グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

大昔、野田浜に起きた出来事

2011年01月16日 | 火山・ジオパーク
先日、海に潜りに来たお客様から、こんな質問がありました。
「野田浜の横にある池の縁に空いている丸い穴は、溶岩に飲み込まれた木が燃えた跡ですか?」

「え?何それ?そんなの、ありましたっけ?」←まるで見た記憶がない(^_^;)
いったいどんな穴なのか、とても気になって、さっそく見に行ってみました。

実は野田浜は海中アーチがジオサイトの一つにも指定されている場所です。

海に流れ込んだ溶岩流が複雑な地形をつくる大島では、何箇所もこのようなアーチが見られます。

陸にもアーチを見つけました!

スズメ1羽が、ようやくくぐれそうなサイズです(^。^)

さて、問題の丸い穴です。
海からほんの少し山側に入った場所にある池の向うに、黒い穴のようなものが見えていました。

近づいてみたら、意外と浅く、木が燃えた跡にしては何かちょっと不自然な感じも…?

見渡してみると周辺の溶岩は、“脳みそ”のようなシワが寄っていたり、スベスベだったり、
真っ赤だったり、様々な色や形をしていました。

「このシワって縄状溶岩??」
「浜の一角だけ赤い溶岩があるのはなぜ?」

ちょっと歩いただけで、頭の中は「?」だらけになりました(^_^;)

「こういうことは、大島の地質図を作ったヤギさん(火山の専門家の方です)に聞くのが一番かも!」
…ということで、久しぶりにメールで質問し、教えていただきました。

以下、ヤギさんとの質疑応答です。

私 
「この50×50cmぐらいの穴は、木が燃えた跡にしては浅いのですが、溶岩樹形でしょうか?」

ヤギさん 
「溶岩樹形かもしれませんが、溶岩チューブ(溶岩が通り抜けていった跡)の可能性もあります。
また、ブリスターという泡ができる事もあり、その泡が破れた跡である可能性もあります。」

(なるほど~。穴一つで、様々な可能性が考えられるのですね。)

私 
「池の対岸の壁は2層に分かれていますが、年代の違う溶岩が重なっていると考えて
良いのでしょうか?」

ヤギさん 
「間に火山灰や土壌が挟まっていれば別の時代のものと確定しますが、それがないと難しいです。」

(なるほど~、ただ形状が違うだけでは年代は確定できないのですね。火山灰や土の存在を
ちゃんと確認する事が大事なのですね。)

私 
「以下2つの写真は、高温で滑らかに流れたパホイホイ溶岩でしょうか?」


ヤギさん 
「これらはガサガサしたアア溶岩の表面が、波で取り去られてしまった部分ではないかと思います。
海岸は浸食が激しいので、表面のガサガサが無くなってしまってその下が見えていることがあります。」

(なるほど~。長い年月をかけて波が表面を削ることで、こんなに様々な形の溶岩が見られるように
なったのですね。ここでは波が景色を造ってきたのですね。)

私 
「この一角だけ妙に赤いのは、遠い昔、野田浜付近に火口があったのでしょうか?」

ヤギさん 
「確実なことは言えませんが、火口近くで降り積もったものが運ばれてきた部分か、
海に溶岩が流れ込んで水蒸気爆発が起きた部分かもしれません。

海や湖など水が多い所に溶岩が流れ込むと、溶岩で暖められた水が水蒸気になって
二次爆発を起こすことがあります。溶岩が砕かれてしまうので空気の通りが良くなり、
酸化して赤くなることがあります。

(なるほど~、火山と海が接する所では、山頂とはまた違った様々な現象が見られるのですね。)

島に来て20年以上、今まで何100回と潜りに来たはずの野田浜の景色の中に、
こんなふうに遠い昔の物語を想像させてくれる、様々な素材が散りばめられていたとは!

こういうことがあるたびに、ただ視界に入っているというだけで、
実は本当に見てはいない事って多いな~と痛感します。

きっと大島にはもっともっと、様々な面白い風景が存在するのでしょう。
海岸にも、山の中にも、そして人が暮らす場所の近くにも…。

普段目にしている何気ない風景をもう一度ジックリ見つめて、不思議に思うことを一つでも
見つけることができれば、そこから様々な物語を想像してみることができそうです。

そして、これってまさに、“ジオサイト”ですよね!(^^)!

島の中に、まだまだたくさん存在するはずの不思議な風景を、皆で見つけていく事ができたら、
きっと大島はもっともっと素敵なジオパークを造っていけるような気がします。

読者の皆さんも「これは!」と思う風景を見つけたら、ぜひご一報くださいね~(^。^)

(カナ)










コメント (4)
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