孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

スーダン内戦  戦闘・飢餓で崩壊状態の医療 戦闘、国軍有利の報道も・・・露、それを見込んだ動き

2024-12-19 23:07:28 | スーダン


(準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の攻撃で破壊された車両。スーダンのオムドゥルマンで10月撮影【12月11日 ロイター】)

【「戦争の両当事者による犯罪は、国際社会が完全に沈黙する中で続いている」】
****スーダンで続く「忘れられた紛争」****
2023年4月15日に始まったスーダンでの紛争・・・国軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊」(RSF)の統合問題を背景に、軍が主導する統治評議会議長のトップ、ブルハン国軍最高司令官と、同副議長でRSF司令官のダガロ氏の権力闘争としての武力衝突が発生・・・は、パレスチナやウクライナでの戦争とは違って、それらの戦争に匹敵する犠牲者を出しながらもあまりメディアに取り上げられることなく続く「忘れられた紛争」となっています。

「忘れられた」かどうかに関係なく、紛争の戦火から逃げまどい、飢えや医療崩壊に苦しむ住民にとっては等しく悲劇・地獄であり、「忘れられた紛争」の場合は人道支援も行き届かないというということでより悲惨な状況にもなります。

死者は推計で1万5千人にのぼるとされていますが、実際にはその10~15倍に上る可能性があるとの見方(バイデン米政権のスーダン特使トム・ペリエロ氏)もあります。【8月1日ブログ“スーダンの「忘れられた紛争」 国内外への避難民は人口の20%、1000万人超”より再録】
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戦闘は未だ激しく、12月9-10日の二日間だけで、交戦中の双方による爆弾や砲撃で民間人を中心に少なくとも127人が死亡したとのことです。

****内戦下スーダン、2日間で100人超が死亡 国軍とRSF双方が攻撃****
内戦下のアフリカ北東部スーダンで9─10日、交戦中の双方による爆弾や砲撃で民間人を中心に少なくとも127人が死亡した。

国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」は昨年4月以降戦闘を続けており、停戦交渉は停滞している。

国軍とRSFは人口密集地域を中心に攻撃を続けている。北ダルフール州では9日、市場に8発以上の樽爆弾が投下され、人権団体によると100人以上が死亡し、多数の負傷者が出た。

国軍は北ダルフール州周辺の最後の拠点となる州都アル・ファシールを巡りRSFと激しい戦闘を続けている。

一方、10日にはRSFがハルツーム州の国軍支配地域に砲撃を行い、少なくとも20人が死亡した。

国連の推計によると、内戦で約1200万人が家を追われ、3000万人以上が援助を必要としている。【12月11日 ロイター】
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9日、北ダルフール州の市場への国軍の空爆による被害者は多くが市場の商人や買い物客だったとみられ、地元の弁護士団体は声明で「戦争の両当事者による犯罪は、国際社会が完全に沈黙する中で続いている」と訴えています。

空爆による犠牲者は連日で、昨年4月に戦闘が始まって以降、国軍の空爆による犠牲者は数千人にのぼるとみられるとも報じられています。

10日のRSFによるハルツーム州国軍支配地域への砲撃では、市場や医療施設が標的になっており、走行中のミニバスが被弾し乗客全員が死亡したもようです。

“紛争地域のデータを収集する米NPO「ACLED」によると、スーダンでは昨年4月以降、少なくとも1万8千人が戦闘で死亡した。”【12月11日 共同】

【戦争による死傷者、大量飢餓の脅威、医療施設への攻撃・・・ほとんど崩壊している医療】
こうした状況ですので、もともと極めて不十分だった医療は「崩壊状態」です。

****スーダンの医師たち、医療崩壊と戦争の矢面に立たされる****
スーダンの医師モハメド・ムーサ氏は、自分の病院の近くで絶え間なく聞こえる銃声や砲撃音に慣れてしまい、もはや驚かなくなった。それどころか、彼はただ患者に接し続けている。

「爆弾には麻痺してしまった」30歳の開業医は、アル・ナオ病院からAFPの電話インタビューに答えた。

遠くで銃声が鳴り響き、頭上で戦闘機が唸り、近くの砲撃が地面を震わせる。苦境に立たされた保健ワーカーたちは「続けるしかない」とムーサ医師は言う。

2023年4月以来、スーダンはアブドゥルファッターハ・アル・ブルハン陸軍大将と、即応支援部隊(RSF)のリーダーであるモハメド・ハムダン・ダグロ元副将との戦争によって引き裂かれている。

