テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

雲の上では、非常識も常識に?

2011-07-10 23:25:48 | ブックス
 こんにちは、ネーさです。
 ついさっき、夜空を見上げたら……大きなお月さまが!
 7月10日の月齢は8.8、
 双眼鏡などで観察するのにちょうど良いかたち、なんですよ。
 クレーターがはっきり見えるんです♪

「こんにちわァ、テディちゃでス!
 おつきさまッ、きいろいでスねッ」
「がるる!がるがるるるぐるぐるー!」(←訳:虎です!マイヨジョーヌみたいだー!)

 ええ、そうですね!
 栄光のマイヨジョーヌをめぐる闘い――自転車競技の最高峰ツール・ド・フランスが、
 いままさに開催中です!
 今年はどのチームが、そしてどの選手さんが総合優勝を遂げるのでしょう?
 はるかヨーロッパで行われている熱戦に敬意を表して、
 本日は、こちらを、どうぞ~!

  


 
           ―― 中野京子と読み解く 名画の謎 ――


 
 著者は中野京子さん、2011年3月に発行されました。
 『ギリシア神話篇』と副題が付されています。
 そう、『ヨーロッパ』の語源は神話の『エウロパ』から、とされていますね。

「ふむふむッ、あぽろんさまとかァ~」
「ぐるるるがるるる~」(←訳:ポセイドンさまとか~)

 ギリシャ北部にあるオリュンポス山にお住まいの、
 オリュンポス神族――
 主な神さま方を、《オリュンポス十二神》と呼びならわしています。
 えー、敬称を略させていただいて、
 筆頭たるゼウス、ヘラ、ポセイドン、デメテル、ヴィーナス、
 ウルカヌス、マルス、ミネルヴァ、アポロン、ディアナ、
 ヘルメス、バッカス。
 
 この神さまたち、
 何世紀にも渡って、
 あまたの画家さんたちの画題となってまいりました。
 だって、
 『これは神話を絵画化したものなんです~』
 と言い訳すれば、
 ヌード、オッケー!
 激烈な戦争画、オッケー!
 残虐すぎるケンカのシーンも、やっぱりオッケー!
 
 王宮の壁、大富豪のお屋敷、
 展覧会への出品も、
 神話に題材をとったものだってことになれば、
 とりあえずオッケー!

「なんだかァ、ずるいィ~!」
「ぐるがるる!」(←訳:戦略的だね!)

 もちろん、神話世界に新解釈を求めた作品、
 画家さんが技術のすべてを注ぎ込んだ実験的作品、
 暗喩と比喩を散りばめた意欲作、などもあります。
 いえ、むしろ、
 真面目に神話を描いた作品が大半、なのですが……

 この御本の著者・中野さんは、
 巨匠さんたちの名作から
 うう~む!と感心させられる解釈を抽出してみせます。
 
 たとえば、《ヴィーナスをめぐる物語》の章では、
 『ヴィーナスのあっけらかん』(ティントレット画)、
 『女性アスリート』(グイド・レーニ画)、
 《アポロンをめぐる物語》の章では、
 『親の心、子知らず』(ルーベンス&伝ブリューゲル画)、
 《神々をめぐる物語》の章では、
 『母の執念』(レイトン画)、
 『紡いで、測って、ちょんぎる』(ゴヤ画)、
 『電撃的!』(ティツィアーノ画)と、
 すっぱり、画の本質を見抜いちゃうのですから、
 なんとも痛快~!

「たのしィのでス!」
「ぐるーるるがるがる!」(←訳:ユーモアたっぷり!)

 画面の背後にあるメッセージ、
 隠された記号、
 神々の常識/非常識と
 かきまわされる人間たちの悲劇あるいは喜劇、
 美を希求する画家さんたちの想いと、
 画を注文した王族さんたちの欲望と、
 欲得を超越したドラマと――

 『怖い絵』シリーズですっかり中野さんのファンになっちゃったわ!という
 アート好きさんに、
 天使マニアさん、神話画マニアさんに、
 激おすすめの一冊です。
 歴史文学好きさんも、
 ぜひ西洋文化の礎となったオリュンポス山の小道を、
 優雅にお散歩いたしましょう♪

「……むッ?
 なにかァ、きみょうなァ、おとがしてるでスよッ?」
「ぐるるーがるがるがるる~…」(←訳:遠くの方でーゴロゴロって~…)
「かッ、かみなりさまだッ!」
「がるぐるる!」(←訳:ゼウス神だ!)
「きゃわァーッ!」

 雷神さまの御機嫌を損ねない程度に、
 くすすっと笑いながら、お読みくださ~い♪
 
コメント
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