孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  トランプ前大統領銃撃事件で「ほぼトラ」の流れが更に強まる?

2024-07-14 22:32:33 | アメリカ

(演説中に銃撃されて流血し、警護担当者らに支えられながら拳を突き上げるトランプ前米大統領(中央)=米東部ペンシルベニア州バトラーで2024年7月13日【7月14日 毎日】 見事なパフォーマンスです)

【事件で共和党は一致団結 民主党は更に混迷】
トランプ前大統領の銃撃事件、多くのメディアが取り上げているところですが、今後の大統領選挙を、ひいてはアメリカ政治、更には日本を含む国際政治への大きな影響を与えることになる事件ということで、スルーするのもいかがなものか・・・ということで。

多くのメディアが一致しているのは、今回事件がトランプ前大統領の選挙戦にとって非常に有利に作用するだろうということ。

これまでも「もしトラ」、最近では「ほぼトラ」と言われてきたなかで、バイデン大統領の老いが明らかになって民主党側は大混乱・・・それでも、これを機にバイデン氏に下りてもらい、新たな候補でトランプ氏を追撃するという一縷の希望もあったのですが(実際、ハリス副大統領の支持率などはそう悪くない数字も出ていました)、今回事件でそれも厳しくなったかな・・・という印象です。

まず共和党側はこの事件でトランプ前大統領のもとで結束を固くすることでしょう。事件前の段階では候補者指名を正式決める共和党大会(15日からの予定)での反トランプ勢力の動きなども報じられていましたが、そういう動きも封じ込まれるでしょう。

もとより、予備選挙をトランプ氏と争ったヘイリー氏もトランプ支持を明らかにしていましたので、共和党内の反トランプ勢力と言っても、ほとんど力を持たない状況ではありましたが。

一方の民主党側は混迷が更に深まる恐れも。

****トランプ前大統領の暗殺未遂事件 専門家「事件で共和党は一致団結、民主党は分裂激しく」****
(中略)11月のアメリカ大統領選挙に事件がどのように影響するのか。専門家からは銃撃直後に立ち向かう姿勢をアピールしたトランプ氏への支持が高まるとの指摘が上がっています。

明海大 小谷哲男 教授
「共和党はおそらく一気に一致団結して選挙戦を戦うというモードに入っていくだろう。暗殺未遂、あるいは暗殺案件があると、必ず同情する声が集まりますので。暗殺未遂の直後、レーガン氏に対する支持率が20ポイント上がったという記録があります。それに近いくらいのトランプ氏への支持が今回も見られるのではないか。トランプ氏があの場で見せた力強い拳を突き上げるポーズ、あれが何より一番大きかったんだと思います」

一方、バイデン大統領の“撤退論”が党内で広がる民主党については…

明海大 小谷哲男 教授
「これを受けてバイデン大統領自身が、自ら身を引く可能性はおそらくそんなに高くない。一方で、民主党の議員の中には、もうこれでバイデン氏では勝てないという声がますます高まっていくと考えられるので、民主党はますます内部分裂が激しくなっていき、民主党がまとまらない状態というのが続くのではないか」

銃撃事件により、大統領選はますます混迷の度合いが深まってきました。【7月14日 TBS NEWS DIG】
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【見事なパフォーマンスもあって、「勇気と不屈の米国的精神」の「新たな象徴」という「英雄」イメージを作ることも可能になったトランプ氏】
政治パフォーマンスとしても、トランプ氏は今回事件の現場で血を流しながらも拳を突き上げるという非常に卓越したものを見せ、「強い指導者」を印象付けることに成功しています。

****トランプ氏銃撃、大統領選にも影響必至 民主党は選挙対応で難しさも****
(中略)「私が大統領を退任した頃、米国史上で最も不法移民が少なかった。史上最悪の大統領(バイデン氏)が就任し、何が起きたかを見てほしい」。バイデン政権の「泣きどころ」とも言える国境管理の混乱を批判していた時、突然発砲音があり、トランプ氏は右耳を押さえ、身を伏せた。

