孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

モルドバ・ジョージア  欧米とロシアの間で揺れる両国の選挙 思った以上に根強い親ロシア的なもの

2024-10-29 23:15:31 | 欧州情勢

(ジョージアの議会選挙で与党「ジョージアの夢」が勝利した結果に抗議するデモ参加者。首都トビリシで(2024年10月28日撮影)【10月29日 AFP】)

【モルドバ 大統領選挙とEU加盟の是非を問う国民投票 思いがけず接戦 今後のEU加盟への動きは不透明に】
旧ソ連のモルドバ、欧米とロシアの間で揺れる国のひとつで、親ロシアの未承認国家「沿ドニエストル」にはロシア軍が駐留しています。

そのモルドバでの大統領選挙、及び、EU加盟の是非を問う国民投票が20日に行われました。

直前の19日ブログ“モルドバ  ロシアの介入もあるなかで、新欧米路線の現職大統領再選、RU加盟加盟支持か”で、タイトルにあるように、世論調査の数字をもとに親欧米路線の大統領が再選され、EU加盟の国民投票は加盟が支持されるだろう・・・といった記事をかきましたが、どうも様相が異なるようです。

大統領選ではサンドゥ大統領はトップには立ったものの過半数はえられず、決選投票へ。ロシア支持層が親ロシア候補で一本化すると決選投票は不透明に。更にロシアの選挙干渉も。

国民投票の方は加盟支持が上回ったとは言え、その差は極めて僅か。今後の扱いに影響しそうです。

****モルドバのEU加盟国民投票、僅差で賛成 大統領が勝利宣言****
モルドバで20日に行われた欧州連合加盟の是非を問う国民投票の開票結果が21日発表され、賛成票が50.46%と、反対票をわずかに上回った。

親欧州派のマイア・サンドゥ大統領はこれを受け、「不正がなされた闘いをわれわれは正当なやり方で制した」と勝利宣言した。同時に行われた大統領選の1回目投票では、サンドゥ氏が首位を死守した。

大統領選では、サンドゥ氏が42%を超える得票率で首位となった。親ロシア派の社会党の支援を受けている元検事総長のアレクサンドル・ストイアノグロ氏は、予想を上回る26%近い票を集めた。

サンドゥ氏は記者会見で、「われわれはこの国の将来を決定する困難な闘いの初戦に勝利した」「皆さんの声は届いている。汚職と闘うためにさらに努力しなければならない」などと語り、有権者に決選投票への参加を呼び掛けた。

サンドゥ氏は、「犯罪集団がわが国の国益に敵対する外国勢力と共謀」し、モルドバの民主主義に対する「前例のない攻撃」が行われていると非難。「卑劣な干渉」によって自身の陣営への票が奪われていると批判を強めていた。

一方、ロシア大統領府(クレムリン)はサンドゥ氏に対し、ロシアがモルドバの選挙に干渉したことを「証明」するよう求めた。また、EU加盟への賛成票とサンドゥ氏が獲得した票数に「異常」があると主張している。 【10月22日 AFP】
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****11月の決選投票、現職苦戦も モルドバ大統領選****
旧ソ連構成国モルドバで20日に実施された大統領選で首位に立ち、決選投票に進んだ親欧米のサンドゥ大統領が21日に記者会見し、欧州連合(EU)加盟を実現するため自身に投票するよう呼びかけた。

11月の決選投票ではロシアの選挙介入が懸念され、対ロ批判を強めるサンドゥ氏が苦戦を強いられる可能性もある。

大統領選には11人が出馬し、サンドゥ氏は42%を得票した。親ロシアの前大統領の支持を受ける元検事総長ストヤノグロ氏が26%で2位だった。3位以下には親ロ派候補も多く、決選投票では2人の差が縮まるとの見方が強い。【10月22日 共同】
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事前の世論調査ではEU加盟支持が多かったものの、実際の国民投票で僅差となったことについては、“旧ソ連のなかで最も貧しい国とされるモルドバ。経済状況がさらに悪化するなかで、EU加盟が明るい将来につながるとの確信を持てない国民が多かったことが背景にあるといいます。”【10月22日 TBS NEWS DIG】といった指摘も。

