孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

シンガポール  20年ぶりの新首相就任  政治的不自由・実質的一党支配は変わるのか?

2024-05-21 23:27:01 | 東南アジア

(【5月15日 日経】リー・シェンロン前首相(右)から政権を引き継ぐローレンス・ウォン新首相(51))

【経済的繁栄と政治的不自由の国シンガポールで20年ぶり首相交代 「リー・ファミリー」支配の終焉】
東南アジアの都市国家シンガポールには経済的反映と政治的不自由・実質的な一党独裁という変わった特徴を持っています。

20年にわたる長期、シンガポールを率いてきたリー・シェンロン前首相(リー・クアンユー元首相の長男)に変わって、15日、ローレンス・ウォン副首相兼財務相(51)が新首相に就任しました。リー家の次期首相候補もおらず、これで国父とされるリー・クアンユー元首相から続いた「リー・ファミリー」への依存は終了しました。

****シンガポール****
東京都区部を一回り大きくした国土面積で、総人口約592万人(内:国民355万人、永住権保有者52万人、在住 外国人 185 万人。国民の人種構成は、華人系約 74%、マレー系約 14%、インド系約9%、その他約3%の多民族国家)と、国内規模は決して大きいとは言えないが、2023年の国民1人当たりの名目GDPは約91,100米ドルで、世界第5位となっている。後略)【2023年12月19日 NIRA総合研究開発機構】
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*****シンガポール新首相が就任 国民の7割強が華人系の国、米中との等距離外交どうなる****
シンガポールで15日、ローレンス・ウォン副首相兼財務相(51)が新首相に就任した。1965年の独立以来4代目の首相で、20年ぶりのトップ交代。

地政学的な対立から離れて中立を維持したリー・シェンロン前首相(72)の政策を継承する見通し。米中対立から距離を置きつつ、経済発展を実現できるか。ウォン新政権のかじ取りが注目される。

ウォン氏は就任式典の演説で、自身がシンガポール独立後に生まれた初の首相であることに言及し、「自分のリーダーシップは前の世代とは異なるだろう。われわれなりのやり方で(国を)リードしていく」と世代交代したことを強調。米中対立については「両国間に問題が避けられないとしても、双方と関わりを続ける」と述べた。

ウォン氏は官僚出身で財務省などでキャリアを積んだ。2011年に政界入りし、与党・人民行動党(PAP)の中では、リー氏らに続く「第4世代」に当たる。新型コロナウイルス禍で感染拡大防止の責任者を務めて評価を高めた。国際的な知名度は乏しいが、新内閣ではリー氏が上級相に就任し、事実上の後見人として新首相を支える。

地元紙ストレーツ・タイムズは、ウォン新政権について「米中対立をどう乗り切るかが、最大の外交政策課題」と指摘した。ウォン氏は就任前、自身の価値観は親中でも親米でもなく、「親シンガポールである」と述べたが、同紙はウォン氏が米中対立について「どのように乗り越えるのかまだ詳しく述べていない」と注文を付けた。

シンガポールは華人系が国民の7割強を占め、中国語が公用語の一つ。米ピュー・リサーチ・センターの調査(22年6月発表)によると、シンガポールでは69%が中国の習近平国家主席を「信用している」と答えるなど、中国との近さがうかがえるデータもある。

一方、近年は同じく金融都市だった香港で中国共産党による支配が強まったことを受け、欧米の多国籍企業がアジア拠点をシンガポールに移す動きが進む。西側諸国との友好も重要で、特に安全保障上のパートナーとして米国への配慮も欠かせない。ウォン政権は米中の間でバランスに腐心することになりそうだ。

国内では対中警戒感が高まりかねない事件も起きた。政府は2月、香港出身でシンガポール国籍を取得した実業家男性に対し、海外から世論への干渉を防ぐ外国介入対策法を適用した。男性は、シンガポールに住む華人系住民に対し、中国のプロパガンダ拡散に協力するよう呼びかけていた疑いが持たれている。

国内では物価高や少子高齢化といった課題が積みあがる中、25年11月までに総選挙が予定されている。20年の選挙では一党支配を続けるPAPの退潮傾向が浮かび上がっており、ウォン氏が党勢拡大を図れるか注目される。【5月16日 産経】
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日本からの観光客の多い国でもありますが、観光客の目に映らない実態も。一人当たり名目GDPで日本の約2.6倍という圧倒的経済反映の一方で、政治的不自由では以前から批判のある国でもあります。

下記は古い記事ですが、内容は現在にもあてはまります。

*****シンガポール ~表向き豊かな経済状況と、一党支配の政治体制*****
(中略)
その意味では、第二次世界大戦後に独立した国の中で、最も成功した国と言えます。日本人から見ると、シンガポールは、清潔で、きれいで、全ての面できちんとした国との印象が強いと思いますが、政治体制は世界でも類の見ない特徴的な体制となっています。

例えば、議会ですが、2015年の総選挙の結果、定数89人(選挙区選出議員:その他重要法案の投票権がない議員12人がいる)のうち、与党の人民行動党(PAP:People's Action Party)が83議席を占め、野党の労働者党(WP:Workers' Party)が6議席という結果となりました。これだけ見ると与党の圧勝のように見えますが、そうではありません。

与党の得票率は69.86%ですから、野党が30%以上の得票があったことになります。しかしながら、選挙制度自体が与党に有利となっているため、このような結果となっています。

PAPは1965年の独立以来、1980年の総選挙まで全議席を占有し、その後の総選挙でも、野党は1から2議席を得ているに過ぎませんでしたが、2011年の総選挙で野党が6議席を得たことから、政府与党が驚愕する事態となりました。

(中略)政治的実権は与党PAPの書記長でもあるリー・シェンロン首相が保持しています。
このリー・シェンロン首相は独立以来の発展の礎を造り、国父とされるリー・クアンユー元首相の長男です。また、リー一族は政府系投資会社を実質的に支配しているともされ、経済面でもシンガポールを実施的に支配しているとされています。

このようなシンガポールの政治体制は、権威主義的政治体制(開発独裁)とも言われています。つまり、経済的繁栄を最優先し、一般国民の自由をある程度制約することを厭わないという政策が、政治体制の根幹をなしています。

そのため、些細な罪であっても、高額な罰金を課されることがあります(地下鉄内での飲食、ゴミ・ガムの路上でのポイ捨て、水の汲み置き等)。

また、メディア等の報道への規制も厳しく、世界報道自由度ランキングでは、世界180ヶ国中154位(2016年)となっています。

公務員の給与が世界で最も高いのも、シンガポールと言われています。例えば、首相の給与は日本円で2億円以上とされており、これは世界の国家元首の中で最高額とされています。また、公務員の給与水準も非常に高く、贈賄等の政府機関での腐敗行為は、ほとんど皆無とされています。

一方、このようなシンガポールでも、ジニ係数が0.464(2014年)となっており、格差の広がりも懸念されています。2011年、2015年の総選挙でも国民の3割以上が野党に投票したということからも、シンガポールの政治体制が今後も安泰か否かは、予断を許さない状況と言えます。【2016年8月10日 茂木 寿氏 リスク対策.com】
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国際的人権団体Human Rights Watchはシンガポールの政治状況を下記のように批判しています。

****シンガポール:法が言論・集会の自由を侵害*****
抑圧的な訴追や規制、民事訴訟の停止を

シンガポール政府は過度に広範な刑法、抑圧的な規制、民事訴訟などを駆使して言論や集会の自由を厳しく制限している、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書内で述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理フィル・ロバートソンは、「シンガポール政府は、自国は近代国家でビジネスしやすいと喧伝して民主主義国を名のる一方で、自国民が政府を批判したり、政治問題で発言するのを恐れている」と述べる。「シンガポールでは、言論や抗議活動に対する直接的および間接的な制約が、公共の利益に関わる議論を長きにわたって抑圧してきた。」

報告書「猿を怖がらせるために鶏を殺す:シンガポールにおける言論と集会の自由の抑圧」(全133ページ)は、シンガポール政府が言論と平和的な集会を抑圧するために適用している法律および規制についての詳細な分析から成る。(中略)

政府や司法を批判したり、宗教や人種問題について批判的見解を明らかにする個人は、刑事捜査や巨額の損害賠償請求訴訟に直面することが少なくない。

物言う個人に対する政府の絶え間ない嫌がらせは、活動家ロイ・ヌーン(Roy Ngerng)氏の被害が典型例だ。

ヌーン氏は政府の活動と政策を批判し、シンガポール社会の不平等に光を当てた人気ブロガーだった。氏は2014年の6カ月間に、まずリー・シェンロン首相に名誉毀損で訴えられ、仕事も解雇された。

その後、違法集会と公共喧騒で訴追されている。2016年の補欠選挙で野党候補者への支持を表明すると、選挙広告に関する「クーリングオフ」規定に違反しているとして警察署への出頭を命じられて徹底的に尋問された上に、警察は家宅捜査したり、氏の携帯電話を押収した。ソーシャルメディアのアカウントのパスワードも要求された。
ブロガー、漫画家、弁護士、そして外国メディアなども、シンガポールの司法制度を批判したために、名誉毀損訴訟に直面している。(中略)

シンガポールにおける抗議集会は、非常に厳格に制限されている。警察の許可がなければ、政治に全く関係のない集会でも、開催できるのはホング・リン(Hong Lim)公園の一角にある「スピーカーズコーナー」だけだ。

とはいえそこでも、何を話せるかについては細かい規則があり、外国人は話すどころか、そこにいることさえ禁じられている。

あるケースでは、活動家のJolovan Wham氏が訴追にかわる「厳しい警告」を受けた。彼が組織した香港の「雨傘革命」支援集会で、彼がその事前および最中に外国人は参加できないことを告知していたにもかかわらず、香港市民2人が集会に参加していたことが理由だった。

2016年後半に発せられた命令で、外国または多国籍企業は、警察の許可なしにスピーカーズコーナーでのイベントを支援することができなくなった。LGBTプライドのイベントである「ピンクドット2017」の協賛を多国籍企業10社が申請したが、却下されている。(中略)

ヒューマン・ライツ・ウォッチはシンガポール政府に対し、平和的な言論や集会に関連した訴追をすべて取り下げ、言論や集会の自由を制約する法や規制を改正または廃止して、これらを国際基準に合わせるよう強く求めた。

ロバートソン局長代理は、「シンガポールによる批判者の提訴や訴追は、長らくシンガポールに関する重要な報道・報告を制約してきた」と指摘する。「シンガポールの貿易相手国は、人権への考え方を近代化し、言論と集会の自由弾圧に終止符を打つよう政府に働きかけるべきだ。」【2017年12月13日 Human Rights Watch】
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【「リー・ファミリー」・与党支配体制にも変化】
こうした「リー・ファミリー」・与党による社会締め付けにもほころびが出始めています。
上記【リスク対策.com】記事後の2020年7月の総選挙では、更に野党が伸長しました。

*****与党、政権維持へ=野党の伸長許す―シンガポール総選挙****
(2020年7月)10日投票のシンガポール議会(定数93)選挙は即日開票の結果、与党・人民行動党(PAP)が83議席を確保し、1965年の独立以来続く長期単独政権を維持することになった。しかし、議席占有率は低下。野党・労働者党は改選前の6議席から、野党として過去最多の10議席に勢力を伸ばした。

新型コロナウイルスの感染拡大で経済が深刻な打撃を受ける中、PAPは選挙戦で「危機克服には有能な政権が必要だ」(リー・シェンロン首相)と実績や政権運営能力の高さをアピール。1人区とグループ選挙区で構成される計31区のうち28区で勝利し、改選前と同じ83議席を維持した。

労働者党は3区で計10議席を獲得。改選前の定数89から増えた4議席分を丸ごと奪った形となった。低所得者救済のため最低賃金制の導入を提唱するなど、格差解消を訴えて支持を伸ばした。【2020年7月11日 時事】
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国内政治に目を向けると、近年は変化の兆しが現れている。独立以降、「建国の父」リー・クアンユー元首相が築き上げたシンガポールの政治統治体制は、きわめて権威主義的で厳しい社会統制を伴うものであった。

しかし、この10年の間では緩やかに、そして確実に民主化の道を辿りつつある。リー・クアンユーの長男で現首相であるリー・シェンロンは脱世襲化を進め、その彼の引退が間近に迫る中で、建国以来の中心軸の1つであった「リー・ファミリー」への依存は、幕引きを迎えつつある。 

さらに国民の価値観も多様化が進む中で、シンガポールの政治は今後どのような動きを見せるのであろうか。【2023年12月19日 NIRA総合研究開発機構】
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【「官僚的継続性の体現者」と評される新首相】
今回の首相交代でシンガポールは繁栄を維持しつつ、時代の流れに対応できるのか?

****ローレンス・ウォン新首相誕生:シンガポールの繁栄は続くか?****
<20年ぶりの首相交代で「リー家の時代」が終わり、奇跡的な繁栄の持続には黄信号が点滅>

去る5月15日、シンガポールで20年ぶりに首相が交代した。いや、政権交代ではない。与党・人民行動党(PAP)の既定路線に従って72歳のリー・シェンロンが職を辞し、51歳で副首相兼財務相のローレンス・ウォンに首相の座を譲っただけのこと。

絵に描いたような世代交代劇だが、「リー家の時代」の終焉を告げる出来事でもある。
1965年の独立以来、この小さな都市国家(面積は東京23区より少し広い程度)を率いてきた「国父」リー・クアンユーは90年に首相職を辞し、腹心のゴー・チョクトンを中継ぎの首相に据えた。そのゴーは2004年に予定どおり職を辞し、国父の長男リー・シェンロンに首相の座を譲ったのだった。

今回の首相交代も、実は2年前から予告されていた。しかしリー家の3代目が次期首相となる予定はない。「Nikkei Asia」に寄稿した香港科技大学のドナルド・ロウ教授に言わせれば「シンガポール史上初めて、首相にも次期首相候補にもリー家の男がいない事態」となったのである。

では新首相ローレンス・ウォンとはいかなる人物か。5月6日の英エコノミスト誌とのインタビューでは「誰の意見にも耳を傾ける」と言いつつ、いざとなれば国家と国民の利益になる限り「どんなに難しい決断」も下すと言い切った。実際、コロナ禍では断固たる措置を取り、社会の高齢化に備えて消費税の引き上げに踏み切るなど、国民に不人気な施策も断行してきた。

また5月10日にはフェイスブックに「わが国は今後も、国民の集合的意思のみによって築かれた稀有な国であり続ける」と書き込み、「この奇跡を可能な限り持続させるのが私の使命」だとしている。

しかし前任のリー・シェンロンが首相となった04年当時に比べると、今のシンガポールは政治的にも経済的にも、そして社会的にも厳しい状況に置かれている。ちなみに20年前の状況も、決してバラ色ではなかった。97年にはアジア通貨危機があり、03年にはSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行があり、アメリカ主導の「対テロ戦争」のあおりも受けていた。

求められるのは革新性
一方、豪フリンダース大学准教授のマイケル・バーはオンライン誌「東アジア・フォーラム」への寄稿で、ウォンを「官僚的継続性の体現者」と評した。

そうした継続性は「行政に欠かせないもので、いい時代ならば政治的にも美徳とされる」が、あいにく今は「いい時代ではない。さまざまな課題を抱えた今のシンガポールに必要なのは官僚的継続性よりも大胆で新しい発想だ」。バーはそう指摘している。

経済に関しては、前任のリー・シェンロンがシンガポールを世界のトップクラスに引き上げた。IMFのデータによれば、この国の1人当たりGDPは04年時点で2万7610ドルだったが、今は8万8450ドル。この数字は日本の2.5倍であり、シンガポールと競り合う隣国マレーシアの6倍以上だ。

それでも国内では体制への不満が渦巻き、外交面では地政学的な嵐に見舞われている。数字で見る限り、この20年でこの国が途方もなく豊かになったのは事実。だが香港科技大学のロウが前掲の寄稿で指摘したとおり、「成長の代償として人口が激増し国民は不満を募らせ」ている。交通渋滞はひどいし、雇用や公共財をめぐる競争は激化し、住居費は高騰。移民の増加でシンガポール人のアイデンティティーも失われつつあるという。

シンガポール人の所得水準は確かに高いが、住居費や生活費の高さも突出している。住宅開発庁の公式統計でも、不動産の賃借料は過去20年で2倍以上になり、「世界で最も物価の高い都市ランキング」では常に上位に登場する。

一方で少子高齢化も進む。65歳以上の高齢者が総人口に占める割合は13年の11.7%から19.1%に増加しており、30年には25%に近づく見通しだ。出生率も昨年は0.97で、史上最低を記録した。

それでも新規の移民が多いから人口は増え続ける。00年段階の総人口は400万だったが、今は600万に迫る。こうなると公共サービスが追い付かないし、国民の意識もばらばらになる。中国からの移民が急増しているのも、政府にとっては懸念材料だ。

加えて、ウォン新首相は選挙にも勝たねばならない。与党PAPは65年の独立以来一貫して政権を維持しており、前回20年の総選挙でも93議席中83議席を獲得したが、得票率は15年の総選挙時から9ポイントも下がっていた。強権的で息苦しく、自由にモノを言えない現状に、若い世代が背を向けたせいだろう。

残る10議席を獲得したのは最大野党の労働者党で、当時の世論調査によれば、同党の支持者は21~25歳の年齢層で最も多かった。PAPと袂(たもと)を分かった新党「進歩シンガポール党」も、議席は逃したものの得票率は10%だった。

こうした結果を受けて、PAPは「心からの見直し」を口にしたが、実際には今まで以上に政府批判を封じる仕組みを導入した。オンライン上の「虚偽情報および世論操作」や「外国からの干渉」を防ぐ法律の制定などだ。

次の総選挙が決め手
新首相を待つ最初の試練は次の総選挙だ。現議会の任期満了は来年の11月だが、今年8月の独立記念日後、早ければ9月にも議会を解散して民意を問う可能性がある。(中略)

国外に目を転じれば、新首相を待つ地政学的な環境は一段と厳しい。ロシアの仕掛けたウクライナ戦争やイスラエルによるガザ侵攻、米中間の経済戦争があり、過去60年にわたるシンガポールの経済的繁栄を支えてきた国際秩序の崩壊もある。いずれも、シンガポールの「奇跡」の経済を維持・発展させるには好ましくない環境といえる。

それでもPAP政権は、こうした国際的な悪条件を巧みに乗り越えてきた。中国ともアメリカとも特別な関係を築いてきたし、それは今後も続くだろう。

とはいえ、不安定さを増す2つの大国の間でバランスを保つことは一段と難しくなっていく。中国系移民の発言力が増していることもあり、新首相は国内でも微妙な舵取りを迫られる。
果たして新首相は国内外の荒波を乗り越えられるか。勝てば歴史に名を残せるが、失敗すればいわゆる「仮置き」の首相で終わることになる。【5月20日 Newsweek】
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「官僚的継続性の体現者」では、社会・政治の自由拡大にはあまり期待できないかも・・・・。
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イラン  大統領の事故死 次期最高指導者の死という側面の影響が大 進む革命防衛隊による権力独占

2024-05-20 22:08:01 | イラン

(イラン国営メディアが提供したライシ大統領搭乗のヘリ【5月19日】 出発時は天候には問題なかったようです)

【ライシ大統領の事故死は「悪天候が原因だ」として、イスラエル関与など政治的主張は否定する構え】
周知のようにイラン・ライシ大統領がヘリコプター事故で死亡しました。

****イラン大統領、ヘリで事故死=山間部に墜落、外相も同行****
イラン北西部の東アゼルバイジャン州で19日、ライシ大統領(63)やアブドラヒアン外相らを乗せたヘリコプターが山間部に墜落し、国営メディアによると、ライシ師ら搭乗者全員が死亡した。イラン最高指導者ハメネイ師は20日、ライシ師ら犠牲者に哀悼の意を示すとともに、5日間の国民服喪を宣言した。

イランの憲法の規定では、大統領が在職中に死去などで不在となった場合、第1副大統領が最高指導者の合意を得て大統領の職務を代行する。ハメネイ師は、ライシ師に任命された保守強硬派のモフベル第1副大統領が代行を務めると明らかにした。次の大統領選挙の日程は未定だが、規定により50日以内に実施される。

