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【東アジアのどこかの国でフロンガスが製造されている】
大気中の有害な“ガス”と言えば、最近ではに二酸化炭素などの温室効果ガスがもっぱら話題になりますが、ひと昔(ふた昔?)以前は、オゾン層破壊とかオゾンホール拡大といったことで、フロンガスが大きな話題となりました。
****オゾン層とは****
オゾンは酸素原子3個からなる気体です。
大気中のオゾンは成層圏(約10~50km上空)に約90%存在しており、このオゾンの多い層を一般的に オゾン層といいます。
成層圏オゾンは、太陽からの有害な紫外線を吸収し、地上の生態系を保護しています。 また成層圏オゾンは、紫外線を吸収するため成層圏の大気を暖める効果があり、地球の気候の形成に大きく関わっています。
上空に存在するオゾンを地上に集めて0℃に換算すると約3ミリメートル程度の厚さにしかなりません。 このように少ない量のオゾンが有害な紫外線を防いでいます。【気象庁HP】
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****「フロンガス」 とは****
オゾン層の破壊や、地球温暖化を引き起こす化学物質の総称。代表的なフロンガスであるクロロフルオロカーボン(CFC)は、無色、無臭、不燃性で化学的に安定している優れた特性のため、エアコンや冷蔵庫の冷媒、電子部品の洗浄、発泡スチロールの発泡材、スプレーなど幅広い用途に使われた。
しかし、1970年代に入り、大気中へ放出されたフロンガスが有害な紫外線を吸収するオゾン層を破壊することがわかり、1992年11月に開催されたモントリオール議定書締約国会議で、CFCをはじめとするオゾン層破壊物質が特定フロンとして指定され、全廃されることとなった。
特定フロンの全廃を受けて、代わりに使われるようになったのが、オゾン層を壊さない代替フロンだ。
しかし、代替フロンが地球温暖化を進める強力な温室効果ガスであることが分かり、温暖化防止の国際的な枠組みである京都議定書で削減が義務づけられた。
なかでも、代替フロンとして冷媒用途での使用が増加しているハイドロフルオロカーボン(HFC)は大きな温室効果をもつ。
国内では、フロン回収・破壊法や自動車リサイクル法により、フロンガスの回収と破壊が義務づけられている。
しかし、フロンガスは10年以上かけて成層圏へ到達するため、現在でも、オゾン層の破壊は進んでいる。【緑のgoo】
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フロンガスでオゾン層が破壊されて地上への紫外線が強くなると、皮膚がんを発症しやすくもなります。
フロンガスの使用が禁止されたことで、あまり意識することもなくなりましたが、先日、そのフロンガスが新たにつくられている、それも東アジアで・・・との報道がありました。
****オゾン層破壊のフロン、新たに作られている可能性 東アジアで放出 米機関****
フロンガスは、1980年代になって地球のオゾン層を破壊することが分かり、段階的廃止が決まった。
以後大気中のフロンガスは徐々に減少を続けてきたが、米政府機関の観測で、近年CFC-11と呼ばれるフロン類の排出量が増えていることが判明した。
科学者たちは、どこかの国で製造されていると見ており、オゾン層回復のための世界の協力体制に水を差すものだとしている。
◆禁止されているフロンガス 近年減少速度が低下
CFC-11の異変を報告したのは、27年にわたり大気中の微量気体を観測しているアメリカ海洋大気庁のStephen Montzka氏とその同僚たちだ。
ネイチャー誌に発表された彼らの研究によれば、CFC-11の大気中のレベルは全体として低下しているが、減少速度が予測より遅いという。Montzka氏は、近年CFC-11の排出量が増えているようだと述べている(米公共ラジオ網NPR)。
クロロフルオロカーボン(CFC)は、冷蔵庫やエアコンの冷媒、またスプレー缶の噴射剤としてかつては広く利用されていた物質だ。建物の断熱材や家具などにも使われていた。
