テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

― ひとつの、別れ ―

2011-12-04 23:30:58 | ブックス
 こんにちは、ネーさです。
 久しぶりに晴れたここ東京・八王子から、
 ダイアモンド富士が見られるかしら♪とワクワクしましたが……う~ん?
 西の方角は、ちょっと霞んでしまったようですね。

「こんにちわッ、テディちゃでス!
 みてみたいでスよゥ! だいあもんどふじィッ!」
「がるる!がるるるがるぐるる!」(←訳:虎です!明日も晴れたらチャンス!)

 天文写真マニアさんたちの幸運を祈りながら、
 では、本日は活字マニアの本領に戻って読書タ~イム!
 こちらを、どうぞ~!

  

 
                 ―― 邪馬台 ――

 
 著者は北森鴻(きたもり・こう)さんと浅野里沙子さん、2011年10月に発行されました。
 この御本は、『鏡連殺』の題で雑誌に連載されていた作品ですが、
 著者・北森さんの急逝により中断していたものを、
 公私に渡る北森さんのパートナー・浅野さんが書き継いで完成させた小説です。
 刊行にあたって、題名が『邪馬台』と改められました。

 北森鴻さん――
 ミステリ好きの活字マニアさんでしたら、
 よく御存知の作家さん、ですよね。
 
 旗師と呼ばれる店舗を持たない骨董屋さんの『旗師・冬狐堂』シリーズ、
 下北沢でアンティークショップを営む『雅蘭堂(がらんどう)』シリーズ、
 ドラマ化もされた『蓮丈那智(れんじょう・なち)』シリーズ……
 民俗学や骨董に関する知識を駆使して描き出された物語の数々は
 稀なる魅力を放っていました。

 また、北森さんの作品の特徴は、
 なんといっても、ユーモア!

「ゆーもあァッ??」
「がるぐるるがるーがる?」(←訳:ミステリにユーモア?)

 本格派でありつつ、トリッキーでもあり、
 博識でもあって、
 くすくすっ♪と笑ってしまう要素もあるのが、
 北森さんのミステリ。

 誤解を怖れずに言えば、
 クラシカルで英国的な作風、とも申せましょうか。
 しかし、この御本では非常に日本的な、
 日本ならでは、な主題が取り上げられています。

 それは……邪馬台国!

「むぽゥ!
 テディちゃ、しッてるでスゥ!
 こうこがくのォ、なぞッ!なのでスよッ」
「がるがるーぐるるがるるるぐるるる?」(←訳:うんうん!邪馬台国はどこにあったか?)

 多くの作家さんが作品の中で論じている《邪馬台国の謎》に、
 北森さんも殴り込みをかけ、
 いえ失礼、北森さんらしい角度から斬りこんでいます。

 主役は、東敬大学で民俗学を教える蓮丈那智(れんじょう・なち)さんと、
 那智さんの研究室で助手を務める内藤三國(ないとう・みくに)くん。
 
 現在、“異端の民俗学者”と呼ばれる那智先生の考察は、
 《邪馬台国》に向かっているみたいだ……
 新たに見出した研究テーマ『廃村の民俗学』の調査を進めながら、
 三國くん、戦々兢々としています。
 先生のことだ、
 邪馬台国の研究、なんていっても
 フツーの研究じゃないのに決まってる……!
 
「やまたいこくはァ、どこでスかッ?」
「ぐるるるがるがるるぐる?」(→訳:卑弥呼のお墓はどこですか?)

 場所だとか、墓所だとか、
 そんなありきたりな謎は、
 那智先生の眼中にないんだ!
 いったい、邪馬台国の何を、先生は調べ出そうとしているんだろう……?

 『旗師・冬狐堂』『雅蘭堂』の主役さんたちも登場するこの御本は、
 北森さんの作品の人気キャラクターさんたち総出演!といった趣きを見せ、
 それだけにまた残念でなりません。
 北森さんは、ここから、どのような《真の謎》をたぐり寄せる予定だったのでしょう?
 蓮杖那智さんのライフワークとなる論文は?
 三國くん自身の研究の行方は?
 
 ああ、北森さん、
 貴方にもっと書いていただきたかった!

「もッとォ、よみたいィのでス!」
「がるるぐるぐるぐるるがるー!」(←訳:もっと驚かせてほしかったー!)

 この御本が、北森さんのラストメッセージ、ということになるのでしょうか……
 惜しみつつ、
 涙を堪えつつ、
 ミステリを愛する活字マニアさんは、どうか、読み逃しなく!
 
 
コメント
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