ハメネイ師は事故発生後の19日、「国政が混乱することはなく、心配する必要はない」と国民に平静を呼び掛けた。国営メディアはライシ師の死亡発表後、同師をたたえる映像を繰り返し伝えつつ、「国家の運営に全く問題はない」と報じた。在任中の大統領が事故死する異例の事態で、国民の間に動揺が広がるのを抑える思惑があるとみられる。

イラン政府は20日に緊急の閣議を開き、今後の対応を協議したもようだ。中東情勢のカギを握るイランで、行政をつかさどる大統領と対外的な顔である外相が同時に死亡したことで、内政や外交に影響が及びそうだ。国営メディアによれば、外相代行にはバゲリ外務次官が就く。

ライシ師やアブドラヒアン氏は19日にアゼルバイジャンとの国境地帯を訪れ、ダムや発電所の完成式に出席。その帰途に事故に遭った。バヒディ内相は、墜落は「悪天候が原因だ」と指摘。ライシ師らの遺体は北西部タブリーズに搬送されたという。 
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イスラエルとの攻撃の応酬もあった緊張状態での事故だけに、巷ではイスラエルの関与を主張する声もあったようですが、イラン政府は墜落は「悪天候が原因だ」として、事故が政治問題化しないように配意しているようです。

中東情勢に大きな影響力を持つ・・・と言うか、混乱の中心でもあるイランの現職大統領の突然の死亡ですから、今後の中東情勢にも大きな影響を与えるのは間違いないでしょうが、ライシ師が独裁的に物事を決めていたわけでもなく、あくまでも強固に構築されたイラン政治体制の中で大統領としての役割を担っていた訳ですから、「国家の運営に全く問題はない」(国営メディア)というのは基本的には間違ってはいないでしょう。

ただ、当然に、権力者の個性(ライシ師の場合は保守強硬派としての立場)は内外政治に影響しますので、次の大統領選挙で誰が選出されるかは注目されます。

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米国政治に詳しい早稲田大学 中林美恵子教授
「イランが政治的にどうなるのかということは、イスラエルにも影響してくることですし、ひいてはアメリカにも影響してくるということですので、次のリーダーシップがどうなるのかということが非常に重要なポイント。

非常に強硬的な人たちが間違った判断を起こす可能性もあるし、イスラエルが何か企んだのではないかということをこの件にかかわらず、様々な件で述べてくると、そのことによって求心力をなんとか作り出そうというような動きがないとも限りませんので、非常に緊張を持って見守らなければならない」【5月20日 テレ朝news】
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【「現職大統領の死」ということと、同じぐらい、あるいは、それ以上に「次期最高指導者候補者の死」ということの意味合いが大きい】
ライシ師の死亡は、「現職大統領の死」ということと同じぐらい、あるいは、それ以上に「次期最高指導者に最もちかいとされていた人物の死」ということの意味合いが大きいように思います。

イランの政治体制ではトップは大統領ではなく最高指導者とされていますので(もちろん、その力関係は個人的資質・基盤、政治環境によって異なりますが)、高齢(85歳)の現行最高指導者ハメネイ師及び保守強硬派から次期最高指導者として嘱望されていたライシ師の死は、今後のイラン政治にとって極めて大きな影響を与えます。

ライシ師は早くから「次期最高指導者」が期待されていました。下記は22年4月の記事。

*****イランの次期最高指導者がその時を待つ****
いくつかの兆候が、イランの次期最高指導者にイブラヒム・ライシ大統領が選出される可能性が高いことを示している。

現最高指導者(アヤトラ)アリ・ハメネイ師の手口は常に、国の政治的・経済的問題の責任を、政治的スペクトルを超えて歴代大統領に向けることに集約されてきた。

他の高官を非難することで、ハメネイ師は説明責任と遂行責任から逃れようとしているのだ。いわゆる穏健派のハサン・ロウハーニー氏、改革派のモハンマド・ハータミー氏、強硬派のマフムード・アフマディネジャド氏ら、前大統領がその対象となってきた。

しかし、ハメネイ師はライシ師に関しては異なるアプローチをとっている。ロウハーニー大統領時代の核交渉を頻繁に批判していたハメネイ師が、最近、強硬派政権との会談でライシ師を支持したのは意外な動きだった。

ハメネイ師は、ライシ政権の努力は「誠実で勤勉」であり、核交渉は「適切に進んでいる」と発言した。また、「これまでのところ、我々の交渉団は相手の過剰な要求を前に抵抗している。神のご意志により、その抵抗は続くだろう」とも述べた。(中略)

核協議以外でも、このイランの最高指導者は他の分野でもライシ師を評価している。司法長官らとの会談で、ハメネイ師はこう述べた。「ライシ師は、我々が常に提唱する、『良い結果を得るために日夜努力』している聖戦運動の顕著な例であった」

さらに、ハメネイ師は、ライシ師が「司法に対する国民の希望を蘇らせた。これは、この国にとって大きな社会的富となる……我々は、サイード・イブラヒム・ライシ師がイラン最高裁長官だった2年以上の間の、その不断の努力を称えなければならない」と付け加えた。

数年前から、政権がライシ師をイランの次期最高指導者に育てようとしていることは指摘されていた。
例えば、ライシ師は2017年に大統領選に出馬し、政権は彼が勝つことを期待していた。

しかし、この神権体制はいくつかの間違いを犯している。上院にあたる監督者評議会は、ロウハーニー政権の経済運営の失敗や、同大統領が人々の社会的、政治的、宗教的自由を改善するという選挙公約を達成できなかったことから、国民が彼の続投を支持する可能性は低いと考えたのか、この穏健派候補の出馬を承認した。

多くの一般イラン国民にとって、大統領選挙は、悪いか、より悪いほうか、の選択であった。その結果、彼らは強硬派のライシ師を勝たせないために、いわゆる穏健派のロウハーニー氏に票を入れた。ロウハーニー氏は、ライシ師の38.5%に対し、57%の票を獲得し、大差で勝利した。

次の選挙では、政権は教訓を生かし、監督者評議会は「すべての候補者は40歳から70歳までで、少なくとも修士号またはそれに相当する学位を持ち、管理職として少なくとも4年の職務経験があり、犯罪歴がないこと」と発表するなど、多くの制限を設けた。

監督者評議会は、ライシ師の大統領就任を妨げる障害を取り除くために、アリー・ラリジャニ氏のような政権トップの重鎮でさえ候補失格とした。

注目すべきは、ライシ師が、このイスラム共和国が次期最高指導者に求める人物像に合致していることだ。

ライシ師の政策は、イスラム革命防衛隊(IRGC)とその精鋭部隊であるコドス部隊の政策に合致している。彼はおそらく、国内と地域でIRGCがより大きな力を振るうことを認めるだろう。

マジッド・ラフィザデ博士(ハーバード大学で学んだイラン系アメリカ人の政治学者)
第一に、彼は残忍な力を行使し、反対勢力や政権に立ち向かう人々を取り締まることにためらいがない。例えば、テヘラン副検察官時代には、世界最大級の大量処刑に関与した。

米国の超党派の議会決議は最近、子どもや妊婦を含む数千人が処刑されたこの大虐殺の範囲と、その性質を取り上げている。同決議によれば、「1988年の4カ月間に、イラン・イスラム共和国政府は、数千人の政治犯と多くの無関係な政治団体に対する、野蛮な大量処刑を行った。NGO団体イラン人権ドキュメンテーション・センターの報告によれば、この虐殺は当時の最高指導者ホメイニ師が出した宗教上の命令、ファトワに従って行われた」とあり、処刑は主に反対派であるイラン国民抵抗評議会のメンバーが標的となった。

第二に、ライシ師の政策は、イスラム革命防衛隊(IRGC)とその精鋭部隊であるコドス部隊の政策に合致している。彼はおそらく、国内と地域でIRGCがより大きな力を振るうことを認めるだろう。

まとめると、ライシ師はハメネイとIRGCの幹部によって、イランの次期最高指導者に選ばれた可能性が高いということである。(後略)【2022年4月22日 ARAB NEWS】
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【お飾り最高指導者で進むことが想像される革命防衛隊の権力独占】
一方でイランの政治権力は最高指導者から革命防衛隊に移りつつあります。
ライシ師は革命防衛隊にとっても考えの近い候補者でした。

****イランの次の最高指導者は誰に? カギ握る革命防衛隊****
英エコノミスト誌5月25日号の解説記事‘Who will be Iran’s next leader’は、いずれイランの最高指導者の交代があるだろうが、革命防衛隊が実質的な権力を握って専制政治を敷くであろう、とする予測を示している。要旨は次の通り。

*   *   *
(英エコノミスト誌記事)
誰が最高指導者ハメネイ師の後継者となるのか、果たして中東の最後の神権政治が生き残れるのか誰も分からない。信心深いイラン人ですら神権政治に対する信頼を失い始めている。

ハメネイ師の後継者としてハメネイ師よりさらに宗教的権威が劣る2人の有力候補がいる。一人は、保守強硬派で現大統領のライシ師、もう一人は、ハメネイ最高指導者の次男のモジュタバ師である。

1989年にハメネイ師を最高指導者に任命した時と大きな違いは、革命防衛隊が大きな力を持っていることである。革命防衛隊は、聖職者より優位にいる。過去30年間、ハメネイ最高指導者は、革命防衛隊を利用して宗教界のライバルを押しのけ、民衆の抗議デモを排除して権力を掌握してきた。

今後、革命防衛隊は最高指導者をお飾りにしてしまうように思われる。その意味で、ライシ師は革命防衛隊にとりピッタリの人物と言える。恐らく革命防衛隊は権力を掌握し、「聖職者による支配」を有名無実化するが、今と同様な専制政治体制を敷くだろう。しかし、体制に対して不満な中産階級をこれ以上刺激しないだろう。

対外政策は強硬なままで、核武装に走るだろうが、ペルシャ湾地域での米国のプレゼンスに反対しつつも、「大悪魔(米国)」と協議することにはより柔軟だと思われる。

一部の専門家は、革命防衛隊は服装や飲酒に対する自由をより認める新たな社会契約を国民と結ぼうとするのではないかと考えている。国民はこのような社会契約を喜ぶであろうが、しかし、政治的な自由はこれまで以上に制限されるであろう。

ハタミ元大統領やムサヴィ元首相といった真の改革派は、革命防衛隊や聖職者が支配する体制ではなく、非宗教的な市民社会を実現しようとするであろう。

*   *   *
(論評)
これは大変良い分析である。ホメイニ師のようなカリスマと宗教的な権威に欠けるハメネイ最高指導者が宗教界を抑え、権力を掌握するために革命防衛隊を利用した結果、革命防衛隊の力が強くなり過ぎ、次期最高指導者は、お飾りとなり、実権を革命防衛隊が握って、専制政治を行うというシナリオは説得力がある。

革命防衛隊のメンバーの国会議員の占有率は約4分の1であるのに対して、聖職者の比率は11%である由である。1980年には、それぞれ6%と52%だったのが大きく逆転している。

これは、革命防衛隊の聖職者に対して優位に立ったことをよく表している。イラン経済についても、その30%を革命防衛隊が支配しているといわれている。

革命防衛隊が権力を握れば、国内的には、服装や飲酒の規制を緩めてイラン国民を惹きつけるだろう。対外政策は強硬で、特に「核武装しない」とのハメネイ師のファトワ(宗教指導者の命令)を廃止して核武装を進めるが、その一方で米国とも交渉することがあり得るかもしれない。

もっとも、現実には、革命防衛隊内には筋金入りの強硬派が少なくないと思われ、革命防衛隊にそのような現実的な対応ができるかどうかは、革命防衛隊内部の統制がどれだけ取れているかに掛かっているのではないか。しかし、革命防衛隊の内部は部外者にはブラックボックスであり、部外者には皆目分からない。

とはいえ革命防衛隊も不人気
一つ付け加えると、イスラム革命から40年以上が経過し、イラン国民が「聖職者による支配」に飽きているのと同様に、革命防衛隊も国民の間で不人気なのは間違いない。

去年(2022年)のスカーフ・デモが典型だが、国内で反政府デモが起きると鎮圧の先頭に立つのは革命防衛隊だ。そして、イスラム革命体制下で聖職者と革命防衛隊は様々な特権を有しているのにも関わらず両方ともリクルートに苦労しており、国民の間での不人気ぶりを物語っている。

なお、改革派について言及があるが、今となっては、改革派が勢力を盛り返すチャンスは、ほとんどない。革命防衛隊が権力を掌握し、服装や飲酒の規制を緩めれば、大多数の国民はそれで満足してしまうからである。【2023年6月23日  WEDGE】
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そしてライシ師が亡くなった現在、残るのはハメネイ最高指導者の次男のモジュタバ師

****次期最高指導者は世襲?****
ライシ師の不在は、今年推定85歳のハメネイ師の後継問題にも影を落とす。英誌エコノミスト(電子版)は、次期最高指導者の有力候補はライシ師を除けばハメネイ師の息子のモジタバ師しかいないとする一方、モジタバ師が跡を継げば革命体制が批判してきた世襲という矛盾が生じると報じた。【5月20日 産経】
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“革命体制が批判してきた世襲”・・・それはライシ師という別の弾があるときの話で、モジタバ師しかいなければ革命防衛隊も問題にしないでしょう。

ただそうなると、超軽量級で政治経験のない最高指導者ということで、その存在は完全に“お飾り”となり、革命防衛隊による権力独占はライシ師の場合よりも顕著に進むでしょう。実質的に最高指導者によるイラン神権政治も終わりを迎えるでしょう。

【改革派・保守穏健派が勢力を盛り返すチャンスは・・・ほとんどない】
保守強硬派のトップ死亡ということでは、一般的には改革派とか保守穏健派が勢いづくこともあり得ますが、現在のイランではそうした事態はなかなか想像できません。

監督者評議会が大統領・議員の出馬資格を厳しく制限している現行政治システムでは改革派・保守穏健派の拡大は見込めません。

選挙で権力に近づけないなら、「革命」を含むその他の方法で・・・という話にもなりますが、今のイランにそうした熱気が存在しているようには思えません。

「革命」などの抵抗運動には、自身の死をも覚悟する必要がありますが・・・・
“革命防衛隊が権力を掌握し、服装や飲酒の規制を緩めれば、大多数の国民はそれで満足してしまう”、政治的不自由は受入れてしまう・・・というのがイランの実情ではないでしょうか。
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世界各地で相次ぐ大雨・洪水被害 気候変動の一環か?

2024-05-19 23:38:18 | 環境

(【4月18日 プライムオンライン】4月16日の記録的豪雨で冠水したドバイ国際空港)

【ここひと月、世界各地で相次ぐ大雨・洪水被害】
災害というものは世界中のあちこちで普段に起きているもので、いくつかの災害がおきたからと言ってそれをすぐに長期的現象、温暖化に伴う気候変動に結びつけるのはやや短絡的でしょう。

そうではあるものの、ここ1か月ほどで目にする世界各地の大雨・洪水のニュースはやはり多いような気もします。

東アフリカのケニア・タンザニアでは・・・

****ケニアで大雨続く 約100人死亡 13万人が避難****
アフリカ東部のケニアでは数週間にわたって大雨が続き、堤防が決壊するなどしてこれまでに約100人が死亡し、13万人が避難しています。

地元メディアなどによりますと、ケニア南部のナクル郡では29日、堤防が決壊し少なくとも45人の死亡が確認され、数十人が行方不明となっています。また、南部タナリバー郡では28日、20人ほどが行方不明になっています。

ケニアでは3月以降、大雨と洪水が続いていてこれまでに約100人が亡くなり、13万人以上が避難しています。

東アフリカではタンザニアでも洪水により、少なくとも155人が死亡しています。【4月30日 ANNニュース】
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****タンザニア、洪水で155人死亡 家屋1万棟損壊****
アフリカ東部タンザニアのマジャリワ首相は25日、洪水で155人が死亡、236人が負傷したと明らかにした。1万棟を超える家屋が損壊し、被災者は20万人にのぼるという。

マジャリワ氏は議会で「エルニーニョによる強風を伴う大雨で国内各地で洪水や地滑りが発生し、被害が出た」と説明。農作物や家屋、また道路や橋、鉄道といったインフラにも被害が出たという。

隣国ケニアでも洪水が発生した。国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、23日時点で32人が死亡した。

同国では先月中旬から大雨が降っていたが、ここ1週間の豪雨で被害が拡大。大規模な洪水で約10万3500人が被災した。

ケニア赤十字は先月から188回を超す救助活動を行ったという。首都ナイロビでは24日、一部の道路が通行止めとなり、浸水被害が続いている地区もある。鉄道も全国で運休となっている。【4月26日 CNN】
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南米ブラジルでは・・・

****ブラジル南部の洪水、死者100人・不明130人…大統領「人類全てに対する地球からの警告だ」****
ブラジル南部リオグランデドスル州政府は8日、同州を襲った豪雨で死亡した人が100人に上ったと発表した。130人が行方不明となっており、犠牲者がさらに増える可能性がある。

豪雨は4月末から猛威を振るい、州政府の発表によると、16万人以上が家を追われ、停電や断水などの影響を受けた住民は147万人を超えた。豪雨による洪水で橋や建物が破壊され、道路は川のようになった。空港も冠水し、閉鎖された。ブラジルの全国地方自治体連合は7日、同州の経済損失が46億レアル(約1405億円)以上に上るとの推計を発表した。

ルラ・ダシルバ大統領は8日、「私たち人類全てに対する地球からの警告だ」と訴えた。世界気象機関(WMO)は、異常気象を引き起こす「エルニーニョ現象」による海水温上昇が今回の豪雨を引き起こしたとする見解を示している。【5月9日 読売】
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砂漠の国・中東ドバイでは空港が冠水。

****UAEなどで暴風雨、ドバイ空港が冠水 「過去75年で最大」の降水量で死者も****
アラブ首長国連邦(UAE)とオマーンが16日、暴風雨に見舞われ、死者が出た。鉄砲水が発生したほか、世界で2番目に利用者の多いドバイ国際空港でフライトの欠航や遅れが相次ぐなど混乱が生じた。

ドバイ国際空港の関係者は、「非常に厳しい状況」に直面していると説明。一帯が浸水しているため空港に向かわないよう利用予定者らに呼びかけた。

ドバイでは死者は報告されていないが、UAE北部のラスアルハイマでは男性1人が、乗っていた車が鉄砲水に巻き込まれて死亡した。

隣国オマーンの町サハムでは、救助隊が少女1人の遺体を発見した。同国では14日からの大雨で多くの死者が出ており、これで19人となった。

当局は今後さらなる雷雨や大雨、強風が予想されると警鐘を鳴らした。また、多くの低地がいまも水没したままだとした。

UAEは16日、75年前の記録開始以来最大の降雨に見舞われた。
国立気象センターの発表によると、アル・アイン地方のハトム・アル・シャクラでは24時間以内に254.8ミリの雨が降った。

UAEの年間平均雨量は140~200ミリ。ドバイの年間平均雨量はわずか97ミリで、4月の平均雨量は8ミリ。

ドバイ中心部を捉えた映像では、シェイク・ザーイド・ロードの一部が浸水し、数十台の車両が水没しているのがわかる。12車線ある高速道路で渋滞も起きている。

UAEの国家緊急危機災害管理局は、市民に対し、暴風雨に見舞われる前に自宅にとどまるよう警告していた。政府もまた、職員に在宅勤務を指示し、私立学校には遠隔授業に切り替えるよう勧告していた。(後略)【4月18日 BBC】
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貧困に苦しむアフガニスタンでも洪水が追い打ち。

****アフガン、洪水で300人超死亡 WFP発表****
国連の世界食糧計画は11日、アフガニスタンの複数の州で大雨により洪水が発生し、300人以上が死亡したと発表した。当局は非常事態を宣言し、行方不明者の捜索・救助活動を急いでいる。

大雨のため川の水位が上昇し、村や農地は泥に覆われた。アフガンでは貧困の割合が多く、国民の多くは農業に依存している。

北部バグラン州は最も深刻な被害に見舞われ、WFPアフガニスタン事務所の広報官は、「現時点で311人が死亡し、家屋2011棟が全壊、2800棟が損傷を受けた」とAFPに述べた。【5月12日 AFP】
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更に中部でも再び洪水が発生