しかし、皮膚がんのリスクを増加させる有害な紫外線を除去するオゾン層を破壊することが、1985年になって判明。その2年後にモントリオール議定書で、段階的廃止が決定された。
ガーディアン紙によれば、CFC-11はCFCのなかでは2番目に有害とされる物質であり、2007年以来、原則的にその生産は報告されていない。
◆他の仮説は除外 新たに作られていると考えるのが妥当
ガーディアン紙によれば、Montzka氏たちは、CFC-11の減少速度低下の理由を突き止めようと、いくつかの仮説を立てている。
まず、大気がCFC-11を散布、分解する方法に変化があったことで計測に影響が出たのではないかと考えたが、最新のデータからは関連は認められなかった。
次に、古い資材に使われたCFCが大量に放出された、または何か別の化学物質の製造過程で副産物として発生したという可能性も考えたが、計測結果が示唆するほどの規模の物質が、これらの理由で排出されたと考えることは難しいとしている。
最終的にたどり着いたのは、誰かが新たに製造しているという結論だった。排出されているのは東アジアだということは突き止められたが、正確な場所までは分かっていないという(インデペンデント紙)。
◆違反は簡単? グローバルな協調の難しさを露呈
(中略)カリフォルニア大学サンディエゴ校のデビッド・ビクター教授は、国際社会が違反者を摘発するのは簡単ではないと断じる。同氏は、モントリオール議定書には執行メカニズムはあっても強制的に従わせる力はなく、報告書を出し貿易制裁で脅す程度だと述べ、違反をする国が出てもおかしくないと考えている(NPR)。
さらに、政府自体が禁止を求めても、執行能力に欠け、違法な製造を摘発できないケースもある。ビクター教授は、CFC類が規制されたため、ブラックマーケットでの価格は上がっており、闇ビジネスをするのはそう難しくもないと説明する。
できれば他国が援助の手を差し伸べるべきだが、部外者が入って、執行活動に取り組むのはかなり難しいとも述べ、国際協調が容易ではないことを指摘している。【5月22日 NewSphere】
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【中国企業が今も違法に使用 「(フロンガスの排出濃度上昇について)中国も大いに懸念している」(中国外務省)】
東アジアで、しかも地球規模で変調をきたすほど大量に新たにつくられている・・・・という話になると、どうしても“ある国”が怪しいのでは・・・とも考えてしまいますが、証拠もなく疑ってもいけません。
そんな“疑惑”について、「やっぱり・・・」というニュースが。
****オゾン層破壊するフロン類、中国企業が違法に使用 NGO報告****
オゾン層破壊物質として国際的な規制の対象になっているクロロフルオロカーボン(フロン)類が現在も中国の工場で違法に使用されているとする報告書を、環境圧力団体が9日、発表した。
CFC類については、その放出が増加していることが最近の研究で明らかになり、科学者らを困惑させていた。
英ロンドンの非政府組織「環境捜査局」は今回、調査対象とした中国10省にある工場18か所で、禁止されているCFC類の使用が判明したことを明らかにした。
バイヤーを装ったEIAの調査員に対して生産業者や貿易業者が話したところによると、発泡材を製造している中国の企業の大半では、より良質で安価なトリクロロフルオロメタンの使用が続いているという。発泡材は建設部門の活況で断熱材としての需要が高まっている。(中略)
AFPの取材に対し、中国外務省は9日、中国はモントリオール議定書の目標達成に「多大な貢献」をしてきたと語った。
外務省はまた、「CFC-11排出濃度の上昇は地球規模の問題であり、関係各国すべてが真剣に受け止めるべきだ」とファックスでコメント。EIAの報告書が提起した具体的な主張に対する反応は何も示さず、「中国もまたモントリオール議定書の批准国として、国際社会と同様に、この問題について大いに懸念している」と述べた。
■「怪しい」操業
報告書に引用されているある企業代表者の話によると、この企業では、内モンゴル自治区で「怪しい」操業を行っている無許可の工場からCFC類を調達したり、税関でCFC類が見つからないよう隠匿行為を行ったりしているという。