この戦争は数万人を殺し、1200万人を根こそぎにし、国際救済委員会の援助団体が「過去最大の人道危機」と呼ぶ事態を引き起こしている。

アル・ナオの圧迫された病棟の中では、紛争の犠牲者は驚異的である。頭、胸、腹部への銃創、重度の火傷、粉砕された骨、切断–わずか4ヶ月の子供でさえ–などである。

病院自体も被害を受けている。アル・ナオ病院を支援している国境なき医師団(MSF)によれば、致命的な砲撃が何度も病院の敷地を直撃しているという。

他の地域でも悲惨な状況が続いている。北ダルフールでは、最近ドローンによる攻撃で州都の主要病院で9人が死亡し、MSFは飢饉に見舞われた難民キャンプにある野戦病院からの避難を余儀なくされた。

スーダンの医療制度は、戦争前からすでに苦境に立たされていたが、今やほとんど崩壊している。
エール大学の人道研究ラボとスーダン米国医師会が提供し分析した衛星画像によると、ハルツーム州の87の病院のうち、半数近くが戦争開始から今年8月26日までの間に目に見える被害を受けた。

10月の時点で、世界保健機関(WHO)はスーダン全土で119件の医療施設に対する攻撃を確認したことを記録している。

MSFの人道問題アドバイザーであるカイル・マクナリー氏は、「民間人の保護は完全に無視されている」と述べた。
彼はAFPに対し、現在進行中の「医療に対する広範な攻撃」には、「広範な物理的破壊が含まれ、その結果、文字通り、そして比喩的に、医療サービスが低下している」と述べた。

スーダンの医師組合は、スーダン全土の紛争地帯で、医療施設の90%が閉鎖され、数百万人が必要な医療を受けられなくなっていると推定している。

紛争の双方が医療施設への攻撃に関与している。
医療組合によると、戦争が始まって以来、78人の医療従事者が職場や自宅での銃撃や砲撃によって死亡している。

組合スポークスマンのサイード・モハメド・アブドゥラー氏はAFPに語った。
「病院や医療関係者を標的にする正当な理由はない。医師は…患者と他の患者を区別しない」

医師組合によると、RSFは負傷者の治療や敵の捜索のために病院を急襲し、軍は国中の医療施設を空爆している。

11月11日、MSFは、南ハルツームで機能している数少ない病院のひとつであるバシャール病院を戦闘員が襲撃し、そこで治療を受けていた別の戦闘員を射殺したため、ほとんどの活動を停止した。MSF職員は、戦闘員はRSFの戦闘員だと考えているという。

戦争による死傷者が後を絶たないことに加え、スーダンの医師たちは、大量飢餓という別の脅威にも対応しようと奔走している。

ハルツームからナイル川を隔てた対岸のオムドゥルマンの小児科病院には、栄養失調の子どもたちが大挙してやってくる。

ある医師によれば、8月中旬から10月下旬にかけて、この小さな病院には1日に40人もの子どもたちが収容され、その多くが重体だったという。

「毎日、3、4人の子どもたちが亡くなっていました。その理由は、病気が非常に末期で複雑であったため、あるいは必要な医薬品が不足していたためです」と、その医師は安全を考慮して匿名を要求した。

国連によると、スーダンは数カ月にわたって飢饉の淵に立たされており、人口の半分以上にあたる2600万人近くが深刻な飢餓に直面している。

赤十字国際委員会のスポークスマンであるアドナン・ヘザム氏は、「医療施設に対する物資と人的資源の面で早急な支援が必要だ」と述べた。「それがなければ、すでに限られているサービスが急速に悪化する恐れがある」と彼はAFPに語った。

医師のムーサ氏にとって、「耐え難い」と感じる日もある。「しかし、やめるわけにはいかない」【12月18日 ARAB NEWS】
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戦場と化した国土はどこも「地獄」ですが、スーダンの場合もパレスチナ・ガザ地区に匹敵するような悲惨な状況です。しかし、それにしてはニュースなどで取り上げられることがあまりにも少ない。