****アフガニスタンで洪水の被害続く 中部周辺で新たな洪水で少なくとも68人死亡****
アフガニスタン中西部で大雨による洪水が発生し、これまでに少なくとも50人が死亡しました。アフガニスタンでは今月10日にも北部で洪水があり、300人以上が死亡しています。

アフガニスタン中西部のゴール州では17日から大雨が降り、洪水が発生しました。AP通信などは地元当局の話として、この洪水で少なくとも50人が死亡したと伝えています。また、これまでに2000棟の家屋が全壊したほか、4000棟の家屋が部分的に壊れる被害が出ているということです。

一方、隣接する北部ファルヤブ州でも、洪水により18人が死亡しました。

アフガニスタンでは今月10日も北部で大雨による洪水が発生し、300人以上が死亡するなど、全土で水害が相次いでいます。【5月19日 TBS NEWS DIG】
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【昨年の世界気温は史上最高を記録】
やはり多すぎるように思えます。昨年は日本でも猛暑でしたが、世界的にも記録的な高温となり、各地で山火事も相次ぎました。

****地球温暖化の限界迫る 2023年の世界気温、史上最高を更新*****
欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービスは9日、2023年の世界の平均気温が産業革命前に比べて1.48度上昇し、観測史上最高を記録したと発表した。

23年の世界平均気温は14.98度となり、これまでの最高だった16年の記録を0.17度上回った。世界の海洋温度も記録を更新した。

23年は世界各地で相次ぎ記録的な猛暑が観測され、気温上昇を1.5度に抑えるという15年のパリ協定の限界に近付きつつあるとして、専門家が警鐘を鳴らしていた。

コペルニクス気候変動サービスによると、地球温暖化は今年に入ってさらに悪化した可能性があり、1月または2月までの12カ月間では1.5度を突破する可能性が大きいと予想している。

専門家がそれ以上に懸念しているのは、1.5度以上の温暖化が長期的に続く状況だ。そうなれば地球上の多くの生態系にとって順応が難しくなり、人間が生存できる限界に近付く場所もある。

コペルニクス気候変動サービスによれば、23年の前例のない猛暑は主に気候変動が原因だが、太平洋の海面水温を上昇させる自然現象のエルニーニョによって加速された。

23年は全日の世界平均気温が、産業革命前の1850~1900年の同じ日の気温を1度以上上回った。観測史上初めての現象だった。

世界の気温は1970年代から着実に上昇を続け、2015年には初めて1度を突破する温暖化を記録した。さらに0.5度上昇するまでわずか8年しかかからなかった。

気温が高かった過去30年に比べても23年は突出しており、平均気温は1991~2020年の平均を0.6度上回った。

世界の平均気温は、オーストラリアを除く全大陸と海盆で史上最高またはほぼ最高を記録した。そうした気温の上昇は、ほぼ全世界を覆っていた。

記録的な熱波の影響で、カナダ、ハワイ、欧州南部など各地で大規模な山火事が発生。「パリ協定の上限に近付いた激動の気候を我々に見せつけた」と英インペリアル・カレッジ・ロンドンのブライアン・ホプキンズ氏は述べ、「世界中の大半の政府の行動にみられる自己満足を揺るがすだろう」と指摘する。

23年は世界の海洋も異常な温暖化が続いた。海面温度は1991~2020年の平均より0.44度上昇。上昇幅は観測史上最高を記録し、史上2番目だった2016年の0.26度上昇を大幅に上回った。

海洋の異常な温暖化は、長期的には化石燃料による大気汚染が主な原因だが、昨年7月に始まったエルニーニョも影響している。海面温度が上昇すれば、ハリケーンや台風、熱帯サイクロンの勢力が強まる。

昨年12月にはアラブ首長国連邦ドバイで開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)に約200カ国が出席し、化石燃料からの脱却に向けて貢献することで初めて合意した。この合意は広く歓迎される一方で、化石燃料の主要生産国がほとんど行動を起こさずに済む抜け穴があるとの批判も出ている。

「もし我々が気候リスク管理を成功させたいと望むなら、経済の脱炭素化を急ぐと同時に、気候データや知識を活用して未来に備える必要がある」とコペルニクス気候変動サービスのカルロ・ブオンテンポ氏は指摘している。【1月10日 CNN】
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【長期的な気候変動との関連は不明だが、もしこうしたことが続くようなら世界は甚大な影響を受ける】
温暖化とエルニーニョで海洋温度が上昇すれば、水蒸気の発生量・降雨にも影響してきます。

****世界中で豪雨や洪水、なぜ起きているのか*****
東アフリカや中東の砂漠など予想外の場所が異例の豪雨に見舞われている

アフリカ東部ケニアや南米ブラジルでダムが決壊し、中国南部の山の斜面を高速道路が滑り落ちる。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで砂漠の空港の滑走路が冠水し、オーストラリアの採掘場に洪水が押し寄せる。世界の多くの場所が水浸しになっている。

ここ数週間に世界各地を襲った異常な豪雨と死者が出るほどの洪水は、場所からみても威力からみても予想外だった。

インフラがこうした大氾濫に備えていないこともあり、猛烈な雨は複数の大陸で死者を出し、破壊や大規模な避難を引き起こしている。

この強力な豪雨は、世界の平均気温が2023年に観測史上最高を記録したことで自然の気象パターンが過剰に加速された結果だと言える。

地球の気温が上昇するにつれて降雨量も多くなる。簡単に言うと、大気が暖まるほど、空中に保持できる水蒸気が増えるためだ。

1年にわたる記録的な世界の暑さとそれに伴う豪雨が、統計上の一時的な変動に過ぎないのか、それとも温暖で多雨な未来に向けて軌道修正する必要があるのか、科学者にもまだ分からない。後者ならば、国のインフラが試され、保険の料率が上がり、世界の食糧生産が複雑化することになる。

気象学者や気候科学者によると、4月の豪雨や洪水はいずれも特定の厳しい気象条件が重なって暴風雨が発生した結果だ。

降雨量は尋常ではないという。米国立気象局の気象予報センターによると、例えば、東アフリカ諸国では4月に約100~500ミリの雨が降り、地域によっては通常雨量の6倍にもなった。

集中豪雨は大惨事を引き起こしかねない。ケニアの首都ナイロビでは7日間で約300ミリの雨が降り、ダムが決壊したうえ、町は泥に埋まった。市街地の道路は川のようになり、死者が出た。

ドバイはたった1日で250ミリ以上の雨が降った。少なくとも1年分に相当する降雨量となり、ドバイ国際空港の滑走路は水につかった。

中国南部・広東省では4月の月間雨量が過去最高の430ミリに達した。1日には山間部で高速道路の一部が崩落し、48人が死亡した。広東省は1億2700万人の人口と中国のテック大手や製造業大手を擁するが、その大半は南部の海岸沿いに位置している。

ブラジルは南部のリオグランデドスル州に軍隊を派遣した。24時間に150ミリ超の豪雨に見舞われ、大規模な洪水被害が出ている。

「このような事象は以前より頻度が高く、極端な降雨量で発生している」。米海洋大気局(NOAA)のチーフ・サイエンティスト、サラ・カプニック氏はこう指摘する。「ドバイのように雨が多そうだと思われない場所でも起きるので、なおさら不意を突かれる」

異常な降雨
予期せぬ強力な豪雨が世界各地を襲っている

先月の東アフリカの洪水は3月~5月の雨期に発生したが、実際の雨量はその年によって異なる。今回は「インド洋ダイポールモード」と呼ばれる気象パターンにより、雨量が増幅されている。

これには正と負があり、正のダイポールモード現象が発生すると、温かい海水をアフリカ東岸に押し流す。一方、負のモードが発生すると、温かい海水が逆方向に押し戻され、オーストラリアやインドネシアに向かう。

今年はダイポールモードが例年より強く、ケニアなどインド洋の西側地域で大雨が降る要因になっている。英大学インペリアル・カレッジ・ロンドンの気候科学者で、欧米大学・研究機関の科学者による団体「ワールド・ウェザー・アトリビューション(WWA)」のメンバーであるジョイス・キムタイ氏はそう話す。【5月8日 WSJ】
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“1年にわたる記録的な世界の暑さとそれに伴う豪雨が、統計上の一時的な変動に過ぎないのか、それとも温暖で多雨な未来に向けて軌道修正する必要があるのか、科学者にもまだ分からない”とのことなので軽々な結論は控えるべきでしょうが、何やら地球が逆戻りできない方向に進んでいるような不安も感じます。
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中国製品の流入 米では高関税など中国叩きが大統領選挙で加速 欧州は報復や切り離しの影響を懸念

2024-05-18 21:09:10 | 経済・通貨

(中国の「新三大」製品(EV(黒)リチウムイオン電池(ピンク)太陽光パネル(黄色))が輸出の急成長を牽引 最近、価格下落に伴い輸出額が減少している。【5月9日 Bloomberg】)

【アメリカ 中国製EVや太陽光発電などの関税を2〜4倍に】
アメリカはかねてより「中国は補助金などで不当に安価な製品を生産し、国内内需で吸収しきれないので、そうした商品を海外に輸出し、海外の製造業はその被害を受けている」という“生産能力過剰論”で中国を批判しています。

そして具体的政策対応として、EVに対する現行25%の関税を4倍の100%に引き上げるなどの関税引き上げによる国内産業保護を打ち出しています。

****米、中国製EVや太陽光発電などの関税を2〜4倍に 不公正貿易に対抗、国内産業を保護****
バイデン米政権は14日、国内産業の育成や保護のため、中国製の電気自動車(EV)や太陽光発電の関連品、鉄鋼などに対する関税を2〜4倍に引き上げると発表した。経済や安全保障上の重要産業に絞り、「不公正な貿易慣行」を続ける中国の安価な製品が流入することを阻止する。バイデン大統領が指示した。

バイデン政権は、不公正貿易と見なす相手国への制裁を定めた米通商法301条などに基づき、現行25%の中国製EVに対する制裁関税を年内に4倍の100%にする。鉄鋼とアルミニウムの製品に関しても年内に現行の0〜7・5%を25%に引き上げる。

今回の措置は、米政権が育成に注力するクリーンエネルギー関連産業にも及んだ。EV向けリチウムイオン電池の関税を7・5%から25%に、太陽光発電の関連品は25%から50%に引き上げる。

関税を強化する理由については「中国が人為的に低価格製品を世界市場にあふれさせている」と指摘。中国政府の産業支援による過剰生産によって、安価な中国製品が米企業に与える悪影響に対応する措置だと説明している。

また、知的財産の窃取などを踏まえ、「中国の不公正な貿易慣行が米国の企業や労働者を脅かしている」と厳しく批判。米国のサプライチェーン(供給網)を維持していく上でも、制裁関税で米国の企業活動を保護する必要性を強調した。

リチウムイオン電池の材料となる重要鉱物の天然黒鉛(グラファイト)は0%から25%にする。黒鉛は世界生産の8割超を中国が占めるといわれる。中国依存を回避し、米国内の供給網を強化する狙いがある。供給網の脆弱性が問題視された半導体に関しては税率を25年までに25%から2倍の50%に強化する。

米通商法301条を巡っては、対中貿易赤字を問題視したトランプ前政権が2018年に中国からの輸入品に制裁関税を発動し、米中が報復関税を実施する貿易戦争に発展した。【5月14日 産経】
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中国は、自国産業の競争力は補助金ではなくイノベーション(技術革新)によるものだと主張し、その中国製品を意図的に締め出そうとするのは「露骨な保護貿易主義」に他ならないとアメリカを批判しています。

****中国、生産能力過剰論に反論 米欧の「露骨な貿易保護主義」*****
中国商務省の報道官は16日、中国の生産能力が過剰との米欧の主張について「露骨な貿易保護主義」であり、中国の新エネルギー製品輸出を抑圧すれば、国際的な気候変動対策が頓挫すると述べた。

同報道官は「ある国に必要以上の生産能力があるという理由だけで過剰生産能力のレッテルを貼ることはできない」とし「生産と消費はグローバルなものであり、需要と供給はグローバルな視点で一致し、調整される必要がある」と述べた。

米国のバイデン政権は14日、中国の新エネルギー車(NEV)に対する関税を4倍に引き上げるなど、対中関税の大幅な引き上げを発表した。

同報道官は「新エネルギー製品の需要は現在のグローバルなグリーントランスフォーメーションで引き続き拡大する見通しだ」と指摘。中国はグリーン技術で優位な立場にあるが、世界の航空機市場はボーイングとエアバスが寡占していると述べた。

国際社会が2030年までにカーボンニュートラル(炭素中立)を達成するには、世界のNEV販売を増やす必要があるとも主張。

「関係国は自らの競争力と市場シェアを心配している」とし「過剰なのは生産能力ではなく、不安だ」述べた【5月16日 ロイター】
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【中国叩き・国内労働者保護を競うバイデン・トランプ大統領候補】
中国の主張には説得的なものもありますが、アメリカは大統領選挙を控えて、中国叩き・国内労働者保護をバイデン・トランプ両氏が競い合う状況になっています。

****米バイデン大統領 対中国関税強化で米国内の製造業保護の姿勢を鮮明に****
(中略)
バイデン大統領「本日、新たな対中関税を発表するのは、(中国の)不公正な貿易慣行によってアメリカの労働者が制約されないようにするためだ」

バイデン大統領は、中国政府があらゆる産業に多額の補助金を出し、過剰生産を進めて不当な低価格で市場に流通させることで「世界中の企業を廃業に追い込んだ」と非難し、「アメリカではそうはさせない」と強調しました。(後略)【5月15日 テレ朝news】
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****バイデン政権の対中関税引き上げ不十分、拡大すべき=トランプ氏****
トランプ前米大統領は14日、「中国はわれわれを食い物にしている」とし、バイデン政権による対中関税引き上げについて、電気自動車(EV)などだけでなく、その他の幅広い中国製品も対象にすべきという認識を示した。

バイデン大統領は、EVや半導体、医療用製品など中国からの輸入品に対する関税を大幅に引き上げると発表した。11月の大統領選を控え、米中対立のリスクを冒して有権者の支持拡大を図る。

トランプ氏は、バイデン政権が維持してきた対中関税は自身の功績によるものとした上で、バイデン大統領が対中関税強化で後手に回ってきたと批判した。

トランプ氏は11月の選挙で再選を果たせば、全ての中国製品に対し60%超の関税、その他全ての国からの製品に一律10%の関税を課す考えを示唆している。【5月15日 ロイター】
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“11月の大統領選に向け、トランプ前大統領が掲げる全輸入品への一律10%の関税上げは「家計のコスト上昇を招くだろう」と切り捨てた。”【5月15日 時事】

【欧州も安価な中国製品流入を警戒している点では同じ】
アメリカ同様の「中国・生産能力過剰論」は欧州にもあります。

****中国の“過剰生産”めぐり習主席とEU委員長が議論応酬*****
中国の習近平国家主席がEU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長とフランスのマクロン大統領と会談し、欧米などが指摘する中国の過剰生産について議論の応酬を繰り広げました。

中国外務省によりますと、6日にパリで開かれたEU、フランスとの首脳会談で、習近平国家主席は「ヨーロッパは中国式近代化を実現する重要なパートナーだ」と述べました。

EUが警戒する中国の電気自動車などの“過剰生産”の問題については「中国の新エネルギー産業は気候変動問題などに大きく貢献した」などと成果を強調し、「比較優位と世界市場の需要の両面から見れば、『中国の過剰生産問題』など存在しない」と主張しました。

一方、フォンデアライエン委員長は会談後の記者会見で、「中国の電気自動車や鉄鋼など補助金付きの製品がヨーロッパ市場に氾濫している」と指摘し、「世界は中国の過剰生産を吸収できない」と反論しました。

さらに、「市場へのアクセスも相互的である必要がある」と述べ、「必要であれば我々の企業や経済を守る手段を取ることを躊躇(ちゅうちょ)しない」と中国側を牽制(けんせい)しました。【5月7日 テレ朝news】
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“過剰生産”によるものかどうかはともかく、欧州企業は中国製品に太刀打ちできないのが現状です。

****欧州の自動車部品メーカー、競争に勝てず―独メディア****
2024年5月6日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、中国メーカーとの競争で劣勢に立たされている欧州の自動車部品メーカーが続々と減産や人員削減を発表する事態になっていると報じた。

記事は、ドイツの自動車部品メーカー・コンチネンタルが同国北部のギフホルンに設けた自動車部品工場が27年に生産を終了する予定であると紹介。同社は「競争力のある」コストを維持するために生産拠点をドイツからクロアチア、チェコ共和国、ウェールズに移転する計画を進めているほか、全世界で約7000人の雇用を削減する予定だと伝えた。

また、内燃エンジンの停止と中国との競争激化という二重の打撃により、同社のみならずボッシュ、ZF、ベバストといった自動車製品サプライヤーが減産計画を発表し、人員削減の数は増加の一途をたどっていると指摘。(中略)

記事は、ドイツ自動車工業会(VDA)の調査によると、ドイツではこの分野の企業の3分の1が、コスト削減のために今後数年のうちに生産の一部を国外に移すことを計画していると紹介。ドイツ西部のザールルイスでは、米フォードの自動車工場がすでに3400人を解雇しており、今後工場が閉鎖されれば、地元のサプライヤーネットワークも職を失うことになり、町の産業が消失する危機に直面することを伝えた。【5月8日 レコードチャイナ】
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EVについては、昨年10月、EUは中国製のEVが国からの補助金で価格を抑え、欧州市場での競争をゆがめているとみて、中国製のEVに対して正式に調査を始めたと発表しました。当然、中国側は強く反発しています。

【欧州 中国から報復、中国との切り離しを不安視する超えも】
反発は中国からだけでなく、中国の“報復”を恐れる声が欧州自動車業界にはあります。

****中国製EV巡り欧州で対立、補助金調査進める欧州委が追加関税の可能性…メーカー側は「報復を懸念」*****
中国製電気自動車(EV)への対応を巡り、欧州連合(EU)の執行機関・欧州委員会と欧州自動車メーカーの意見の対立が目立っている。

欧州委は中国製EVに対する補助金の実態調査を進めるが、メーカー側は中国の報復措置を懸念し、欧州委の強硬姿勢を批判する。欧州委が進める「脱中国EV」は視界不良だ。

「証拠を入手」
「中国との関係は適切に対処される必要がある。中国との扉を完全に閉ざすのは考え得る最悪の対処だ」
仏ルノーのルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)は19日に発表した書簡で、中国との関係悪化に対する懸念を示した。

念頭にあるのは欧州委が「補助金の証拠を入手した」との文書を5日付で発表し、対抗措置として中国製EVに追加関税が課される可能性が高まったことだ。ロイター通信は7月から暫定的に追加関税を課す可能性があると報じた。

実際に追加関税が課されれば、中国側が強く反発するのは必至だ。
すでに予兆もある。仏政府は2023年9月、EVの購入補助金制度を改めると発表し、事実上中国製EVを補助対象から外した。すると中国は24年1月、EU製ブランデーの反ダンピング(不当廉売)調査を始めると発表した。欧米メディアによると、中国へ輸出されるブランデーの大半はフランス製で、事実上の報復措置とみられている。

保護主義
中国市場に過度に依存してきたドイツメーカーはさらに切迫感が強い。独フォルクスワーゲン(VW)のオリバー・ブルーメCEOは13日の記者会見で「危険なのは、一方が保護主義を引き寄せると、もう一方も保護主義を経験することになるということだ」と述べ、警戒感を示した。メルセデス・ベンツのオラ・ケレニウスCEOも12日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)のインタビューで「関税を引き上げるな」と述べた。

中国はEVの原材料サプライチェーン(供給網)で高いシェア(占有率)を持つ。VWとベンツは世界販売に占める中国の割合が3割と高い。貿易摩擦に発展すれば、「返り血」を浴びる可能性が高い。(後略)【3月21日 読売】
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更にEV自体についても、欧州側が地域活性を狙って中国企業の国内誘致を進めており、仮に関税を引き上げても中国EVを阻止できない構造も生じています。

