(大統領選の結果に憤慨して連邦議会議事堂周辺に集まったトランプ支持者(2021年1月6日) 【10月22日 Newsweek】)
【「トランプ優勢」の気配が濃厚に】
注目のアメリカ大統領選挙は「トランプ優勢」の気配が濃厚になっています。候補者に名乗り出た当時勢いのあったハリス氏ですが、このところは「失速」気味で、全米ではハリス氏がまだわずかにリードしているものの、肝心の激戦州でトランプ氏の優位が強まっているためです。
****米大統領選挙:ハリス氏が失速!? 「今日」投開票ならトランプ氏勝利?****
以下は、16日までの報道や世論調査結果を基にした、あくまで「現時点」での評価です。投開票日までの3週間弱の間に状況は大きく変化するかもしれません。
トランプ氏が優勢に!?
11月5日に投開票を迎える米大統領選において、民主党ハリス氏の勢いに衰えが見え始めています。
RealClearPolitics(以下、RCP)によれば、全国の世論調査でハリス氏は8月以降に終始、共和党トランプ氏をリードしてきました。ただ、両者の差はわずか(いうなれば誤差の範囲内)。10月上旬に2.2ポイントあった差は15日時点で1.7ポイントに縮小しています(直近、11の世論調査の平均)。
ハリス氏にとって深刻なのは、大統領選の帰趨を決しうるスウィングステート(接戦州)でトランプ氏のリードが目立つことです。同じくRCPによれば、7州のうち6つでトランプ氏がリード。ハリス氏が唯一リードするウィスコンシンでの差はわずかに0.3ポイントです。
RCPによれば、以上から現時点で投票が行われたら、獲得選挙人数236対302でトランプ氏勝利との結果になるようです。(後略)【10月17日 マネースクエア】
トランプ氏が優勢に!?
11月5日に投開票を迎える米大統領選において、民主党ハリス氏の勢いに衰えが見え始めています。
RealClearPolitics(以下、RCP)によれば、全国の世論調査でハリス氏は8月以降に終始、共和党トランプ氏をリードしてきました。ただ、両者の差はわずか(いうなれば誤差の範囲内)。10月上旬に2.2ポイントあった差は15日時点で1.7ポイントに縮小しています(直近、11の世論調査の平均)。
ハリス氏にとって深刻なのは、大統領選の帰趨を決しうるスウィングステート(接戦州)でトランプ氏のリードが目立つことです。同じくRCPによれば、7州のうち6つでトランプ氏がリード。ハリス氏が唯一リードするウィスコンシンでの差はわずかに0.3ポイントです。
RCPによれば、以上から現時点で投票が行われたら、獲得選挙人数236対302でトランプ氏勝利との結果になるようです。(後略)【10月17日 マネースクエア】
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獲得選挙人数236対302・・・・全米での得票数でハリス氏に劣ったにしても、トランプ氏の圧勝です。
こうした状況を踏まえて、シビアな「賭け」の世界でもトランプ氏勝利に傾いています。
****米大統領選、予測市場でトランプ氏勝利の賭け金が膨らむ****
ブロックチェーンベースの予測市場「ポリマーケット」のトラッカーによると、11月の米大統領選で共和党候補のトランプ前大統領が勝利することへの賭けが今月21日午前時点で総額4300万ドル弱となり、18日時点の総額3000万ドルから大きく膨らんだ。(中略)
大統領選に関する世論調査ではトランプ氏と民主党候補のハリス副大統領が拮抗しているのに対し、ポリマーケットではトランプ氏の勝率が63%に急上昇し、ハリス氏の37%に水をあけている。
このためソーシャルメディアの利用者らと予測市場の専門家らは、大口の賭けが予測市場を揺さぶっているのか、それとも予測市場の方が先行指標として優れているのかで疑問を呈している。【10月22日 ロイター】
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認めたくない予測ですが、これが現実です。
【民主主義と相容れないトランプ氏、彼を熱烈支援する宗教右派の異様さ】
