孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

シリア  戦闘再燃 アルカイダ系イスラム過激派の反体制派がアレッポ制圧 絶好の反撃の好機

2024-11-30 23:14:21 | 中東情勢

(30日、シリア北部の要衝アレッポ中心部に進出した反体制派勢力の戦闘員ら【11月30日 時事】 戦勝気分ですね)

【反体制派は北部イドリブに封じ込まれ、国土の大半をアサド政権が抑える形で、ほぼ「アサド政権勝利」の状況だったシリア情勢】
以前はシリア内戦の様子が連日報じられていました。

単にアサド政権の政府軍と反体制派の争いというだけでなく、ISなどイスラム過激派、北部のクルド人勢力、更にこれらの勢力を支援する外国・・・アサド政権を支援するイラン及びヒズボラ、そしてロシア、反体制派を支援しつつクルド人勢力に敵対するトルコ、IS掃討でクルド人勢力と共闘するアメリカ、イラン及びヒズボラに敵対するイスラエル、アラブ湾岸諸国・・・等々が絡みあって複数の軸を持った戦いが2011年から続きました。

****シリア内戦****
シリアで起きたアラブの春から続く、シリア政府軍とシリアの反体制派及び外国勢力を含むそれらの同盟組織などによる多面的な内戦である。この内戦は2011年から現在まで続いており、1960年以降の世界史において最も難民が発生した戦争と言われている

概要
シリアにおける内戦は、2011年にチュニジアで起きたジャスミン革命の影響によってアラブ諸国に波及したアラブの春のうちの一つであり、シリアの歴史上「未曾有」のものといわれている。

チュニジアのジャスミン革命とエジプトの民主化革命のように、初期はデモ行進やハンガーストライキを含む様々なタイプの抗議の形態をとった市民抵抗の持続的運動とも言われた。

初期の戦闘はバッシャール・アル=アサド政権派のシリア軍と反政権派勢力の民兵との衝突が主たるものであったが、サラフィー・ジハード主義勢力のアル=ヌスラ戦線とシリア北部のクルド人勢力の間での衝突も生じている。

その後は反政権派勢力間での戦闘、さらに混乱に乗じて過激派組織ISILやアル=ヌスラ戦線、またクルド民主統一党 (PYD) をはじめとしたシリア北部のクルド人勢力ロジャヴァが参戦したほか、アサド政権の打倒およびISIL掃討のためにアメリカ合衆国やフランスをはじめとした多国籍軍、逆にアサド政権を支援するロシアやイランもシリア領内に空爆などの軍事介入を行っており、内戦は泥沼化している。

また、トルコやサウジアラビア、カタールもアサド政権打倒や自国の安全・権益確保のために反政府武装勢力への資金援助、武器付与等の軍事支援を行った。

アサド政権の支配地域は一時、国土の3割程度(但し、依然として支配地域に西部の人口集中地域が含まれていた)に縮小したが、ロシアやイランの支援を得たことに加え、反政権諸勢力の中でISILやクルド系武装勢力が台頭する中で、反政権諸勢力間での戦闘も激化した事に伴い「アサド政権打倒」を掲げていた欧米がISILとの戦闘を優先する方向に舵を切った事や、クルド系武装勢力とはISILやアルカイダなど対イスラム過激派系反政権勢力打倒を優先する双方の戦略上ある程度の協調関係を構築するなど、情勢の変化も追い風となり、反政権諸勢力のうちISILが外国や他の非政権軍の攻撃対象になって壊滅したことで勢力を回復。2019年春~2020年夏時点でシリア領土の7割前後を奪還した。【ウィキペディア】
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戦闘はイラン・ヒズボラ及び空爆担当のロシアの支援を受けた政府軍が勢力を強め、2016年12月にはシリア第2の都市で商業の中都市アレッポを制圧。

2020年には政府軍を支援するロシアと反政府勢力を支援するトルコの間で停戦が合意されました。

それ以降は、基本的にはイスラム過激派を中心とする反体制派は北部イドリブに封じ込まれ、国土の大半をアサド政権が抑える形で、ほぼ「アサド政権勝利」の状況でした。

【反体制派がアレッポ制圧 ロシア・ヒズボラ・イランに政権支援の余力がない今は反撃の絶好の好機】
最近シリアが話題になるのは、シリア国内でイランの支援を受けるヒズボラなどに対しイスラエルが攻撃をくわえるといったものでした。
“シリア中部を空爆=「武器密輸経路」が標的―イスラエル軍”【11月14日 時事】
“イスラエル、シリア中部の古代都市攻撃 36人死亡=国営メディア”【11月21日 ロイター】