マクロン仏大統領、フォンデアライエン欧州委員長も「安価な中国製品の大量流入は困るが、欧州で生産してくれるならかまわない」という立場のようです

*****中国EV、欧州に工場進出ラッシュ 追加関税の回避に布石 習氏訪問の仏、ハンガリーでも****
中国の習近平国家主席が、欧州連合(EU)との電気自動車(EV)を巡る通商摩擦のさなか、欧州歴訪を開始した。EUが「追加関税も辞さず」の立場で輸出攻勢に歯止めをかけようとするのに対し、中国は障壁回避に向けて、続々と欧州に工場を建設している。

欧州では最近、中国EV産業の進出ラッシュが続く。
習氏の最初の訪問国フランスの北部では、遠景科技集団(エンビジョングループ)傘下企業がEV電池工場を建設。今年内にも稼働し、仏自動車大手ルノーに供給する。マクロン仏大統領の肝いりで進むEV産業地区の一部になる。

8日に訪れるハンガリーでは昨年12月、中国EV最大手の比亜迪(BYD)が、欧州初の乗用車組み立て工場を建設すると発表。EV電池の最大手、寧徳時代新能源科技(CATL)のギガ工場建設も決まっており、ドイツに次ぐ2番目の欧州工場になる。

スペインの日産工場跡地にも
スペインでは自動車大手、奇瑞汽車がEV生産計画を発表した。閉鎖された日産のバルセロナ工場の跡地を使う。浙江吉利控股集団の傘下にあるボルボは、スロバキアに新工場を建設する。

「遅れてはならない」とばかりに、イタリアのウルソ企業相は2月末、自動車産業誘致のため、中国企業と交渉中だと明らかにした。巨大経済圏構想「一帯一路」を離脱した後も、中国に熱い視線を送る。

マクロン仏大統領、フォンデアライエン欧州委員長は習氏と6日に会談し、貿易を巡って「公平なルール」を求めた。中国が補助金で国内メーカーを保護し、EU市場に安売り攻勢をかけるのは困るということだ。一方で、欧州で生産してくれるならば歓迎するという立場。米国が中国との技術競争でしのぎを削り、サプライチェーン(供給網)から中国排除を強めるのとは姿勢が異なる。

「受け入れ競い合う」
米調査会社ロディウム・グループは「米国は中国からの投資を厳しく精査するが、欧州は中国のEV企業受け入れに熱心。有利な条件で受け入れを競い合っている」と分析した。米国では規制の高まりで、中国のEV関連投資が激減しており、欧州や中東、アジアに流れているという。

EU欧州委員会は昨年10月、中国製EVに対する調査を開始した。中国の補助金でEU市場で不当競争をしていると判断すれば、追加関税をかける構えだ。ロディウムは習氏訪欧を前に、欧州委が15〜30%の課税に踏み切るとの見通しを提示。輸出攻勢に対して効果を生むには「40〜50%にする必要がある」と試算した。

昨年、EUの輸入EVのうち37%を中国製が占め、総額は115億ドル。20年の約7倍に相当する。【5月7日産経】
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【アメリカの対中国関税引き上げで、中国製品が欧州に向かう可能性も】
アメリカの関税引上げで、販路を失った中国製品が欧州に流れ込むのでは・・・との懸念もあるようです。

****米国の関税引き上げで大量の中国製品が欧州に押し寄せる?―独メディア****
2024年5月15日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、米国が中国製電気自動車(EV)などの関税を引き上げることにより、中国製品が欧州に流れ込む可能性について報じた。

記事は、キール世界経済研究所のモリッツ・シュラリック所長が独紙ハンデルスブラットに対し、米国による関税引き上げの影響により、ある分野では「中国の衝撃波」が間もなく到来し、ある分野ではすでに到来していると語り、ドイツ機械工業連盟(VDMA)のカール・ホイスゲン会長も「将来、エネルギーなどの主要分野で中国メーカーだけが存在し、欧州メーカーが消えるようなことになれば国家安全保障に関わる問題だ」と危機感を示したことを紹介した。

また、経済界だけでなくEUやドイツの政界からも憂慮の声が出ており、欧州議会の通商委員会委員長を務める社会民主党のベルント・ランゲ氏が「中国製EVが欧州にますます入ってくる可能性がある」と述べた上で、米国の保護主義的、対抗的政策を非難し、欧州は自主的な行動を取る必要があるとの認識を示したと紹介。欧州議会議員である緑の党のマイケル・ブロス氏もEVや太陽光電池、半導体といった欧州の気候保護技術が「中国のダンピング製品」による影響を受ける可能性があると指摘したことを伝えている。

記事はさらに、ドイツ国内では「EUは中国製品に対して保護主義的政策を取るべきでない」との意見が多く出ており、ドイツ卸売・貿易業連合会(BGA)のディルク・ヤンドゥラ会長が「もしEUが米国をまねれば、ドイツの自動車工業は深い苦しみを受けることになる。EUには中国の部品を使っていない自動車など1台も存在しない。われわれは競争を受け入れなければならない。そしてまた、公平な競争条件のためにも争わなければならない」と述べたことを紹介。ドイツの自動車工業はこの数十年で中国に多額の投資を行っており、米国に追従した場合に中国から報復措置を受ける可能性があることへの憂慮が背景にあるとした。

また、ドイツのフォルカー・ウィッシング運輸デジタル相もEUに対し「制裁関税による貿易戦の発動は誤った道だ。われわれの市場は閉ざすべきではなく、競争により強くなるべきだ。世界最高峰の製品を作れるドイツ企業は競争を恐れない。今後もそうだ」と米国に追従しないよう警告したと伝えている。【5月16日 レコードチャイナ】
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国民・労働者向け中国叩きが政治的重要パフォーマンスとなっているアメリカ、対中国保護貿易の反動・影響を懸念する欧州・・・安価な中国製品に苦慮するのは同じですが、反応は異なるようです。
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中国  ロシア・プーチン大統領訪中で“蜜月”演出も、したたかにロシアの足元を見て利益確保を狙う

2024-05-17 23:42:39 | 国際情勢

(【5月16日 FNNプライムオンライン】プーチン大統領の到着を笑顔で迎える習近平国家主席)

【“蜜月”を演出す中ロ首脳 思惑の違い・温度差も】
周知のようにロシアのプーチン大統領が16日訪中し、習近平国家主席との首脳会談を行いました。
中ロ両国首脳はその蜜月ぶりをアピールしています。

“「ここ数年、私とプーチン氏は40回余り会談し、密接な意思疎通を保ってきた」(習近平氏)” “ウクライナ侵略開始後、プーチン氏の外遊機会は限定的となっているが、訪中は続けている。プーチン氏は会談について「温かく、友好的」なものだったと共同記者発表で評価した。”【5月16日 産経】

ただ、多くが指摘しているように、とにかくウクライナでの戦争を中国の支援で勝利したいロシア、アメリカとの対立も視野に入れながら、そこでの優位なポジションを得ようとする中国、両国間で思惑の違い・温度差もあります。

****中国とロシア“蜜月”見せつけも……両首脳に「温度差」 プーチン氏、侵攻長期化で「経済力の強化」狙い 習主席は米揺さぶりか****
ロシアのプーチン大統領が16日訪中し、習近平国家主席との首脳会談に臨みました。5期目の大統領となって初の外遊先に中国を選んだプーチン氏と、電気自動車などをめぐってアメリカとの摩擦を抱える習主席。それぞれ、どんな狙いがあったのでしょうか?

■侵攻、経済…協力について意見交換か
(中略)
小栗泉・日本テレビ解説委員長
「16日の首脳会談では、ウクライナ侵攻や経済など、幅広い分野での協力について意見が交わされたとみられます。今回、とにかく2人は蜜月ぶりをアピールしたい、アメリカ一強の今の世界を変えたいという狙いでは一致しています」

■首脳会談にかける熱意には温度差も
日テレNEWS NNN藤井キャスター
「2人の表情を見ていると仲は良さそうですし、一枚岩のようにも見えましたが、どうでしょうか?」

小栗委員長
「会談にかける熱意という意味では温度差もあります。プーチン大統領の方が思いが強いようです。プーチン大統領の頭の中にあるのは、ウクライナ侵攻の長期化です」

「ロシアに詳しい慶応義塾大学の廣瀬陽子教授は『プーチン大統領は、侵攻が年単位で長引くのではないかとみているのでは。それだけに経済力の強化を急いでいて、今回訪中を決めたのではないか』と指摘しています」

「5月に入ってロシア軍の攻勢はますます強まっていますが、今ロシア国内ではセンサーやレーダーといった軍事転用できる製品の生産は難しく、ここで頼りになるのが中国。廣瀬教授によると、こうした軍事転用品の中国への依存率は既に 90%ほどになっています」

■アメリカと対立…中国側の狙い
日テレNEWS NNN藤井キャスター
「そうなると、ややプーチン大統領は前のめりになるのかなと思います。習主席はどう考えているのでしょうか?」

小栗委員長
「習主席の方が冷めている部分もあるようです。NNN 中国総局の柳沢総局長によると、中国としては国際的な批判にさらされているプーチン大統領と一緒にされたくはない」

「ただ、プーチン大統領が圧倒的な勝利を大統領選で収めて新たな任期が始まった今であれば大歓迎で受け入れてもいいかな、というくらいの心境だといいます」

「さらに中国としては、プーチン大統領との仲の良さをアメリカに見せつけてけん制したい思いもあったようです。バイデン大統領は電気自動車など中国からの輸入品がアメリカの市場を脅かしているとして、関税を4倍に引き上げるなどの決定をしました」

「中国としては、ただでさえ国内経済が低迷する中、大ダメージです。そういうことをするなら本当にロシアと仲良くしますよ、それでいいんですか? と、アメリカを揺さぶっているという形です」(後略)【日テレNEWS】
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中国・習近平主席としては、ロシアが負けてアメリカが再び勢いづくような事態は困りますので、ロシア勝利に向けた支援はやぶさかではないでしょう。ただし、ロシア・プーチン大統領と一体視されて国際批判の矢面に立つのは得策ではありません。

****プーチン氏、中露共闘で対ウクライナ「戦勝」狙う 中国は「戦後」の影響力確保か****
(中略)一方、ロシアの軍事産業を支えていると欧米に批判される中国は米国への対抗上、ロシアと対立するフランスなど欧州主要国との関係強化も重視するため、ウクライナ侵略に一定の距離を演出。習氏は5月上旬の欧州歴訪で「中国は危機を作り出した者ではなく、当事者でも参加者でもない」と強調した。

ただ、実際には米国と対立する中で、ロシアとの共闘は不可欠。北京の外交筋は「ウクライナでロシアが負け、プーチン政権が崩壊することは中国にとって絶対に避けたい事態。そのためにも密接な経済・貿易関係を続けてロシアを支えてきた」と指摘する。

中国側は、露軍が有利な状況でウクライナ戦争が終わる可能性を計算に入れているとみられる。その際、米欧・ウクライナとロシアとの間の橋渡し役として影響力を高めることを狙っているとの見方もある。【5月16日 産経】
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【軍事利用できる物資・機器をロシアに輸出する中国 しかし、“高値”で利益確保】
中立を装う中国はさすがにロシアへの兵器供与は行っていませんが、アメリカは中国がドローンなど軍事用にも使える機器をロシアに輸出していると指摘し、侵攻を続けるロシアを結果的に支援していると批判しています。

****「中国がドローン輸出などでウクライナ侵攻を支援」批判に中国反論****
中国がロシアに軍事転用可能な物資を輸出しているとアメリカなどが批判していることについて、中国政府は「輸出は厳格に管理している」と改めて反論しました。

北京で16日に行われた中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領の会談では、ウクライナ侵攻をめぐって「政治的解決が正しい方向」との考えで一致。一方、アメリカなどは中国がロシアに対してドローンなど軍事用にも使える機器を輸出していると指摘し、侵攻を続けるロシアを結果的に支援していると批判しています。

これについて、中国外務省の報道官は。

中国外務省 汪文斌報道官  「中国は軍用品の輸出において常に慎重かつ責任のある態度を持ち、民間用ドローンを含む軍民両用品の輸出を厳格に管理している」

首脳会談が行われた当日の会見で改めて反論し、「アメリカがウクライナに前例のない規模で軍事支援を行いながら、中国とロシアの正常な貿易を根拠なく非難したことは無責任だ」と強く批判しました。【5月16日 TBS NEWS DIG】
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「厳格に管理している」と言われても・・・・あまり反証にもなっていないような。
ウクライナに大規模軍事支援しているアメリカにとやかく言われる筋合いはないというのは、中立スタンスの中国からすれば、もっともな言い分でしょう。

実際のところは、軍事目的に使う物資を中国がロシアに大量輸出している現実があります。

****中国からロシアへの「ニトロセルロース」輸出 ウクライナ侵攻以降急増****
弾薬の材料としても使われる物質「ニトロセルロース」について、ロシアによるウクライナ侵攻以降、中国からロシアへの輸出が急増していることが分かりました。

ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、西側諸国は中国からロシアへの軍事転用可能な物資の輸出に警戒を強めていて、その1つとして「ニトロセルロース」が指摘されています。

「ニトロセルロース」は塗料などに使われる一方、着火すると激しく燃焼するため、弾薬の材料としても使われます。

中国の税関当局が公表しているデータによりますと、「ニトロセルロース」のロシアへの輸出は、2021年までほとんどありませんでした。

しかし、ロシアがウクライナ侵攻を開始したおととしになって、年間700トンあまりに増加、去年はその2倍近い年間1300トン余りに急増しています。

「ニトロセルロース」をめぐっては、アメリカのブリンケン国務長官が先月、中国を訪れた際、中国側に懸念を示しています。

これについて、中国外務省の汪文斌報道官は16日の記者会見で「輸出を厳格に管理している。中国とロシアの正常な貿易を根拠なく非難するのは無責任だ」と反論しています。【5月17日 TBS NEWS DIG】
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興味深いのは、その価格です。 友好国への支援ということであれば、無償とか格安が想像されますが、実際は他国への輸出より高値でロシアに輸出しているということで、ロシアの“足元を見る”形でしっかり利益を確保しています。

****中国 ウクライナ侵攻後 ロシアへ軍事転用可能物資の輸出急増****
(中略)
今回のNHKの分析では、中国が欧米向けにニトロセルロースを輸出する際、1キロ当たりの価格がおおむね2ドル台から3ドル台であるのに対し、ロシア向けへの輸出では4ドル台と、高くなっていることも分かりました。

これについて、山本氏は「欧米から厳しい経済制裁を受けているロシアに言い値で売って、利益を取っている。これは、単純な軍事支援ではない。ロシアの弱い部分につけ込んでいる。これからは中国が主で、ロシアが従だという中国の立場をロシアに知らしめようとしているともみることができる」と述べました。

さらに、中国が欧米にもニトロセルロースを輸出していることについて「中国からアメリカやヨーロッパに対する輸出が制限されることになれば、欧米の弾薬の製造に影響が及ぶかもしれない。そうなれば、今ですら欧米からウクライナへの弾薬支援が限定的である中、より一層制約されるのではという危惧を持ってしかるべきだ」と述べ、中国側の対応によっては、欧米のウクライナ支援に影響を与える可能性もあるという認識を示しました。【5月16日 NHK】
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【ロシアが求める天然ガスパイプライン建設 弱い立場のロシアを買いたたくために交渉を先延ばしする中国】
中国のしたたかさは、天然ガスでも。
ロシアが中国に求めているのは戦争のための軍事利用出来る物資の他に、西側の制裁を受けるロシア経済を長期にわたり安定させるロシアから中国への天然ガス輸出(パイプライン建設)です。

しかし買い急ぐ必要はない中国は、欧州への販路を失い弱い立場のロシアから徹底した値下げを勝ち取る戦術です。

****中国優位か ロシアは「依存」に弱み 新ガスパイプライン交渉難航****
ロシアと中国を結ぶ新たな天然ガスパイプライン「シベリアの力2」の建設を巡り、交渉が難航している。

今月下旬にウクライナ侵攻開始から2年を迎えるのを前に、ロシアは欧州へのガス輸出市場を失いつつある。ロシアは代わりの輸出先として中国への輸出を増強したい意向だが、中国はロシアの足元をみて、好条件での契約を求めているとみられる。

建設が検討されてきた「シベリアの力2」
「シベリアの力2」はロシア北部ヤマル半島のガス田で生産した天然ガスを、モンゴル経由で中国に輸送する全長約3550キロのパイプライン計画。建設費は10兆円規模に達し、年間約500億立方メートルの輸送力が見込まれている。建設の議論は2014年以降に始まった。

ロシアのノバク副首相は1月25日発行の政府系エネルギー専門誌で「パイプラインの建設時期や技術、予算面は、中国側との契約締結後に決まる」と述べ、建設計画の詳細が未定であることを認めた。

また「シベリアの力2」が経由する予定のモンゴルのオユーンエルデネ首相も1月28日の英紙フィナンシャル・タイムズで、「(両国は)経済効果の調査に、さらに時間を要するだろう」と発言。交渉が難航している状況を示唆した。

欧州連合(EU)によると、ロシアはウクライナ侵攻前、年間1550億立方メートルの天然ガスを主にパイプラインで欧州に供給し、欧州全般で輸入される天然ガスの約4割を占めていた。

だが侵攻後、EUはロシアへの依存を低減させるため、天然ガスの輸入元の多角化を進めた。ノルウェー産のパイプラインによる輸入拡大や、米国産の液化天然ガス(LNG)の輸入増などに伴い、ロシア産の輸入は現在、年間約400億~450億立方メートルに減少している。

侵攻後の輸出減少、補いきれず
これに対し、ロシアも輸出先の多角化を試みるが、欧州への供給減を補えていないのが現状だ。中国との間では19年、「シベリアの力」(輸送容量年間380億立方メートル)を稼働させており、「シベリアの力2」を新たに加えることで、輸出量の挽回を図る。

中国によるロシア産天然ガスの輸入は、「シベリアの力」と北極圏からのLNG輸入などで、30年には輸入量全体の2割に達する見通し。「シベリアの力2」の供給が加わると、天然ガス輸入量の約4割をロシア産が占めることになる。

中露間では別のパイプライン建設が既に始まっている。中露両首脳は23年2月、ロシア国内の既存のパイプラインを利用した「極東線」ルートも建設することで合意。26年から年間最大100億立方メートル分のガス供給を開始する予定で、国営新華社通信によると、24年1月に中国国内の建設が始まった。

過度のロシアへの傾斜を警戒か
ただ、中国の習近平指導部は、エネルギー分野でも安全保障を強化する方針を示しており、ロシアに過度に依存することへの警戒感もあるとみられる。極東線とは対照的に「シベリアの力2」の交渉に関する報道はほとんどない。

習近平国家主席とプーチン露大統領は23年に互いに相手国を訪れて会談を重ねたが、これまで「シベリアの力2」の建設を巡り、目立った進展は見られていない。

「シベリアの力」を巡っても、中露のガス価格交渉は07年以降、難航した前例がある。ようやく建設合意に達したのは14年5月。ロシアがウクライナ南部クリミアの強制併合で欧米諸国から制裁を科せられた直後だ。ロシアは孤立を深めたことから、値下げに応じたとみられる。

現在、中国は国内生産と既存のロシアとの輸入契約、米国産LNGの輸入などで、30年までに必要とされる天然ガス供給量の大半を確保できる見通しだ。そのため専門家の間では、中国側が、「シベリアの力2」でも優位に交渉を進めるとの見方が強い。

ロシアとアジアの貿易に詳しい英国の政治危機コンサルティング会社「エンメテナ・アドバイザリー」の設立者、マクシミリアン・ヘス氏は「中国は天然ガスの輸入元の多様化を進めており、現状ではロシアの交渉力は弱い。ロシアはどこかの時点で妥協を迫られることになり、中国はそのタイミングを待っている」と分析する。【2月7日 毎日】
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今回のプーチン・習近平会談でも中国からの色よい返事はなかったようです。