いつも言うように私はトランプ氏をまったく評価していません。それは政策以前の問題であり、彼の人間性、民主主義と相容れない、強権支配を好むような性向によるものですが、そのあたりは蹴り返しになりますし、(支持・不支持とは関係なく)皆が承知しているところですから、今回は省きます。
そのトランプ氏を熱烈に支持する宗教右派の存在も、個人的には異様に思えます。
****真の狙いは「世界支配」...トランプを「神に選ばれし者」と信じるキリスト教右派の集会を覗いてみたら【潜入ルポ】****
<トランプ暗殺未遂事件は「予言されていた」──なぜ福音派の人々は、3回の結婚歴があり女癖も悪い億万長者を崇め始めたのか>
ミトンの形をしたアメリカ・ミシガン州の親指部分で、ある蒸し暑い夕方、預言者を名乗る人物が白いテントの下で700人のキリスト教徒に保証した。あなた方は死を逃れられる、と。
どうやって? 米大統領選の激戦州であるこの州で、共和党の大統領候補ドナルド・トランプ前大統領を勝たせることで、だ。
理由は単純明快。ここに集まったキリスト教徒は全員、このテントから出る頃にはトランプ陣営の選挙戦を手伝うことを自らの使命とするようになる。その任務に取り組んでいる間は死ぬ心配はない。神は自らが与えた使命を果たすまで、そのしもべを天に召すことはないからだ。
「死が迎えに来たら、自分にはまだ果たすべき使命があると言えばいい」──自称預言者のランス・ウォルナウは聴衆にそう教えた。
11月の大統領選本選を控え、激戦州を回って宗教イベントを催す「勇気のツアー」。ここミシガン州ハウエル郊外は3つ目の巡回先だ。
ツアーを主催するウォルナウはテキサス州在住の60代。セールストークが得意なキリスト教福音派の伝道師だ。3日間にわたるイベントは、戦いへの呼びかけであり、選挙戦略会議であり、そして何より古風なペンテコステ派のテント集会である。
このイベントはまた、アメリカのキリスト教徒の間で急速に勢力を拡大しつつある好戦的な宗教右派のパワーを見せつける場ともなった。
トランプはアメリカの宗教改革に重要な役割を果たし、来るべき「大覚醒(信仰の復興)」のカタリスト(触媒)となる運命にある──そう信じて疑わない信徒たちがここに集まっている。
彼らに言わせれば、トランプは現代版のキュロス2世だ。そう、強大な帝国を打ち立て、ユダヤ人を「バビロンの捕囚」から解放して約束の地に帰還させたアケメネス朝ペルシャの開祖──無信仰でありながら、旧約聖書にその名を残した偉大な帝王の再来だというのである。
今年7月に起きた暗殺未遂事件で、トランプが血を流しながらこぶしを突き上げ、無事をアピールしたことで、そうした見方がますます強まった。今ではここに集まった信徒たちは、トランプの行く手を阻む者がいれば、それが何者であっても、「撃破すべき邪悪な勢力」と見なす。
福音派になじみがないアメリカ人は、こうした宗教右派の運動がこの国のキリスト教信仰の在り方を急速に変えつつあることに気付いていないだろう。政治とは、邪悪な勢力と神の軍隊との戦いにほかならない。今やそう信じてトランプを全力で推すキリスト教徒が大勢いるのだ。(後略)【10月22日 Newsweek】
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長い記事で、その内容についていけず、途中で読むのやめました。
“トランプの行く手を阻む者がいれば、それが何者であっても、「撃破すべき邪悪な勢力」と見なす。”・・・これはもはや民主主主義でも何でもありません。
もし、そうした価値観に基づく政権が成立したら、「侍女の物語」が描くような宗教右派による強権支配体制、支配層・その支持者の価値観から外れる者の人権ははく奪される世界・・・そうしたディストピアも現実味を増すでしょう。
【同盟関係から用心棒に変わるアメリカとの関係】
そこまで突き進むことがないにせよ、国内だけでなく国際関係も大きく変わってきます。
「守ってほしけりゃ金払え」というのは、かねてよりのトランプ氏の持論です。
****日本も無関係ではない。トランプの「守ってほしけりゃ金払え」を警戒せよ*****
止まないトランプ砲:守って欲しければカネ払え!