また、「この状況で無理やり具体的に進もうとすると、また国民の賛否が割れて大きな分断というか、ただでさえロシアの工作とか介入とか、そういうものを受け入れやすいような状況になっている世論がまた混乱するという状況も考えられるわけで、非常に難しいんだろうと思います」【同上】といった指摘あって、今後のEU加盟の扱いは難しくなっています。

とにもかくにも11月3日の大統領選挙の決戦投票でサンドゥ大統領が再選されなければ、話は全く違ってきます。

****モルドバ大統領、EU加盟目標強調 親ロ派対立候補は「悪の手先」****
旧ソ連モルドバのサンドゥ大統領は28日、欧州連合(EU)加盟が国民にとって前進する唯一の道だと述べ、大統領選の決選投票で対決する親ロシア派の候補を「悪の勢力の手先」と批判した。

2期目を目指すサンドゥ氏は20日に行われた大統領選第1回投票で得票率約42%とトップに立ったが過半数に届かず、26%を獲得した元検事総長のストヤノグロ氏と11月3日に決選投票が行われることになった。

20日にはEU加盟の是非を問う国民投票も実施され、賛成がかろうじて半数を超えたが、サンドゥ氏は外部からの「前例のない」干渉があったと非難していた。

サンドゥ氏は28日のテレビ討論会で、「モルドバにとって、EUとの統合以外に選択肢はない」と強調。

「ストヤノグロは悪の勢力の手先にすぎない。彼でなければ、他の誰かだ。泥棒や強盗に国を引き渡してはならない。民主主義を守る必要がある」と訴えた。

27日の討論会ではストヤノグロ氏をロシア政府の利益に奉仕する「トロイの木馬」「モスクワの手先」などと批判していた。

ストヤノグロ氏は27日、サンドゥ氏が大統領の重責に対処できず、国のために何もしていないと反論していたが、28日の討論会には出席しなかった。【10月29日 ロイター】
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【サンドゥ大統領は外部からの「前例のない」干渉があったと非難】
“外部からの「前例のない」干渉”については以下のようにも。もちろん“外部”とはロシアです。

****ロシア、有権者買収に59億円 モルドバ警察が発表、国民投票で****
旧ソ連構成国モルドバで20日に実施された欧州連合(EU)加盟の是非を問う国民投票と大統領選について、モルドバの警察当局は24日、ロシア側から買収目的で計3900万ドル(約59億2千万円)が有権者に支払われていたと発表した。地元メディアが報じた。

事前の世論調査では加盟賛成が多数を占め、サンドゥ氏の大勝も予想されており、加盟阻止を狙うロシア側の選挙介入が指摘されていた。

警察によると、9月に1500万ドル、10月に2400万ドル以上がロシアの銀行を通じて送金された。約14万の口座に140万件以上の不正な取引が確認されたという。ロシアに亡命したモルドバの親ロシア政党創設者、イラン・ショル氏が関与したとしている。

投票日直前の今月14〜17日に取引が急増していた。警察は、現金を受け取った有権者も捜査対象になると表明した。(後略)【10月24日 共同】
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これが、どの程度の影響力を持ったのかはわかりません。

【ジョージア総選挙  ロシアに接近する与党が勝利 親欧米路線の大統領「ロシアによる国の乗っ取りだ」 野党は「盗まれた」と抗議活動】
一方、やはり旧ソ連構成国で、また、親ロシア勢力による未承認国家を抱えるジョージアでは26日に総選挙が行われましたが、近年「反スパイ法」とか「LGBT規制法」といったロシアに類似した法律を制定するなどロシアへの接近を強めている与党「ジョージアの夢」が勝利したとされています。

ただ、親欧米路線の野党側は、不正が行われたとして抗議しています。親欧米派のズラビシビリ大統領は「ロシアによる国の乗っ取りだ」と非難し、抗議をよびかけています。

****ョージア議会選、親露・強権の与党が「勝利」*****
南カフカス地方の旧ソ連構成国ジョージア(グルジア)で26日、議会選(定数150)が行われた。同国が親ロシア路線と親欧米路線のどちらに進むかを方向付ける重要選挙と位置付けられ、国際的関心を集めた。

中央選管の発表によると、親露色を強める与党「ジョージアの夢」が54%の得票率で勝利した。親欧米路線への回帰を訴えた野党側は開票不正が起きたとし、結果を認めず抗議活動を行うと表明した。

