孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

フィリピン  中国の南シナ海進出へ強まる反発 アメリカとの協力関係強化

2023-09-24 23:27:48 | 東南アジア

(【9月8日 ロイター】フィリピンがアユンギン礁付近に座礁させて軍事拠点として使用している軍艦「シエラマドレ号」 この画像は2014年3月撮影ですので、現在は更に老朽化が進んでいると思われます。嵐でも来たら、いつ崩壊しても不思議ではないようにも見えます。)

【アユンギン礁で軍事拠点として機能している軍艦に関して、圧力を強める中国】
南シナ海における中国とフィリピンの対立・衝突が激しくなっていることは、8月8日ブログ“フィリピン 南シナ海で相次ぐ中国とのトラブル 今回は“違法”放水”でも取り上げましたが、その後も中国側は手を緩めることもなく、フィリピンとの軋轢が激しさを増しています。

8月6日に起きた放水事件の背景になっている、アユンギン礁(英語名セカンド・トーマス礁)にフィリピン側が意図的に座礁させ軍事拠点としている古い軍艦については、中国側は「撤去するとの約束があった」と主張、フィリピン側は否定しています。

****フィリピン、南シナ海の軍事拠点撤去を中国に約束せず=大統領****
フィリピンのマルコス大統領は9日、南シナ海のアユンギン礁(英語名セカンド・トーマス礁)で軍事拠点として機能している軍艦について、撤去を中国に約束していないとし、そのような約束があったとしても取り消すべきだと述べた。

フィリピンは南沙(英語名スプラトリー)諸島の一部であるセカンド・トーマス礁の領有権を主張するため、1999年に意図的に軍艦を座礁させた。中国は7日、フィリピンがこの軍艦を撤去するという約束を「明確に」反故にしたと非難している。

これについてマルコス大統領は「フィリピンが自国の水域からこの軍艦を撤去するという取り決めや合意は承知していない」とし、「そうした合意が存在する場合は直ちに破棄する」と述べた。

フィリピン国家安全保障会議の高官、ジョナサン・マラヤ氏はこれに先立ち、軍艦の撤去をフィリピンが約束したとする中国の主張は「どう考えても中国の想像の産物だ」と述べ、約束の証拠を示すよう中国に求めた。

在マニラの中国大使館はこの件に関してコメントしていない。

フィリピン大学の海洋専門家、ジェイ・バトンバカル氏は、セカンド・トーマス礁は中国にとって軍事基地を建設するための理想的な場所になる可能性があるとの見方を示している。【8月10日 ロイター】
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「約束」・・・中国側がまったくの“妄想”で主張するとも思えませんので、ドゥテルテ前大統領時代に何らかの発言があったのかも・・・。当時はドゥテルテ前大統領がアメリカを嫌い、中国に接近していましたので。

なお、中国側は「比側は何度も撤去を約束したが、24年過ぎても撤去せず、大規模な補修をし、仁愛礁(アユンギン礁)を恒久的に占領しようとしている」という言い方をしていますので、ドゥテルテ前大統領だけではないのかも。

中国側は行動で圧力をかけます。

****南シナ海に中国船300隻超集結、準軍事組織「海上民兵」が乗船か****
フィリピン軍は10日、中国と領有権を争う南シナ海で前日に300隻を超える中国船を確認したと明らかにした。中国側が支配を強めるため、展開する船舶の数を増やしている可能性がある。

比軍高官は10日の記者会見で、「9日に400隻以上の外国船が確認されており、そのうち85%が中国船だった」と述べた。340隻以上が中国船だった計算になる。中国の退役軍人や漁民らで構成する準軍事組織「海上民兵」が乗っているとみられる。(後略)【8月12日 読売】
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****また南シナ海で中国艦船がフィリピンに「危険な妨害行為」*****
フィリピン沿岸警備隊は8日、中国との間で領有権をめぐり対立している南シナ海で、中国海警局の艦船などから「危険な嫌がらせを受けた」と非難する声明を出しました。

これは、フィリピン沿岸警備隊が公開した南シナ海での映像です。中国海警局の船と、フィリピン軍が手配した輸送船などが至近距離まで接近しています。

フィリピン側は、中国との領有権争いが続く南シナ海のアユンギン礁付近で8日、中国側の艦船など8隻から「危険な嫌がらせを受けた」と非難しました。

フィリピン側の船は、海軍が実効支配の拠点にするため座礁させた古い軍艦に物資を補給する任務にあたっていたということです。

一方、中国海警局はフィリピン船が「中国政府の許可なく礁の隣接海域に侵入した」と主張したうえで、「厳重な警告を与え、全過程を追跡し、効果的に規制した」としています。

中国側は、この軍艦を撤去するよう求めていて、南シナ海では先月にも中国の艦船が補給に向かっていたフィリピンの巡視船や輸送船に放水するなど、対立がエスカレートしています。

