(【11月15日 TBS NEWS DIG】(左から)国民党の朱立倫主席、侯友宜新北市長(国民党候補)、馬英九前総統、民衆党の柯文哲前台北市長(民衆党候補) 15日時点では野党統一候補選定で合意したとのことでしたが・・・)
【習近平氏 軍事侵攻を計画しているとの見方を否定するも、“中国にとっては当たり前のことを言ってるだけ”とのも】
注目された今月15日に実現したバイデン大統領と習近平国家主席の1年ぶりとなる対面での会談は、軍同士の対話再開や薬物対策の協力での合意といったこともありますが、全体的な評価としては、その合意内容よりは、とにもかくにも両者が対面で会談することで、これまでマイナスのレベルにあった両国関係をとりあえずゼロレベルに戻したことに意義があるとも指摘されています。
そうしたなかで、会談の議題となったのが台湾をめぐる問題。 もちろん、中国にとって台湾統一は中国にとって核心中の核心の最大問題ですからそうそうこれまでと異なる踏み込んだ話がでるはずもない問題です。
基本的には、両者が互いの主張を述べたといったところ。
“習氏は数年内の台湾に対する軍事行動を計画していないと述べ、バイデン氏を安心させようと努めたが、武力を行使する可能性のある条件に言及。”【11月16日 Newsweek】
“数年内”云々は、“中国が台湾に関し2027年や35年に軍事行動を起こすことを計画している”といった最近アメリカで報じられているような話を受けての発言です。
****習氏、台湾侵攻計画を否定 米中会談で平和統一目指す姿勢****
中国の習近平国家主席はサンフランシスコ近郊での15日の米中首脳会談で、中国が台湾への軍事侵攻を計画しているとの見方を否定した。米政府高官が16日までに明らかにした。
習氏は台湾統一のため武力行使を放棄しない方針を示しているが、会談では平和統一を目指す姿勢を強調した。
習氏は会談で、中国が台湾に関し2027年や35年に軍事行動を起こすことを計画しているという米国での報道を把握していると言及。「そうした計画はなく、誰もこれについて私に話したことはない」と語ったとされる。少しいらだった様子だったという。
米中両政府によると、習氏はバイデン大統領に台湾への武器支援をやめて平和統一を支持するよう要求。その上で中国は台湾を「必ず統一する」と決意を示した。バイデン氏は「一方的な現状変更に反対する」との米国の立場を改めて伝え、台湾周辺での軍事活動の自制を習氏に促した。
習氏は中国共産党総書記として3期目入りを決めた昨年の党大会で台湾統一を目標に掲げ「武力行使の放棄は約束しない」と明言した。【11月17日 共同】
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特別これまでの立場を変えたものではないようです。“中国にとっては当たり前のことを言ってるだけ”とも。
****米との首脳会談で中国が得たものは? 台湾問題めぐる発言の意図…北京支局長に聞く****
(中略)
――アメリカ側によると、習主席は「台湾に大規模侵攻する準備はしていない」と述べたということですが、その意図とは?
少し踏み込んだように聞こえますが、中国にとっては当たり前のことを言ってるだけです。現時点で、まだアメリカ軍に勝てるとは思っていないはずだからです。
ただ、アメリカと台湾を挟んで緊張を高めるのは得策じゃないとして、あえて発言した可能性があります。ただ、国内向けには強いポーズを示す必要があるので、中国メディアはこの発言、一切触れていません。【11月16日 日テレNEWS】
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【揺れる野党統一候補選定】
こうした状況で来年1月13日に行われる台湾総統選挙。もし野党候補が勝てば、これまでより中国との対話を重視する方向に大きく変化することも予想されおり、台湾だけでなく、今後の米中関係、日中関係にも大きく影響します。
台湾を領土の一部と主張する中国は、与党・民進党を「台湾独立派」と見なし敵視しています。
当然ながら、中国に厳しい姿勢をとる与党の敗北を期待する中国も総統選挙に最大の関心を払っているところですが、バイデン大統領は習近平国家主席に対して台湾総統選に「介入しないよう警告した」と明らかにしています。
その台湾総統選挙は与党候補の頼清徳(らい・せいとく)副総統がトップを走ってはいますが、野党側が統一候補に絞れば形勢逆転するという微妙な情勢。
その後、状況は一変。15日に統一候補擁立で話がまとまったという報道が。
****台湾総統選、野党勢力が候補一本化合意 与党優勢、変わる可能性****
来年1月に行われる台湾総統選挙で、最大野党の国民党と第三勢力の台湾民衆党は15日、総統候補を一本化することで合意したと発表した。
与党・民進党の候補となる頼清徳(らい・せいとく)副総統が支持率でトップを走る中、劣勢の野党勢力が手を結んだことで選挙情勢が変わる可能性がある。
総統選では、国民党が侯友宜(こう・ゆうぎ)・新北市長、民衆党は前台北市長の柯文哲(か・ぶんてつ)・主席(党首)を擁立し、頼氏らと事実上の選挙戦に入っている。
15日は両氏と朱立倫・国民党主席が台北市内の馬英九前総統(国民党)の事務所で協議した。両党の合意内容によると、今後、複数の世論調査をもとに専門家が支持率を分析。高い方を総統候補、もう一方を副総統候補にする。結果は18日に発表する。
