テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

熾烈な?優雅な?王朝ミステリ。

2009-10-27 22:39:45 | ブックス
「ネーさッ、はれたでスよッ!」

 はい、台風一過の晴天、ただし強風注意!な東京・多摩地方から
 こんにちは、ネーさです。

「こんにちわゥ、テディちゃでス!」

 気分もちょこっと晴れたところで、
 さあ、本日はこちらのミステリを、どうぞ~♪


 
               ―― 千年の黙 ――



 著者は森谷明子さん、単行本は’03年に、
 画像の文庫版は’09年6月に発行されました。
 副題に『異本源氏物語』とあります。
 『黙』は『しじま』とお読み下さい。

「むッ?
 ネーさ、このおなまえはァ、たしかッ?」

 あら、憶えていたんですね、テディちゃ。
 そうなんです、著者の森谷さんは、
 先日ご紹介しましたミステリ作品『矢上教授の午後』の著者さんです。
 もうひとつ、テディちゃ、憶えていますか?
 『矢上教授』のご職業、いえ、専門分野は?

「えッ? えェ~とォ……
 ふァいッ! にほんぶんがくゥでス!」

 おお、よく出来ました!
 その《日本文学》が、この御話の主人公さんなんです!

「ほぺッ? ぶんがくがァ、しゅじんこッ???」

 その名は『源氏物語』――
 日本が、平安文化が、世界に誇る文学作品が、
 このミステリの主人公さんです。

 とき、あたかも左大臣藤原道長さんが栄華を極めようとする某帝の御世、
 都の片隅に、『式部』と呼ばれる女性がおりました。
 後の世には知らぬ者とてない、
 けれど、いまはまだ、知る人ぞ知る存在、なのでしたが。

 式部さんを知るのは、
 彼女の書く『ものがたり』の読者さんたちと、
 縁者、お邸の使用人さんたち……

「ふむふむッ、
 これからァ、ゆうめいィにィ、なるのでスねッ♪」

 式部さん、時々は頭を抱えたりもいたします。
 宮中! なんでこんな場所を物語の舞台にしちゃったのかしら!
 作法だの言葉遣いだの、ややこしいったら!
 物語に描いてるのは架空の人物だっていうのに、
 モデルはあの大臣だとか、この大納言だとか、
 その女御さまだとか、勝手な憶測がひとり歩きしちゃうし~。

 が、『その女御さま』のお膝元で、ある事件が起きたことから、
 式部さん、じっとしていられなくなりました。

「おォ~! だいじけんッ、はッせいィ!」

 いえ、大事件といってよいのかどうか……
 一匹の猫ちゃんが行方不明になった、んですけれども……。

「……にゃんこォ?」

 にゃんこ、いえ失礼、猫さんの飼い主さんが
 ただの御方ではなかったため、事件は複雑になりました。
 猫ちゃん、帝さまの愛猫だったのです!

「みぴゃッ! そ、それはァ、おおごとォ、なのでスゥ!
 さがさなくちゃッ! みつけなくッちゃッ!」

 帝の愛猫『命婦(みょうぶ)』ちゃん捜索にまつわる第一部の
 『上にさぶらふ御猫』、
 第一級の歴史ミステリでもある第二部の『かかやく日の宮』、
 源氏の君逝去の巻から生まれた第三部の『雲隠』――
 三つの《謎》が見事に交叉する連作ミステリ、
 古典文学好きな御方には楽しくてたまらない御話でしょう。
 著者・森谷さんによる巻末の附記、
 杉江松恋さんによる解説もすばらしいので
 ミステリ好きさんに限らず、
 活字マニアさんは、ぜひ~!

「ややこしくてもォ、おもしろさァ、ひるいなしィ!でスよッ」

 年内には刊行予定だという続編が待たれます!
 
コメント
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