*****ロシア 中国とのガスパイプライン建設計画で合意得られず****
ロシア産の天然ガスを中国側に送る新たな天然ガスパイプライン「シベリアの力2」の建設計画は中国の同意を得られず、延期されたままとなっています。

プーチン大統領は習近平国家主席に対して去年から「シベリアの力2」の建設計画への同意を求めています。

ロシアメディアによりますと、今回のプーチン大統領の訪中で公表された協定文書の中に「シベリアの力2」の建設に関する内容はありませんでした。

「シベリアの力2」の事業主体となるロシアの国営天然ガス企業「ガスプロム」のトップ、ミレル氏はプーチン氏に同行しなかったということです。

関係者によりますと、プーチン大統領は去年から首脳会談のたびに習近平国家主席に対して建設計画への同意を求めていますが、中国側の対応が厳しく、交渉は難航しています。

ウクライナ侵攻によってヨーロッパとの取引が激減したガスプロムは2023年12月期決算で24年ぶりの赤字に転落し、中国との新たな契約は必須だと指摘されています。

年末にはウクライナを通過するヨーロッパ向けのパイプラインの契約も満期を迎えます。

ウクライナのエネルギー省は「契約は更新しない」との立場を表明していて、ガスプロムの経営は厳しい状況に追い込まれています。【5月17日 テレ朝news】
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ロシアとしては中国に頼らざるを得ないものの、足元を見る中国からしたたかに買いたたかれる・・・・こうした力関係の変化の一点をみるだけでも、プーチン大統領のウクライナ侵攻はその勝敗にかかわらず「失敗」だったと言えます。
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ニューカレドニア  仏統治への暴動 古典的資源の問題に加えて中国をめぐる地政学的な問題も

2024-05-16 18:23:06 | オセアニア
(【JAL HP】)
【「天国に一番近い島」で起きた暴動】
南太平洋の「天国に一番近い島」とも称される仏領ニューカレドニアで、暴動が激化し憲兵1人を含む4人が死亡する事態となっています。

****フランス領ニューカレドニアで暴動、政府が非常事態宣言****
フランス領のニューカレドニアで15日に暴動が深刻化し、憲兵1人を含む4人が死亡した。現地に長期滞在するフランス人に地方参政権を与える憲法改革に対して独立派が強く反発し、暴動につながった。仏政府はフランス時間の同日夜、非常事態宣言を発令した。

仏議会はニューカレドニアに10年以上暮らすフランス人に地方選挙への参政権を与える憲法改正の審議を進めており、14日には国民議会(下院)が上院に続いて可決していた。

ニューカレドニアの独立派は憲法改正で独立が遠のくと反発し、抗議活動を展開していた。自動車や店舗が破壊され、安全確保のために学校が閉鎖されるなど混乱が深まっている。

仏大統領府は15日、「どのような暴力も容認できない」とのコメントを発表。マクロン大統領が非常事態宣言の発令を指示した。発令により、当局はデモの禁止や集会所の閉鎖といった措置を取りやすくなる。

軍隊が出動し空港や港湾の治安を維持する。動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の利用も禁止された。仏メディアによると非常事態宣言はアルジェリア戦争中の1955年制定の関連法に基づき、2015年のパリ同時多発テロ時も発令された。【5月16日 日経】
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現地には警官などの治安部隊が1800人態勢で展開。エリゼ宮(仏大統領府)報道官は15日の記者会見で、暴力の拡大阻止へ500人の増派を明らかにしています。

また今朝の海外TVニュースによれば、現地住民は暴徒の略奪・暴力を恐れ自警団を組織し、道路を封鎖し、暴徒の地域への侵入を防いでいるようです。

ただ、そうした住民同士の争いが犠牲者を増やす結果にもなっているようです。

ニューカレドニアが「天国に一番近い島」と呼ばれるようになったのは、映画化もされた1966年に出版された森村桂氏の旅行に由来します・

****天国に一番近い島*****
子供の頃、亡き父(作家の豊田三郎)が語った、花が咲き乱れ果実がたわわに実る夢の島、神様にいつでも逢える島。働かなくてもいいし、猛獣や虫もいない…そんな天国にいちばん近い島が地球の遥か南にあるという。

それが、きっとニューカレドニアだと思い、ニューカレドニアへ行くことを心に誓う。死んでしまった父に、また会えるかも知れない…そう信じて。母が寂しがっていると言えば、心地よいその島暮らしを捨ててでも戻ろうと思ってくれるに違いない。そして、神様の目をぬすんで、父を連れて帰ればいい! 

そう信じて出発した旅行の顛末。
まだ海外旅行自体が自由にできなかった頃ゆえの苦労、夢と現実のギャップ、現地の人達との交流などの体験が書かれる。【ウィキペディア】
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私事で言えば、私も半世紀ほど昔に図書館でこの本を読み、(内容は完全に忘れましたが)その後の海外旅行趣味の下地にもなりました。

もちろん、“神様にいつでも逢える島。働かなくてもいいし、猛獣や虫もいない”・・・そんな現実があるはずもありませんが、この本によって確立されたイメージと実際の美しいビーチ、更に原田知世主演の映画によって、日本人にとっては一定にメジャーな観光地ともなっています。

【独立運動の経緯 形の上では結着がついたことにはなっているものの・・・】
しかしニューカレドニアは独立を果たした世界の植民地同様に、植民地としての悩みを抱えており、これまでも独立運動が繰り返されてきました。

住民投票による賛否は、一応形の上では独立否定ということで結着していますが、今回の騒動はそれが「形の上」に過ぎなかったことを示しています。

****フランス領ニューカレドニア、三たび独立否決*****
南太平洋の仏領ニューカレドニアで12日、フランスからの独立の是非を問う住民投票があった。反対票が96.5%となり、2018年、20年に続き独立は三たび否決された。投票の延期を求めた先住民ら独立派が投票をボイコットし、賛成票はわずか3.5%だった。

投票率は43.9%で、20年(85.7%)から大きく下落した。独立派幹部でニューカレドニア議会議長のワミタン氏は13日までに、仏メディアに結果を「受け入れない」と明言した。今後、デモや国連への訴えなど投票結果の正当性を巡り混乱が起きる可能性もある。

一方、フランスのマクロン大統領は12日演説し「棄権者が多数いたが、ニューカレドニア住民は独立を否決した。フランスの一部であり続けることが決まった」と強調した。

ニューカレドニアはオーストラリアに近い群島で、人口は約27万人。19世紀にフランスに併合され1946年に海外領土となった。電気自動車(EV)のリチウムイオン電池に使われるニッケルの世界有数の生産地でもあり、仏軍も駐留している。

住民はカナクら先住民が41%、欧州系が24%など。カナク系住民を中心に60年代から独立を求める運動が拡大した。欧州系住民の多くはフランスへの残留を希望する。

今回の住民投票は98年に独立賛成派、反対派、仏政府の3者でまとめた「ヌメア協定」に基づくものだ。合計3回まで住民投票の実施が可能で、今回が最後となる3回目だ。

独立賛成票は1回目(2018年)が43.3%、2回目(20年)が46.7%と伸び、3回目は賛成票と反対票が拮抗すると予想された。

ただ、21年9月から新型コロナウイルスの影響で外出規制が導入された。同月からの犠牲者数は280人に上る。独立派は死者の弔いや外出規制により十分な活動ができなかったと主張し、投票を延期しなければボイコットも辞さない姿勢を示した。しかし仏政府は12日に住民投票を実施し、多くの独立派がボイコットした。

独立は否決されたが、今後の混乱を懸念する声は強い。南太平洋では中国がインフラ支援を通じて存在感を強めている。仏軍事学校戦略研究所は10月の報告書で、米国やその同盟国の太平洋における影響力をそぐために、中国がニューカレドニアで独立運動を支援しているとの見方を示唆した。【2021年12月12日 日経】
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下記の情報からすると、今回の暴動は独立派の穏健派は賛同しておらず、一部の過激な若者らが主導しているようにも見えます。

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フランスの国民議会(下院)は今週、ニューカレドニアに10年間住んでいるフランス系住民に地方選挙での投票を認める法案を審議した。先住民カナクの発言権が低下するとの懸念が強まり暴動に発展した。

法案はその後、賛成多数で可決され、仏政府はニューカレドニアで選挙が民主的に行われるために投票規則の変更が必要と訴えた。

マクロン大統領は上下両院の特別会議で同法案が承認される前に、ニューカレドニアの独立賛成派と反対派の間で対話を開くことを提案した。

独立派の主要政治団体、カナク社会主義民族解放戦線(FLNKS)は15日の声明で、マクロン氏の提案を受け入れると表明。「ニューカレドニアが解放への道を歩むことを可能にする」合意に向けて取り組む用意があると述べた。【5月15日 ロイター】
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【フランスの思惑 近年重要性が増しているニッケル資源の存在に加え、中国の影響力拡大がもたらす地政学的な影響も】
多くのアフリカ植民地を手放したフランスがニューカレドニア統治を譲らないのは、島に豊富な重要資源ニッケルのためという古典的植民地支配の理由もありますが、最近ではそれに加え、中国の南太平洋地域への進出という国際情勢を受けて、地政学的重要性が増しているからでもあるでしょう。

“南太平洋では中国がインフラ支援を通じて存在感を強めている。仏軍事学校戦略研究所は10月の報告書で、米国やその同盟国の太平洋における影響力をそぐために、中国がニューカレドニアで独立運動を支援しているとの見方を示唆した。”【前出 2021年12月12日 日経】

ニューカレドニアが世界有数の生産量・埋蔵量を誇る金属ニッケル(生産量で世界第4位、埋蔵量で世界第5位)は、電気自動車など様々な分野のバッテリーにも使われている戦略物資ともなっていますが、そのニッケルの輸出先として存在感を強めるのが中国。

ニッケル類を主とする中国への輸出総額は、この10年で10倍以上に急増しており、貿易相手国としては断トツの1位になっています。(近年、フランス本国にどの程度輸出されているかは知りません。以前はニッケルマットとして輸出されていたようです。)

中国としては、ニューカレドニアが比較的近く、輸送コストが安くつくというメリットがあるとされています。(もっとも、生産量ではもっと近いインドネシア・フィリピンが世界1位、2位ですが。資源ナショナリズムも高まる両国より小島のニューカレドニアの方が扱いやすいという面はあるのかも)

この経済的状況でフランスが統治権を手放せば、ほどなく政治的にもニューカレドニアは中国の影響下にはいることが予想されます・

ニューカレドニアに軍事拠点も持つフランスとしては、対中国という観点でも譲る訳にはいかないところかも。

フランスと資源という観点では、原発大国フランスが必要としているウランの産出国であるアフリカの旧植民地ニジェールからも、ロシアの影響力拡大もあって、最近撤退を余儀なくされています。

ただ、島では先住民と白人移住者の子孫との貧富の差が依然大きいという植民地共通の歪みも生じています。

なお、この島と日本は無縁ではありません。

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1892年(明治25年)、海外で働きたいという600名の単身日本人男性が、移民社会の斡旋でニューカレドニアにやってきた。採用の際、ニッケル鉱山での5年間の労働契約書が用意された。

1919年までに合計5575名にのぼる移民がニューカレドニアに到着。やがて、彼らは現地の女性と所帯を持つようになった。鉱山を離れた後、島のあちこちに定住し、様々な仕事で成功した(菜園、塩田、商業、漁、コーヒー園、あるいは散髪屋、仕立て屋、大工、鍛冶屋など)。日本人は、当時の経済生活に活気あふれる豊かさをもたらす存在であった。

そして、真珠湾攻撃を境に、この第一世代の日本人たちは敵性外国人として見なされ、そのほとんどが連行され、ヌー島に収容された後、オーストラリアの強制収容所に送られた。

4~5年の抑留を経て、1946年2月に日本に送還された。太平洋を隔てた向こう側では、島に残った彼らの現地妻と子供たちが、一家の大黒柱を失い、とてもつらい日々を送った。

また、現地人と結婚しそのまま帰化した人も少なくなく、現在は約8000人の日本人入植者の子孫がいるとされる。【西南学院大学HP】
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ミャンマー  軍事政権に「崩壊の兆候」も タクシン元首相が少数民族側と「秘密会談」を持つなども

2024-05-15 22:26:50 | IT AI

(【5月15日 NHK】)

【「崩壊の兆候」も見え始めた軍事政権】
今夜のNHKクローズアップ現代でミャンマー内戦を取り上げていましたが、山間部に少数民族とともに潜伏し逃亡生活を送るビルマ族民主派映画監督の「こんなにうまくいくとは思わなかった。当初は国軍は大きな壁のように思えた。でも押してみたらあっけなく倒れた。壁の内部はスカスカだった」という主旨の発言が印象的でした。

****ミャンマー内戦、国軍と少数民族武装勢力が迎える「転換点」の攻防*****
ミャンマー南東部のドーナ山地。密林の中で、少数民族武装勢力の戦闘員が、ミャンマー国軍が送り込んだ増援部隊を撃退しようと戦っている。増援の目的は、タイとの国境地帯にある重要な貿易拠点ミャワディの奪還だ。

ミャンマーでは、2021年2月のクーデターで政権を掌握した国軍と武装勢力の衝突が3年以上続いている。最近ではミャワディをはじめとする戦略拠点を巡る攻防が激化しており、今後数週間の展開は、紛争の次の段階だけでなく軍事政権の命運を決めることになるだろう。

雨季の雲がミャンマー上空に広がる6月上旬を前に、軍事政権と武装勢力の双方にとって、支配地域の拡大や維持に向けて打てる手は限られている。アナリストらの指摘によれば、こうした天候のもとでは空軍力の優位性が損なわれ、前線で疲弊している国軍にとって特に不利に働くという。

攻防の焦点となっているのがミャワディのほか、西部ラカイン州、中国やタイとの国境沿いにある辺境地帯といった、貿易と軍事の要衝だ。

東南アジア情勢を専門とするザカリー・アブザ米国防大学教授は、そうした地域の一部では、反体制派が攻勢の継続を図る一方で、軍事政権側も雨期到来前の奪還または維持をもくろんでいる、と語る。

アブザ教授は、「国軍としては、今後数週間にわたって非常に重要な戦略的目標をいくつか抱えている」と語り、ミャワディやラカイン州の複数の街など、鍵となる現在進行中の戦闘を挙げた。

ロイターでは軍事政権の報道官に電話取材を試みたが、反応はなかった。

昨年10月以降、軍事政権側は戦場でいくつか敗北を重ね、経済への打撃と相まって、クーデター以来で最大の困難に直面している。

シンクタンクの米国平和研究所(USIP)の推計によると、軍事政権は、哨戒拠点や基地、司令部など軍事拠点5280カ所の約半数のほか、以前は国軍が統制下に置いていた少数民族地域の60%で実権を失いつつある。

ミャンマー国軍は現在、バングラデシュ、中国、インド、タイとの主要な国境地帯でさまざまな反体制グループの混成軍と戦闘を繰り広げているが、今後6カ月間でそうした地域の実権をすべて失う可能性もあるという。タイの政府当局者と外交関係者が、独自の評価に基づき、ロイターに語った。

それによると、軍事政権側は辺境地域一帯に広く薄く部隊を展開したせいで優位を失いつつあり、今後は部隊を統合し、重要な地域の優先度を上げることを模索する可能性があるという。

<不吉な前兆>
弱体化して兵力は低下しつつあるとはいえ、軍事政権側は反体制勢力に大きなダメージを与え得る火力を維持しており、国内多数派であるビルマ民族が暮らす中央低地地帯を握っている、とこの関係者は付け加えた。

バンコクを拠点とする地域政治アナリストのチチナン・ポンスディラク氏は、軍事政権側はたとえ包囲されたとしても強固な防衛線を敷き、紛争を長びかせる可能性があると指摘する。

ミャンマーの混乱について、「長期化の可能性はあると考えている」とチチナン氏は言う。ただし同氏は、長期的には軍事政権の支配は「持続不可能」だと述べ、「崩壊の兆候」として、戦場での敗北、反体制勢力の士気向上、国民の支持の欠如を指摘した。

国軍は4月にミャワディの支配権を失った後、奪還に向けた反攻をしかけた。同市を経由する貿易額は年間10億ドル(約1550億円)以上に及ぶ。

当初ミャワディから国軍を排除したのは、国内で最も古くから活動する少数民族武装勢力の1つ、カレン民族同盟(KNU)だ。現在は、軍事政権側の反攻を阻止しようと戦っている。

KNUの広報官はロイターに対し、「1000人以上の部隊がミャワディに向けて接近しているが、(KNUの軍事部門である)カレン民族解放軍(KNLA)とその同盟軍が、国軍を迎撃し、進軍を阻止して反攻を続けている」と語った。

「毎日のように激しい戦闘が展開されている」
ミャワディの西方約900キロのラカイン州では、国軍はアラカン軍との戦闘を続けている。アラカン軍がめざすのは、国軍の重要な地域拠点であるアンの掌握だ。

アンは、ミャンマーと中国を結ぶ793キロに及ぶ天然ガス輸送パイプラインの経由地でもあり、近郊には大規模なポンプ施設もある。アナリストらは、国軍は施設を管理下に維持するため全力を挙げるだろうと言う。

非政府組織「国際危機グループ」でミャンマーを担当するリチャード・ホーシー氏は、雨季に入れば軍事政権にとって重要なアドバンテージである空軍力の展開が難しくなると指摘。低く垂れ込めた雲により、空軍が通常使用している無誘導兵器に影響が出る、と説明する。

「雨季になると、ヘリコプターを使った補給や火力支援、反体制派に包囲されている基地への兵員輸送も困難かつ危険になる」とホーシー氏は言う。

前出のアブザ氏は、ミャンマー全土でここ数カ月に国軍兵士の脱走が発生しており、軍事政権が各部隊に食料や水、弾薬、医薬品の補給ができていないために士気が崩壊しつつあることがうかがわれる、と語る。

アナリストらは、雨季の到来はいくつかの大きな勝利に勢いづいている反体制勢力に優位をもたらすだろうが、こちらもさまざまな少数民族武装勢力と草の根の反体制グループの寄り合い所帯で、最低限の連携すらできていない、と指摘する。

USIPのイエ・ミョー・ヘイン氏は最近の報告書の中で、「数多くのグループのあいだで戦略的な調整を進めるには時間がかかるが、それがミャンマー内戦の今後を決定づけるだろう」と指摘した。

ミャンマー民主派による「挙国一致政府(NUG)」のチョー・ザウ報道官は、すでに軍事政権が統制できているのは中部地域の大都市だけだと述べた。

「そうした大都市でさえ、軍事政権の勢力は脅かされている」【5月11日 ロイター】
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【外国での就労を希望する男性の出国禁止で混乱も】
兵士の投降・脱走が相次ぐ国軍は兵士の補充に躍起となっており、徴兵制の実施に踏みきりましたが、若者らの国外脱出や民主派武装勢力への参加などを促す逆効果も出ています。

軍事政権はその徴兵制に加えて、外国での就労を希望する男性の出国禁止も。

****“外国での就労を希望する男性の出国禁止”ミャンマー軍事政権 徴兵制導入も兵力集まらず強硬手段か ミャンマー独立系メディア****
3年前のクーデターで実権を握ったミャンマー軍事政権が外国での就労を希望する男性の出国を禁止したと報じられました。徴兵制の導入で出国する若者が急増するなど混乱が広がるなか、兵力を確保しようと強硬手段に出た可能性があります。

ミャンマーの独立系メディアは2日、「軍事政権が1日から外国での就労を申請する男性の出国禁止を決定した」と伝えました。軍事政権からの正式な発表はなく、具体的な内容は明らかになっていません。

民主派や少数民族などの武装勢力との戦闘で劣勢に立つミャンマー軍は、今年2月に徴兵制の導入を発表し、すでに1回目の招集で5000人が入隊したとしています。

一方、徴兵から逃れようとミャンマーから出国したり、武装抵抗を続ける民主派勢力に加わったりする若者が急増し、混乱が広がっています。

ミャンマー軍としては、十分な兵力を確保できていないことから、若者らの出国を制限する強硬手段に出た可能性があります。【5月2日 TBS NEWS DIG】
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しかし、すぐに“再開”の報道もあって、事態は混乱しているようにも見えます。

****男性の“国外就労”再開 対象に年齢制限か…混乱続く ミャンマー*****
ミャンマーの軍事政権は、今月から一時停止していた男性の国外就労の手続きを再開したと明らかにしました。地元メディアは当局の話として、再開の対象には年齢制限があるとも伝えていて、混乱が続いています。

