(台湾に接続する海底ケーブル(提供:Submarin Cable Map)【1月7日 note】)
【バルト海で相次ぐ海底ケーブル切断】
昨年11月から、北欧バルト海と台湾北部海域で船舶による海底の通信ケーブルの切断とみられる事案が相次いでいます。いずれも不注意による事故ではなく、故意の切断の疑いが濃いとも報じられています。
****バルト海ケーブル切断 ロシアの指示受けた中国船が関与の疑い 米メディア報道****
北ヨーロッパのバルト海で海底の通信ケーブルが相次いで切断された問題で、関与が疑われている中国船がロシアの指示を受けた疑いがあるとみて当局が捜査を進めていると報じられました。
バルト海で17日と18日、海底の通信ケーブル2本が切断されました。
アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルは28日、ヨーロッパの捜査当局が中国船籍の貨物船「伊鵬3」がいかりを下ろしたままバルト海のスウェーデン水域を約160キロ航行し、故意に切断した疑いがあるとみていると報じました。
捜査官は「いかりを引きずりながら速度が落ちた状態で数時間航行し、途中でケーブルを切断したことに船長が気付かなかったとは非常に考えにくい」と話しているということです。
伊鵬3は15日にロシアのバルト海沿岸の港を出港し、ロシア産肥料を積んでいました。
捜査当局はロシア情報機関の関与を疑っていて、船長がロシアからケーブルの切断を指示されたかどうかを焦点に事件を調べているということです。【2024年11月28日 テレ朝news】
バルト海で17日と18日、海底の通信ケーブル2本が切断されました。
アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルは28日、ヨーロッパの捜査当局が中国船籍の貨物船「伊鵬3」がいかりを下ろしたままバルト海のスウェーデン水域を約160キロ航行し、故意に切断した疑いがあるとみていると報じました。
捜査官は「いかりを引きずりながら速度が落ちた状態で数時間航行し、途中でケーブルを切断したことに船長が気付かなかったとは非常に考えにくい」と話しているということです。
伊鵬3は15日にロシアのバルト海沿岸の港を出港し、ロシア産肥料を積んでいました。
捜査当局はロシア情報機関の関与を疑っていて、船長がロシアからケーブルの切断を指示されたかどうかを焦点に事件を調べているということです。【2024年11月28日 テレ朝news】
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スウェーデンは中国に正式に捜査協力要請を行っています。
****スウェーデン首相、海底ケーブル切断で中国に正式な捜査協力要請****
スウェーデンのクリステション首相は28日、バルト海の2カ所で海底通信ケーブルが相次いで切断された問題で、中国政府に正式な捜査協力要請を行ったと明らかにした。
17─18日にフィンランドとドイツを結ぶケーブル、リトアニアとスウェーデンを結ぶケーブルで損傷が見つかり、ドイツのピストリウス国防相は破壊工作だとの見方を示した。
当局の捜査対象になっているのが中国の貨物船で、15日にロシアの港を出た後、ケーブルが切断された時間に現場付近を航行していたことが分かっている。
クリステション氏は26日、デンマークの排他的経済水域に停泊中のこの中国船に対して捜査協力のためスウェーデンに引き返すよう要求していた。
同氏は、中国への正式な協力要請は捜査機関からの検証報告に基づくものだと説明した上で「何が起きたかを究明するため貨物船を徹底的に調べるというわれわれの決意の表れだ」と述べた。
西側各国の捜査機関は、中国船が2本のケーブル切断の原因だと確信しているが、それが事故なのか意図的な行動なのかでは見解が割れている。【2024年11月29日 ロイター】
17─18日にフィンランドとドイツを結ぶケーブル、リトアニアとスウェーデンを結ぶケーブルで損傷が見つかり、ドイツのピストリウス国防相は破壊工作だとの見方を示した。
当局の捜査対象になっているのが中国の貨物船で、15日にロシアの港を出た後、ケーブルが切断された時間に現場付近を航行していたことが分かっている。
クリステション氏は26日、デンマークの排他的経済水域に停泊中のこの中国船に対して捜査協力のためスウェーデンに引き返すよう要求していた。
同氏は、中国への正式な協力要請は捜査機関からの検証報告に基づくものだと説明した上で「何が起きたかを究明するため貨物船を徹底的に調べるというわれわれの決意の表れだ」と述べた。
西側各国の捜査機関は、中国船が2本のケーブル切断の原因だと確信しているが、それが事故なのか意図的な行動なのかでは見解が割れている。【2024年11月29日 ロイター】
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この件に関してはすでにひと月半以上が経過していますが、真相に関する報道は目にしていません。