また、報告書に発言が引用された別の企業は、CFC類を自社工場で生産しており、1日に40トンのCFC製剤の生産が可能だとしている。
さらに、ある貿易業者によると、規制対象のCFC製剤を、代替フロンとして使用されているハイドロフルオロカーボン化合物や他の化学物質の混合物と不正に表示して輸出している中国企業もあるという。
主にアジアや中東の国々向けのこうした化合物の輸出量を考えると、CFC類の禁止を表明している国々が気付かずにCFC類を輸入していることも考えられると、報告書は指摘している。
EIAのアレキサンダー・フォン・ビスマルク米事務局長は「中国がこのCFC類の違法な生産を阻止しなければ、ゆっくりと回復しつつある地球のオゾン層を危険にさらすことになる」と話し、「CFC-11は非常に強力な温室効果ガスでもあり、地球の気候に対する深刻な脅威となる」と指摘した。
今回のEIAの報告書は、オーストリア・ウィーンで11日から14日まで開かれるモントリオール議定書公開作業部会の開催に先立ち発表されたもの。会では不正なCFC-11排出の問題が議題に上がるとみられている。【7月10日 AFP】
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禁止されているものでも、しかも禁止理由が地球環境・人類の健康にとって有害であるというものであるにもかかわらず、利益につながるなら・・・という発想が、精神的貧困を示しています。
もちろん、日本でも悪質な企業による“違反”はいろんな方面でありますが、社会全体として法令順守の精神に乏しいところが、日本において、また、世界において、中国が“大国”としての扱いを渇望しながら、いまひとつリスペクトされない所以でもあります。
中国政府も「中華民族の偉大な復興」を掲げるのであれば、まずはこういう面で毅然とした対応をとるべきでしょう。
【中国各地で、光化学スモッグを招くオゾン汚染】
大気の中で成層圏に存在するオゾン層は、生命にとって有害な紫外線が地表に降り注ぐ量を和らげていますが、一方、地表付近では、オゾンは光化学オキシダントなどとして生成し大気汚染の原因となります。
中国では最近、そのオゾン汚染が一部地域で生じる可能性があると報告されています。
****中国各地でオゾンが主要汚染物に、当局が報告****
中国生態環境部は、持続的な高温と地表近くの南寄りの風による影響で、北京・天津・河北地区と山東省のほとんどの地域と河南省北部の一部都市でオゾンの軽度・中度汚染が生じる可能性があると報告した。科技日報が伝えた。
予測によると、6月4日から15日にかけて、中国の長江デルタや華南・西北・東北地区の主要汚染物質にオゾンが含まれるという。
地表近くの低空のオゾンは、いったいどこから来るのだろうかという点について、中国工程院院士、北京大学教授の唐孝炎(タン・シャオイエン)氏は、「気温が高く日照がやや強い場合、大気中の窒素酸化物と揮発性有機化合物(VOCs)は紫外線照射により光化学反応を起こし、オゾンを形成する」と説明した。
そのため青空が広がり、太陽がぎらぎらと照りつける紫外線の強い夏の日には、オゾン汚染が特に生じやすい。オゾンは常温では特殊な匂いを持つ薄青色のガスであり、青い空に白い雲の晴天だと思いきやオゾン濃度が基準を超過しているということがよくある。
唐氏は、「オゾンは強い酸化剤であり、それ自体が有害だ。その大気中の質量濃度は大気の酸化能力、すなわち二次汚染物質を生み出す能力を反映する。そのため大気中のオゾン汚染と大気の酸化性を制御し、引き下げようとする場合、同時に窒素酸化物とVOCsの排出量を削減するという汚染物質の一斉制御を実現しなければならない」と説明した。
中国生態環境部環境観測司長の劉志全(リウ・ジーチュエン)氏は、「中国のオゾン汚染は分散型・地域型という特徴を示している。主に遼寧省中南部、北京・天津・河北及び周辺地域、長江デルタ、武漢都市クラスタ、陝西省関中地区、成都市・重慶市、珠江デルタに集中している。
中国のオゾン汚染は軽度が中心で、深刻な汚染が発生したことはなく、検出不可能な値にまで達したということも起きたことがない」と指摘した。