議会選は得票率に応じて各党に議席数が割り当てられる比例代表制で行われた。得票率5%未満だった党は議席割り当ての対象外となる。

中央選管の発表によると、開票率約99%の時点で、「夢」の得票率は54%。親欧米派の主要野党4党は計38%となった。投票率は約59%。

2008年にロシアの軍事侵攻を受けたジョージアは反露を一種の「国是」としてきた。「夢」も12年の政権獲得後、親欧米政策を進め、昨年12月にはジョージアの「欧州連合(EU)加盟候補国」の地位獲得を達成した。ただ、近年はウクライナ侵略に伴う対露制裁に参加しないなど、親露傾向も強めていた。

「夢」のオーナーであるイワニシュビリ元首相はロシアで財を成した大富豪。同氏はジョージア国内の親露分離派地域、南オセチアとアブハジアを巡る領土問題の解決を視野に、対露関係の改善を図ろうとしているとの観測も出ている。

さらに、「夢」は議会選に先立ち、外国から資金提供を受けて活動する団体を規制する「反スパイ法」と、性的少数者(LGBTなど)の権利を制限する「LGBT規制法」を制定した。

両法は類似した法律がロシアで施行され、政治・言論弾圧の手段として使われている。EUは「夢」の強権化を批判し、加盟手続きの一時停止を発表。野党側も「『夢』が勝利すればEU加盟が不可能になる」と訴えていた。

議会選で「夢」が勝利したとの結果が発表されたことで、EUとジョージアは関係悪化が避けられず、同国のEU加盟はさらに不透明になる。

米シンクタンク「戦争研究所」は議会選に先立ち、「ロシアか欧米か」と題するリポートを公表。今回の議会選は「ジョージア独立以来、最も重要な選挙となる可能性が高い」と評価していた。「夢」が勝利した場合、ロシアと「夢」が接近し、ウクライナ侵略以降に欧米が進めてきたロシア孤立政策の打撃になるとも指摘していた。【10月27日 産経】
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****「ロシアによる国の乗っ取りだ」親欧米派のジョージア大統領が非難 総選挙“不正介入”に抗議を呼びかけ****
旧ソ連・ジョージアの総選挙でロシア寄りの与党が勝利したことを受け、親欧米派の大統領は27日、選挙で不正な介入があったとして抗議を呼びかけました。「ロシアによる国の乗っ取りだ」と非難しています。

ロイター通信などによりますと、旧ソ連のジョージアで26日、総選挙が行われ、ロシア寄りの与党が過半数を獲得しました。

これを受け、親欧米派のズラビシビリ大統領は27日、野党とともに記者会見を開き、「選挙に不正があり、皆さんの票が奪われた」とした上で、EU(=ヨーロッパ連合)への加盟阻止をもくろむロシアによる“特別作戦”があったと主張しました。

さらに、「ロシアによる国の乗っ取りだ」と非難し、選挙結果への抗議を呼びかけました。

ヨーロッパの選挙監視団は27日、有権者への脅迫などの違反行為が確認され、「民主主義が後退する」証拠があると明らかにしていて、アメリカとEUはジョージア当局に選挙違反の徹底的な調査を求めています。【10月28日 日テレNEWS】
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当然ながら、ロシアは選挙介入を否定しています。むしろ介入しているのは欧州の方だとも。

****ロシア、ジョージア議会選への介入否定 欧州による介入を指摘****
ロシア大統領府のペスコフ報道官は28日、同国が旧ソ連構成国ジョージア(グルジア)の議会選に介入したとの見方を否定した。

公式結果によると、議会選では親ロシアの与党「ジョージアの夢」が勝利したが、親欧州連合(EU)の野党勢力は結果に異議を唱え、外国の選挙監視団体などからは不正があったとの指摘が出ている。

ペスコフ報道官は、ジョージアのズラビシビリ大統領がロシアによる選挙介入の可能性を示唆していることについて「そうした主張を強く否定する」と発言。

欧州による選挙介入の試みはあったが、ロシアは選挙に介入していないとし、ロシアによる介入を非難することが多くの国で常とう手段になっていると述べた。【10月28日 ロイター】
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野党側は抗議活動を行っていますが、結果を覆すのは難しいかも。