疑念を持たれている船舶が特定されているのに、なぜ時間を要するのか・・・素人的には不思議な感も。
中国側の反応も不明です。
“事故なのか意図的な行動なのかでは見解が割れている”状況で、12月には再び海底送電線が切断される同様の事案が。今度は、制裁下にあるロシア産原油の不法運搬に関与する闇タンカー群「影の船団」が関与しているとのこと。
****バルト海ケーブル損傷 NATOが警戒を強化 「影の船団」が破壊か****
バルト海のフィンランドとエストニアを結ぶ海底ケーブルが25日に損傷した事故で、北大西洋条約機構(NATO)は27日、バルト海での不審船に対する警戒を強化すると発表した。
フィンランド当局は、ロシア産原油を運搬中のクック諸島船籍のタンカー「イーグルS」がいかりを引きずる形で海底ケーブルを損傷したのが原因とみて捜査している。
フィンランド政府によると、25日に損傷したのは同国とエストニアを結ぶ全長170キロ(海底部分145キロ)の送電線「Estlink2」。25日昼に送電を停止し、復旧工事は2025年7月までかかる見通し。ほかにも同じ海域でインターネットケーブル4本が損傷した。エストニア政府は稼働中の送電線「Estlink1」の安全確保のために哨戒艇を派遣した。
NATOのルッテ事務総長は27日、X(ツイッター)でフィンランドのストゥブ大統領と「海底ケーブルの破壊活動を巡る捜査について協議した」と明かし、NATOがバルト海での警戒活動を強化する意向を表明した。
フィンランド沿岸警備隊は26日、現場付近を航行していた「イーグルS」を拿捕(だほ)。フィンランド領海に誘導した。フィンランド地元メディアによると、沿岸警備隊がイーグルSのいかりが欠損しているのを確認した。フィンランド当局は、このタンカーがいかりで海底ケーブルを損傷したとの見方を強めている。
欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は26日、バルト海での捜査にあたる現地当局との共同声明で、このタンカーが、ロシア産原油の不法運搬に関与する闇タンカー群「影の船団」の一部であると断定。「欧州の重要インフラに対するいかなる意図的な破壊も強く非難する」と述べた。また既に実施している影の船団を対象とする制裁をさらに強化すると発表した。
一方、ロイター通信によると、ペスコフ露大統領報道官は27日の記者会見で、イーグルSの拿捕についてコメントを拒否した。
バルト海では11月にも、フィンランドとドイツ、スウェーデンとリトアニアを結ぶ通信用の光ファイバーケーブルがそれぞれ損傷。スウェーデン当局などが、中国籍の船がいかりを下ろしたまま航行した疑いがあるとみて捜査している。この中国籍の船も「影の船団」の一部とみられている。
エストニアのツアフクナ外相は26日、「海底インフラの損傷はより組織的に行われており、攻撃とみなさなければならない」との声明を発表した。
EUは6月、「影の船団」やロシアの軍事装備などを輸送する船舶の域内への入港を禁止するなど取り締まりを強化している。影の船団には整備不良の老朽船が使われることが多く、事故による油漏れなどの環境汚染も危惧されている。【12月28日 毎日】
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【台湾北部海域でも】
年が明けると、今度は中国の貨物船が台湾北部の通信用海底ケーブルを損傷させた疑いが浮上。
****台湾で通信用海底ケーブル損傷 中国人7人乗る貨物船関与か、いかり引きずりジグザグ航行****
台湾の北部海域で中国人が乗る貨物船が通信用海底ケーブルを損傷した疑いがあり、海巡署(海上保安庁)は6日、捜査を始めたと発表した。現地メディアが報じた。
海巡署は3日、台湾の通信会社・中華電信から米西海岸とを結ぶ海底ケーブルが損傷したと通報を受け、貨物船を確認した。カメルーン船籍だが、船主は香港の会社で取締役は中国本土に在住。船員7人も全員中国人だ。
海巡署は、貨物船が海底ケーブルを意図的に損傷させた疑いがあるとみている。貨物船は韓国の釜山港に向かったため、韓国当局に捜査協力を要請した。
英紙フィナンシャル・タイムズは、この貨物船が北部海域でジグザグに航行する航跡図を掲載した。台湾当局の話として、いかりを引きずっていたとも報じた。
海底ケーブルは、情報通信を支える重要なインフラだ。バルト海では2023年10月、フィンランド―エストニア間の海底ガスパイプラインとケーブルが損傷。昨年11月にはスウェーデン―リトアニア間と、フィンランド―ドイツ間のケーブルが損傷した。いずれも中国船の関与が疑われている。【1月7日 産経】
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中国が関与している船舶ですが、中国側はコメントしていません。
****台湾海域でケーブル損傷、捜査は悪天候で中断=沿岸警備当局****
台湾海巡署(海上保安庁に相当)によると、台湾北東部の海域で先週末、通信用海底ケーブルが船舶によって損傷された。しかし、悪天候のため捜査は中断された。