すぐに大統領警護隊(シークレットサービス)の担当者らが壇上に殺到してトランプ氏に覆いかぶさるように防護した。

しかし、周囲の状況を確認後、数人の警護担当者に周囲を固められ、壇上から退避する際、トランプ氏は「待て、待て」と制止した。髪形や開襟シャツの首元には乱れがあったが、身なりに構わずに右手のこぶしを4回突き上げた。パニック状態で悲鳴を上げていた聴衆は、トランプ氏の姿を見て、歓声を上げた。(後略)【7月14日 毎日】
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高齢による衰えが隠せないバイデン大統領とは真逆の「強い指導者」イメージです。これでは勝負にならない感も。

****米国「政治暴力」に再び震撼 憎悪の連鎖 トランプ氏「英雄」イメージを選挙利用も****
米国が再び「政治的暴力」に震撼した。東部ペンシルベニア州で13日に起きた共和党のトランプ前大統領の銃撃事件は、深刻な国内の分断を改めて露わにした。

一方、トランプ氏は暴力の標的とされた事実を、11月の大統領選に向けて求心力を高める材料に用いる可能性が高い。(中略)

耳から流血したトランプ氏は警護に支えられながら立ち上がり、拳を大きく突き上げた。
映像によると、支持者らは歓喜とともに激しい怒声を上げた。トランプ氏を失わなかったことへの安堵だけでなく、トランプ氏を狙った「敵」への憎悪が交錯した。

近年の米政治の対立は深刻さを増すばかりだ。民主党が志向する「大きな政府」か、従来の共和党が目指した「小さな政府」かという政策や理念にとどまらず、「トライバリズム(部族主義)」と形容される域に達したと指摘される。部族社会のように憎み合う勢力が対立する状態を指す。

2020年の前回大統領選では、落選したトランプ氏が繰り返す「不正」主張を信じた支持者が、選挙結果を覆すために連邦議会を襲撃。関連死を含め、少なくとも5人が死亡した。

共和党支持層の大多数は今も「不正」を信じ、それを否定する民主党支持層に敵意を募らせる。バイデン大統領ら民主党側は、トランプ氏周辺や支持者にも「民主主義の脅威」とレッテルをはってきた。犯行の詳細な動機などは分かっていないが、トランプ氏銃撃事件は、そうした憎悪の連鎖の中で発生した。

トランプ氏は事件で暗殺の危機を切り抜けた「英雄」のイメージを手にした形だ。米ライス大で大統領史を研究するダグラス・ブリンクリー氏は米紙に、トランプ氏が「勇気と不屈の米国的精神」の「新たな象徴」となる可能性を指摘した。(後略)【7月14日 産経】
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【バイデン・民主党サイドのトランプ批判が暗殺未遂に直結・・・との共和党からの批判で、今後の選挙戦力見直しも迫られる民主党サイド】
バイデン陣営・民主党側の今後の対応を難しくしているのは、今回事件を引き起こしたのはこれまでのバイデン・民主党サイドのトランプ批判に責任があるとの声が共和党から出ていることで、今後誰が候補者になったとしてもトランプ批判の矛先を鈍らせることになることが予想されます。

****バイデン氏、トランプ氏銃撃で迫られる戦略見直し 「暴力をあおった」共和党から批判も****
米国で13日に起きた共和党のトランプ前大統領銃撃事件は、11月の大統領選を前に撤退圧力が強まる民主党のバイデン大統領にも大きな衝撃を与えた。

バイデン氏は「民主主義の敵」とみなすトランプ氏との戦いで「勝利に最適な候補は私だ」と訴えてきたが、民主党はバイデン氏の適性を含め、戦略の根本的な練り直しを迫られる。

バイデン氏はトランプ氏銃撃後の演説で事件を「(米国の)病だ」と呼び、「だからこそこの国を結束させなければならない」と訴えた。選挙集会で候補者を狙った銃撃は、民主主義と、米国憲法修正第1条で定めた言論の自由への攻撃にほかならないからだ。

しかし、バイデン氏はこれまで、トランプ氏とその支持層を「民主主義の敵」「米国への脅威」と批判してきた。「政治的暴力」への批判はもっぱら、2021年1月の議会襲撃事件と絡めたトランプ氏側への非難で多用された。

共和党では、そうしたバイデン氏の言説が暴力をあおり、「暗殺未遂につながった」(バンス上院議員)との批判も浮上している。

認知機能の低下が指摘されるバイデン氏が民主党内の撤退圧力を拒む盾となっているのは、「自分には仕事がある。それはトランプを倒すことだ」という強い信念だ。しかし、トランプ氏が政治的暴力の標的となり、バイデン氏を支えた「民主主義を脅威から守る」というメッセージは根底から揺さぶられた。