劉氏は「先進国のオゾン汚染ガバナンス経験を見ると、窒素酸化物とVOCsの排出削減の推進を続ければ、長期的にはオゾンの濃度は徐々に低下することになる。短期的には、汚染の濃度は気象、前駆体の濃度・比率などの影響によって大幅に変動する」と述べた。【6月5日 レコードチャイナ】
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“中国のオゾン汚染は軽度が中心で、深刻な汚染が発生したことはなく、検出不可能な値にまで達したということも起きたことがない”・・・とのことですが、中国当局の公表数値が信頼できないことは、一時期のPM2.5による大気汚染でも明らかにされたところで、どうでしょうか・・・・。
前述のフロンガスによるオゾン層破壊が進むと、紫外線照射が増大し、地上でのオゾン発生も増加しますが、そうしたことが影響しているのかは知りません。多分、別問題なのでしょう。
黄砂や大気中有害物質は、地理的な理由で中国大陸から日本に飛来拡散します。
オゾンについても同様です。
中国政府にあっては、フロンガス同様に、“窒素酸化物とVOCsの排出削減の推進”にこれまで以上に真剣に取り組んでもらいたいものです。
【環境汚染対策に重点を置き始めた中国政府ですが・・・】
中国の名誉のために付け加えると、中国政府は近年、環境保護に強力に取り組む姿勢を見せています。
****習主席、環境汚染対策で檄=35年までに「美しい中国」****
中国の習近平国家主席は18、19両日に北京で開いた全国生態環境保護大会で演説し、「2035年までに生態環境を根本的に好転させ、『美しい中国』をつくる目標を基本的に実現させる」と強調した。国営新華社通信が19日伝えた。
会議には党、中央・地方政府、軍、国有企業の幹部らがそろって出席。習氏は環境汚染対策でも「党の指導を強化しなければならない」と表明した上で、「生態環境を害した幹部は一生涯責任を追及する」と檄(げき)を飛ばした。【5月19日 時事】
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大気汚染・土壌汚染などに関する住民の不満が高まり、共産党政権としても“体制維持”のために看過できないレベルに達していることが背景にあります。
“あういう国”ですから、やるとなると半端ないところもあります。
****中国が異次元の「環境規制」 数万カ所の工場が操業停止に****
中国はこの数カ月で数万の工場を閉鎖し、かつてない勢いで汚染対策に取り組んでいる。国をあげた環境対策は、製造業に広範囲な影響を及ぼしている。
環境保護当局の監査で、中国の全工場の40%が少なくとも一時的に閉鎖されたとの試算もある。また、監査の結果、8万カ所以上の工場が罰金や刑事罰を受けた。
当局は監査時に工場の操業を停止させ、電気やガスを止める。そのため、納品の遅れや生産数の削減、コスト増が発生し価格転嫁も起きている。これにより、米国で販売される中国製製品の価格上昇も起こりそうだ。
中国政府はこの数十年ほとんど看過されてきた環境問題に取り組み、法整備を積極的に進めている。取り締まりによって、中国沿岸部では一時的な操業停止を迫られる工場が続出しているほか、海外移転を余儀なくされるケースも出ている。
中国は最近、大気中の微小粒子(PM2.5)の濃度を、2035年までに1立方メートル当たり35マイクログラムに削減すると発表した。中国の環境規制強化は、環境や人々の健康にはいいかもしれないが、産業やGDP成長率にマイナスとなる可能性がある。【2017年11月2日 Forbes】
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ただ、社会全体に法令順守の精神が徹底していないと、よく言われるような「上に政策あれば下に対策あり」といった話にもなります。また、長期的な効果も期待できません。
法令順守の精神をはぐくむためには、罰則強化や中国お得意の監視体制もあるのでしょうが、基本的には教育の問題でしょう。
もっとも、中国では“法令順守”が“共産党による指導への絶対的服従”にすり替わる懸念があるのが厄介なところでもあります。
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