(武器貿易にはバナナ取引ほどの規制もない・・・として、より強い条約(ATT)を求めるオックスファムの活動 “”より By London&SouthEast Oxfam http://www.flickr.com/photos/ldnoxfam/7160095409/)
【「核兵器の問題は注目を集めるが、日々の市民の殺害に使われるのは通常兵器だ」】
武器貿易のルールをつくって紛争予防を目指す「武器貿易条約(ATT)」の制定に向けた交渉が今月3日から27日までのスケジュールで、国連本部において行われています。
****武器貿易ルール作り、国連で条約交渉始まる****
・・・・開会式で潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は「通常兵器の取り扱いを定める多国間条約がないことは不名誉だ」と述べ、早期制定を訴えた。
条約の議長草案では、戦車や戦闘機などのほか、小銃などの小型武器も対象としている。潘氏は「十分に管理されない国際的な武器移転は内戦をあおり、地域を不安定にし、テロリストと犯罪者のネットワークを強化する」と指摘し、条約づくりの意義を説いた。
交渉は2日に開始予定だったが、エジプトなどが現在は国連オブザーバーのパレスチナも国家として参加できるようにすべきだと主張し、これに米国やイスラエルが反対して紛糾。1日遅れの開会となった。(後略)【7月4日 朝日】
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“開幕宣言をした国連の潘基文(バン・キムン)事務総長は「核兵器の問題は注目を集めるが、日々の市民の殺害に使われるのは通常兵器だ」と述べ、通常兵器の移転規制の必要性を訴えた。
事務総長によると、アフリカでは90〜05年、武力紛争で2840億ドル(約22兆6100億円)の経済的損失が生じ、紛争で使われた通常兵器の95%はアフリカ以外から流入。事務総長は、武器による暴力や抑圧から市民を解放するため「強固で法的拘束力を持ったATT」の実現に向けた交渉に期待を示した。”【7月4日 毎日】
世界中で紛争は絶えませんが、そうした現状を可能にしているのは紛争に使用される武器・弾薬がどこからか供給されているという事実であり、武器貿易のルールが確立されれば、事務総長の言うように“武器による暴力や抑圧から市民を解放する”うえで大きな前進となります。
上記記事にもあるように開幕早々揉めたパレスチナについては、オブザーバー参加のままで交渉参加はできないが、最前列の席が与えられることで決着しています。
“最前列の席”で決着と言うのも、子供のけんかみたいでおかしな話です。
【「人権侵害国には武器を輸出しない」】
議論の方は、当初の予想どおり難航していますが、27日の時間切れを控えて、24日に条約案が示されています。
****「人権侵害国への武器輸出禁止」 国連条約案まとまる****
武器の国際的な取引を規制することで紛争防止を目指す国連の「武器貿易条約」の交渉で、初の条約案がまとまり、24日各国に配られた。目玉とされてきた「人権侵害国には武器を輸出しない」という人権規定が書き込まれた。対象とする武器の範囲は限定的だが、交渉開始3週間で条約案が煮詰まってきた。
米ニューヨークの国連本部での交渉会議で、議長を務めるアルゼンチンの大使が配った。非公式文書の扱いだった議長草案から一歩前進した。27日までの全会一致での合意を目指すが、「人権規定」に強く反対する国もある。
英語版の条約案はA4判で12ページ。
規制対象となる武器が使われることで国際人道法や国際人権法に違反したり、テロや国際的な組織犯罪に使われたりする恐れがあると輸出国が判断した場合、輸出を許可しない義務があると定めている。
各国それぞれの判断にゆだねているとはいえ、紛争国への武器流入を防げる規定が残った。
また、輸出許可についての情報を各国は10年間保存したうえ、条約事務局に毎年報告して公開する義務も盛り込まれている。報告内容は各国任せだが、武器貿易に一定の透明度を持たせられる可能性がある。
ただし、対象とする武器は「攻撃型ヘリコプター」など戦闘型を列挙しており、すべての武器をカバーしているとは言えない内容だ。小型の武器も対象にしているものの、実際の紛争地では「攻撃型」ではない軍用車両などが市民の殺害に使われることもあり、抜け穴を指摘する声もある。
条約の発効には65カ国の批准が必要だとしており、比較的厳しい条件を定めた。(ニューヨーク=前川浩之)
【7月25日 朝日】
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【推進派と慎重派の国々の隔たりは依然として大きい】
推進派と慎重派の国々の隔たりが大きく、全会一致を前提にする今回会議での合意は難しいとも見られており、多数決での採択となる国連総会に交渉の場を移すことも考慮されているようです。
