『風姿花伝』 問答条々
問う。「下手な演者でも、何か一つは上手に勝った所があるものだ。 これを上手がしないのは、できないからなのだろうか。それとも、 してはならないことだからしないのだろうか。
それに対する答え
本当に技能と工夫とを極めた上手は、下手の真似もできる。ただし、
本当に技能と工夫とを極めた演者は、万人の中に一人もいない。 ただの上手は、慢心しているから、下手から学ぼうとはしないのだ。
上手にも悪い所があり、下手にも良い所は必ずあるものだ。しかし それぞれの長所短所を、見きわめる人はいない。
上手は名声に安住し、悪い所に気がつかない。下手は、悪い所にも 気がつかないし、良い所もわからない。
だから、上手も下手も、互いに人に(自分の長所短所を)尋ねるべきだ。
稽古は厳しくやれ。(自分に悪い所はないと思う)強情心であってはならない。
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私も今、下手な人の演奏を聞いて、それを真似してみて、何がどう違うのか、 どう工夫すれば、もっと上手に表現できるのかを考えるようになった。 だが、下手の人から学ぶべき長所、良い点を見つけるのはなかなか難しい。