テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

ダークな、どこまでもダークな。

2017-06-08 22:12:54 | ブックス
「こんにちわァ、テディちゃでス!
 きょうはァ、おひさしぶりィのォ~!」
「がるる!ぐるがぅるるぅるる!」(←訳:虎です!長編フィクションだ!)

 こんにちは、ネーさです。
 え?梅雨ド真ん中なのかしら晴れてるけど?な本日の読書タイムは、
 ずっしり・みっしり・ヘヴィこの上なき
 長編小説作品を御紹介いたしますよ。
 さあ、こちらを、どうぞ~♪

  



            ―― 暗手 ――



 著者は馳星周(はせ・せいしゅう)さん、2017年4月に発行されました。
 『暗手』は『あんしゅ』とお読みくださいね。

「むゥ? あんしゅゥ~??」
「ぐるるるがるるぐる~…!」(←訳:なんだか不吉な響き~…!)

 いかにも不吉な、
 そしてまたほの暗い、
 いえ、どす暗い展開を予想させる『暗手』という題名のこの物語には、
 ああ、なんということでしょう、
 イタリアです、
 イタリアのサッカー界が深く係わってきます。

 チャンピオンズリーグ決勝で敗れてしまったユヴェントスを
 ひたすら応援する私ネーさにとっては、
 ヘヴィどころか立ち直れなくなっちゃう重苦しい設定ですが……

「ネーさッ、しッかりィ!」
「がぅるるぅるぐるる!」(←訳:フィクションだから!)

 そ、そうね、フィクションなのよね、
 物語の舞台も、ええ、
 ユヴェントスの本拠地トリノではなく、
 ミラノとその周辺が主ですし。

「だいとしィ、みらのッ♪」
「ぐるるるるる!」(←訳:デザインの都!)

 ミラノには世界的に有名な
 サッカーのクラブチームが二つあり、
 ミラノから程近い小都市や町にも
 プロサッカーチームと、
 それらのチームに所属するサッカー選手たちがいます。

 彼らの本質を、
 著者・馳さんが軽々と喝破してみせるのは
 御本の本文9ページ目――

  《スーパースターは八百長には関わらない。
   スーパースターを目指す連中も関わらない》

「ふァいッ! そのとォりィでスゥ!」
「がるるぐる!」(←訳:それが一流!)

 そう、一流の選手さんは
 自分の履歴に泥を塗ろうなんて考えません。

 けれど……
 誰もが一流になれるわけでも、ない。

 一流になれるのは、
 ビッグクラブでスポットライトを浴びながらプレイできるのは、
 ほんの一握りの選手だけ。

 そして、残酷な『暗手』の魔手が狙うのも、
 そういった“一流になれない”選手の身。

「あいてにしてはァ、いけませんでスよゥ!」
「ぐるるるる!」(←訳:追い払おう!)

 簡単に追い払えないのが、
 容易には逃げ出せないのが、
 『暗手』が巧妙に張り巡らせた糸の罠です。

 かつて、台湾のプロ野球で八百長に手を染めたがため、
 坂を転がり落ちるように
 罪を重ねていった日本人・加倉昭彦さん。

 名を変え、
 顔も変えて、
 いま欧州の闇社会を流れ歩く彼の異名は『暗手(アンショウ)』。

「じゃァ、こんかいィのォ、しごとはァ~…!」
「がっるーるぐるるる?!?」(←訳:サッカーで八百長を?!?)

 『暗手』の標的となったのは
 ミラノ郊外の町のプロサッカーチームの、
 日本人GK(ゴールキーパー)。

 サッカーの技量や知識を除けば
 世間知らずとさえ言える若い日本人GKを罠にかけるなぞ、
 『暗手』には朝飯前のこと、
 かと思われましたが。

「よそうがいィのォ、じょうきょうゥ!」
「ぐるるるーるがるぐる!」(←訳:コントロール不能です!)

 どこまでも転がり落ちてゆく『暗手』の足元に、
 光が射すことはあるのか。
 出口は、どこかに見つかるのか――

 著者・馳さんの本領・ノワールロマンの昏い霧が
 最初から最後まで読み手を離さず包み込む、
 “ダーク”極まる彷徨の物語は
 クライムノベル好きな活字マニアさんに、
 ミステリ好きさんにもおすすめですよ。
 一気呵成に、ぜひ!
  

コメント
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