豪華なローカー詰め合わせ。

「わほォ♪
　ネーさ、おかしがァ、いッぱいでスゥ！」

　ちょっと豪勢だと、テディちゃも思うでしょ。
　『初売り』という大お買い物合戦にネーさも参加いたしまして、
　これはその戦利品です。
　
　《ローカー　グラン　パスティッチェリーア　セレクション》、
　箱の裏面には、
　『ひとクラス上のグルメなチョコレートウエハースのアソート』
　と書いてありますね。

　ローカーといえば、チョコやバニラのクリームを挟んだ
　ウエハースのお菓子で有名です。
　お店の輸入菓子売り場などではよく見かけますが、
　このタイプのチョココーティングされたものは
　まだ食べたことがありません。
　どんなお味なのでしょう？

「いッただきィまァ～スッ！」

　そうね、いただきましょ。
　お？

「あまあまでスゥ～」

　本当だ、濃密な甘さだわ。
　原産国は……ははあ、なるほど、イタリアですね。
　ええ、いかにもイタリア的な甘さ、チョコの濃さです。
　口溶けも、後味も、やっぱりイタリア。

「いろんなァ、おあじでェ、たのしでス♪」

　そうね、『トルティナ　オリジナル』（ミルクチョコ）、
　『トルティナ　ダークノワール』（ビター系チョコ）、
　『トルティナミニ　ノワールオランジュ』など、
　７種のお味のチョコレートウエハースが入っています。
　ＳＡＬＥでお安くなっていたら、
　チョコ好きさんは買ってみてもよろしいんじゃないでしょうか。

「おやつにィ、ぐッどォ、なのでスねッ♪」
　

仏果は如何に？

「わふッ、きゃわゆいひょうし、でスねッ、
　わふうゥ、でスよ！　ネーさ」

　和風だし、可愛いし、
　新年の御紹介第一弾にはぴったりでしょ、テディちゃ。
　さあ、張り切ってゆきましょう！　こちらをどうぞ！


　　　
　　　　　　　　　　――　仏果を得ず　――


　
　著者は三浦しをんさん、’０７年１１月に発行された作品です。
　題名は『仏果（ぶっか）を得（え）ず』と読みます。

「ネーさ、このおにいさんたちィ、
　なんでェ、おきものォ、きてるのでスか？」

　何故かと申しますと、
　主人公さんが文楽の太夫さんなのですよ。

　著者の三浦さんは、
　『風が強く吹いている』では長距離走者を描き、
　こちら『仏果を得ず』では
　義太夫語りに邁進する健（たける）くんを描いています。

　しかし、走ること即ち生きること、生まれながらの走者といえる
　『風が強く……』の走（かける）くんに比して、
　健くんの情熱は、後天的、ともいえます。
　文楽にたずさわる家に生まれた訳ではなく、
　初めて義太夫の語りに接したのは高校の修学旅行のとき。
　思ってもみなかった道でした。

　そして、健くんがのめりこむ《文楽》を描写するに際し、
　三浦さんは思い切った著述方法を択ります。

　説明は、しない！

「ふあァッ？
　どゆことでスかァ？？」

　文楽とはこういうものである、と説明する文章を除けたのです。

　歴史や、文楽特有の舞台構造、
　劇としての構成や演目、使われるお人形の種類、様々な専門用語、
　文楽界のしきたりや伝統、約束事を、
　『これはこういうことで……』と解説することを、
　三浦さんは、しませんでした。
　
　ところが。
　描いていないのに、描かれているのです。

「えッ？？？」

　悩み多き健くんと一緒に稽古する毎日を重ねれば、
　読み手は、文楽とはどのようなものなのか、
　だんだん分かってくる……分かってきたような気持ちになります。
　少なくとも、きっとこういうことなんだな、と
　自分なりの理解を組み立ててゆく。
　健くんへの、共鳴と、感情移入も深まってゆきます。

「たけるくん、じょうずにィ、なれるかなァ？」

　師匠の銀太夫さんによれば、
　アホ、とか
　気ィきかん、
　らしいんですけれど。

「うゥッ」

　生命を賭けるに値する《なにか》を見つけてしまった健くんの、
　それゆえに、
　切ないような、
　きらめきが眩しいような、
　ハレと影が同居しているような物語です。
　
　さあ舞台よ、回れ回れ！
　華やかな年頭を飾るにふさわしい、
　健くん渾身の語りに涙し、
　そして手を拍って誉めそやしましょう！

「たけるたゆう～ッ！
　にッぽんいちィ～ッ！」