(8日、群衆に向かって演説を行う「シャーム解放委員会」(HTS)の指導者ジャウラーニー氏【12月9日 CNN】)
【各勢力の衝突は、現時点ではコントロールされているものの、イスラエルのゴラン高原緩衝地帯侵攻は長期化の様相】
シリアの反体制派が首都ダマスカスに進軍し、首都を「解放」したと宣言した8日から10日間が経過。
日常生活は戻りつつありますが、一方 各地で治安悪化、武装集団の市民襲撃が相次いでいるとも。
****シリア アサド政権崩壊から1週間 戻りつつある日常生活、一方 各地で治安悪化 武装集団の市民襲撃相次ぐ****
(中略)記者 「市民は日常生活へと戻り始めていまして、お店も開いていまして、ショッピングに繰り出す市民の姿も多く見られます」
シリアの首都ダマスカスでは、すでに夜間外出禁止令が解除され、日常生活が戻りつつあります。一方で、各地で治安の悪化が懸念されています。
イギリスに拠点を置く「シリア人権監視団」は、中部ハマの郊外で武装した集団が民家を襲撃し、合わせて5人が殺害されたと伝えました。ハマ郊外では、別の場所でも11人が殺害されるなど、武装集団による市民襲撃が相次いでいるということです。
また、「シリア人権監視団」は、北部のアレッポや南部のスワイダなどでも市民が銃撃され死亡したと伝えています。【12月15日 TBS NEWS DIG】
シリアの首都ダマスカスでは、すでに夜間外出禁止令が解除され、日常生活が戻りつつあります。一方で、各地で治安の悪化が懸念されています。
イギリスに拠点を置く「シリア人権監視団」は、中部ハマの郊外で武装した集団が民家を襲撃し、合わせて5人が殺害されたと伝えました。ハマ郊外では、別の場所でも11人が殺害されるなど、武装集団による市民襲撃が相次いでいるということです。
また、「シリア人権監視団」は、北部のアレッポや南部のスワイダなどでも市民が銃撃され死亡したと伝えています。【12月15日 TBS NEWS DIG】
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懸念されているシリア国内の各勢力の衝突は、現時点ではコントロールされているようです。
****トルコと米支援クルド勢力SDFの停戦、今週末まで延長=国務省****
米国務省のミラー報道官は17日、トルコとの国境に近いシリア北部のマンビジュ周辺における、米が支援するクルド人主体の組織「シリア民主軍(SDF)」とトルコとの間の停戦が今週末まで延長されたと発表した。先週、米政府が停戦を仲介したものの、期限切れになっていたという。
ミラー氏は、米政府は停戦が可能な限り長く延長されることを望んでいるとした。その上で「シリアの今後の道筋について、引き続きSDFやトルコと協議していく」と述べ、シリアでの紛争が激化することはどの当事者にとっても利益にならないとした。
SDFは過激派組織「イスラム国」(IS)掃討を目指す米主導の連合と協力しているが、その中核である「クルド人民防衛隊(YPG)」について、トルコは国内で非合法化されている武装組織「クルド労働者党」(PKK)の派生組織と見なしている。
SDFのマズルム・アブディ司令官は17日、米国の監視下で治安部隊を再配置し、北部の都市コバニに非武装地帯を設置する案を提示する用意があると表明した。Xへの投稿で、提案はトルコの安全保障上の懸念に対処し、地域の恒久的な安定を確保することが目的だと説明した。
しかし、両者の戦闘は継続しており、SDFの別の声明によると、17日にはトルコが支援する部隊がコバニ南部の地域を攻撃した。【12月18日 ロイター】
ミラー氏は、米政府は停戦が可能な限り長く延長されることを望んでいるとした。その上で「シリアの今後の道筋について、引き続きSDFやトルコと協議していく」と述べ、シリアでの紛争が激化することはどの当事者にとっても利益にならないとした。
SDFは過激派組織「イスラム国」(IS)掃討を目指す米主導の連合と協力しているが、その中核である「クルド人民防衛隊(YPG)」について、トルコは国内で非合法化されている武装組織「クルド労働者党」(PKK)の派生組織と見なしている。
SDFのマズルム・アブディ司令官は17日、米国の監視下で治安部隊を再配置し、北部の都市コバニに非武装地帯を設置する案を提示する用意があると表明した。Xへの投稿で、提案はトルコの安全保障上の懸念に対処し、地域の恒久的な安定を確保することが目的だと説明した。
しかし、両者の戦闘は継続しており、SDFの別の声明によると、17日にはトルコが支援する部隊がコバニ南部の地域を攻撃した。【12月18日 ロイター】
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一方、イスラエルはこの機に乗じてゴラン高原緩衝地帯に進軍し、懸念材料になっています。ただ、イスラエルも「シャーム解放機構」(HTS)も互いに対決を起こす考えはないとはしています。
****「シリアとの対決に関心なし」=ゴラン高原入植拡大を承認―イスラエル首相****
イスラエルのネタニヤフ首相は15日に公表した動画で、アサド政権崩壊後の対シリア政策について「変化する現場の現実によって決定する。シリアとの対決に関心はない」と強調した。