指導者として「弱さ」も指摘されるバイデン氏は本当に「勝利に最適」か。事件は民主党が候補を再考する一つの契機となる可能性がある。【7月14日 産経】
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****トランプ氏銃撃、米政界に衝撃…親トランプ議員は民主党が原因と主張「トランプ批判が暗殺未遂に直結」****
米共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)が演説中に銃撃された事件を受け、米政界には衝撃が広がった。民主主義への攻撃を非難し、真相究明を求める声が上がる一方、共和党の「親トランプ」議員は事件の原因が民主党にあると主張した。

「平和的な選挙集会での政治的暴力は、この国で許されるべきではない」
共和党のマイク・ジョンソン下院議長は13日、自身のX(旧ツイッター)に投稿し、銃撃を非難した。「下院は徹底的な調査を行う」とも語り、早急に米連邦捜査局(FBI)幹部などを呼んで、下院として調査を開始する意向を示した。

トランプ氏を批判してきた民主党も、銃撃を容認しない立場では歩調をそろえた。ナンシー・ペロシ元下院議長は声明で「いかなる政治的暴力も私たちの社会では許されない。トランプ氏が無事で神に感謝する」と表明した。バラク・オバマ元大統領はXで「トランプ氏が重傷を負わなかったことに安堵あんどした。この機会に、政治における礼儀正しさと敬意を改めて誓うべきだ」と語り、分断が深まる国民に連帯を呼びかけた。

これに対し、トランプ氏を支持する共和党議員は、民主党批判に走った。

トランプ氏の有力な副大統領候補とされるJ・D・バンス上院議員は自身のXに「バイデン陣営の大前提はトランプ氏が権威主義的なファシストであり、何としても阻止しなければならないというものだ」と投稿。こうした民主党のトランプ批判が「暗殺未遂に直結した」と一方的に主張した。

トランプ氏を熱烈に支持する共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員もXで、「民主党はこうなることを望んでいた。彼らは何年もの間、トランプ氏の失脚を望んできたし、そのためには何でもするだろう」と攻撃した。【7月14日 読売】
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****バイデン陣営、選挙広告を中断 同情論警戒、戦略練り直し****
11月の米大統領選で再選を目指すバイデン大統領の陣営は13日、トランプ前大統領の暗殺未遂事件を受けて選挙広告の中断を決めた。被害者としてトランプ氏に同情が集まるのを警戒し、攻撃的な広告を流し続けるのは得策ではないと判断したとみられる。陣営は戦略練り直しを迫られそうだ。

バイデン陣営は「対外発信を一時停止し、テレビ広告も速やかに取りやめる」と表明した。バイデン氏も13日、演説で事件を非難し「この国を団結させなければならない」と強調。激しい中傷合戦を繰り広げてきたトランプ氏とも直接連絡をとって気遣う姿勢を示した。【7月14日 共同】
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【最大のくびきであった「裁判」も有利に展開】
「勇気と不屈の米国的精神」の「新たな象徴」という「英雄」イメージを作り上げたいトランプ氏ですが、これまで同氏にとって最大の足かせになると見られていた裁判の方も、トランプ氏弁護団による遅延作戦と、同氏が起訴を政治的なものだと主張し続けていることが奏功し、また、同氏が前政権時代に作り上げた最高裁判事の保守化もあって、トランプ氏に都合のいい流れとなっています。

****トランプ氏の裁判、驚くべき「運命の逆転」****
選挙戦を終わらせるはずの91の罪状が、トランプ氏の立場をかつてないほど強くしている

1年前、米国の司法制度はドナルド・トランプ前大統領を追い詰めているように見えた。
検察当局は、負けたと分かっている選挙結果を覆そうとし、返却すべきだと知っている機密文書を手放さず、有権者の不興を買うと分かっている不倫関係を隠すためにポルノ女優に口止め料を払ったとされる大統領の完全なイメージを描き出した。米国で法の上に立つ者はいない、たとえ大統領経験者でも同じだ、と検察は主張した。