【セルビア、ロシアや中国など6カ国から武器供給】
こうした国軍とRSFの戦闘がいつまでも続くのは、武器・弾薬を支援する形で“火を絶やさない”外国の存在があります。

****スーダン内戦、国外からの武器流入で世界最悪の人道危機に拍車 ****
深刻な人道危機が起こるスーダン内戦で、セルビア、ロシアや中国など6カ国から武器供給が事態を深刻化させている。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが、国連武器禁輸措置を迂回したスーダン西部ダルフール地方への流通ルートを明らかにした。

アムネスティ・インターナショナルが7月に公表した調査で、何千もの武器がスーダンに流入し、一部は2004年以降、国連の武器禁輸措置の対象地域であるダルフール地方にまで拡散していることが判明した。

(中略)国連は紛争の影響で、スーダンの人口の過半数が前代未聞の食糧不安に陥っているとして、両当事者による戦争犯罪を糾弾している。

アムネスティの報告書は、海外から絶え間なく流入する武器が紛争を煽っている」と指摘した。調査は約2000件の出荷記録と数千枚の画像を分析し、内戦当事者の双方が手にする武器を追跡した。

対スーダン武器輸出は国連の禁輸措置に違反
アムネスティ・インターナショナル・スイス支部広報担当者、ナディア・ボーレン氏は、「複数の国が武器貿易条約(ATT)に違反して、スーダンに武器を輸出している」と解説する。

拳銃やライフル銃などの小型武器、また装甲戦闘車両やドローン妨害機器、何百万発もの弾薬、さらには迫撃砲などのより重い武器も輸出されているという。

2014年に発効した武器貿易条約は、武器の使用が人権侵害を引き起こす可能性が高い国への武器輸出を禁じている。一方で、世界の違法な武器移転を追跡する調査団体スモール・アームズ・サーベイ(本部・ジュネーブ)のデータ責任者ニコラ・フロルカン氏はフランス語圏のスイス公共放送(RTS)で、同条約の文書には違反した際に科す制裁は盛り込まれていないと指摘した。

アムネスティは、スーダンへの武器輸出国としてセルビア、ロシア、トルコ、中国、アラブ首長国連邦(UAE)、そしてイエメンの6カ国を名指しした。そのうち、イエメンとロシア以外は、武器貿易条約の締結国だ。

2024年1月には、国連のスーダン専門家グループによる複数の調査が、RSFを支援するUAEからの武器の供与を確認した。その経由地として、RSFの拠点があるダルフール地方に隣接するチャド東部のアムジャラス空港を特定したが、UAEはこの告発を強く否定している。

猟銃を軍事転用
同調査は、武器を紛争に利用するための迂回供給ルートが少なくとも二つ確認した。民間用途(狩猟やスポーツ射撃など)の武器のみならず、軍事転用される可能性のある刃物も輸出されていた。

スモール・アームズ・サーベイによると、軍事転用による武器の迂回供給は増加傾向にあり、欧州内でも確認されている。「警報用の銃の軍事転用は、欧州連合(EU)における違法な武器取引の主要因のひとつとして挙げられている」とフロルカン氏は強調する。

こうした武器の迂回供給への対策として、国連事実調査団、そしてアムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウォッチなどの人権擁護団体は、武器禁輸をスーダン全域に広げるよう呼びかけている。

アムネスティのボーレン氏は「ダルフール地方に限定された武器禁輸は、民間人への被害を阻止するにはまったく不十分だ。スーダンに武器を輸出すれば、ほぼ確実に人権侵害を犯すために使用される」と主張し、武器貿易条約の締約国または署名国に対し、スーダンへの武器輸出を厳格に規制するよう訴えた。

しかし、こうした呼びかけに対する国際社会の反応は鈍い。国連安全保障理事会は9月、ダルフール地方における武器禁輸措置を1年間延長したが、適用範囲はスーダン全域に広げなかった。

また、8月にスイスのジュネーブ地方で行われたスーダン内戦の停戦協議は、停戦合意に達することなく終了している。【12月7日  swissinfo】
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【国軍が軍事的に優位に・・・政府に接近するロシア、「勝ち」が期待できる戦争の停止を望まず】
関係国の中でも国軍へ接近するロシアは停戦交渉にも消極的ですが、どうやら軍事的に国軍が優勢となっており、このまま戦闘を続ければ「勝てる」と考えているようです。