ミャンマー軍の統制下にある労働省は今月1日から、男性に限り国外就労の続きを一時停止していました。
ミャンマーでは徴兵から逃れようと国外に出る若者が急増していることから、手続きの一時停止は軍による兵員確保だとの見方が広がっていました。

地元メディアなどによりますと、送り出し機関は今月6日、労働省の担当者から「手続きを再開する。通常の50%程度を認める」と口頭で連絡を受けたということです。
労働省も8日、地元メディアの取材に対し、「通常通り許可する」と答えました。

早期の方針転換の背景には、国民の反発がさらに広がるのを防ぐ考えがあるものとみられますが、地元メディアは当局の話として、23歳から31歳までの男性の手続きは依然として停止しているとも伝えていて、混乱が続いています。【5月9日 日テレNEWS】
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【調停役にタイのタクシン元首相も】
現在、主戦場となっている南東部ミャワディはタイ国境に近く、タイも混乱の飛火を警戒していますが、そのタイのタクシン元首相が少数民族側と「秘密会談」を持つなどの動きをみせています。

****激化するミャンマー内戦の調停にタイのタクシン元首相が名乗り?****
<タイのタクシン元首相とミャンマーの民主派や少数民族との「秘密会談」が明るみに。元首相としての外交実績は十分だが、非公式協議のパイプ役としての力量は>

タイのタクシン・シナワット元首相が、激化するミャンマー内戦の調停に乗り出そうとしているようだ。
ミャンマーメディアの5月6日の報道によれば、タクシンはミャンマー軍事政権に対抗する民主派の代表的勢力である国民統一政府(NUG)の代表のほかカレン民族同盟、シャン州復興評議会、カレンニー民族進歩党、カチン民族機構など少数民族勢力の関係者らと会談したという。

米政府系放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、この非公式会談は3~4月にタイ北部のタクシンの故郷、チェンマイで行われた。チェンマイはミャンマー国境に近く、亡命者の政治活動が活発であることで知られる。

タクシンは昨年、長期の亡命生活からタイに帰国。首相在任中の汚職などで禁錮8年の刑となったが2月に仮釈放され、早速セター・タウィーシン首相率いるタイ貢献党の政権に影響力を振るっている。

VOAが引用した匿名の情報筋によれば、タクシンは軍事政権と敵対する諸勢力との間を仲介する意向を示している。またミャンマー訪問の許可も求めているが、軍事政権から正式な返答はないという。

今回の一件との関連性は不明だが、タイでは最近、内閣改造への不満などから外相など閣僚が相次いで辞任。代わりにタクシンの長年の盟友、マリス・サンギアポンサが新外相に就任している。

マリス外相はチェンマイで非公式会談が行われたことを認めつつ「個人レベルのもので、タイ政府の政策の一部ではない」と強調。一方、「タクシン氏は著名で、コネクションがある。ミャンマーは彼が助けになると信じているようだ」とも付け加えた。

また7日、セター首相はタクシンの会談に関するいかなる情報を持っていないと表明。「そのような話し合いがあったかどうかは知らない。しかし、誰もがかの国に対して善意を抱いていると私は信じる」と語っている。

「黄金期」をもたらした男
ミャンマー国軍は8日、タクシンと民主派などとの接触に不快感を示した。だが今後、タクシンが仲介者として受け入れられる余地は十分ある。

なにせタクシンは2001年の首相就任後、国境紛争などで対立していたタイとミャンマー軍事政権の関係を改善させた実績がある。同年、タイ現職首相として初めてミャンマーを訪問。

政治学者のパビン・チャチャバルポンプンに言わせるとタクシン時代は両国関係の「黄金期」だった。
ただ、別の専門家は経済界出身のタクシンの対ミャンマー姿勢は、彼の外交政策全般と同様に「ビジネス志向」だったと指摘。「人権や民主主義よりも軍事政権との良好な関係を優先していた」という。

タクシンが今回も同じアプローチを取るかは不明だ。ただ、彼の影響力と政府への近さを考えれば、タイと内戦当事者との非公式協議のパイプ役にはうってつけだろう。

またタクシンは政府の役職に就いていないため、ASEANの内政不干渉原則に縛られない。このことがタイなどASEAN各国政府が消極的なNUGや武装勢力との会談に今回、結び付いたと言える。

とはいえ、戦闘が激化するなか、交渉による解決の可能性は依然として非常に低い。双方が話し合いに応じる時が来るまで交渉の窓口を開いたままにしておく以外、当面はできることがなさそうだ。【5月13日 Newsweek】
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“タクシンは政府の役職に就いていないため、ASEANの内政不干渉原則に縛られない”ということが話のミソのようです。

ただ、民主派勢力も軍事政権も中途半端な形で「停戦」というのはなかなか考えにくいところです。

****クーデター以降、軍の攻撃・弾圧で5000人が死亡 ミャンマーの人権団体が公表****
ミャンマーの人権団体は3年前のクーデター以降、軍の攻撃や弾圧によって死亡した人が5000人に上ったと明らかにしました。

ミャンマーの人権団体、政治犯支援協会(AAPP)は2021年2月にクーデターを起こした軍の攻撃や弾圧によって、5月10日時点で5000人が死亡したという集計を明らかにしました。

これまでに逮捕された人は2万6654人で、このうち2万人余りが依然、拘束されています。 また、これまでに166人が死刑判決を受けたということです。

ミャンマーでは軍と民主派勢力などとの戦闘が続いていて、犠牲者が増えることが懸念されます。【5月13日 テレ朝news】
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一方で、少数民族武装勢力は「自分たちの利権が守られるなら」軍事政権との停戦もありうるでしょう。

そのあたりにつけ込んで、軍事政権側が少数民族の分断や、民主派との離反を画策するというのは今後予想されるところです。

逆に言えば、民主派にとっては、少数民族側との連携をどこまで維持できるかが重要になってきます。
来日しているアウンサンスーチー氏を支持する民主派らが設立した「統一政府」(NUG)で教育、保健の両大臣を務めるゾーウェーソー氏と、少数民族武装勢力「カレン民族同盟」(KNU)で外交を担うソーニムロド氏が会見を開き、「連邦制と民主化を実現する」と強調しています。

****「連邦制と民主化実現する」=ミャンマー抵抗勢力幹部らが会見*****
ミャンマーでクーデターによって実権を握った国軍に抵抗する勢力の幹部らが15日、東京都内で記者会見し「連邦制と民主化を実現する」と強調した。日本政府に対しては、国軍に圧力をかけるよう求めた。

民主派組織「国民統一政府(NUG)」で「教育相兼保健相」を務めるゾーウェーソー氏は、2021年から続く内戦で子供を含む多くの民間人が犠牲になったと指摘。教育施設や病院が攻撃されていると述べ、「国軍は力を落としているが、残忍さは増している」と非難した。

共に会見した少数民族武装勢力のカレン民族同盟(KNU)で対外関係を担当するソーニムロド氏は、東部カイン州のタイ国境近くにある都市ミャワディを巡る攻防について「双方にとって戦略的に重要な拠点であり、戦闘を続けている」と話した。【5月15日 時事】 
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【悪化する国民経済】
軍事政権統治・内戦で国民生活の窮乏が顕著となっています。

****中間層ほぼ消滅、国民の半数が貧困生活 ミャンマー情勢で国連****
 軍と少数派武装勢力との戦闘で内乱の様相が深まるミャンマー情勢で国連開発計画(UNDP)は18日までに、国民の約半数が貧困ライン以下の日常生活を送る苦境に陥っているとの新たな報告書を公表した。

同国の総人口は約5400万人。このうちの49.7%が1日あたり76米セント(約117円)以下の収入で暮らしているとした。この比率は2017年以降、倍の水準に達した。

軍部がクーデターで実権を掌握してから約3年が経過したが、国内経済は急速に悪化。中間層の存在が消滅する瀬戸際まで追い詰められたとした。インフレ高騰で各世帯は食費、医療費や教育費の切り詰めを強いられた。

今回の報告書をまとめたUNDPの研究員らは、昨年10月の時点でミャンマー国民の新たな25%が貧困ライン以下の生活に突き落とされる間際にあるとも報告した。

この報告書の公開時以降、状況はさらにひどくなっている可能性にも言及。戦闘は一段と激しくなっており、日常生活を失った国民が増え、事業継続を断念した企業も拡大している可能性があるとした。

ミャンマーは11年の軍政から民政への移管後、経済、政治両面での改革もあり貧困率の削減などを達成。アジア開発銀行によると、16年には東南アジアで最高の経済成長率も誇った。世界銀行によると、11~19年の成長率は平均で年間6%に伸びていた。

民主化運動指導者のアウンサンスーチー氏率いる政権が軍部クーデターで崩壊した21年以降、事情は一変した。新型コロナウイルス禍の到来がさらに逆風ともなった。

UNDPのアジア担当責任者は、総体的に言えば、ミャンマー国民の約4分の3が貧困生活を強いられ、毎日を何とかしのいでいる国民も貧困ライン層へ突き落とされる忌むべき状態がまさにあることだと指摘。「貧困層を生み出す構造の深みは甚大」ともし、「中間層は文字通り消えつつある」とも評した。(後略)【4月18日 CNN】
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ジンバブエ  インフレ対応に苦慮 金本位制の新通貨発行

2024-05-14 23:01:32 | アフリカ

(アフリカ南部のジンバブエの銀行に、長蛇の列ができていた。目的は、新通貨への交換だ。【5月14日 テレ朝news】)

【かつて天文学的ハイパーインフレ 未だ安定せず2023年の物価上昇率は154%】
アフリカ南部のジンバブエ・・・形式的には私も行ったことがある・・・昨年10月に南アフリカをツアー観光した際に、ビクトリアの滝観光のためにジンバブエに入国し、2泊しました。・・・・もちろん、こうしたツアー観光の常でホテルと滝を往復しただけで、現地の暮らしぶりなどとは全く無縁。

ジンバブエで連想するのは、ムガベ前大統領時代の天文学的ハイパーインフレーション。インフレ率は2008年には5000億%を超えたとも言われていますが、数字は資料によって様々。もうこういう状態では貨幣・価格そのものが意味をなさない状況ではないでしょうか。

****ジンバブエドルとは?壮絶なインフレで廃止された通貨の歴史を分かりやすく解説!****
(中略)
ジンバブエとは
ジンバブエの正式な名称は、ジンバブエ共和国。アフリカ大陸の南部に位置しています。隣接する国は、南アフリカ共和国・ザンビア・ボツワナ・モザンビーク。国土の面積は日本より少しだけ大きく、38.6万平方キロメートルです。

2019年における人口は1,465万人で、ショナ族・ンデベレ族・白人といった民族で構成されています。経済の規模を示すGNI(国民総所得)は2019年で、204億米ドル(約2兆2,000億円)。おもな輸出品は、貴金属・タバコ・鉱石・ニッケル・鉄などとなっています。

近代の歴史についても振り返ってみましょう。ジンバブエは1980年に、ジンバブエ共和国として英国から独立しました。このときはムガベ首相が就任しており、1987年からはムガベ大統領となります。ムガベ大統領は6選され、2017年に事実上のクーデターが起こるまで大統領の座についていました。

その後2018年には総選挙が実施され、ムナンガグワ大統領が就任し、現在に至っています。「猛烈なインフレ」と言われる状況は、2000年から2009年の間に発生しています。

ジンバブエの通貨事情
ジンバブエにおける通貨の状況は、少し複雑です。現在ジンバブエの法定通貨となっているのは、2019年6月に導入された「RTGSドル」。これを新しいジンバブエドルと呼ぶこともあるようです。

最初のジンバブエドルは、1980年に導入されました。その後、激しいインフレにともなって、通貨の桁数を切り捨てる「デノミネーション」が数回おこなわれています。この旧ジンバブエドルは、2015年に通貨としての廃止が決定されました。公式の廃止は2015年ですが、2009年には事実上、流通が停止されています。

2009年1月に導入されたのは、複数外貨制。おもに米ドル、南アフリカランドが使われるようになりました。さらに2014年1月からは、日本円、中国元、豪ドル、インド・ルピーが新たに法定通貨として導入されます。2016年には、ジンバブエ国内だけで流通するボンド紙幣も導入されました。

2019年にはRTGSドルを唯一の法定通貨としましたが、紙幣不足を補うため、2020年に米ドルが再導入されることになります。(中略)

ジンバブエドルが廃止されるまで
ジンバブエドルは、2000年頃から激しいインフレーションを起こし、ついにはハイパーインフレーションという状況になりました。最終的には2009年に流通停止となり、2015年には通貨としての廃止に至ります。インフレやハイパーインフレの意味を確認しながら、ジンバブエドルのたどった歴史をくわしくみていきましょう。

ハイパーインフレの始まり
ジンバブエドルが最初に発行されたのは、1980年のこと。当初の交換レートは、1米ドル=0.68ジンバブエドルでした。英国から独立して以来、ジンバブエのムガベ大統領は、旧支配層に対する弾圧的な政策を実施していました。2000年には、白人が所有する土地を強制収用する法律を制定し、結果として農業の崩壊を招いています。これにより物の供給が不足することになり、ハイパーインフレの要因となりました。

激しい物価上昇のなか、ジンバブエ準備銀行は通貨の供給を減らしませんでした。公務員や兵士への給与を上げるため、政府が支払いに必要な通貨の発行を命じていたようです。これもインフレを加速させる要因と言えるでしょう。

また弾圧的な政策がつづくことで、富裕層が海外へ脱出し、治安も悪化しました。その結果、ジンバブエドルの為替市場での価値が下がり、輸入する際の値段が上がったことも物価上昇につながっています。

ジンバブエドルが廃止されるまでの流れ
ジンバブエにおけるインフレ率を、公式発表でみてみましょう。2000年が56%で、2003年には385%、2006年に1,281%を記録し、2008年には355,000%と発表されています。しかし実際にはこれよりはるかに高い数字だったようです。2008年における非公式の報告では「6月のインフレ率は1,120万%に達した」「7月のインフレ率は2億3,100万%」などとなっています。

こうしたハイパーインフレの状況では、物の値段が短期間に数10倍、数100倍…、と上昇します。物の価格を表示するのが、困難な状況です。これに対応するため、新しいジンバブエドルの発行と、デノミネーションが繰り返されました。デノミネーションとは、通貨単位を切り上げたり切り下げたりすることで、ジンバブエでは切り下げがおこなわれています。

2006年に2番目のジンバブエドルが発行されたときは、デノミネーションにより3桁の切り捨てが実施されました。2008年のデノミネーションでは、10桁が切り捨てられ、100億ジンバブエドルと新1ジンバブエドルが交換されることになりました。これが3番目のジンバブエドルになります。

それでもインフレは収まらず、2009年1月には100兆(100trillion)ジンバブエドル紙幣が発行されています。その直後の2009年2月に、12桁を切り捨てた4番目のジンバブエドルが発行されました。

2009年1月からは複数外貨制を導入し、米ドルと南アフリカランドが使用されるようになります。2009年2月に政府は、公務員給与を米ドルで支払うと発表し、ジンバブエドルの流通は事実上停止となりました。

2015年にはジンバブエドルの廃止が公式に決定され、同年の9月までに回収を終えています。自国の通貨は放棄しなければなりませんでしたが、外貨を使用することでハイパーインフレは終息しました。(中略)

ジンバブエの現在(筆者注:この記事がかかれた2021年当時の状況です)
2019年6月、ジンバブエ中央銀行は暫定通貨RTGSドルを唯一の法定通貨として指定しました。しかし2020年3月には、インフレによる紙幣不足への対策として米ドルも再導入しています。

ムガベ政権が終わった後、ムナンガグワ大統領が経済改革を進めていますが、外貨不足やロックダウンの実施などにはばまれているようです。

インフレについても燃料価格の高騰などから、2019年8月にインフレ率が前年同月比300%を超えたと言われています。2020年の経済成長率もマイナスで、経済が不安定な状況はまだつづきそうです。【2021年10月10日 楽天 みんなのマネ活】
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2008年当時の狂気のようなハイパーインフレーションは終息したものの、依然として高率のインフレが続いており、国連経済社会局が1月4日に発表した報告書「2024年の世界経済情勢と展望」によると、ジンバブエの2023年の物価上昇率は154%、24年予測は86%となっており、いずれもアフリカにおいて内戦が続くスーダンに次に高い数字となっています。(1月12日 JETRO“2023年のアフリカの物価上昇率は18.3%、2024年は14.5%との予測”より)

【模索する政府 対応に苦慮する国民】
政府もいろいろと模索はしたようです。 2022年には金貨を発行。

****ジンバブエ、インフレ抑制策で金貨導入****
ジンバブエは25日、インフレ抑制と米ドル依存の緩和を目的に、金貨を導入した。有名なビクトリアの滝にちなんで「モシ・オア・トゥニャ(雷鳴とどろく水煙)」と命名された金貨は、純度91.7%(22金)で重さ約31.1グラム。銀行が国際金相場で販売する。

シリアルナンバー入りの金貨は換金でき、国際取引も可能だ。1枚当たりの価値は22日時点で1725ドル(約23万5000円)相当。購入者は証明書付きで現物を所有するほか、銀行の金庫に預けることもできる。

政府は、インフレが急進しジンバブエ・ドルの下落が止まらない中で、金貨導入は経済へのてこ入れになると主張している。

金貨の鋳造枚数は不明。ジンバブエは金の主要産地で、材料には地元産の金を使用する。

ジンバブエの(2022年)6月のインフレ率は191.6%で、米ジョンズ・ホプキンス大学のスティーブ・ハンケ教授(応用経済学)によれば、公式数値で世界最悪の水準だ。ジンバブエ・ドルへの信頼は非常に低く、商品やサービスの価格設定はほぼ米ドルが基準となっている。

ただし、専門家は金貨導入の効果には懐疑的だ。経済学者のプロスパー・チタンバラ氏は「マクロ経済を安定させるという点で大きな効果はないだろう」とAFPに語り、ほとんどのジンバブエ国民は非常に貧しく、金貨を購入する余裕はないと指摘した。

同じく経済学者のギフト・ムガノ氏も、暗号資産(仮想通貨)が普及する中での金貨導入について「金で取引していた19世紀に逆戻りしているようだ」と一蹴。「わが国はもっとデジタル金融やデジタル通貨に注力する必要がある」と述べた。 【2022年7月25日 AFP】
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しかし状況は改善せず。

****「100兆ドル札」のジンバブエ、お釣りはゆで卵?****
ハイパーインフレが新たな段階に

ある日の午後、ルテンド・マニョワさんはジンバブエの首都ハラレにある人気のファストフード店でチキンとフライドポテト、ソフトドリンクを注文した。代金3.5米ドル(約460円)を支払うのに5ドル札を差し出すと、レジ係からお釣りの代わりに、店の名前と次回の購入時に使える金額が記された紙を3枚渡された。

かつて100兆ドル札をこの世にもたらしたジンバブエで、通貨の機能不全が新たな段階に入っている。小額通貨の不足で事業者が独自の「紙幣」――顧客が今後の買い物の支払いに使える紙片(手書きのこともある)――の発行を始めた。釣り銭分としてジュースやペン、チーズなど現物を渡すところもある。

こうした苦肉の策を生んだのが20年にわたる通貨管理の失敗だ。(後略)【2023年3月29日 WSJ】
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【新通貨ジンバブエ・ゴールド 金本位制採用 世界第2位の金埋蔵量、ただし金密輸が横行】
そして政府は今年4月、金を裏付けとしたジンバブエの新通貨ジンバブエ・ゴールドを発行しましたが、切り替えの発表が数日前だったため大混乱を招いたようです。

****新通貨ジンバブエ・ゴールド、波乱のスタート 旧通貨は無価値に****
金を裏付けとしたジンバブエの新通貨ジンバブエ・ゴールドが今週、波乱のスタートを切った。店舗は米ドルでの支払いしか受け付けず、銀行の前には困惑した人々が預金を引き出そうと長蛇の列を作っている。

旧通貨ジンバブエ・ドルが過去1年間で暴落し、高インフレに見舞われた同国は8日、新通貨の運用を開始した。だが、切り替えの発表が数日前だったため、多くの国民は準備ができていなかった。