ケーブルを破損させた疑いが持たれているのは、カメルーンとタンザニアの両国に登録された船舶。乗組員7人は全員中国国籍で、船主は香港在住だという。
海巡署は6日夜、悪天候のため乗船して検査できず、船は韓国の釜山に向かったと発表した。バルト海で昨年、海底ケーブルが損傷した事件を参照したほか、同船舶の航行履歴を調べたが、真意は確認できていないと説明した。
中国政府で台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室は、コメントの要請に応じていない。
台湾の安全保障当局高官はロイターに対し、この船への捜査で韓国に協力を要請したと述べた。デジタル発展省は6日夜、ケーブルの損傷による通信への影響はなく、2月3日までに修復される見込みだと発表した。【1月7日 ロイター】
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話はそれますが、台湾と米西海岸とを結ぶ海底ケーブル(日本の通信も同様ですが)・・・そんな長距離・深海をケーブルでつなぐなんて、よくそんなものが設置できるものです。切断云々より、そっちが不思議。
話をケーブル切断に戻すと、いかりを引きずりジグザグに航行ということが事実であれば、故意の犯行と思われますが・・・・真相は明らかになっていません。
事故なのか故意の犯行なのか、どういう思惑でこうした行為を行っているのか、バルト海の事案と台湾の事案は関連があるのか・・・・よくわかりません。
英紙「フィナンシャル・タイムズ」は中国による「グレーゾーン作戦」だったとの見方を示しています。
“緊急バックアップの作動と他の海底ケーブルへのトラフィック移行で、大きな通信障害は発生しなかったとされる”【1月7日 note】
【日本や台湾、英国のような島国にとって、主要な海底ケーブルが切断されることは、軍事のみならず経済や社会活動が停止することを意味する】
今回取り上げた昨年11月以来のバルト海及び台湾北部以外にも、海底ケーブル損傷は起きています。
2023年2月初旬、台湾・マレーシアを結ぶ通信ケーブルが中国船によって損傷された疑い
同年10月、フィンランドとエストニアを結ぶガスパイプラインが中国船によって破裂
****インターネット通信の99%が海底ケーブルを使用****
社会的なインフラのインターネットは仮想空間に存在するが、そのトラフィックの99%は海底ケーブルを通じて行われる。大量のデータを高速かつ効率的に転送するためには、地上の通信回線や衛星通信と比べて帯域幅が広く、遅延が少ない海底ケーブルが適しているからだ。
日本につながるケーブルはおよそ30本、世界では400本以上にのぼり、総延長は地球30周分に相当する130万キロにおよぶ。
台湾本島は9つのケーブル陸揚局に25本のケーブルが接続されている。今回損傷したのは台湾と米国西海岸を結ぶ「太平洋横断高速海底ケーブルシステム(TPE)」の一部で、日米などの通信事業者もケーブルを共有する。
近年、軍事的な目的を背景に海底ケーブルなどを破損する行為が相次いでいる。日本や台湾、英国のような島国にとって、主要な海底ケーブルが切断されることは、軍事のみならず経済や社会活動が停止することを意味する。
国際社会には、海底ケーブルを破損させる行為を中止させるための枠組み形成や洋上監視など体制の構築が求められる。【1月7日 note】
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“一種の『静かな戦争』が始まっている”との指摘も。
****「静かな戦争」の始まりか 台湾やバルト海でも 相次ぐ海底ケーブル損傷、中国船関与か 通信インフラ破壊行為の意図は****
台湾の沿岸警備を担当する海巡署は6日、北部の海域で中国人が乗船した貨物船が海底ケーブルを破損した疑いがあり、捜査していると発表した。北ヨーロッパのバルト海でも昨年11月、沿岸各国を結ぶ海底ケーブルの損壊が2カ所で相次ぎ、中国船が関与した疑いがあるとみられている。
現代生活に欠かせない通信インフラの破壊行為が、習近平国家主席率いる中国による妨害行為だとすれば意図は何なのか。識者は「静かな戦争」が始まっている可能性を指摘する。(中略)
中国の関与が疑われる海底ケーブルの相次ぐ損壊は何を意味するのか。
軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「ロシアが2014年にクリミア半島に侵攻した際には、兵を進めるだけでなく、ウクライナの通信や電力などインフラの破壊活動を行った。
台湾のケーブル損壊に中国が関与しているとすれば、一種の『静かな戦争』が始まっているということではないか。『台湾有事』の際には日本のインフラも狙われることが予想されるため、警戒が必要だ」と話した。【1月7日 夕刊フジ】
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