孤帆の遠影碧空に尽き

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ドイツ  負の遺産にどう向き合うか 極右AfD政治集会でマスク氏「独は過去の罪悪感にとらわれすぎ」

2025-01-27 22:34:08 | 欧州情勢

(解放から80年 アウシュビッツ強制収容所の囚人たちが銃によって処刑された、「死の壁」と呼ばれる場所で花をたむける追悼の催し【1月27日 NHK】)

【アウシュビッツ強制収容所解放から80年 進む生存者の高齢化 記憶をどう受け継ぐか】
今日1月27日は、80年前の1945年1月27日、旧ソビエト軍によってアウシュビッツ強制収容所は解放された日です。

ユダヤ人に対するナチス・ドイツの戦争犯罪ホロコーストが行われた場所として有名ですが、収容所そのものはポーランド領内に位置しています。

*****アウシュビッツ強制収容所とは*****
ホロコーストで中核的な役割
アウシュビッツ強制収容所はナチス・ドイツが、ポーランド南部に建設した最大規模の強制収容所です。収容所は3つの主要な施設で構成され、最初のものは1940年に建設されました。

ガス室を備えた「絶滅収容所」とも呼ばれ、ヨーロッパのユダヤ人の絶滅を目指したホロコーストの中核的な役割を担いました。

強制収容所にはヨーロッパ各地のユダヤ人が連行され、高齢者や病人、子連れの女性は到着してまもなくガス室で殺害されました。

ナチス・ドイツは、収容したユダヤ人にガス室で殺害された遺体から金歯などを取り除く作業や焼却処理も強制しました。

収容所の入り口にはドイツ語で「働けば自由になる」と書かれた看板が掲げられましたが、働けるとみなされた人は工場の建設などの強制労働に従事させられ、満足な食事もなく日常的に虐待を受け尊厳を奪われていきました。

犠牲者 約110万人 “死の行進”の犠牲も
アウシュビッツでの犠牲者はおよそ110万人に上り、そのうちおよそ100万人がユダヤ人です。

またナチス・ドイツは1945年の1月、旧ソビエト軍の進軍を受け、多くのユダヤ人をほかの収容所へ移動させます。移送の列車に乗るため数十キロ離れた街へは徒歩で移動させられ、真冬の行進から脱落した人はその場で銃殺されたことなどから「死の行進」と呼ばれています。

その後、1945年1月27日、旧ソビエト軍によってアウシュビッツ強制収容所は解放されました。当時、強制収容所にはおよそ7000人がいて、多くの人が衰弱してひん死の状態だったということです。

アウシュビッツ強制収容所は第2次世界大戦後は博物館となり、世界各地から大勢の人が見学に訪れています。博物館によりますと去年は183万人が訪れました。【1月27日 NHK】
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現地では欧州各国首脳も参加して記念式典が行われましたが、生き延びた人たちの高齢化が進んでいて、当時の記憶をどう受け継いでいくかが課題となっています。

****アウシュビッツ強制収容所 解放から80年 記憶の継承が課題*****
第2次世界大戦中、ナチス・ドイツがユダヤ人を中心におよそ110万人を虐殺したアウシュビッツ強制収容所が解放されてから27日で80年となりました。生き延びた人たちの高齢化が一段と進んでいて、当時の記憶をどう受け継いでいくかが課題となっています。(中略)

27日は、強制収容所の跡地で追悼式典が開かれる予定で、生き延びた人やその家族のほかドイツのシュタインマイヤー大統領、フランスのマクロン大統領、それにイギリスのチャールズ国王などおよそ50か国の代表が出席する予定です。

これに先立って、日本時間の27日午後5時すぎからは強制収容所の囚人たちが銃によって処刑された、「死の壁」と呼ばれる場所で花をたむける追悼の催しも行われました。

第2次世界大戦の終結からことしで80年となり、アウシュビッツ強制収容所などでのホロコーストを生き延びた人の平均年齢は、86歳と高齢化が一段と進んでいます。

強制収容所の跡地を管理する博物館は、今回の式典が生き延びた人たちが参加する最後の式典になりかねないとの見方も示していて、記憶をどう受け継いでいくかが課題となっています。

アウシュビッツ強制収容所の跡地には、ベルリン支局長・田中顕一記者がいます。田中さん、解放からきょうで80年。現地を取材して感じたことは?