ぶっちゃけ、本音でしゃべるのが持ち味で、絶大な人気の源なのでしょうが、そこには品性のかけらも感じられないのがトランプ前大統領です。(中略)
在韓米軍兵士は4万人ほどですが、更なる増員や装備の拡充を進めています。その状況を「待ってたぜ!俺に任せろ」とばかり、口先介入してきたのがトランプ氏です。
これまで金正恩氏とは「ラブレターを交換するほど親しい」と言いたい放題だったトランプ氏ですが、「北朝鮮は何をしでかすか分からない。危険な兆候がある。北は大量の核兵器を保有してるからな」と述べ、「アメリカが手助けしてやるから、カネを払えよ」と言い出しました。
しかも、その金額が半端ありません。
「在韓米軍の駐留維持費として年間100億ドルは最低限払ってもらう」。
実は、2週間前、韓国とアメリカは2026年の在韓米軍の駐留経費を11億3000万ドルと設定し、韓国政府が負担することで合意したばかりでした。トランプ氏は何とその10倍ものカネを韓国に請求すると言うのです。
曰く「韓国は豊かになった。アメリカのお陰だ。韓国人は喜んでいる。その幸せを北朝鮮が潰しに来るかもしれない。だったら100億ドルくらいは安いもんさ」。
不動産王として経験を活かし、北朝鮮にもリゾート開発計画を売り込んでいるトランプ氏ですが、「取れるところから目いっぱい分捕る」というのがトランプ流なのでしょう。
要は、トランプ氏にとっては、敵も味方も関係ありません。在日米軍の駐留経費についても、トランプ氏は少な過ぎる、日本はもっと払えると主張。ぶっちゃけ、日米地位協定の見直しを画策している石破新首相にとっては手強い相手になるはずです。【10月21日 浜田和幸氏 MAG2NEWS】
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【ASEAN 同盟相手としてアメリカを中国が上回る トランプ復権でアメリカが変質するなら日本も再考の余地あり】
いつも言うように、「守ってほしけりゃ金払え」というのは価値観の共有をベースにした同盟国の発想ではなく、「用心棒」の発想です。
戦後、日本は民主主義という価値観を共有するアメリカとの同盟関係を基軸としてきましたが、アメリカが民主主義を捨て、用心棒となるのであれば、日本の外交姿勢の基軸も再考する必要があります。
東南アジア・ASEANN 諸国にあっても、アメリカと中国のどちらとの関係を重視すべきか、対応が分かれています。
****米中対立の影響で揺れるASEAN 一体性失われ、親米・親中・非同盟の3つのベクトルが共存する現実****
米中対立や台湾情勢、ウクライナ侵攻など世界の分断はいっそう顕著になり、国連安全保障理事会の機能麻痺は既に回復不能なところまで来ている。
ウクライナ問題で決議を通そうとしても、それにはロシアが拒否権を行使し、紛争が激化する中東でも、イスラエルを非難するような決議でさえも米国はそれを通すことを許さず、世界の安全と平和に対する役割を安保理に託した国連憲章の権威もどこかへ消え去ってしまったかのうようだ。
そして、世界の分断という問題はASEANでも顕在化している。ASEANというと地域的協調・協力、地域的一体性というイメージが先行するが、米中対立やウクライナ侵攻などの影響を受ける形で、各国によって独自の路線を突き進み、ASEANで1つの答えを見出すということが難しくなってきている。
例えば、フィリピンは新米路線に舵を切っている。(南シナ海での中国との衝突頻発を受けて)マルコス大統領は安全保障面で米国との関係を強化するなど、米国寄りの姿勢を鮮明にしている。
反対に、ラオスやカンボジアとったASEAN加盟国は、中国寄りの姿勢に徹している。ラオスは長年中国から多額の財政支援を受け、経済発展やインフラ整備などを強化し、近年では首都ビエンチャンと中国南部・昆明を結ぶ高速鉄道が中国の資金によって完成した。
今日、ラオスはASEANの中でも最も中国からの影響を強く受け、その外交姿勢も当然ながら親中的であり、昨年7月には米国にいる家族に会うために中国を出国した人権派の弁護士が経由地のラオスで現地警察に拘束されたが、拘束理由は明らかになっていない。