それが急変。
政府軍とイドリブに封じ込まれていた反体制派の間で戦闘が再燃しています。

****シリア反体制派、政府軍に大規模攻撃 2020年以来の衝突再燃****
シリア反体制派が同国西部アレッポで、政府軍に対する大規模攻撃を行った。自由シリア軍の関係者や地元住民が明らかにした。大規模衝突の再燃は2020年以来だった。

反体制派は27日、テレグラムを通じて「侵攻の抑止」と位置付ける攻撃を発表。シリアのアサド政権による砲撃に対抗したと主張した。(後略)【11月28日 CNN】
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****シリア第2の都市を砲撃=反体制派攻勢、240人超死亡****
(中略)反体制派は、アサド政権とロシアがイドリブ県内へ攻撃を強化していることに反発。政権が支配するアレッポ周辺の集落を多数制圧した。現在、反体制派はアレッポの数キロ郊外まで迫っているという。【11月29日 時事】
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どっちが先に仕掛けたのか・・・定かではありませんが、上記のような報道においては、まず政府愚のイドリブへの攻撃があって、それに反撃して反体制派がアレッポに攻撃を仕掛けた・・・という説明が多いようです。反体制派サイドの説明ですが。

いずれにしても反体制派にとっては反撃の絶好の好機。
政府軍を支えていたロシアはウクライナで手一杯、ヒズボラは壊滅一歩手前状態、イランもイスラエルとの対立及びヒズボラ支援で手一杯・・・と、どこもシリア・アサド政権支援どころではない状態、

そんな状態のアサド政権政府軍であれば反体制派に充分な勝機が・・・という千載一遇の反撃チャンス

2016年にあれだけ激戦が繰り広げられたアレッポの大半を、あっさりと反体制派が制圧したようです。

****シリア反体制派、北部要衝の大半掌握か=アサド政権軍と攻防激化****
在英のシリア人権監視団は30日、内戦下のシリアでアサド政権と対立する反体制派勢力が北部の要衝アレッポへ進攻し、市内の大部分を掌握したと明らかにした。

政権軍は30日、「防衛線強化のための部隊再配置」を発表。政権側兵士が多数死亡し、反体制派がアレッポの広範囲に進入したことを認めた。
 
人口約200万人を擁する商業の中心地アレッポは、シリア第2の都市。2011年から続く内戦の勃発後、反体制派が一時支配したが、16年12月に激戦の末にアサド政権が制圧した。反体制派がアレッポを占拠すれば、8年ぶりとなる。攻防激化により、シリアの周辺国を巻き込む形で中東の混乱が一段と拡大する恐れがある。
 
反体制派はアレッポに隣接する北西部イドリブ県を拠点とする。イドリブ県では20年にアサド政権を支えるロシアと、反体制派を支援していたトルコが停戦で合意。

ただ、最近は政権側が攻撃を強化しており、反体制派も27日に逆攻勢を開始した。今回の攻撃は停戦発効後で最大規模という。
 
ロイター通信によると、政権軍とロシア軍は30日にアレッポ郊外で反体制派に空爆を加えたが、劣勢とみられる。人権監視団は「アレッポはもはや政権の支配下にはない」と伝えた。

一連の衝突で民間人を含む310人以上が死亡したとしている。 【11月30日 時事】
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反体制派と言ってもいろんな勢力がありますが、“ロイター通信などによると、今回の攻撃は国際テロ組織アルカイダ系のイスラム過激派「ハヤト・タハリール・シャム」(HTS)が主導している。”【11月30日 毎日】とのこと。

ハヤト・タハリール・シャム・・・以前は「ヌスラ戦線」と呼ばれていたアルカイダ系イスラム過激派で、2019年にイドリブ県を完全制圧したと見られています。

「ハヤト・タハリール・シャム」(HTS)にシリア全土に戦線を拡大する力があるとは思えませんが、北部拠点都市アレッポを失うというのはアサド政権にとっては大きな痛手でしょう。

ロシアはそれなりに空爆支援はまだ行っているようですが、ヒズボラ、更にはイランはシリアに介入する余力はないでしょう。

イスラエルと停戦合意したヒズボラがどんな状況かはシリアにもかかわることですが、シリア情勢とはまた論点が異なってきますので別機会に。
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