現代の虚無僧一路の日記

現代の世を虚無僧で生きる一路の日記。歴史、社会、時事問題を考える

モスクワで尺八演奏の顛末

2013-12-25 19:44:02 | 虚無僧日記
12月23日(月)「チャイコフスキー記念・国立
モスクワ音楽院」内にあるホールで、私「一路の尺八
独演会」。

ロシアの尺八家「サーシャ」から、私のFaceBookに
「『日本の心』と題して、日本文化の紹介イベントを
行うので、尺八演奏に来ていただけませんか」と
メールが入ったのは3月の末。「旅費、滞在費は持つ、
ギャラも出す」とのことで、それならばと 即 OK。

ところが、「4月には送る」と言っていた「モスクワ
音楽院」からの『招聘状』が待てど暮らせど一向に来ない。
さんざん督促して、電子メールで 在日ロシア領事館に
届いたのが 12月12日。それから東京の旅行代理店に
頼んでビザの申請をし、ビザを受け取ったのが18日。
“出発の前日”という きわどさ。

成田発のアエロフロートはロシアの航空会社。19日
13:05 発が、飛び立つのに3時間遅れ。「交通渋滞で
機長の到着が遅れています」とのアナウンス。
きっと昨晩、飲みすぎて寝過ごしたのだろう。日本なら
新聞沙汰だ。

ロシアに行くと、時間の観念が無くなる。

「昼過ぎに会いましょう」と約束して、来るのは午後
3時。ロシアでは1時間、2時間 遅れは 当たり前。
“なんでも平気平気”の“一休さん”を自認する私。
待たされることにも平気になる。

私がモスクワに到着した19日に 「ポスターができた」
とのこと。モスクワ音楽院の入口に 貼り出されていた。
「プログラムは当日」という。集客している様子は全く
ないので、お客が集まるのか不安になる。

「心配ご無用、尺八は いつも一杯になります」と
言われても半信半疑。

7時 開演予定で、6時50分まで 客席はまばら。
オープニングは、ロシアの尺八家「サーシャ」に
超長管(3尺2寸)で「道曲」を 静かに吹いて
もらい、その後、私が客席の後方から1尺4寸管で
『瞳』を吹きながら登場することに。

それで、ホールの後方入口の外で待機していると、
7時になって、ずらっと行列ができ、次々とお客が
飛び込んでくる。「開演は10分遅らせましょう」と。

その間、私はお客の出迎えをすることになってしまい、
一人ひとりに「ドーヴルイ、ヴェーチェル(こんばんわ)」
と挨拶していると、日本語の判る若い女性が「ロシアでは
演奏者が、お客を出迎えることはありません」と。
忠告なのか、感動なのか・・・・・。

結局、7時10分から「サーシャの独演」。私の登場は
7時15分過ぎ。そして10曲ほど演奏したが、私の
演奏はどれも5分以内と短い。ロシア人には長いほど
良いらしい。一曲ごとに拍手がなかなか鳴りやまず。

司会のユーリアさんに時間をつないでもらっても、
8時10分には終わってしまった。でもアンコールの
拍手。またまた一曲ごとにすごい拍手で、4曲も
吹いたが、帰りそうにもない。

「日本では『蛍の光』という曲が さよならの合図です。
この曲を吹いている間に、どうぞお帰りください」と
言ったら、通訳のユーリアさんが「そんなの いけません」と。
「演奏者の方から、お客に『お帰りください』なんて
言うことはありません。5時間でもやってください」と。

そんなやりとりで、ようやく後方から帰り始めたが、
数十人の人は舞台前まで駈け寄ってきて、「サインして
ください」と、サイン攻め。

日本では尺八の演奏で「アンコール」も「サイン攻め」も
稀れ。過去100回以上の公演で数回あったか。

年配のご婦人が 日本語で「とても楽しい演奏会でした。
ありがとうございました」と涙を流され、こちらも感動。
「スパシーバ、スパシーバ(ありがとう)」の連呼の応酬で
ござった。


「ロシア人は日本の音楽、地歌も、尺八本曲も海童道曲も
大好きです。洋楽のコンサートより、お客がはいります」と
いう。
「ま、1億4、5千万人もいるのだから、200人くらい
日本ひいきの“変わり者”はいるか」と思えるが、
日本ではサッパリ人気の無い邦楽に、なんでこんなに
酔いしれるのか、まか不思議。