テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 曲線と極限の道 ~

2017-06-11 22:12:46 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 あじさいィでらはァ、おおにぎわいィ?」
「がるる!ぐるるるるがるぐる~!」(←訳:虎です!お出かけの際は注意~!)

 こんにちは、ネーさです。
 鎌倉の、“あじさい寺”とされるお寺さまの周辺は
 交通規制が実施されるほどの混雑だそうですよ。
 いいなぁ♪混んでてもいい行ってみたいなぁ♪などと想い馳せつつ、
 さあ、今日も読書タイムです。
 本日は、こちらの御本の“別世界”へ、ひとっ跳び~♪
 
  



         ―― 山月記・名人伝 ――



 著者亜中島敦(なかじま・あつし)さん、2016年12月に発行されました。
 《教科書で読む名作》とシリーズ題名が付されています。

 先日は、同じ《教科書で読む名作》シリーズの一作
 芥川龍之介さんの『羅生門・蜜柑』を御紹介しましたが、
 こちらは中島敦さん(1909~1942)の名作・代表作を集めた一冊ですよ。

「ふァいッ! とらでス!」
「ぐるがるー!」(←訳:虎の物語ー!)

 ええ、そうですね、
 表題作品『山月記』の素晴らしさは、
 これも先頃
 『文豪ノ怪談ジュニア・セレクション 獣』を御紹介しました折に
 あらためて確認しました。
 
 この御本では、『山月記』の原典ともいうべき
 中国の説話『人虎伝』も収録されていて、
 それも読みどころのひとつ、と申せますものの。

 今日は、もうひとつの表題作品の方に
 ぐぐっと注目してみましょう♪

「というぅとォ?」
「がるる?」(←訳:名人伝?)

 『名人伝』が発表されたのは、
 1942年――昭和17年でした。

 中島さんが世を去る年のことでしたが、
 文庫にして僅か13ページのこの作品には
 長編にも匹敵する、
 ひとりの《名人》の歩みが微笑ましくも力強く、
 それでいて奇妙なくらいスッキリと描かれています。

「めいじんにィ、なるためェにィ!」
「ぐるがる!」(←訳:全力傾注!)

 突き詰めれば、
 それは第一行目ですべてが記されています。

 趙(ちょう)の邯鄲(かんたん)に住まう
 紀昌(きしょう)さんの志は、ただひとつ。

  《天下第一の弓の名人になろう》

「うゥ~むゥ! てんかァだいいちィ~…!」
「がるるるる!」(←訳:難しいねえ!)

 紀昌さんの目標が、
 国が主催する武芸大会で優勝してやろう!
 メダリストになろう!
 であったなら、それはまだ簡単な道のりだったでしょうに。

 誰かを追い越す、という一点に絞ってもよかったのに。

 彼の目指す《名人》への道は、
 その純粋さが仇になってか、
 真っ直ぐな道ではないのでした。

 先の見えない、
 曲がりくねった細い道。

 道を行けば行くほどに、
 紀昌さんはヒトの世から離れてゆくようです。

 やがて彼が登りつめた鋭峰で
 目にしたのは、いったいどのような景色であったのか――

「みたいィようなッ?」
「ぐるるがるるるる?」(←訳:みたくないような?)

 『名人伝』を『山月記』を、
 また『悟浄歎異』を読みながら
 私ネーさの脳裏に聴こえてきたのは
 RADWIMPSさんの『棒人間』でした。

 ♪僕は人間じゃないんです♪というあのフレーズが
 月に吠える虎の影に、
 弓を構える青年の背後に、
 砂漠をゆく悟浄さんの足取りに重なります。

 ヒトと、
 ヒトでない何か。
 彼らに寄り添う歌と言霊。

 読み逃がせない解説&注釈ももちろん、
 中島さんのファンの方々に激おすすめの一冊、
 手に取ってみてくださいね♪

「おとなもォ、こどももォ~」
「がる~!」(←訳:ぜひ~!)

  
 
コメント
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