ロシア、中国はもちろん、イラン、シリア、北朝鮮まで含んで“全会一致”というのは、意味不明なくらいに玉虫色にしない限りは無理でしょう。
なお、日本は“推進派”ではあるものの、より強い条約を求めるドイツなど欧州、中南米、アフリカといった積極派とは一線を画しているとのことです。笑えるぐらいに、いかにも日本らしい立ち位置です。
*****武器貿易条約:国連会議が難航…草案に「弱すぎ」批判*****
通常兵器の移転に関する初の国際ルール作りを目指す武器貿易条約(ATT)国連会議は24日、モリタン議長が会議開始以来初めてとなる条約草案を各国に配布した。27日の会議最終日まで3日間しかない中で、対象となる武器などを巡る推進派と慎重派の国々の隔たりは依然として大きい。
会議参加者からは時間切れを危惧する声も出ており、国連総会などに交渉の場を移す「次の手段」が現実味を帯びつつある。
草案で、規制対象となる通常兵器として明示されたのは、戦車や攻撃ヘリコプターなど7種類の大型兵器と小型兵器。弾薬や武器の部品は含まれず、各国の裁量となっている。
「禁止される移転」は、武器禁輸など国連安保理制裁決議に違反する場合や、戦争犯罪や大量虐殺を意図的に促す場合に限定。国際人道法や国際人権法の重大な違反は移転許可の判断基準として挙げられているが、判断の仕方に関する表現が曖昧で、輸出国の裁量の余地が大きくなる可能性がある。
草案は慎重派を含む会議参加国の合意形成を重視したためか、NGO(非政府組織)の集合体「コントロール・アームズ」が24日の声明で「弱すぎる」と批判する内容となった。また推進派のドイツも「弾薬を含むべきだ」との声明を出した。
会議参加国は現在、4グループに大別される。推進派のうちドイツなど欧州、中南米、アフリカの計74カ国は20日、「強い条約」を求める声明に署名。同じ推進派の英国や日本のほか、世界最大の武器輸出国の米国は声明に署名しなかった。政府筋は草案について「足りない部分もあるが、よくここまでこぎ着けた」と一定の評価をする。
一方、慎重派の中でもイラン、シリア、北朝鮮、エジプト、キューバなどは、条約そのものを望んでいないとされる。
武器輸出大国のロシア、中国は人権や人道への言及に難色を示している。
今会議は各国の合意が原則だが、国連総会は多数決。「年内には条約が成立するだろう」(NGO関係者)と長期戦を覚悟する声も出ている。【7月25日 毎日】
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“武器禁輸など国連安保理制裁決議に違反する場合や、戦争犯罪や大量虐殺を意図的に促す場合に限定”とは言っても、シリア内戦で政府軍虐殺を糾弾する反政府派と、反政府テロリストによるテロ行為を非難するアサド政権側の主張が真っ向から対立するように、どのように解釈するかは立場によって全く異なります。
そうした判断基準の問題、弾薬などを含むかといった範囲の問題など、課題は多々ありますが、最初のスタート台として何らかの条約が成立することは意義があります。
有力保有国が参加していない不完全なクラスター爆弾禁止条約でも、条約が存在することがクラスター爆弾使用の抑止力となってきているような事例も存在します。
【弾力化される「武器輸出三原則」】
日本の場合は、「武器輸出三原則」というものがかねてより存在しています。
佐藤首相時代に限定的な三原則が示され、三木首相時代に“対象地域以外への輸出も憲法の精神にのっとって慎む”という厳格化の方向で、いくつかの項目が追加されています。
その後、アメリカとの関係や兵器の国際共同開発の問題もあって、次第に“弾力的”に運用されるようになっており、野田内閣においても、2011年12月27日に藤村修官房長官による談話として、武器輸出三原則をさらに緩和し、国際共同開発・共同生産への参加と人道目的での装備品供与を解禁することが発表されています。
【難しい線引き】
そもそも、武器・軍用品と民生品との線引きも難しいところがあります。
“近年では民生のエレクトロニクス技術向上によって汎用品が容易に軍需用途をみたすことから、汎用品と軍用品の境界が曖昧になっている。また、発展途上国では、民生品として輸出されたピックアップトラックや4WD車両、トラックなどの車輌が軍需物資輸送の兵站を支えるのに使用されたり、機関銃などを搭載してテクニカルと呼ばれる即席戦闘車輌に改造されたりするなど軍民両用が可能な民生品が輸出先で軍事目的に利用されたチャド内戦でのトヨタ戦争の例もある。”【ウィキペディア】
実際、トヨタのピックアップトラックは世界中の紛争には欠かせない、武装勢力御用達の超有名ブランドです。
佐藤首相時代に関係国で懸念され、「武器輸出三原則」表明の契機となった日本のロケット技術輸出が、実際に旧ユーゴで対空ミサイルとして軍事転用されたとの証言も最近報じられています。
