テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 若衆さんの、迫真?ミステリ ~

2009-10-18 23:00:42 | ブックス
「てけてんッ、てけてけてェ~んッ♪
 みなのしゅうゥ~、きょうもォ、しばいィのォ、まくあけェだよッ♪
 よッておいでェ、よんでおいでェ~♪」

 はいはい、テディちゃ太夫、ご苦労さまでした。
 こんにちは、にわか小屋主のネーさでございます。
 さあさ、見物の旦那さまがた、お嬢さまがた、
 本日の演しものは、いえ、御本は、こちら~!



              ―― ろくろ首の客 ――



 著者は小笠原京さん、’09年3月に発行されました。
 副題に『花の若衆方書抜き帳』とあります。
 
「ふむふむッ、とりものちょゥ、でスかッ」

 このおはなし、捕物帖とは、ちょいっと趣きが異なります。
 奉行所の与力さん・同心さんは脇役以下の取り扱い、
 主役をあいつとめまするは、芝居小屋の、お役者さんたち――

 ときは、お江戸の、いつの頃の出来事でしょうか。
 日本橋に程近い、堺町に
 多くの見物衆を集めておりますのが
 市村座さん。

「おォ~、ほんとにィ、だいにんきィ!」

 現在、市村座さんの大看板、
 つまり《主演》を張っているのは、市川団十郎さんです。
 花のお江戸の、スーパー歌舞伎スターさんの筆頭格、ですね。

「かんばんやくしゃさんッ!
 まッてましたァでスよッ、ぱちぱちィ!」

 頂点は、団十郎さん。
 しかし、お江戸の歌舞伎芝居では他にも大勢の役者さんが
 それぞれの役どころを担い、
 夢の世界を創り上げてゆくのです。

 女方(おんながた)さんは、
 ご存知、女性の役を演じる男性役者さん。
 そして、若衆さんと呼ばれる役者さんは、
 男役を演じる助演級の若手役者さん、と申しましょうか。

 吉岡花之助(よしおか・はなのすけ)さんも、
 そんな若衆さんのひとりです。
 が、人気上昇中の花之助さんに敵意を持つ者もいるのでしょうか、
 或る日、気味の悪いことがありました。
 
 夜歩きを邪魔するように、
 すぅ~と飛んできたのは……ろくろ首。

「ぎゃわうひィィィッ!
 こ、こわいィ!」

 誰ぞの仕掛けた悪戯だろう、とは思うのです。
 でも、誰が?
 何のために?

 花之助さんの相談役にして知恵袋のベテラン女方役者さん、
 松本浅之丞(まつもと・あさのじょう)さんは、
 その炯眼で真相を見抜きますが……
 
「ふァ~、おしばいィのせかいィもォ、おそろしィ~でスゥ~」

 新進若衆役者さんのミステリは
 綿密な時代考証に裏打ちされ、
 時代小説としても楽しめるエンタメ作品になっています。
 また、花之助さんや浅之丞さんの使う『役者言葉』が
 お江戸の風情を高めます!
 時代小説マニアの御方も、きっと大満足~♪

 短編3作品から成るアクターズミステリ、
 シリーズ化されますよう、祈っております。
 気難しいミステリ好きさんも、どうぞ、ご賛同を!

「せんりょうやくしゃさんにィ、はくしゅゥ、はくしゅゥ~!」
  
  
コメント
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