大半の銀行は9日、新通貨に移行するためにシステムをオフラインにした。そのため首都ハラレでは、預金を引き出そうとする多くの人が銀行の前に何時間も並ぶ事態が起きた。

通貨切り替えによって、すでに価値がほとんどなかった旧通貨は、一夜にして完全に無価値となった。ハラレ郊外のカンブズマの路上では、子どもたちが旧紙幣の束で遊んでいた。中心部のビジネス街では路上に旧紙幣が捨てられていたが、誰も拾おうとしなかった。

一方、現時点では新通貨を入手することは不可能だ。 中央銀行は6日、新紙幣は印刷中で4月30日までは用意できないと発表した。

ハラレの公共交通機関は旧通貨での支払いを拒否しており、料金を平時の短距離料金の2倍に当たる一律1米ドルに設定しているため、足止めを食らった人もいた。

多くの店舗や屋台も同様に米ドルでの支払いしか受け付けず、硬貨が不足しているため、釣り銭の代わりにビスケットやキャンディーを渡している。

ハラレで商店を営むジュリアス・ムザさんはAFPに対し、客が旧通貨を「捨てる」ために急に店に殺到していることに気付き、取り扱いをやめたと語った。 【4月10日 AFP】
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切り替えの発表が数日前、しかも新紙幣は印刷中で月末までは用意できない・・・信じ難い対応ですが、かつてのハイパーインフレーションの経験に比べれば物の数ではない・・・でしょうか。

金を裏付けとした新通貨ジンバブエ・ゴールド・・・金本位制の復活です。
日本でも戦前の激動の昭和に、金解禁めぐる(金貨及び金地金の輸出許可制を廃止して金本位制に復帰すること)を激しい政策論争がありました。

世界的には、かつて金と交換できた米ドルの金交換停止が1971年に発表され、世界を震撼させました。ニクソン訪中宣言に続く第2次ニクソンショック(あるいはドルショック)と呼ばれたものです。

そうした「歴史」の世界の話にもなりつつあった金本位制を採用するというのは・・・

****国民混乱「バスでケンカ」も ハイパーインフレで経済崩壊…ジンバブエ“新通貨”流通****
かつて100兆という額面の紙幣が発行されるなど、ハイパーインフレに苦しんだジンバブエで、新たな通貨の流通が始まった。長く続く通貨危機の解決につながるのか?(中略)

新通貨の導入で混乱も
銀行を訪れた人「通勤のバスでは、通貨の変更で人々がケンカしたり叫んだりしていました」
新通貨の導入で混乱する人々。その背景には、迷走する経済政策があった。

長年の経済破綻状況…国民からは不安の声
(中略)
ムナンガグワ大統領 「経済を回復させ、若者の雇用を確保することで国民の貧困を減らしていく」
ムナンガグワ大統領は経済政策を次々と打ち出し、2022年には金貨を法定通貨にする試みも行ってきた。 今回の「ジンバブエ・ゴールド」も、こうした経済政策の一環なのだ。

ジンバブエ中央銀行総裁 「通貨が安定することで、日々の大きな価格変動が確実に起こらなくなります」

しかし、国民からは長年の経済破綻状況から不安の声が上がっている。
銀行を訪れた人 「お金の価値が分からない。銀行に価値を聞いても、分からないといわれました」

新通貨はインフレ防ぐこと可能だが…経済成長停滞する恐れも
新たに導入された通貨「ジンバブエ・ゴールド」には、これまでとは大きく違う特徴があるようだ。 AP通信によると、ジンバブエ・ゴールドは「金本位制」を採用しているという。

金本位制とは、政府や中央銀行などが保有している金といつでも交換できることを保証することで、その通貨の価値を担保するというものだ。

これにより通貨の価値は安定し、インフレを防ぐことができるというメリットがある。

一方で、金の保有量で発行できる通貨の上限が決まるため、十分な量の通貨を発行できず、経済成長が停滞する恐れもある。 そのため、現在ではほとんどの国が、金本位制を採用していない。

ジンバブエ・ゴールドに金本位制を採用した背景
そうしたなかでも、ジンバブエ・ゴールドに金本位制を採用した背景には、ジンバブエが資源大国であることが大きいようだ。

在仏ジンバブエ大使館のホームページによると、アフリカ大陸の南部に位置するジンバブエには豊富な鉱山資源が眠っていて、特に金は1平方キロあたりの埋蔵量が世界2位。確認埋蔵量(=現在の技術で回収可能とされる埋蔵量)は1300万トンに達するということだ。

多くの金を国外へ密輸
一方で、埋蔵量に見合った金を国が獲得できていない現状もある。  AP通信によると、ジンバブエの2021年の金産出量はおよそ30トンだったという。

実は、採掘業者らは金を中央銀行に売却することが定められているにもかかわらず、アメリカドルを得るために、多くの金を国外へ密輸しているという。 その量は、年間の産出量を超えるおよそ36トンに上るという。

一貫性がないように見える政府のジンバブエ・ゴールドへの対応
こうした背景もあってか、政府のジンバブエ・ゴールドへの対応は一貫性がないように見える。
政府は、企業にジンバブエ・ゴールドのみの使用を命じ、違反した場合は罰則も設けているという。

その一方で、一部の政府機関ではアメリカドルのみを受け入れているという。そのため、南アフリカの経済学の専門家は「政府が最初にジンバブエ・ゴールドを受け入れなければ、国民が続くことはない」と指摘している。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年5月14日放送分より)【5月14日 テレ朝news】
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世界第2位の金埋蔵量というのが話のミソのようですが、その金も実際に国庫におさまって意味があるもの。ジンバブエの場合はどうでしょうか・・・・結局保有する金が不足してジンバブエ・ゴールド発行も大きく制約され、米ドル経済が続く、あるいは、新通貨金交換で大きな混乱が生じるということになるような感も。
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インドの民主主義は病んでいる  「世界最大の選挙」を実施中も、その民主主義には疑念も

2024-05-13 22:00:37 | 南アジア(インド)

(【4月18日 NHK】)

【世界最大の選挙】
インドでは有権者9億7千万人を対象に、世界最大の選挙が行われています。
投票所は約100万カ所に設置、約1500万人をスタッフを配置する・・・という規模の選挙ということで、4月19日から6月1日までの約1か月半の期間に、州や地域ごとに7回に分けて投票が行われ、6月4日に全国一斉開票されます。

****<14億の選択>山越え、ジャングルを抜け… あと1カ月投票続く「世界最大の選挙」****
世界最多の14億人が暮らすインドで総選挙の投票が続いています。6月1日まで、1カ月半に及ぶ長期戦。なぜこんなに時間がかかるのでしょうか? 「世界最大の選挙」の仕組みを解説します。

インドの面積は世界で7番目に広い328万7263平方キロで、有権者の数は日本の人口の8倍近い約9億7000万人に上ります。日本の国会議員にあたる下院議員を選ぶ今回の選挙では、約100万カ所の投票所が設けられることになっています。

投票が1カ月半もの長期間に及ぶのは、国土の広さと有権者の多さが影響しています。膨大な人数の担当者を投票所に配置して、州や地域ごとに7回に分けて投票が実施されるからです。

4月19日の1回目の投票では約18万7000カ所の投票所を設置し、運営に関わった職員の数は180万人に上りました。選挙管理委員会によると、41機のヘリコプターと84本の特別列車、10万台近い車両を駆使し、これらの職員や安全を守るための治安要員を各地の投票所に運んだそうです。

 ◇時には象やラバにまたがって
「私たちは、雪山の中でも、ジャングルの中でも入っていきます。すべての人々が投票できるように馬やヘリコプターを使い、象やラバにも乗ります」(選管委員長のラジブ・クマール氏)

最も高地に設けられるのは、中国との国境地帯にある北部ヒマチャルプラデシュ州の標高4650メートルの村にある投票所です。世界各地の選挙で「最も高い場所にある投票所」と言われます。

地元メディアによると、北東部アルナチャルプラデシュ州の山深い村では、村に住むたった1人の有権者のために、選管職員らが40キロの道のりをトレッキングして、投票所を開設したそうです。

こうした地道な努力の成果もあってか、2019年の総選挙の投票率は、約67%と過去最高を記録しました。今回も最初に投票があった各地の投票所では、朝から多くの人々が列を作りました。(後略)【5月2日 毎日】
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【与党圧勝の予測】
選挙結果については、モディ首相率いる与党「インド人民党」が、これまでの経済成長や国際社会でのインドの存在感増大といった成果をアピール、更にヒンズー至上主義で多数派ヒンズー教徒の支持を固めて圧勝するというのが大方の予測です。

****インド下院選、与党連合が圧勝の勢い=世論調査*****
最新の世論調査によると、インドで今月から始まる下院総選挙は、モディ首相が率いる与党連合が全体の75%近い議席を獲得して圧勝しそうだ。最大野党の国民会議派は、過去最低議席に沈むと予想されている。

モディ政権下では、雇用創出は低調で格差も拡大した。しかし経済成長率は高く、各種補助金が拡充されたほか、ヒンズー至上主義を掲げて多数派のヒンズー教徒を取り込んでいるため、高い支持率を誇っている。

こうした中で総選挙告示後最初の主要世論調査として地元テレビ局CNXが発表したところでは、与党連合「国民民主同盟」は543議席のうち過半数の272議席を大きく超える399議席を手に入れ、モディ氏の属するインド人民党(BJP)だけでも342議席を確保する見通し。

一方で国民会議派は2019年の前回選挙時の52議席から38議席に後退し、14年の44議席にも届かず過去最低になりそうだ。

今回400議席超えを目標に掲げている与党連合は、19年は350議席強だった。【4月4日 ロイター】
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【選挙直前の野党党首逮捕 今回選挙が“民主的”に行われているのか疑念も】
冒頭記事のような“雪山の中でも、ジャングルの中でも・・・”といった話を聞くと、さすが「世界最大の民主主義国」という感もありますが、モディ首相の統治、そして今回選挙が“民主的”に行われているのかという点では大きな疑念ももたれています。

“インドでは「民主主義の根幹である選挙」が正しくできていないのではないか? 専門家が指摘”【3月26日 ニッポン放送 NEWS ONLINE)】

その疑念を象徴するのが選挙直前になされた有力野党党首の逮捕でした。

****インド野党指導者を逮捕 下院選直前、強権批判も****
インドの捜査当局は21日、酒類販売政策を巡る汚職事件に関連し、デリー首都圏政府のケジリワル首相を逮捕した。地元メディアが報じた。

インドでは4〜6月に下院総選挙が実施される。直前に野党連合のリーダーの一人であるケジリワル氏が逮捕され、野党側はモディ政権の強権姿勢を示していると批判した。

与党インド人民党(BJP)を率いるモディ首相は高い支持率を誇る。野党連合は下院選で苦戦を強いられそうで、今回の逮捕はさらなる打撃となる。ケジリワル氏はデリー首都圏や北部パンジャブ州で強い勢力を持つ庶民党を率いている。  ケジリワル氏の逮捕容疑は不明。【3月22日 共同】
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ケジリワル氏は首都圏で強い反モディ勢力の有力者です。そのケジリワル氏が選挙開始直前に逮捕されるというのは偶然ではないようにも・・・。

アメリカもこの件を批判していますが、インド政府は「内政干渉」として取り合っていません。

****インド、米の「内政干渉」に抗議 野党指導者の逮捕巡り*****
インド政府は27日、野党指導者の逮捕を巡る米国の「内政干渉」に強く反発した。

4月19日からの総選挙を控える中、インド当局は先週、野党・庶民党(AAP)を率いるデリー首都圏政府首相のアルビンド・ケジリワル氏を汚職容疑で逮捕した。 AAPは「でっち上げ」による不当な逮捕だとしている。

米国務省報道官は25日、ケジリワル氏逮捕に関する報道を注視しており、公正な法的手続きを促すと述べた。

これを受けてインド外務省は27日、ニューデリー駐在の米代理大使を呼んで抗議した。

同省は声明で「インドの法的プロセスは客観的で時宜を得た結果を約束する独立した司法に基づいている。それを非難するのは不当だ」と指摘。「外交において、国家は他国の主権と内政を尊重することが求められる」などとした。

主要野党の国民会議派も先週、所得税に関する訴訟を巡り、銀行口座が凍結されたとし、政治的な動機による措置だと批判した。

連邦政府とモディ首相の政党は政治的な関与を否定している。【3月28日 ロイター】
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【他国の指摘に過敏に反応するインド 西側諸国も及び腰】
民主主義への疑念を抱かせるインド・モディ政権の対応への批判は多くの西側諸国にとって、国際的存在感を増すインドが相手ということで容易ではなく、アメリカにしても、対中国包囲網にインドを取り込みたい思惑がありますので、インド批判は腰が引けたものになりがちです。

****【インドの民主主義は病んでいる】圧勝確実の政権が続ける野党抑圧、西側諸国は問題提起できるか****
(中略)近年、モディ政権の強権化とインドの民主主義の弱体化などが強く懸念されている。
フィナンシャルタイムズ紙の4月3日付け社説‘The ‘mother of democracy’ is not in good shape’は、著名な野党指導者のアルビンド・ケジュリワルの逮捕など野党陣営に対する政権側締め付けが目立ち、インドの民主主義の後退が懸念されることについて、西側民主主義国は口をつぐむべきでないと論じている。要旨は次の通り。

*   *フィナンシャルタイムズ紙社説要旨*   *
自由な言論と野党に対する締め付けは、特に5年前の総選挙における2度目の勝利の後において、モディのBJP(インド人民党)の支配に特徴的である。

税務当局や司法当局による政府批判に対するハラスメントは日常のこととなった。BJPのヒンズー国家主義はインドの世俗的な民主主義の伝統を浸食している。

野党や野党政治家に対する抑圧に法執行当局が使われ、それは強化されている。その明白な例は2015年以来デリー連邦直轄領の首相を務め、最も著名な野党指導者の一人であるアルビンド・ケジュリワル(AAP(アーン・アアダミ党)の幹事長)が3月21日に逮捕されたことだ。彼は経済犯罪を取り締まる機関によって酒類販売に係わる「詐欺」に関して尋問された後に拘束された。

他の野党の幹部も法執行当局によって逮捕されハラスメントを受けている。BJPは、逮捕は政治的動機によるものでなく腐敗を根絶するモディの努力の一環だと言っている。野党はBJPの幹部やモディの仲間は誰も逮捕されていないと反論する。

BJPが野党陣営の締め付けを必要と思っていることは不可解である。世論調査によれば、BJPは3度目の5年の任期に向けて順調に進んでいる。

ライバルはBJPに代わる強力な選択肢を提示できていない。野党の統一戦線として組織されたはずのIndia National Development Inclusive Allianceは、内輪もめとBJPへの鞍替えにつきまとわれて来た。

インドは今日、世界で最大で最も活力ある経済の一つである。インドはその文化と伝統に従って民主主義を運営する必要がある。

米国、英国、その他幾つかの西側の民主主義体制には疲労の徴候が見られる。しかし、モディの民主主義擁護のレトリックと現実の間のギャップは広がっている。

これは、単にその国民の権利と自由にとっての問題ではない。インドの投資にとっての魅力、および権威主義的な中国を警戒する諸国にとっての地政学上のパートナーとしての魅力は、インドの民主的で法に基礎を置く国としてのイメージに主として依拠するものである。

インドの意を迎えたいとの願望ゆえに、西側民主主義諸国は往々にして民主主義の後退に口をつぐむことになる。しかし、それには変化の徴候が見える。

ニューデリーが米国大使館の次席を招致してケジュリワルの逮捕についてのワシントンの批判に抗議したが、その後も米国はその懸念を繰り返した。他の民主主義諸国も同様に強くあるべきである。

政治的自由の保全は、インドの成長と繁栄、およびグローバルな社会の指導国家としてのインドの役割を高めたいモディの政府の野心に資することである。
*   *   *
(論評)
権力保全のための「腐敗の摘発」
上記の社説が特に取り上げているケジュリワルの一件は、選挙直前の時期にたまたま起きた事件のようには見えない。他の野党指導者の逮捕など一連の抑圧的措置の一環と思われる。BJPは、腐敗の根絶のために法執行当局がその仕事をしているに過ぎないと言うが、腐敗の摘発が権力保全の関連で世界のあちこちで使われていることは指摘するまでもない。

議会下院選挙は、モディのBJPの圧勝が確実視されている。モディの人気は高く支持率は78%に達する。
543議席のうちBJPを中核とする与党連合で400議席を獲得することさえあり得る状況のようであるが(現在は346)、BJPによるヒンズー主義の強権的な政治に鑑みれば、寛容で世俗的な国であるはずのインドの将来が懸念される。

しかも、モディの後継者は更に極端なヒンズー主義者(例えば、内務相のアミット・シャーやウッタル・プラデシュ州首相のヨギ・アディティヤナート)かも知れないという憶測がある。

そのようなインドとどのように付き合うのか?そのインドは諸外国から国のあり方を批判されることに神経過敏に反応することがケジュリワル逮捕の一件でも明らかになっている。

3月28日、副大統領のジャグディープ・ダンカール(BJP)はニューデリーにおける米国法曹協会の会合で「世界にはわれわれの司法における振舞いについてわれわれにレクチャーをしたがる人々がある」「われわれは他人から教典を押し頂くような国ではない。われわれは500年を超える文明的精神を有する国である」と述べたと報じられている。

他国もインドを戒められるのか
上記の社説は、インドの民主主義の後退に口をつぐむことを戒め、他の西側諸国も米国に倣いインドに問題を提起すべく強くあるべきことを求めている。しかし、米国だけにはできても、他の諸国にとっては困難こともある。

例えば、昨年、インド政府の関与が疑われるシーク教徒の活動家の暗殺に係わるカナダと米国での事件が明るみに出たが、インドの両事件に対する対応の顕著な違いは、(両事件は性格を同じくはしないが)このことを想像させるに十分である。インドは、カナダの告発は馬鹿げているとしてカナダには激越な反撃に出た。

他の西側諸国はインドの地政学的な重要性を踏まえて個々のケースに慎重に対応せざるを得ないであろう。もっとも、米国とて、地政学的な観点は重視せざるを得まいが。

リチャード・ヴェルマ(国務副長官・元駐インド大使)は、2月20日、ニューデリーで講演したが、その中で「われわれはわれわれを結束させている共通の価値を遠く逸脱することは出来ないと知っている」「われわれの目標がもっぱら取引的なものとなるなら、60年代、70年代そして80年代の失われた時代に逆戻りするリスクを冒すことになる」と述べた。

正しくそういうことであろう。モディがなるべく早くこれに気付くことが望まれるが、その兆候はない。【5月10日 WEDGE】
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【実現していない農村部の経済底上げ 改めて農村支援策】
モディ首相のもとでインド経済は高い成長率を実現していますが、インドの問題点である農村部の所得倍増、都市部との格差是正はこれまで実現していません。

モディ首相・与党は、改めて農村支援策を打ち出しています。

****印モディ政権が農村支援策、1人当たり所得50%増 都市との格差是正****
インドのモディ首相が、農村部の1人当たり所得を50%引き上げる目標を立てた。同国では下院総選挙の投票が実施中で、モディ首相は3期目続投を目指している。

政府の文書によると、企業の投資対象に占める農業分野の割合を現在の15%から25%に増やし、小規模産業の強化を通じて非農業部門の雇用を拡大し内陸農村部の所得を引き上げる計画。

モディ氏が農業部門の改革と農村の生活水準向上を重視するのは、任期中に拡大した都市部との格差をこれ以上悪化させることなく高成長を維持するために不可欠だからだ。

モディ氏は1期目で2022年までに農家の所得倍増を実現する目標を掲げたが実現できなかった。21年には農業改革法案が農家の激しい抗議にあい廃案に追い込まれた。

米シンクタンク、カーネギー国際平和財団の南アジア政治・経済の専門家、ミラン・バイシュナブ氏は、国内総生産(GDP)における農業の比率は縮小しつつあるが、なお労働人口の40%以上を占めるとし、農業はモディ氏の経済運営の成果に影響すると指摘した。