両党は「民進党下野」を掲げて選挙協力協議を続けていたが、支持層の違いなどから候補の一本化は困難との見方が強かった。20日〜24日に総統選の候補者登録が迫る中、双方が歩み寄った形だ。
ただ、柯氏は民進党と国民党の2大政党の枠組みを批判することで若者らから支持を集めてきた経緯がある。国民党内にも柯氏への不信感を持つ支持者が一定数いるため、順調に協力が進むかは予断を許さない状況だ。【11月15日 毎日】
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老舗政党で中国寄りとされる国民党の侯友宜(こう・ゆうぎ)・新北市長、既成政党を批判して若者らの支持が強い第三勢力民衆党の前台北市長の柯文哲(か・ぶんてつ)・主席(対中姿勢では、与党・民進党と野党・国民党の中間的な感じで、とにかく現状維持をめざす立場)のいずれに一本化されるのか・・・18日の発表が注目されていました。
****台湾総統選 「野党統一候補」世論調査で与党側を10ポイント以上上回る 統一候補は明日発表****
来年1月投開票の台湾総統選挙に向け野党側は候補者を一本化すると発表しましたが、最新の調査では与党側を10ポイント以上リードする結果となっています。
台湾メディア「鏡新聞」は、総統・副総統候補として▼最大野党・国民党の侯友宜氏、民衆党の柯文哲氏のペアと▼与党・民進党の頼清徳氏、アメリカ大使に相当する「台北駐米経済文化代表処」蕭美琴代表のペアのどちらに投票したいかを市民1000人以上を対象に調査しました。
その結果、野党側が46.5%で与党側を11.6ポイント上回りました。
柯文哲氏が総統候補、侯友宜氏が副総統候補という組み合わせでも46.6%で、こちらも野党側が13.5ポイント上回る結果となりました。
これまでの「鏡新聞」の調査では頼清徳氏がリードしていましたが形勢が逆転した形です。
野党側の統一候補予定者は、専門家らが複数の世論調査を分析したうえで18日発表される予定です。【11月17日 TBS NEWS DIG】
台湾メディア「鏡新聞」は、総統・副総統候補として▼最大野党・国民党の侯友宜氏、民衆党の柯文哲氏のペアと▼与党・民進党の頼清徳氏、アメリカ大使に相当する「台北駐米経済文化代表処」蕭美琴代表のペアのどちらに投票したいかを市民1000人以上を対象に調査しました。
その結果、野党側が46.5%で与党側を11.6ポイント上回りました。
柯文哲氏が総統候補、侯友宜氏が副総統候補という組み合わせでも46.6%で、こちらも野党側が13.5ポイント上回る結果となりました。
これまでの「鏡新聞」の調査では頼清徳氏がリードしていましたが形勢が逆転した形です。
野党側の統一候補予定者は、専門家らが複数の世論調査を分析したうえで18日発表される予定です。【11月17日 TBS NEWS DIG】
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ところが、再び状況は一転。18日になっても統一候補が決まらない・・・
****台湾総統選、野党統一候補の発表見送り 選出方法合意できず****
来年1月に行われる台湾総統選挙で、18日に予定されていた最大野党・国民党と第三勢力の台湾民衆党による統一候補発表が見送られた。
先行する与党・民進党対策として、国民党と民衆党は15日に、独自に擁立している候補を一本化することで合意したばかりだが、統一候補の選出方法を巡る意見の相違が表面化。両党は協議を続けるとしている。
両党は15日の合意で、国民党が擁立する侯友宜(こうゆうぎ)・新北市長と民衆党から出馬する前台北市長の柯文哲(かぶんてつ)・党主席(党首)のうち、どちらを総統候補とした方が支持率が高いかについて複数の世論調査の結果から判断すると決め、18日午前に発表することになっていた。
だが両党関係者が17日夜に行った世論調査の分析会議で、統計上の誤差についての取り扱いで意見が一致せず、物別れに終わったという。
総統選では20〜24日に立候補の届け出が行われる。【11月18日 毎日】
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両者は各種世論調査でも支持率がほぼ同レベルにあるだけに、判断が難しいところ。
専門家3人が最近出た六つの世論調査結果について、国民党候補と民衆党候補に対する世論の支持率を精査した結果、国民党はうち五つの調査で勝ったと主張。一方の民衆党は、調査結果の誤差の扱いが不当だとし、3勝3敗になるはずだと反発しているとも報じられています。
そういう“誤差”レベルの争いですが、単純な世論調査結果の数字であれば15日時点でも分かっていた話で、そこらをどのように話を詰めたのか・・・と訝しく感じるところもあります。
長く台湾政治をリードしてきた国民党としては、新勢力・民衆党の補完にまわるのはプライドが許さないし、近年党勢が低迷するなか今後の展望が開けません。
一方、既成政党を批判して支持を拡大した柯文哲氏としては、国民党を補完する選択は支持者を失う危険も。
立候補の届け出は24日まで。再々度の情勢一変があるのでしょうか。
勝つためには副総統でもかまわないと判断して総統を譲るのか、総統になれないのなら単独候補で争った方が、たとえ負けても次につながる、あるいは議会選挙に有利に働く・・・と判断するのか、もう数日チキンレースが続くようです。