こうした事態などを受け、6日に開かれたASEAN=東南アジア諸国連合と中国を交えた首脳会議では、紛争を回避するための「行動規範」の策定を加速させることで合意していました。【9月8日 TBS NEWSDIG】
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中国艦船によるフィリピン漁船への妨害も。

****「漁業者の操業を妨害」フィリピン沿岸警備隊が中国非難 南シナ海で中国海警局が「浮遊式の障害物」を海面に設置****
フィリピン沿岸警備隊などは24日、領有権をめぐり中国と対立している南シナ海で中国側の船が障害物を設置し、フィリピンの漁業活動を妨害したと非難する声明を発表しました。

フィリピン側の発表によりますと、南シナ海のスカボロー礁付近で中国海警局などの船舶4隻が300メートルに渡ってブイとみられる「浮遊式の障害物」を海面に設置したことが確認されました。

また、中国海警局は無線を使って「フィリピンの漁業者は国際法と中国の国内法に違反している」と主張し、何度も追い払おうとしてきたということです。

フィリピン沿岸警備隊などは24日、中国側が「フィリピンの漁業者の操業を妨害した」として非難する声明を出し、「漁業者の安全を確保するため、自国の領有権を守り続ける」と強調しました。【9月24日 TBS NEWS DIG】
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****中国海警局、スカボロー礁でフィリピン漁船を追跡****
フィリピンの漁師、アーネル・サタムさんは22日、係争海域である南シナ海のスカボロー礁に向けて小型ボートを走らせると、中国海警局の高速艇に激しく追跡された。

追跡は数分間続いた。サタムさんは豊かな漁場である同域に高速艇を振り切って進入しようとしたが、その試みは失敗に終わった。

フィリピン漁業水産資源局の船舶に乗船していたAFP取材班は、この時の追跡劇を目撃した。同局の船は、最大数週間にわたり係争海域を航行する漁師らに食料や水、燃料を補給している。

漁師らは、スカボロー礁における中国の行動について、収入源となる漁場と悪天候の緊急時に避難できる場所を奪っていると訴える。

サタムさんはAFPに「そこ(スカボロー礁)で漁をしたい」と話し、「このようなことは普段からやっている。今日は早い時間にすでに追い回された」と付け加えた。 高速艇はサタムさんのボートに体当たりしたこともあるという。

中国は南シナ海のほぼ全域で領有権を主張しており、2012年にスカボロー礁を実効支配した。以降、海警局や船舶を配備し、フィリピンが歴史的に利用してきた漁場への立ち入りを妨害・制限している。 【9月24日 AFP】*****************

【中国への反発を強めるフィリピン・マルコス政権】
こうした中国の対応に、フィリピン側の反発も高まっています。

3月に行われたフィリピン人の外国や地域連合に対する信頼度を調べた世論調査(何故か、公表は8月)によると、日本を「信頼する」と答えた人は92%でトップだったのに対し、79%が中国を「最大の脅威」に挙げており、南シナ海で海洋進出を強める中国への不信感が浮き彫りとなっています。

また、南シナ海問題で中国への強硬な姿勢を貫き、アメリカとの安全保障協力を強めているマルコス政権の姿勢に6割以上が賛成を示しています。

調査後の対立激化を考えると、現時点では更にフィリピン世論の中国警戒感は強まっていることが想像されます。

マルコス政権もこうした世論を背景に強気姿勢です。言い換えれば、中国に対し弱腰姿勢は見せられない・・・とも。

南シナ海の領有権をめぐっては、2016年に国際仲裁裁判所が中国側の主張を認めない判決を出していますが、フィリピンは更に「サンゴ礁が破壊され、海洋環境が悪化した」として、中国側に対し法的措置を検討していることを明らかにしています。

****「中国がサンゴ礁を破壊」フィリピン政府が国際仲裁裁判所への提訴を検討****
フィリピン政府は20日、中国との領有権争いが続いている南シナ海で「サンゴ礁が破壊され、海洋環境が悪化した」として、中国側に対し法的措置を検討していることを明らかにしました。

南シナ海のロズル礁付近などでは、11日までに実施されたフィリピン沿岸警備隊による調査で、サンゴ礁の破壊や海底の変色が確認されました。

フィリピン側は、周辺の海域で中国の海上民兵の船およそ50隻が確認されたとして、「意図的な活動が行われた可能性を強く示している」と主張。

フィリピン司法省は20日、「サンゴ礁が破壊され、海洋環境が悪化した」として、中国側を相手取り国際仲裁裁判所に提訴することを検討していると明らかにしました。

中国は南シナ海で軍事拠点化を進めていて、サンゴ礁を埋め立てることで人工島を造ろうとしているとの見方も出ています。(後略)【9月20日 TBS NEWS DIG】
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仮に国際仲裁裁判所でフィリピンに有利な判断がなされても、中国は前回と同じく「紙屑である」との対応を取ると思われますが、不適切な行動が常に国際社会によってチェックされることを中国に認識させる点では有意義でしょう。