だが事態は逆に転がった。トランプ氏を起訴した4件の異なる裁判が、大統領への返り咲きを目指す同氏の3度目の選挙戦を後押ししているばかりか、大統領になった場合はトランプ氏が前例のないレベルの権限を享受する道を開いた。

ニューヨーク・マンハッタンの裁判所の陪審員団は5月、口止め料を巡ってトランプ氏が問われた34の罪の全てで同氏に有罪評決を下した。だが同氏が刑務所に収監される可能性は低そうだ。他の裁判は延期されており、縮小される可能性が高い。不正行為の詳細な記述によって有権者を離反させるどころか、起訴をきっかけに支持者は彼の下に結集した。

連邦最高裁判所が先週、トランプ氏の大統領在任中の多くの行為について事実上、免責を認める判断を下したことで、同氏に対する刑事捜査に最初からつきまとっていた疑問がより鮮明に浮かび上がっている。

すなわち起訴の目的が、誰かに不正行為の責任を取らせ、司法制度の中で罰することならば、起訴した結果、政治的恩恵を与えた場合はどうなるのか。

検察は個々の訴訟の事実に注目する。それと同時に、公共の利益になる訴訟かどうかを判断し、選挙や政治に影響を与えることを極力避けようとする。そうしたさまざまな理想が、トランプ氏を追及する側では激しくせめぎ合っている。

一時は混戦模様だった共和党の大統領候補指名争いは、トランプ氏が4件の起訴に直面した後の昨年9月には、同氏が首位を独走する形になっていた。口止め料の支払いを隠ぺいする虚偽記載の罪で今年5月に有罪評決を受けた当日、同氏の選挙戦を支援するため1日で3480万ドル(約56億円)という記録的な資金が小口献金者から集まった。

バイデン大統領は2期目を務めるにはあまりにも高齢だとの有権者の不安が高まる中、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の最新世論調査ではトランプ氏のリードが6ポイント差に拡大した。

トランプ氏の弁護団による遅延作戦と、起訴は政治的動機に基づいており、大統領に当選させないための画策だと同氏が主張していることが奏功したようだ。WSJの最新世論調査では、トランプ氏の有罪評決について、司法制度が責任を取らせることを示したとの回答は47%だった一方、司法制度が政治的圧力の影響を受けることを示したと答えた人は49%に上った。(中略)

「前代未聞」の判断
トランプ氏は公務には免責が認められるべきだとして連邦最高裁に判断を求めていた。検察の中には、トランプ氏が司法省職員と会話したことなど、問われている罪のいくつかは、最高裁が大統領の公務として除外し、起訴の範囲を狭める可能性があると予想する声もあった。

だが最高裁判事の意見が割れる中、6対3で下された判断は、大統領経験者の在任中の行為に広く免責を認め、大方の予想を超えるものだった。

大統領の中核的な任務にあたる行為は起訴されないほか、検察は公式と非公式の行為を分ける大統領の動機を問うことはできないとした。さらに公務に関連して起訴するのであれば、行政府の権限と機能に立ち入る危険があってはならないと、新たな高いハードルを課した。(中略)

ワシントンの分断
トランプ氏の免責特権を巡る裁判で、リベラル派のソニア・ソトマイヨール最高裁判事は痛烈な反対意見を述べた。この判断は将来の大統領に強大な権力を与えるとみられることから、米国の民主主義を危惧するとした。「法の上に立つ者はいないというわが国の憲法と統治制度の根幹をなす原則を愚弄(ぐろう)するものだ」。同判事はこう記した。

一方、トランプ氏は最高裁判断が予想以上に優れていたと称賛した。「見事な文章、そして賢明さだ」。同氏はそれを全て大文字でソーシャルメディアに投稿した。「米国人であることを誇りに思う!」。トランプ陣営は翌日、ニューヨークで有罪評決を受けた直後の6月に、1カ月で1億1180万ドルの資金を集めたと発表した。【7月9日 WSJ】
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「裁判」のくびきから解き放たれ、銃撃事件で「英雄」イメージを高めるトランプ氏、候補者も定まらず、トランプ批判の戦略も見直しを迫られる民主党サイド・・・・勝負あったかのようにも見えますが、11月の投票日まではまだ何が起きるかわかりません。 

と言うか、トランプ復活を阻止するためには、銃撃事件に匹敵するような何かが起きないと難しいかな・・・というのが事件直後の個人的感想です。とても気が重い。
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