カンボジアも同様に中国による一帯一路プロジェクトの影響を受け、湾岸施設や交通インフラなどの建設などを強化し、多くの中国企業がカンボジアに進出している。
首都プノンペンを通る環状道路は習近平国家主席の名前を冠した習近平大通りと命名され、カンボジアの学校では英語より中国語が重視されるケースも珍しくなく、フィリピンとは全く異なる外交姿勢がそこにはある。
一方、ASEANを含むグローバルサウス諸国の間では、米中対立やウクライナ戦争など大国絡みの争いへの不満や懐疑心が拡大している。
ASEANで最大の人口を有するインドネシアの政府高官らは、米中はASEANを新たな冷戦の主戦場にするべきではないなどと大国に不満を断続的に示しており、それとは距離を置く姿勢に徹している。
インドネシアでは10月20日、ジョコ前政権で国防大臣を務めたプラボウォ氏が新大統領が就任したが、プラボウォ大統領は如何なる軍事同盟にも参加せず、どの国とも友好な関係を保ついというジョコ前政権の全方位外交(非同盟外交)を継続する考えを示した。
インドネシアは国益を第一に大国間対立とは一線を画し、中国に寄り過ぎない、米国にも寄り過ぎないという、フィリピン、カンボジア、ラオスとは異なる第3の選択肢に徹することだろう。
今後各国でどういった政権が誕生するかによっても、中国との距離感、米国との距離感に変化が出てくると思われるが、今日のASEANは一体性溢れるものではなく、親米、親中、非同盟という3つのベクトルが内在する状態と言えよう。【10月22日 治安太郎氏 まいどなニュース】
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“ASEANというと地域的協調・協力、地域的一体性というイメージが先行するが”とありますが、ASEANの分断、そして統一的対応がとれないことは以前からの話です。
それより注目されるのは、下記の数字。
****ASEAN、同盟組むなら「中国選ぶ」が5割超 初めて「米国」上回る 識者ら調査****
東南アジア諸国連合(ASEAN)の10加盟国の識者らを対象にした年次調査で、対立する米国と中国のいずれかと同盟を結ぶことをASEANが迫られた場合、中国を選ぶべきだとの回答が2020年の質問設定以来初めて、米国を上回った。
調査はシンガポールのシンクタンク「ISEASユソフ・イシャク研究所」が今年1〜2月、研究者や市民団体代表、政府関係者ら約2千人を対象に実施した
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調査の結果、中国との同盟を選んだ回答は過半数の50・5%を占めた。米国は49・5%だった。23年の前回調査では、米国が61・1%、中国が38・9%だった。
今回の調査ではマレーシア、インドネシア、ラオス、ブルネイの各国で中国の支持が顕著に増加し、7割を超えた。各国とも巨大経済圏構想「一帯一路」などで中国による貿易、投資が拡大している。
一方、中国と南シナ海で領有権争いを抱えるフィリピンは8割超が米国を支持し、ベトナム、シンガポールなども過半数が米国を選択。各国で判断が割れた。
また、中国の経済的影響力の拡大には全体の6割超が「懸念する」と答え、警戒感も浮かび上がった。
米中対立のリスク回避のために信頼できる戦略的パートナーとしては、欧州連合(EU)が37・2%でトップ、次いで日本(27・7%)が選ばれ、インドやオーストラリア、英国、韓国を上回った。【10月22日 産経】
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前述のように、アメリカが第2次トランプ政権で変質を加速するのであれば、日本もパートナーについて再考する必要があります。
もちろん中国とは価値観が相容れませんが(中国からすれば歴史認識で日本の立場を受け入れがたいという面もあるでしょう)、互いにそうした違いがあることを前提にしたうえでの、現在・将来の経済的関係、過去の文化的つながり、地理的近さ等々を勘案した関係もあり得るのかも・・・・。あくまでも、「選択肢のひとつ」という話ですが。