****スーダン停戦決議にロシアが拒否権****
(11月)18日、国連安全保障理事会で、スーダンの停戦を求める決議がロシアの反対で否決された。決議は英国とシエラレオネが共同提案したもので、14ヵ国が賛成し、反対はロシアだけだった。

英国のラミー外相は、「一ヵ国の反対で理事会の意思が挫かれた。この国は平和の敵だ。ロシアの拒否権は恥ずべき行為だ.ロシアはまた、本当の顔をさらけ出した」と強く非難した。米国のトーマス・グリーンフィールド国連大使も、「ロシアはアフリカと協調するようなことを言っているが、アフリカ諸国が賛成する停戦決議に反対した」と述べた。

一方、ロシアのポリャンスキー国連次席大使は、ロシアは紛争当事者による停戦を支持すると述べて、決議案を「ポストコロニアルの香りがする」と批判した。ロシアの拒否権に対しては、スーダン外相が「スーダン及びその国家機関の独立と統一を支持するものだ」と評価する声明を出している。

スーダン内戦は、国軍指導者ブルハーンと準軍事組織RSFの指導者ヘメティの対立を軸に動いてきたが、ロシアは最近になってブルハーン寄りの姿勢を強めている。スーダンに停戦を呼びかける前回の決議の際、ロシアは棄権している。

ブルハーンと国軍はRSFに軍事力で勝利できると踏んでおり、そのために国際社会による停戦呼びかけに消極的な態度を取るのだと考えられる。

10月に入って、国軍側が優位に立っているとの分析記事が掲載された(10月11日付ルモンド)。ロシアはスーダンに接近したい思惑があり、そうした情勢を理解した上で、国軍側に秋波を送っていると見られる。

18日、米国のスーダン特使Tom Perrielloが18日、ポート・スーダンを訪問してブルハーンと面会した。当然、国連をめぐる状況が議論になったと考えられる。

2023年4月にスーダン内戦が始まってから、既に1年半が経過した。世界で最も深刻な人道危機と言われ、ウクライナやガザを上回る数の死者や避難民が生まれているが、周辺国の介入や当事者の頑なな態度のために停戦が成立せず、人道危機が拡大し続けている。【11月21日 現代アフリカ地域研究センター】
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「勝馬」に乗るためには、民間人犠牲の戦闘継続も厭わない・・・残念ながらこれが現実です。

【多くのスーダン難民を受け入れる南スーダンも医療は逼迫  国民の約半数は人道支援が必要】
なお。今朝のTVニュースでは隣国南スーダンの医療状況を取り上げていました。
南スーダンは2023年には、スーダンの内戦から逃れて来た60万人余りの難民も受け入れていますが、もともと南スーダン自体が国際支援を切実に必要とする国ですから、多くの難民がスーダンから流入するその状況は想像に難くありません。

****南スーダンでの国境なき医師団(MSF)の活動は****
2011年7月に長年の内戦の末、独立を果たした南スーダン。和平合意や統一政府の発足後も多くの地域で不安定な情勢は続き、国内での戦闘や暴力によって大勢の人が命を落とす状況が続いています。

加えて大洪水や食料危機、病気の流行など複数の緊急事態も発生。2023年には、スーダンの内戦から逃れて来た60万人余りの難民も受け入れています。

人道援助を必要とする人は、人口の1240万人のうち590万人に達しました(2023年、国連人道問題調整事務所)。【12月11日 国境なき医師団】
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南スーダンも混乱と貧困のなかで病院職員への長期間賃金支払いが滞っており、医療スタッフのストライキも発生しているとか。

そのニュースの次は北イタリアかどこかの洞窟で女性洞窟研究者が滑落し、救助隊が百数十人駆けつけて奇跡的な救出を実現したという喜ばしいニュースでした。

一方で満足な医療を受けることもできず大勢が命を落とす国があり、いっぽうで、一人の事故救出におびただしい救出チームが派遣される・・・これまた「現実」です。まだ、よくある「木から下りられない猫救出」のニュースでなかっただけ救いか・・・
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