(中略)アウシュビッツは、差別や暴力が行きつく最も残虐な結末を今に伝える負の遺産です。

いま、アウシュビッツから生き延びた人たちは、ヨーロッパで排他的な主張を掲げる極右や右派政党がより過激化すれば、特定の人種や宗教への差別につながりかねないと不安を感じています。

生存者の1人は「忘れさせないために語り続ける必要がある。不正義や差別を目撃したら沈黙してはいけない」と訴えていました。

他者への寛容さ、そして、対立を対話で乗り越える重要性を忘れてはならないと感じます。

ゼレンスキー大統領「決して繰り返してはならない」
アウシュビッツ強制収容所が解放されてから80年となるのにあわせて、自身もユダヤ系であるウクライナのゼレンスキー大統領は27日、SNSにメッセージを投稿しました。

このなかでゼレンスキー大統領は「ホロコーストの犯罪は決して繰り返してはならないが悲しいことに、その記憶は徐々に薄れつつある。民族全体を破壊しようとする悪は、今もなお世界に存在する」と述べ、ロシアの侵攻を受けるウクライナの状況を念頭に、罪のない人々が犠牲になった歴史は過去のものではないと強調しました。

そのうえで「われわれは命を守るために戦わなくてはならず、無関心が悪の温床であることを忘れてはならない。われわれは、残虐な行為と殺人につながる憎しみを克服しなければならない。悪が勝利するのを防ぐために力を尽くすことは、すべての人々の使命だ」と訴えました。

ウクライナでは1941年、ナチス・ドイツの占領下にあった当時、首都キーウで女性や子どもを含むおよそ3万人のユダヤ人が殺害され、ゼレンスキー大統領は26日、キーウで開かれた追悼の式典に出席し、記念碑に、火をともしたろうそくをささげて、犠牲者を悼みました。【同上】
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【マスク氏「ドイツは過去の罪悪感にとらわれすぎ」】
日本でも同じですが、自国の負の遺産に関しては、当時の記憶を受け継いで行こうという動きの一方で、そこから目をそむけたいという思い、「いつまで、そんなことを。もう昔の話」とか「過去に引きずられることなく“普通の国”になろう」といった声も出てきます。

欧米全体に広がる右傾化のながれにも乗って、2月23日に総選挙を控えたドイツでも極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が支持率で20%と2番手につけています。

極右政党AfD自体がナチス・ドイツの負の遺産に関しては距離を置く立場ですが、そこに更に「ドイツは過去の罪悪感にとらわれすぎ」とのメッセージを送ったのが、このところAfDを強く支持し、また、イギリスなどでも物議を醸しているイーロン・マスク氏。

マスク氏はイギリスでは反移民を掲げる新興右派政党「リフォームUK」を支持し、スターマー首相を「犯罪の加担者」と激しく批難しています。

そしてドイツでは「ドイツを救えるのはAfDだけだ」と支援し、シュルツ首相を「無能なバカ」とも呼んでいます。

****マスク氏「ドイツは過去の罪悪感にとらわれすぎ」と発言。極右政党AfDの集会で支持者を称賛****
ナチス式敬礼そっくりのポーズが物議を醸したイーロン・マスク氏が1月25日、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の政治集会で「ドイツは過去の罪悪感にとらわれすぎだ」と発言した。

ドイツ東部の都市ハレで開かれた集会にオンラインで参加したマスク氏は、集まったAfD支持者に「あなた方はドイツの一番の希望だ。ドイツやドイツ人であることに誇りを持つことが重要だ」と語りかけた。

マスク氏は、「ドイツ文化やドイツの価値観を誇りに思うこと、そして、全てを薄めてしまう多文化主義の中でそれら(の誇り)を失わないことが大切だ」とも発言した。

また、「ドイツの人々は何千年も続く古代からの文化を持っている」と称賛した上で、「過去の罪悪感にとらわれなくていい」という考えを示した。

「率直に言って、ドイツは過去の罪悪感にあまりにもとらわれすぎていると思います。乗り越える必要があります。子どもたちは親、ましてや曽祖父母の罪に罪悪感を抱くべきではありません」

マスク氏は、「過去の罪悪感」が何かについては具体的には触れなかったものの、ドイツが戦後一貫して取り組み続けてきた、ナチスドイツ政権によるユダヤ人大量虐殺「ホロコースト」を指していると見られる。

マスク氏は1月20日に、ワシントンD.C.で開かれたトランプ米大統領の就任イベントで「ナチス式敬礼」とそっくりのポーズをとり、物議を醸した。

敬礼は大きな批判を招いたものの、マスク氏は「ありとあらゆる人を『ヒトラーだ』とする攻撃は、本当に飽き飽きする。もっとマシな卑劣な手段を考えた方がいい」とXで反論した。

