とタリバン*****
アフガニスタン政府と旧支配勢力タリバンによる和平協議について、協議を仲介する米国のハリルザド・アフガン和平担当特別代表は2日、アフガン政府とタリバンが協議の規則や進め方で合意したと発表した。協議は9月に始まったが行き詰まっていた。
具体的な合意内容は明らかになっていないが、ハリルザド氏はツイッターに「アフガンの人々は政治的なロードマップや停戦を期待している」と記し、早急な協議の進展を促した。
和平協議でタリバン側は、今年2月に米国と結んだ合意を「和平協議の土台」として位置づけることや、協議で問題が生じた際にタリバンが信奉するイスラム教スンニ派の法学に基づいて解決することなどを要求し、政府側が反対していた。【12月3日 毎日】
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“イスラム教スンニ派の法学に基づいて解決”・・・・これが何を意味し、どのように合意されたのか・・・よくわかりません。
ひとつ確かなことは、アメリカは一日も早くアフガニスタンから撤退したがっていること、タリバンによる暴力の圧力が続いているということです。
****アフガンで相次ぎ自爆テロ、計34人死亡****
アフガニスタン東部ガズニ州の軍事施設近くで29日、自爆テロが発生し、地元メディアによると、少なくとも兵士31人が死亡、24人が負傷した。南部ザブール州でも自爆テロがあり、少なくとも3人が死亡した。
両事件の犯行声明は確認されていない。ガズニ州の事件では、何者かが運転する車両が施設に突っ込み、爆発したという。同州では過去にイスラム原理主義勢力タリバンによる自爆テロが相次いで発生している。
アフガン和平をめぐり、政府とタリバンは9月から恒久停戦に向けた協議を始めたが、大きな進展はない。
一方、トランプ米政権は今月17日、駐留米軍を現在の約4500人から来年1月15日までに約2500人に削減すると発表。タリバンは治安維持の重しである米軍の撤収方針を勢力拡大の好機ととらえ、各地で攻勢を強めている。【11月29日 産経】
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一昨日の18日には、子ども15人が死亡する爆発も。
****アフガニスタン、爆発で子ども15人死亡****
アフガニスタン東部ガズニ州で18日、宗教的な集まりが行われていた建物付近で爆発物を積んだオートバイが爆発し、少なくとも15人の子どもが死亡した。地元当局が発表した。
爆発が起きた際、子どもたちはイスラム教徒にとって聖なる日である金曜日にいつも行うコーラン(イスラム教の聖典)の暗唱をするために住宅に集まっていた。
ガズニ州警察は爆発があったことを認め、同国の旧支配勢力タリバンの攻撃だとしている。死亡した15人の他に、子どもを含む20人が負傷したことも明らかにした。
アフガニスタン政府とタリバンは紛争終結を目指して和平交渉を開始したにもかかわらず、ここ数か月間、暴力行為が急増。
タリバンは、暴力を利用して交渉で優位に立とうとしていると非難されている。政府とタリバンによる和平協議は今年9月にカタールの首都ドーハで再開されたものの、来年1月初旬まで中断されている。 【12月19日 AFP】***********************
タリバンによるものか、ISによるものかはわかりませんが、女性の権利向上を訴えていた女性ジャーナリストを標的にした暴力も。
****アフガン、女性記者が銃撃で死亡 女性の権利向上運動も*****
アフガニスタン東部ナンガルハル州の州都ジャララバードで10日、地元民放の女性記者マラライ・マイワンドさんの車が出勤途中に何者かに銃撃された。州報道官によると、マイワンドさんと運転手が死亡した。
マイワンドさんはテレビキャスターとして活躍、女性の権利向上を訴える活動にも取り組んでいた。犯行声明は確認されていない。
ナンガルハル州では反政府武装勢力タリバンや過激派組織「イスラム国」(IS)が活動。同国では武装勢力が批判的な報道を抑え込もうと、報道関係者を標的にする事件が相次ぐ。11月には南部と首都で少なくとも2人が爆弾で殺害された。【12月10日 共同】
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マイワンドさん殺害は、「国際人権デー」に行われました。
北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)は先に、アフガニスタンでのジャーナリスト暗殺を非難する声明を出したばかりでした。
アフガニスタンで社会の現実を報道するジャーナリストや活動家、特に女性は、まさに「命がけ」です。
****アフガニスタンでジャーナリスト暗殺相次ぐ****
(中略)アフガニスタンではこのところ、ジャーナリストや活動家、政治家が標的になる事件が相次いでいる。
元テレビ司会者のヤマ・シアワシュさんは11月、首都カブールの自宅近くで、車に仕掛けられた爆弾で殺害された。南部ラシュカル・ガーでも、ラジオ・リバティーのアリヤス・ダイー記者が自動車爆弾で殺された。
また、映画監督のサバ・サハルさんはカブールで銃撃されたが、一命を取り留めている。サハルさんはアフガニスタンで最初に映画監督となった女性の1人。
同国で報道機関を支援する団体NAIは声明で、「女性ジャーナリストが活躍できる場所は狭まっており、これまでのような活動はできなくなってしまっているかもしれない」と述べている。
アフガニスタン政府と反政府組織タリバンは現在、カタールの首都ドーハで和平交渉を進めている。【12月11日 BBC】
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アフガニスタン政府はタリバンに即時停戦を呼びかけてはいますが、実現の可能性は低いと思われます。
****タリバンに即時停戦を呼び掛け アフガン外相、支援会議で****
スイス・ジュネーブで開かれたアフガニスタンの復興支援国際会議に出席したアフガンのアトマル外相は24日、会議が即時停戦を求めたことについて「(反政府武装勢力)タリバンへの強固なメッセージだ。世界からの要求を聞き入れなければならない」と呼び掛けた。閉会後のオンライン記者会見で述べた。
タリバンは政府との停戦協議中も攻撃を続け、国際社会から暴力停止を求める声が強まっている。だが、武力を背景に交渉を優位に進めたいタリバンが停戦を即座に受け入れる可能性は低いとみられる。【11月25日 共同】
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米軍も暴力削減をタリバンに求めてはいますが・・・・。
****米軍トップ、タリバンと会談=アフガンで暴力削減要求****
米国防総省は17日、制服組トップのミリー統合参謀本部議長がカタールの首都ドーハで、アフガニスタンの反政府勢力タリバンと会談したと明らかにした。ミリー氏は6月にもタリバン側と秘密裏に会談しており、今回が2回目という。
国防総省によると、ミリー氏は「暴力行為を即刻削減する必要性」を強調。その上で、政治的解決に向けた進展を加速させるよう求めた。【12月18日 時事】
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こうした情勢にあっての、冒頭記事のようなタリバンの学校設置合意。タリバンも柔軟な考え方に変わりつつあると素直に喜んでいいものなのか・・・やはり、旧タリバン政権時代のような暴力的・イスラム至上主義的体質は変わっていないと見るべきか・・・・。
ただ、そのタリバンが政権に加わる日、あるいは現政権にとって代わる日はそう遠くないかも。