****ジョージア、「盗まれた」議会選挙に数万人が抗議****
ジョージアの首都トビリシで28日、議会選挙でロシア寄りとされる与党「ジョージアの夢」が勝利した結果を受け、数万人が抗議デモを行った。

親欧米派の野党は「盗まれた」選挙だと非難。サロメ・ズラビシビリ大統領はAFPに対し、投票では「巧妙な」不正操作が行われたと主張し、ロシアの関与を指摘した。

選挙管理委員会が発表した99%以上の開票結果では、ジョージアの夢が得票率53.92%を獲得。親欧州連合派の主要野党連合は37.78%にとどまった。

28日夜、トビリシ中心部の議事堂前では、数万人がジョージア国旗とEUの旗を振りながら平和的な抗議活動を行った。

与党と対立している親欧米派のズラビシビリ氏はデモ参加者の前で、「皆さんの票は盗まれたが、私たちの未来を誰にも奪わせはしない」「EUへの道を歩むため、私は最後まで皆さんと共にあると約束する。EUこそが、この国が属す場所だ」と呼び掛け、歓声を浴びた。

ズラビシビリ氏はAFPの取材に応じ、26日に行われた議会選挙では「非常に巧妙な」不正工作が行われたと主張した。

複数の州での投票に同一の身分証明書が使い回され、賄賂が横行し、電子投票システムにも不正があったと指摘。
「政府を糾弾するのは非常に難しく、それは私の役割ではないが、この手口はロシアによるものだ」とし、「威嚇的な」ロシアに対処するのは厄介だと述べた。

ジョージアの主要な選挙監視団は28日、複雑かつ大規模な不正行為の証拠が明らかになったと発表。全体のうち少なくとも15%を無効票とするよう要請した。 【10月29日 AFP】AFPBB News
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こうした状況で、中央選管は一部再集計するとしてはいますが、おそらく中央選管には与党「夢」の影響が及んでいるとおもわれますので、再集計といっても今の結果を追認するためのものでしょう。

****ジョージア議会選、一部再集計へ 中央選管****
ジョージアで26日に行われた議会選挙で不正投票が行われたと野党が主張している事態を受け、中央選挙管理委員会は29日、投票所の約14%で投票用紙を再集計すると発表した。
 
選挙管理委員会が発表した99%以上の開票結果では、ロシア寄りとされる与党「ジョージアの夢」が得票率53.9%を獲得。親欧州連合派の主要野党連合は37.7%にとどまった。

野党は、与党に有利になるよう不正が行われたと主張し、「国際的な選挙管理委員会」による選挙のやり直しを要求。28日には、首都トビリシで数万人が抗議デモを行った。

親欧米派のサロメ・ズラビシビリ大統領も、選挙結果は「違法」だとし、「ロシアの特殊作戦」による選挙介入が行われたと主張。

ジョージアの主要な選挙監視団も28日、複雑かつ大規模な不正行為の証拠が明らかになったとして、全体のうち少なくとも15%を無効票とするよう要請していた。

中央選管は「各選挙区から無作為に選ばれた投票所5か所で、地方選管によって再集計を行う」としている。 【10月29日 AFP】AFPBB News
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【日本で考える以上に根強い親ロシア的なもの】
個人的な印象としては、ロシアの介入の話を別にすれば、モルドバでも、ジョージアでも親ロシア勢力が思った以上に強いという感じ。

日本に暮らす私は欧米的な民主主義・自由を是として、ロシア的なものを非としています。
ですから、自由・公正な選挙を行えば、人々は必ず親欧米的なものを選ぶだろうとも。

しかし、それは日本にいる私の考えであり、現実はそれほど単純ではなさそう。現地には現地の事情も。

ロシア語を普段話すような人々、ロシアに文化的に親近感を持つ人々、リベラルな価値観にどうしてもついていけない人々もいますし、自由だ何だといっても、結局甘い汁を吸うのは一部の者で、自分たちは結局はじき出されてしまう、それぐらいなら権威主義だろうが何だろうが、自分たちにも利がある仕組みの方がいい・・・と思う人々も。

モルドバにしろ、ジョージアにしろ、そういう欧米的なものを必ずしも是としない人々がやはり多数いるのでしょう。

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