ただ、スカボロー礁に座礁させた軍艦は老朽化が著しく進んでおり、沈没・崩壊しフィリピン軍の詰め所としての役割を果たせなくなれば、この海域における環境は一気に変化することが懸念されています。

【アメリカとの協力体制強化】
フィリピン・マルコス政権は、中国への対抗を強めるアメリカへの協力姿勢も強めています。そうした構図に日本もアメリカ側で関与を強めています。

****比、日米豪共同訓練に参加 大型艦派遣、世論は歓迎****
海上自衛隊は25日、最大の護衛艦「いずも」をフィリピンに派遣し、フィリピン軍、米軍、オーストラリア軍と24日に4カ国共同訓練を実施したと発表した。中国が南シナ海でフィリピン軍拠点への補給を妨害し続ける中、日米豪3カ国で計画していた訓練にフィリピンが加わった形。計画が大きく報じられ、歓迎する国内世論が高まっていた。

複数の関係筋によると、訓練は当初、フィリピンが参加を見送り、日米豪が南シナ海で23日に行う計画だった。だがフィリピン海軍の揚陸艦も参加する形で1日遅れてマニラ周辺で実施。米軍は予定していた強襲揚陸艦「アメリカ」ではなく沿海域戦闘艦が加わった。【8月25日 時事】
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アメリカとの間では、今年2月、米軍が使用可能な拠点の5カ所から9カ所への増設が決まったばかりですが、更に台湾から200kmほどしかないフィリピン最北端の離島・バタネス州バタン島で、米軍と地元自治体が商業港の開発を計画しています。中国を牽制するためのレーダーの設置も検討されています。

****南シナ海に打たれた「布石」...アメリカがフィリピンの離島で建設する「港」がもたらす効果とは****
領有権をめぐって中国と周辺諸国の対立が続く南シナ海に新たな火種が浮上した。フィリピン最北部のバタネス州バタン島で、アメリカ軍と地元政府が商業港の開発計画を進めていることが明らかになったのだ。

地元政府は荒天時に物資輸送できる代替港が必要だと説明するが、商用か軍用かにかかわらず戦略的な意味は極めて大きい。

バタン島と台湾南端との距離はわずか200キロ足らず。両者の間に位置するバシー海峡は多くの船舶が通過する海上交通の要衝で、中国が台湾に侵攻する際の主要ルートと目される。 

中国が南シナ海で軍事拠点の増設を進めるなか、アメリカはフィリピンなど周辺国との連携を強化しており、港湾建設も中国への牽制の一環とみられる。

また、港が完成すれば米軍は台湾へのアクセスに優れた位置に戦略的拠点を得られる。 それだけに中国側の反発は必至で、フィリピンに経済面で圧力をかけて対抗する可能性も指摘されている。【9月13日 Newsweek】
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****米 フィリピン空軍に新たな偵察機供与 南シナ海の監視活動強化****
中国が海洋進出を強める南シナ海での監視活動を強化するため、アメリカはフィリピン空軍に新たな偵察機を供与しました。

アメリカからフィリピン空軍に供与されたのは、セスナ社の小型偵察機、208B型機で、センサーや通信設備を搭載し、南シナ海の広い範囲で監視活動が行えます。

19日、ルソン島中部にあるクラーク空軍基地では機体の受け渡し式が行われ、フィリピンのテオドロ国防相は「フィリピンが強い国で強力な装備があれば、地域の安定と安全に貢献できる重要な国になれる」と述べ、供与に感謝しました。

これに対して、アメリカ国防総省の関係者は「フィリピンはインド太平洋地域でアメリカから最大の支援を受け取っている国だ。引き続きフィリピン軍の近代化の目標に向けて支援を継続する」と述べて、自由で開かれたインド太平洋の実現のため、今後も支援を強化する姿勢を示しました。

フィリピン空軍がアメリカから偵察機を供与されるのは、2017年の2機以来で、南シナ海への進出を活発化させる中国を念頭に、領海やEEZ=排他的経済水域での監視や、災害対応に活用するとしています。

南シナ海では9月もフィリピン軍の補給活動が中国公船に妨害されたほか、EEZ内で中国の複数の漁船が確認されたと報告されています。【9月19日 NHK】
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****進むアメリカとフィリピンの接近 対中国で結束****
南シナ海で覇権的な動きを加速させる中国に対抗するため、フィリピンが米国との関係強化を進めている。

現地情報によると、「防衛協力強化協定(EDCA)」に基づき、米軍が使用するフィリピン国内の軍事施設の追加を協議。南シナ海で日本やオーストラリアなど7カ国と共同パトロールをすることも検討する。

米比両国は2014年にEDCAを締結。米軍は指定された施設の利用が認められており、フィリピンは4月、米軍の使用を新たに認める軍事施設4カ所を公表した。これにより米軍が使用できる拠点は5カ所から9カ所に増えた。(後略)【9月23日 中日】
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