シリアの旧反体制派「シャーム解放機構」(HTS、旧ヌスラ戦線)の指導者ジャウラニ氏は14日、シリアとの間に設けられた緩衝地帯に軍を展開させたイスラエルを批判。一方で、「シリアは長年の戦争で疲弊し、新たな紛争を起こすことはできない」と述べていた。
イスラエルのメディアによると、同国政府は15日、イスラエルが1967年の第3次中東戦争でシリアから奪った占領地ゴラン高原で入植者を倍増させる計画を承認した。4000万シェケル(約17億円)を投じ、インフラ整備を促進する。ネタニヤフ氏は「ゴランの強化は国家の強化だ」と訴えた。 【12月16日 時事】
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イスラエルの今回軍事作戦は長期化の様相も。
****イスラエル首相シリア視察 要衝の山、軍占領長期化か****
イスラエルのネタニヤフ首相は17日、シリア首都ダマスカスを望む要衝ヘルモン山の山頂のシリア側を視察し「安全が保証される別の取り決めが見つかるまで、この地にとどまる」と発言した。イスラエル軍はシリアのアサド政権崩壊の混乱に乗じてシリア側を制圧。「一時的な防衛措置」と強調していたが、占領を長期化させる可能性がある。(後略)【12月18日 共同】
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【「今のところ正しいことを言っている」HTS指導者】
こうした状況で、今後のシリアに最大の影響力を持つのは、アサド政権打倒を宣言したイスラム過激派組織「シャーム解放機構」(HTS)、およびその指導者アフマド・アッシャラア氏がどのような統治を目指しているのか・・・という点です。
****シリア新政権樹立へ、反体制派アッシャラア氏が大きな影響力か…過去にアル・カーイダ参加も穏健姿勢を前面に****
シリアのアサド政権崩壊を受け、新政権の樹立に向けた動きが始まった。大きな影響力を持つとみられているのが、反体制派を主導し、アサド政権打倒を宣言したイスラム過激派組織「シャーム解放機構」(HTS)の指導者アフマド・アッシャラア氏だ。
中東の衛星テレビ局アル・ジャジーラなどによると、アッシャラア氏は1982年、サウジアラビアで生まれ、シリアで育った。2003年に米英軍のイラク攻撃が始まると、米国を敵視してイスラム教スンニ派の過激派組織「イラクのアル・カーイダ」に加わったが、後に米軍に拘束され、5年間収監された。
00年に始まった第2次インティファーダ(反イスラエル蜂起)や01年の米同時テロが過激思想に向かわせたとの指摘もある。
11年にシリアで内戦に火が付くと帰国し、イスラム過激派組織「イスラム国」の前身組織の支援を受けて「ヌスラ戦線」を設立した。強権を振るうアサド政権の打倒を掲げて自爆攻撃や拉致を繰り返し、米国からテロ組織に指定された。
14年のアル・ジャジーラのインタビューでは「シリアはイスラム法に基づき統治されるべきだ」と述べ、アサド政権の中核を占めたシーア派の一派・アラウィ派やキリスト教徒ら少数派を認めない強硬姿勢を示した。16年に路線の違いからアル・カーイダと決別すると、他組織との統合の末、ヌスラ戦線をHTSに改組した。
この頃から軍服姿での露出を控え、自身や組織についた過激派のイメージ払拭ふっしょくを図り始め、穏健姿勢を示すようになったとされる。21年には米メディアのインタビューにも応じ、ブレザー姿で「HTSは西洋に脅威を与えない」と主張した。
首都ダマスカスを制圧した8日頃から、自身の名前も、アル・カーイダ加入後に使っていた通称の「アブムハンマド・ジャウラニ」から切り替え、本名を名乗り始めた。
8日には国営テレビを通じて「シリアは全ての人々のものだ」と述べ、宗教宗派を問わずに共生する融和姿勢を示した。国民や国際社会の支持を得る狙いがあるとみられる。
一方で、首都の著名なモスク(礼拝所)で8日に行った演説では「『イスラム国家』全体の勝利だ」と述べ、イスラム国家樹立への思いものぞかせた。
穏健姿勢への転向を「表面的」と見る向きは根強く、国連や米欧は今もHTSをテロ組織に指定している。シリアには旧アサド政権のほか、HTSなど複数の反体制派やクルド人勢力が支配する地域があり、各勢力を束ねて統治するには困難が伴うと予想される。
エジプトの研究機関「アラブ政治戦略学センター」のムフタル・ゴバシ副所長は「アッシャラア氏の出自を知った上で、今後の振る舞いを見ていく必要がある」と指摘した。【12月11日 読売】
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まだ10日間・・・ということで、今後の方向性はわかりません。
現時点での発言は「穏健」なものになっていますが、アフガニスタンで政権を打倒したタリバンも復権当初は比較的穏健な発言もあって、「以前のタリバンとは少し変わったのかも・・・」と期待もさせましたが、現状はかつてのタリバンと大差ありません。
“平和的協力を望むという武装勢力の主張をうのみにするのは間違いだろう。だが同時に、完全に無視していても戦争終結にはつながらない。”【12月18日 Newsweek】
【HTSの今後の動きを見守る欧米】
アメリカ、欧州は当面は注意深く見守り、その「穏健な」発言を実行に移すなら協力も・・・というところ。