****日本のロケット技術、旧ユーゴで軍事転用 元軍幹部証言*****
1960年代に東京大学などが開発したロケットと関連設備が、旧ユーゴスラビアに輸出された後に軍事転用されていたと、複数の旧ユーゴ軍関係者が証言した。このロケットは当時から輸出先での軍事転用が懸念され、その後、インドネシアに輸出された際に問題になり、自民党政権が「武器輸出三原則」を表明した経緯がある。証言は、懸念された事態が現実にあったことを物語る。
輸出されたのは当時の東大生産技術研究所がメーカーと共同開発した「カッパーロケット」。地球観測用で、輸出した型で15キロの観測機器を上空約60キロに打ち上げる能力があった。
開発チームの中心の糸川英夫東大教授(当時)が59年11月、ユーゴへの輸出契約の合意と、ユーゴからの技術者の受け入れを発表。翌60年12月には、ロケット本体と打ち上げ設備、燃料製造設備を「1億7千万円」で輸出することを明らかにした。糸川氏は、ロケットが純粋な観測用であり、軍事研究に使わないという約束を契約書で取りつけることで話がついていると発表したと報じられた。後にロケットを追尾するレーダーも輸出された。
ユーゴは第2次世界大戦後、社会主義国でありながら旧ソ連と距離を置く独自路線を歩んだため、最新兵器の調達が困難になり、50年代半ばまでにミサイルの独自開発を始めた。
朝日新聞に証言した旧ユーゴ軍関係者の一人はミサイル開発の責任者で、日本の技術の買い付けに来日もした元最高幹部。証言によると、日本との商談は58年夏に欧州を訪れた糸川氏との間で始まった。この元最高幹部は「狙いはロケット本体よりも固体燃料だった」と振り返る。カッパーロケットには、燃焼時間が長く、大型化が可能な最新鋭の燃料が使われていた。
発射装置やレーダーは独自開発ミサイル「ブルカン」の発射実験に使われたほか、燃料の製造設備は62年までに現在のボスニア・ヘルツェゴビナ中部の都市ビテツにある軍需火薬工場、通称「SPS」に納入された。
この納入については、ロケットを東大と共同開発したメーカーの幹部(故人)が80年代に専門誌に発表した手記で、「(日本人技師が)工場に滞在、技術的詳細な指導をした」「わが方と全く同格のものができるようになり先方からよろこばれた」と書き残している。
工場はその後、ミサイルやロケット弾の推進薬製造の一大拠点となり、製品は発展途上国に広く輸出された。90年代前半のユーゴ紛争では、武装勢力が工場を巡って攻防を繰り広げた。この工場側によると、設備は現存しているという。
カッパーロケットと打ち上げ関連設備は、65年夏に日本からインドネシアにも輸出されたが、軍事転用を懸念した隣国マレーシアが「わが国にとって極めて不幸」と日本に抗議。国会で議論になり、67年、佐藤栄作首相が、共産圏や紛争当事国などに対する武器輸出を禁止する「武器輸出三原則」を表明した。
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■平和利用と表裏一体
《解説》日本が開発した「カッパーロケット」が輸出先の旧ユーゴスラビアで軍事転用されたことを示す今回の証言は、ロケットとミサイル、すなわち技術の「平和利用」と「軍事利用」が表裏一体であることを改めて示している。
日本のロケット開発は草創期から一貫して、科学研究などの「平和利用」を売り文句に続けられてきた。平和技術によって外貨を稼ぐ有力な手段としても、ロケット輸出を肯定的にみる風潮が国内にはあった。
だが、海外からは軍事転用の懸念を抱かれてきた。米国務省の公文書によると、旧ユーゴへの輸出発表の6年後の1965年、佐藤栄作首相とジョンソン米大統領との日米首脳会談の中で、米側が「(輸出したカッパーロケットの)軍事転用を未然に防ぐ予防手段は設けているのか」と懸念を表明した。
マレーシアの抗議を受けて政府が示した武器輸出三原則はその後、76年に三木内閣が追加で「政府統一見解」を示し、対象地域以外への輸出も憲法の精神にのっとって慎む、として厳格化した。
ロケットと関連技術の輸出はさらに、国際的な枠組み「ミサイル技術管理レジーム」が87年に発足して規制された。
だが近年、ロケット以外の軍事転用可能な技術の開発や利用の歯止めを緩和する動きが国内で相次ぐ。
野田政権は昨年、武器輸出三原則の緩和を決めた。宇宙分野では、08年に宇宙技術の防衛利用に道を開く宇宙基本法が成立。
今年6月には宇宙航空研究開発機構(JAXA)法が改正され、JAXAの人工衛星などの技術をミサイル防衛などの目的で自衛隊が利用する道が開かれた。
技術の平和利用と軍事利用は不可分であるという前提に立って、学問や研究の自由を維持しつつ、用途をチェックし管理するしくみ作りが求められている。【7月15日 朝日】
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繰り返しになりますが、いろんな問題を含んだ武器貿易条約ではあるにしても、先ずはスタートラインにつくという意味で、その成立は重要性を持つと思われます。
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