モディ氏は、英国の植民地支配から独立してから100年となる2047年までの先進国入りを目指している。【5月8日 ロイター】
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【野党は若者失業率の高さを争点に その選挙結果への影響は?】
“病んだ”民主主義のもとで“圧勝”が予測される与党ですが、懸念材料としては若者の失業率の高さがあります。

****インド、若者失業率の高さが総選挙の結果にどう影響するか―独メディア****
2024年5月12日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、インドで行われている総選挙で若者の失業率の高さが結果に影響を与える可能性について報じた記事を掲載した。

記事は、インドではここ数年道路や橋を始めとする各種インフラ工事を積極的に進め、経済振興と雇用の創出を図っているものの「その努力はなおも明らかに不足している」とし、22年度(22年4月〜23年3月)の国内失業率がモディ政権発足前の13年度の4.9%から5.4%に上昇したと紹介。民間シンクタンクのデータによると、今年2月の失業率は8%にまで上昇したと伝えた。

また、政府のデータでは、技術レベルの低下や高い技術を必要とする作業の不足など種々の理由により22年度には15〜29歳の約16%が仕事に就いていないことが明らかになり、民間シンクタンクはこの数字が45.4%に上ると指摘していることも紹介。

毎年膨大な若者が労働力市場に入る一方で、これに見合う高収入な職位を提供できていないことがインド政府にとっては大きな課題になっているとし、モディ首相を始めとするインド政府首脳部は「人口ボーナス」を強調しているものの、専門家からは「十分な雇用機会を提供できなければ、人口ボーナスは人口負債に変わってしまう」と警告したことを伝えている。

(中略)有権者の間では失業問題が投票先を左右する大きな焦点の一つになっており、現地のシンクタンクが4月に実施した世論調査では62%が「以前より仕事が探しにくくなった」と答えるとともに、27%が今回の選挙で投票先を決定する大きな要素として「失業」を挙げたことが明らかになったとした。

記事は、与党のインド人民党が選挙活動において基本的に失業問題の議論を避ける一方で、最大野党は失業問題をその他の経済や社会問題とともに重点的に訴えているとし「有権者が誰の主張を受け入れたのか、与野党ともに選挙結果が発表される日を今や遅しと待っている」と伝えた。【5月13日 レコードチャイナ】
********************

若者失業率と併せて、インフレの進行も野党側は争点としています。
経済状況に対する強い不満がインド人民党にとって逆風になる可能性もありますが、モディ氏にはそうした不満を覆い尽くすほどの個人の人気があります。

貧しいお茶売りの少年が、国のトップまで上り詰める。インドが台頭する中でアメリカや日本、ヨーロッパの首脳と渡り合う・・・“インディアン・ドリーム”の象徴でしょう。
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北朝鮮  極端な圧政で抵抗する気力・体力もなく生き抜くだけで精一杯の国民

2024-05-12 22:59:41 | 東アジア

(【4月28日 TBS NEWS DIG】)

【薬物蔓延 国民の心身が蝕まれ、社会そのものが衰弱】
北朝鮮の強権支配・国民弾圧が常軌を逸していることは今更の話です。

そのような理不尽な政治体制が目立った抵抗もなく(権力内部での窺い知れぬ争いはあるのかもしれませんが・・・)体制がつづくというのは不思議なことにも思えますが、北朝鮮ほどに徹底した恐怖政治のもとでは人々は自分が生きるのに精一杯で、抵抗とか抗議とか行う余裕もないのでしょう。

いかんともし難い現実の重圧から逃れるために薬物に依存する人々も少なくないようです。

****「この国はもうオシマイ」北朝鮮を脱出した女性が見た崩壊する社会の生々しい現実****
最近、北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンプクト)で、アヘン中毒にかかった住民が死亡する事件が相次いで発生したという。

デイリーNKの道内の情報筋によると、今月13日、吉州(キルジュ)郡ではアヘン中毒で離婚され、一人暮らしをしていた50代の男性が自宅を訪ねてきた人民班長(町内会長)によって死亡した状態で発見された。

普段から1日に2回以上アヘンを服用してきた彼は、今年に入って借金を返せないほどの経済難ためアヘンを手に入れることができず、情緒が不安定になっていたという。

また、3日にはアヘン中毒になってまともに経済活動ができずに家まで売って放浪生活をしてきた50代の男性が、路上で亡くなっているのが発見されたという。

北朝鮮でアヘンはかなり以前から「万能薬」と誤解されている。下痢など比較的ありふれた症状でもアヘンを服用するほど多く使われる。そうして医薬品の代わりにアヘンを使用し、その過程で量を調節できなかったり、過度に頻繁に服用したりして中毒者が発生する。

北朝鮮ではほかにも、「オルム(氷)」と呼ばれる覚せい剤の乱用が深刻だ。金正恩政権になって以降、北朝鮮当局は覚せい剤など違法薬物の根絶に向け、様々な手を打ってきた。それでも、乱用が下火になる兆しは一向に見られない。

日本に在住する脱北者のAさん(40代の女性)は、薬物の蔓延が北朝鮮を離れる決定的なきっかけだったという。
「隣家の10代の学生が覚せい剤中毒になって大変な騒ぎとなった。それをきっかけに薬物について独自で調べたところ、あまりにも薬物が蔓延する実情を見て、この国(北朝鮮)はもうオシマイだと思い、脱北を決意した」(Aさん)

また、咸鏡北道の別の情報筋は以前、韓国デイリーNKに対し、「中学生も覚せい剤をやらなければいじめられ、主婦は人民班(町内会)の会議の前にキメてくる。人民保安省の機動巡察隊員も夜勤の際にやっている。以前は挨拶代わりにタバコを差し出すのが習慣だったが、最近では顔を合わせると覚せい剤をやるようになった」と証言していた。 こうした状況は、今も大きくは変わっていないという。

金正恩体制は、国民に対する統制をますます強めており、脱北者の数も大きく減っている。彼の強権が、国民の反発によって脅かされる兆候は今のところ見えない。ただ、国民の心身が蝕まれ、社会そのものが衰弱していけば、国力そのものが弱体化する。

薬物不足の「入口」となっているのが医薬品不足ならば、それを解決できるかどうかが、金正恩体制の運命に直結する可能性もある。しかし、金正恩体制はこれまでのところ、民生を改善する能力を見せたことがないのだ。【4月26日 デイリーNKジャパン】
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【今年から公開された韓国の脱北者報告】
徹底した情報非公開を貫く北朝鮮の内情は表だった方法では得ることができません。一番詳しい内情は脱北者から得ることもできますが、脱北者の情報は自分たちを被害者に見立て、韓国が欲しがる情報を提供するために偏りもあるとの指摘もあります。

そこはともかく、韓国はこれまでは脱北者の調査結果を公表してきませんでした。理由は、韓国が北朝鮮のことをどれぐらい理解しているかを北朝鮮に知られないため・・・とも。北に融和的な前政権時代は北へ“配慮”もあったのでは。

しかし、今年はその調査結果が公表されました。 北朝鮮の人権問題を切り口に国際世論を見方につけて、最終的には北朝鮮の核やミサイルの問題に持っていきたいとの尹錫悦政権の戦略だとも指摘されています。

****韓国、脱北者報告を公表 食糧配給の減少や市場への依存浮き彫り****
韓国統一省は6日、脱北者への聞き取り調査に基づく北朝鮮の経済・社会状況に関する報告書を初めて公表した。
過去10年間に韓国に定住した脱北者の半数以上が政府から配給を受けたことがなく、闇市場に頼っていたことが明らかになった。

2013─22年に6300人以上の脱北者に対し聞き取りを行った。同省は10年に調査を始めたが、結果を公表するのは今回が初めて。

それによると北朝鮮で政府の食糧配給を受けたことがなかったのは、2000年以前の脱北者の62%で、16─20年に到着した人では72%強だった。

2000年以前の脱北者の約3分の1が給与や食料を受け取っていないと答えたが、16─20年の脱北者では約半数に増えた。

回答者全体の94%近くが市場でお金を稼ぐことができると答えた。家計収入のうち非正規収入が占める割合は、2000年以前の脱北者で約39%、16─20年では69%に拡大した。

金暎浩統一相は報告書で「北朝鮮では住宅、医療、教育環境が未整備で、生存のために生活の多くの面で市場化が続いていることが確認された」と指摘した。【2月6日 ロイター】
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【「苦難の行軍」の時期より厳しかったコロナの期間 毎日のように飢え死にする人々】
“16─20年”では現状とはややタイムラグもあるかも。
“生存のために生活の多くの面で市場化が続いている”とのことですが、金正恩政権は市場経済を抑制し、国営企業・国営商店を中心とするかつての(まがりなりにも社会主義経済がそれなりに回っていた時代の)国家が管理する経済に戻していこうとする動きが見られます。

しかし、配給などの国家による施策が十分になされないまま、市場が抑制されれば、国民の多くは生活のための術を失うことになります。

****「沢山の人が死にました」脱北者が撮影した北朝鮮内部映像 飢えて倒れる人の姿も****
北朝鮮からの脱北者の単独インタビューです。北朝鮮はコロナを理由にほぼ4年間、国を閉ざしました。この間何があったのでしょうか。この脱北者は北朝鮮内部の貴重な映像を撮影していました。

脱北者が撮影した北朝鮮内部映像 飢える人々の姿
行き倒れだろうか。男性がひとり倒れ込んだまま動かない。
撮影した脱北者「近くの店の主人に彼は死んでいるのかと聞いたら、前日の午後から倒れていて触ってみたけど、まだ死んでいない。飢えて倒れているようだが、まもなく死ぬだろう、と言っていた」

これは北朝鮮南部、黄海南道(ファンヘナンドウ)で、2023年4月に撮影された。
煙草をくゆらせる、物乞いに来た男性。
撮影した脱北者「あなたの作業班でも飢えている人は、ひとりやふたりじゃないでしょう?」

「凄く沢山いる。それでも働きに出て…。やむを得ず出てゆく人も多い。死にそうだ…」

これらの映像は、韓国に脱北した男性が北朝鮮のスマートフォンで撮影したものだ。コロナを理由に北朝鮮が国を閉ざす中、飢える住民たちをとらえた貴重な映像だ。

「失敗したら家族全員が処刑」命懸けの脱北
2024年3月、映像を撮影した青年にソウルで会うことが出来ました。30代前半だというキムさんです。インタビューには、軍や警察関係者も同席しました。警護と監視のためです。

日下部正樹キャスター「キムさんはソウルに来てどれくらいになりますか?」
脱北者 キムさん(30代)「2023年5月7日に入国しました」
多くの脱北者が中国やロシアなど、第三国を経由するのに対して、キムさんは海を渡って韓国に入りました。

これが脱北で使った木造船です。妊娠中の妻と母親、弟家族の総勢9人で、韓国・延坪島(ヨンピョン島)を目指しました。キムさんは、まず脱出の詳細を語り始めました。(中略)

キムさん 「あとで家族離れ離れの苦しみを抱えたくなかったんです。家族全員を連れていく方法を探しました。その方法を半年間ずっと考えていました」

キムさんが脱北を目指すようになった理由。 それは個人の自由や権利が認められない社会に、絶望したからだった。

「こちらでは全く理解できないでしょうけれど、北朝鮮では、家を一歩出たら、すべての物事を100%疑わないと生きていけません。 何も考えずに道を歩いていると、誰かが笛を吹いて、むやみに捕まえて身体検査をして、言いがかりをつけるのです。

『どうしてジーンズをはいているんだ。これは朝鮮社会主義式ではない』。『なぜ労働時間に出歩いているんだ』と。なんでも犯罪にでっちあげることができるのです」 

コロナ後、政府は国民の管理をさらに強化した。 食料は専売制となり、人々は足りない米などを闇取引で買い求めた。

ある日、キムさんの家に、取り締まり機関の保安員が捜査令状を持ってやってきて、蓄えていた米を運び去ろうとしたという。

キムさん 「『私たちのお金で買った食料ですから持って行かないで。私たちのものです』と主張したら、保安員に『この土地はお前のものか?お前が吸っているこの空気も全部党のものだ』と言われました。これ以上、ここに希望はない。この土地から逃げだそうと、決心しました」(中略)

コロナ以降、扉を閉ざした北朝鮮内部で一体何が起きていたのでしょうか。 2020年1月以来、北朝鮮はコロナ感染対策を理由に、厳格な出入国制限を行い、人と物の行き来が止まった。 韓国に渡る脱北者の数にも明確に表れている。

韓国統一省によると、多い時には年に2000人を超えたが、この4年間で激減している。 徹底的な統制によって北朝鮮は、「苦難の行軍」と呼ばれる1990年代の大飢饉以来の食料不足に陥っていたのだ。

キムさん 「苦難の行軍の時期より厳しかったです。その時でも、穀倉地帯の黄海南道では、飢え死にしませんでした。 しかし、コロナの間は毎日のように、町内の誰々の父親が死んだ、誰々の子供が死んだらしい。そんな話が聞かれるほど沢山の人が死にました」

食料不足が深刻化するとともに、凶悪犯罪が急増したと言う。
キムさん 「生きてゆくために凶悪犯罪が増えました。殺人や強盗が日常茶飯事でした。公開処刑も沢山ありました」(後略)【4月28日 TBS NEWS DIG】
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【乱発気味の公開処刑】
北朝鮮では最近、公開処刑が“乱発”されているようです。それも、韓流コンテンツを密売していたといった類の理由で。(北では韓流コンテンツは現体制への信頼を揺るがす存在であり、その密売は重罪です。みんなが裏で見ているものではありますが・・・)

****300人が強制された「令嬢カップル」の見せしめ体験****
米国務省は22日、世界各国の人権状況を記録した「2023年国別人権報告書」を発表した。

北朝鮮についてこの報告書は、「新型コロナのパンデミック(世界的大流行)後、公開処刑が減少したが、最近は国境封鎖緩和とともに再び大きく増加する様相を見せている」と指摘。また、民間人に現場学習という名目で公開処刑を参観させているとも言及した。

コロナ禍の下での典型的な事例のひとつが、2022年1月に行われた男女のカップルの刑執行だ。韓流コンテンツを密売していたことが罪に問われたもので、女性は平安南道保衛局(秘密警察)の政治局長の娘という「お嬢様」だった。

しかし、父親の権力も及ばず極刑の判決を受けた。刑場には300人が引き出され、執行場面を見ることを強制されたという。

コロナ禍の前には、より大規模なものもあった。
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋の話として、2019年2月に清津(チョンジン)市内中心部で公開裁判が行われたが、ここには数万人の住民が動員され、死刑判決を受けた被告がその場で銃殺される一部始終を見ることを強いられたと伝えている。

一方、3月には市内の水南(スナム)市場のそばの河原でも公開裁判が行われ、被告女性3人のうち、2人に極刑判決が下され、執行された。3人の罪状は「迷信行為」、つまり占いだった。

3人は「七星組」というグループを作り、「神が乗り移った」という3歳と5歳の子どもに占いをさせ、金品を受け取り、全国を回っていたという。北朝鮮では庶民から党幹部、占いを取り締まる立場の司法機関の幹部に至るまで、何か重要なことをする前に運勢を見るのが一般化しているが、当局はそれを体制維持のリスク要因とみて亡き者にしたものと思われる。(中略)

金正恩政権は2018年までの数年間、公開処刑を控えていた。国際社会の批判の声を意識してのものと思われるが、2019年より再開し、近年では乱発気味だ。

江戸時代のさらし首と同じように、犯罪者を見せしめにすることで犯罪を抑制しようという、現代の人権感覚では受け入れられないものだ。それでも犯罪は減らず、公開処刑を行えば行うほど国際社会の批判は高まる。まさに「誰得」なのだ。

金正恩総書記は、経済活動の自由を認め、国民の生活レベルを向上させることが、最も効果的な犯罪抑制策であることに、いつになったら気づくのだろうか。【4月28日 デイリーNKジャパン】
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【マンション地下室に住まわされ、住民の代わりに動員などに対処する孤児】
前出記事のように、毎日にように多くの人が飢えて死んでいく・・・当然、残された孤児も増加します。これまた当然ながら、そういう孤児を保護する体制もありません。孤児は自分の力で生きて行かねばなりません。「コチェビ」と呼ばれる子供たちです。それができなければ死ぬだけです。

****「金正恩に棄てられた子どもたち」とマンション地下室の秘密****
親と家を失い、路上で寝泊まりするストリート・チルドレンのことを北朝鮮では「コチェビ」と呼ぶ。彼らは首都・平壌にいることそのものが違法だ。革命の首都のイメージを乱すからだという。障がい者も同じような理由で平壌から追放された。

平壌市民には、コチェビを発見すれば安全部(警察署)や洞事務所(末端の行政機関)に通報することが求められているが、それに反して、コチェビを匿い、労働力として活用しようとする動きが現れている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

先月末に平壌へ出張した咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、郊外の西城(ソソン)区域の長慶一洞(チャンギョンイルトン)の親戚の住むマンションに6日間滞在した。そのマンションには年の頃12歳から15歳くらいの3人のコチェビが出入りしていた。

親戚に事情を聞いてみたところ、こんな答えが返ってきたという。
「地方からやってきたコチェビをマンションの地下室で住まわせる代わりに、人民班(町内会)の様々な社会的課題(動員)や作業をさせている。管理は人民班長(町内会長)が行っている」

人民班長は住民に呼びかけ、古着や残った食べ物を集めて、コチェビに分け与えている。彼らがきつい動員に出かけた場合には、みんなで少しずつ現金を持ち寄って、3人に渡すこともあるとのことだ。

一方で3人には「泥棒をしない。他のコチェビを連れてこない。昼間はできるだけマンションの周囲をうろつかない。トラブルを起こさない」などの誓約をさせているという。

各人民班に下された社会的課題を行う場合には、他の地区の住民がいないので、問題なく彼らを連れて行って仕事をさせる。早朝の動員には親でなく子どもが行く場合が多いが、コチェビにきれいな服を着せて、代わりに行ってもらう。

ただし、他の人民班と共同で行う作業の場合、彼らの存在がバレてしまうおそれがあるため、注意が必要だ。もしバレればコチェビは登録された元の居住地に送り返され、人民班長はあれこれ追及される。それでも、おおごとになる前にコネやワイロでもみ消すので問題になることはあまりないようだ。

コチェビを雇っているのは、この人民班だけではない。
別の情報筋の兄が住む、龍城(リョンソン)区域のマンションの地下室には、推定14歳のコチェビが2人住んでいる。彼らは、人民班の人がやりたがらない、ゴミ捨て場の掃除、ゴミの処理、雪かきなどを行っている。
「人民班に課された面倒な仕事をコチェビがやってくれるので、彼らの存在を嫌がる人は誰もいない」(情報筋)

元来、コチェビの「ねぐら」と言えば市場やゴミ捨て場、駅前の片隅の雨風と寒さをしのげるところが一般的なので、地下室は非常に快適なところだろう。また、優しい住民の配慮で衣食に困らず、連行されるリスクも少ないなどのメリットもある。

また、住民の立場からも、コチェビを保護することはメリットが大きい。動員があまりにも多いからだ。何よりも助かっているのは人民班長だ。
「社会的課題と作業で人民班の人々を動員しようにも難しいので、人民班長は窮余の策としてこのような手法にたどり着いたようだ」(情報筋)

本来、労働に対しては相応の代償が支払われてしかるべきだが、当局は一銭たりとも支払わないばかりか、交通費や食費まで動員される人々に転嫁する。かつてなら当たり前のものと受け止められていた動員だが、市場経済の進展や権利意識の伸長に伴い、タダ働きを嫌う傾向が強くなっている。

当局は、市場に対する抑制策を取ると同時に、配給制度に似た食糧供給システムを復活させるなど、北朝鮮という国のシステム全体がそれなりにうまく機能していた1980年代以前のものに戻したいようだ。

しかし、2020年代を生きる北朝鮮の人々の考え方、行動様式を40年前に戻すことは不可能だろう。【5月12日 デイリーNKジャパン】
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孤児を地下室で“飼い”、動員などで住民の身代わりに使う・・・・本来であれば、深刻な児童虐待・奴隷労働として批判されべき話ですが、それが“現実にうまく対応している話”と感じられるのが北朝鮮の歪んだ社会です。
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