****米軍はシリア駐留継続へ、IS壊滅目指す=ホワイトハウス高官****
米ホワイトハウス高官は10日、過激派組織「イスラム国」(IS)を壊滅させるために、シリアのアサド政権崩壊後も米軍は同国に駐留を続けると表明した。(中略)
アサド政権を崩壊に導いた反体制派の主力組織シャーム解放機構(HTS)は国際武装組織アルカイダの流れをくみ、米国はテロ組織に指定している。
ファイナー氏は「このような組織については、政策の正式な変更はない」と述べ、テロ組織の指定は組織の発言や意図ではなく活動に基づいて決定するため行動を注視していくと説明した。
一方で、これらの組織が過去数週間に発言している内容の一部は「非常に建設的」だと評価した。その上で、そうした発言に「シリアに信頼できる包括的な統治」をもたらす行動が伴うかどうか見守ると述べた。
また、バイデン政権はトランプ次期大統領の政権移行チームメンバーと連絡を取り、シリアに関する情報を提供していると語った。【12月11日 ロイター】
アサド政権を崩壊に導いた反体制派の主力組織シャーム解放機構(HTS)は国際武装組織アルカイダの流れをくみ、米国はテロ組織に指定している。
ファイナー氏は「このような組織については、政策の正式な変更はない」と述べ、テロ組織の指定は組織の発言や意図ではなく活動に基づいて決定するため行動を注視していくと説明した。
一方で、これらの組織が過去数週間に発言している内容の一部は「非常に建設的」だと評価した。その上で、そうした発言に「シリアに信頼できる包括的な統治」をもたらす行動が伴うかどうか見守ると述べた。
また、バイデン政権はトランプ次期大統領の政権移行チームメンバーと連絡を取り、シリアに関する情報を提供していると語った。【12月11日 ロイター】
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****シリア政権移行への干渉けん制=国民主導なら「承認」―米国務長官****
ブリンケン米国務長官は10日、反体制派がアサド政権を打倒したシリアについて声明を出し、政権移行作業への干渉を控えるよう各国をけん制した。シリア国民主導で新政権が発足すれば「承認し、全面的に支持する」と表明した。
ブリンケン氏は、2015年の国連安保理決議が定めたシリア国民主導の新憲法制定や選挙実施を目指す政権移行プロセスに言及。この移行作業を「信頼に足る、包括的で宗派によらない政府へとつなげるべきだ」と強調した。【12月11日 時事】
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****EU、シリア制裁緩和の用意 前向きな措置実施なら=カラス上級代表****
欧州連合(EU)の外相に当たるカラス外交安全保障上級代表は16日、アサド政権崩壊後のシリアについて、新政権の下で包括的な政府が樹立され、女性や少数派の権利の尊重などの「前向きな措置」が講じられれば、EUは対シリア制裁の緩和を検討する用意があると述べた。
カラス氏はまた、シリア暫定政府を主導する「シャーム解放機構(HTS)」の幹部と会談するため、EUが高官をシリアに派遣したと明らかにした。
EUはこの日、ブリュッセルで外相会合を開催。カラス氏は会合後に記者団に対し、アサド政権の後ろ盾となっていたロシアとイランのほか、過激主義的な勢力はシリアの将来に関与すべきでないとの考えを示し、「(会合で)多くの外相が、シリア新政権はロシアの影響力排除を条件にすべきだと強調した」と述べた。
その上で「(シリアでの)過激主義や急進化は望んでいない」とし、「シャーム解放機構は今のところ正しいことを言っている」と言及。同時に、今後の行動に基づき判断していくとの考えを示し、「シリアの発展を支援するため、前向きな措置が見られた際に積極的に行動できるよう計画を準備しておく必要がある」と語った。【12月17日 ロイアー】
カラス氏はまた、シリア暫定政府を主導する「シャーム解放機構(HTS)」の幹部と会談するため、EUが高官をシリアに派遣したと明らかにした。
EUはこの日、ブリュッセルで外相会合を開催。カラス氏は会合後に記者団に対し、アサド政権の後ろ盾となっていたロシアとイランのほか、過激主義的な勢力はシリアの将来に関与すべきでないとの考えを示し、「(会合で)多くの外相が、シリア新政権はロシアの影響力排除を条件にすべきだと強調した」と述べた。
その上で「(シリアでの)過激主義や急進化は望んでいない」とし、「シャーム解放機構は今のところ正しいことを言っている」と言及。同時に、今後の行動に基づき判断していくとの考えを示し、「シリアの発展を支援するため、前向きな措置が見られた際に積極的に行動できるよう計画を準備しておく必要がある」と語った。【12月17日 ロイアー】
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「今のところ正しいことを言っている」・・・実行に移されるといいのですが。
12月17日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、来年1─6月に約100万人のシリア難民が帰国するとの見通しを示しています。