被験者の無意識レベルでの自己防衛や抵抗を
回避するための方法として、
エリクソンのようなアプローチがベストだと思いますが、
誰もが簡単に会得できる技法ではないのが困ります。
そこで催眠誘導をする者は、
色々な別のアプローチを用意していて
一番ポピュラーなのがリラックス誘導法です。
リラックス誘導法には、
力を抜いてもらうことに主眼をおいたものや
イメージを想起してもらうことに主眼をおいたものや
感覚に注意を向けてもらうことに主眼をおいたもの等
様々です。
このときの注意点としては、
深いリラックス状態を通り越して
浅い睡眠状態になってしまうと
誘導者と被験者との繋がりが弱くなってしまいます。
完全な睡眠状態は論外です。
被験者に誘導後に感想を聞くと
「何も覚えていません。」
誘導者は知ってか知らずか、
「あなたは深く催眠に入っていたということですね。」
被験者に過去の催眠体験を尋ねてみると
上の様なやり取りがあったことを聞くことが時折ありますが、
その殆どが催眠状態ではなく睡眠状態になっていただけです。
(稀に自然健忘を起こす深い催眠状態へ至る被験者がいます。)
他にも被験者のスキを突くような方法があって
被験者を何かの方法で驚かせて心の動きを停止させ
「スキあり!」で暗示を入れます。
あるいは、誘導の途中で唐突に
「あれを見て。」
被験者が何だろうと別の何かに気持ちを取られた瞬間に
「スキあり!」で暗示を入れます。
なんか武道のようですね。
私はこのやり方が好きではなくて
やったことはありません。
と言うのも
被験者の心が催眠を体験することを了承しないまま、
スキを突くことで仮に催眠を誘導できたとしても
騙し討ちされた被験者の防衛、抵抗が
さらに強くなる可能性があります。
その結果、それ以上に催眠状態を深めることが
難しくなったり、騙し討ちされたことで
被験者の警戒心、不信感を高めてしまい
次回の誘導にマイナス効果となることを心配するからです。
もちろん、それが被験者のさらなる深い催眠体験へと繋がり
誘導者が求めている都合の良い結果となることもありますが、
吉と出るか凶と出るかのような誘導は好みではありません。
私は、その時の被験者の心が了承してくれる反応を引き出し、
催眠への安心感や気持ち良さを体験から理解して頂き、
次回にそれが広がり深まることを期待します。
これは繰り返し接すると好意度や印象が高まると言う
心理学で言う単純接触効果を期待したものであったり、
催眠で言うところの
同じレベルの反応を繰り返し体験してもらうと
被験者の被暗示性亢進作用を期待したものです。
そうなるとエリクソンの誘導法は騙し討ちでは?
と思う人もいてもおかしくないですが、
説明をすると時間を要するので、
ここでは結論だけ。
そうではないのがまた素晴らしい所なのです。