ドイツでは2月23日に総選挙が行われる。移民排斥やEU離脱などの政策を掲げ、気候変動は人間の行動によるものという考えに懐疑的なAfDは現在、ドイツキリスト教民主同盟(CDU)に次ぐ2番目に高い支持率を得ている。

マスク氏はAfDを積極的に支持しており、12月には「AfDだけがドイツを救える」とXに投稿している。1月25日の集会でも「AfDに投票することが大事だ」と発言した。

一方、AFPによると、25日にはドイツ各地でAfDに反対する抗議活動が行われた。【1月27日 HUFFPOST】
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【マスク氏のナチス式敬礼そっくりのポーズに狂喜する極右】
ナチス式敬礼そっくりのポーズ(右手で左胸をたたいた後、真っすぐ突き出すジェスチャーを2回)については、マスク氏がどういう意図だったのか冷静に判断する必要もあるでしょう。ただ、アメリカの極右・白人至上主義者などは極右思想への支持表明として受けいれられているとのこと。

****極右、マスク氏敬礼に「狂喜乱舞」****
(中略)
憎悪と過激主義に対抗する団体「Global Project Against Hate and Extremism」の共同創設者、ハイディ・ベイリッヒ氏は、「白人至上主義者は、マスク氏がナチス式敬礼をしたと確信している」と指摘。

極右は「狂喜乱舞」し、「マスク氏が腕を上げたのは、極右思想への支持表明だと大半が思い込んでいる」と続けた。
バージニア大学で修辞学と過激主義を研究しているT・ケニー・ファウンテン氏はブルースカイへの投稿で、マスク氏の「意図も重要だが、受け止められ方も重要だ」と指摘。

「熱心な聴衆がこのジェスチャーを意味のある承認と解釈するなら、われわれは危険な領域にいる」「当然ながら、極右の多くはそのように解釈しているようだ」と続けた。

SNSのGabの創設者、アンドリュー・トーバ氏はマスク氏の写真を投稿し、「すでに信じられないことが起きている」と書き込んでいる。

ネオナチ団体「ブラッド・トライブ」のリーダー、クリストファー・ポールハウス氏はテレグラムで、ジェスチャーをしているマスク氏と、かぎ十字(ハーケンクロイツ)の旗を掲げてナチス式敬礼をしている覆面をかぶった同団体のメンバーを並べた動画を共有した。

これに対してフォロワーは、ナチス親衛隊の隊章を想起させる稲妻の絵文字を相次いで投稿した。

マスク氏が所有するX(旧ツイッター)では、ヒトラーの演説を最上部に固定表示している匿名のアカウントが、マスク氏のジェスチャーとヒトラーの動画を比較する別のマッシュアップ動画を投稿。「ジーク・ハイル?? つまり、われらの時代が再び?」とのコメントが添えられていた。この投稿の閲覧数は22日時点で既に400万回を超えている。 【1月22日 AFP】
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【「ドイツのための選択肢(AfD) ナチスのユダヤ人追放を想起させる選挙ビラ配布】
一方、「ドイツのための選択肢(AfD)」については、ナチスのユダヤ人追放を想起させる選挙ビラ配布も。

****ナチスのユダヤ人追放を想起させる選挙ビラ、ドイツ右派政党AfDが配布か…市長「一線越えた」****
2月に総選挙を控えるドイツで、急進右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が、南西部カールスルーエの移民系世帯に「国外追放チケット」と称した選挙ビラを配布した疑いが浮上し、物議を醸している。

第2次世界大戦中のナチスによるユダヤ人国外追放を想起させるもので、警察が扇動の容疑で捜査を始めた。

公共放送ARDなどによると、ビラは航空券を模したもので、搭乗者名に「移民」、発着地に「ドイツ発、安全な出身国着」と書かれていた。AfDカールスルーエ支部のQRコードも載っていた。移民排斥を掲げるAfDはシリアのアサド政権崩壊後、シリア難民の強制送還を訴えている。

同地区選出のAfD議員はビラ配布を認めた。移民系だけではなく幅広い層を対象に自宅に投函とうかんしたと説明している。カールスルーエ市長は「恐怖を引き起こすもので、一線を越えている」とAfDの選挙活動を批判した。【1月15日 読売】
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移民による無差別殺傷事件が相次いでいるなかで、移民排斥を掲げるAfDがどこまで票をのばすのか注目されています。
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