日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

インバウンドと文化、そして震災

2024-03-03 22:01:54 | マーケティング

Huffpostを見ていたら、「震災と祭り」というテーマの記事があった。
正しくは、過疎が進む地域に残る伝統的祭りと震災、というテーマになるのだと思う。
Huffpost:「過疎地に国力を注ぐ必要はない」って、本当ですか?反論に続々と思いが集まった【能登半島地震】

1月1日に発生した「能登半島地震」だが、復興までの道のりはまだまだ遠いはずだ。
というのも、13年前に発生した「東日本大震災」ですら、復興という状況とは程遠い、と指摘されているからだ。
「東日本大震災」の場合、確かに「東京電力福島第一原子力発電所事故」という、これまでの災害とは違う事故が発生しており、同じように考えるべきではない、という方もいらっしゃると思うのだが、「一度衰退した地方の復興は難しい」という点では、同じ問題を抱えているのでは?と、考えている。

その最たるものが「地域の伝統的な祭り」なのでは、内だろうか?
「福島第一原子力発電所事故」により、全地域が避難地域とされた相馬には「相馬馬追い」という、勇壮な伝統的祭りがあった。
しかし、全地域が避難地域とされたため、地域住民がバラバラとなり避難地域から外れた今でも、かつてのような「相馬馬追い」ができない、という状況にあると聞く。
理由は、一度離れてしまった住人が「祭りに参加しにくい」という状況にある、ということだ。
地域の中で伝統的に守られてきた「祭り」は、「祭りの準備」という段階から、その地域全体が「祭りに参加する」という、ある種の連帯が自然に生まれ、それが祭りというカタチとなっているからだ。

そしてこのような「地域に根差した伝統的な祭り」は、海外からも注目されるようになってきているはずだ。
というのも、以前のような「爆買い」のような観光から、「体験型」へと旅行の目的が変わりつつあるからだ。
その最たるものが「伝統的な祭り」ということになるのではないだろうか?

この「伝統的な祭り」こそ、都市部では見ることができない「日本文化の体験」であり、欧州の富裕層にとっては「体験したい旅行先」となりつつあるのでは?と、感じている。
それは、昨年父の介護の為に一時帰省した11月の「出雲大社・神迎え」の頃に見た、海外からの観光客の姿があったからだ。

確かに、過疎地となってしまっている地域で震災が発生すれば、「既に人が減っている地域に、膨大な予算をつけ、復興する意味があるのか?」という指摘があっても、おかしくはない。
特に都市部で生活をする人達からすれば、「当然の指摘」だと思うだろう。
だからこそ、考える必要があると思うのは、「日本の伝統文化の継承は、誰がするのか?」ということなのだ。
それは「伝統工芸」と呼ばれるモノだけではなく、「伝統文化」も同じなのだ。

そう考えると、「伝統文化の観光化」ではなく「伝統文化を地域資産と考え、地域経済の一つの柱」と考え、振興するということは「地域の精神的復興」と言えるのではないだろうか?


「弱い」ことに共感する -Z世代考‐

2024-02-14 22:09:51 | マーケティング

朝日新聞のWebサイトを見ていたら、「Z世代」についての記事があった。
朝日新聞:Z世代に響かない既存の報道や運動、個人主義でメディア不信 

まず、「Z世代」となる年齢を確認しておきたい。
一般的には10代後半から20代前半の若者を「Z世代」と呼ぶ傾向がある。
と言っても10年位の年齢幅があるので、それを一括りにしてよいのか?という考えもある。
記事にある通り、Z世代と呼ばれる若者たちは、生まれた時からデジタルツールが自分の周囲に溢れ、抵抗なくそれらのデジタルツールを使いこなす。
その意味では、見出しにある通り「デジタルツールから得られた情報や価値観」によって、成長してきた世代と言えるかもしれない。

「デジタルツール」が身近にあることで、マスメディアと呼ばれる既存メディア以外からの情報を得やすい、という点は見出しにある通りだ。
おそらく彼らの情報の元となるのは、InstagramやTikTokが中心なのでは?と、想像している。
ご存じの通りInstagramやTikTokは、あくまでも個人が情報発信するSNSであって、新聞社やテレビ等の既存メスメディアが発信しているモノではない。
言い換えれば、情報そのものが「個人」のモノであり、既存メディアが発信をするような社会的な問題や動きには、感心が低い、ということになるだろう。

とはいえ、社会人となればそのような「個人」の情報発信だけでは、仕事を含め社会の中にいることは難しいだろう。
その逃げ道(と言っては語弊があるが)として、今後ますます「自分と同じ人」が発する情報に触れたい、という気持ちになっていくのでは?と、想像することができる。
その理由が「自分と同じ=共感性」ということになるのかもしれない。

それは、社会に出ると暗黙の圧の一つになる「強さ」ではなく、「弱い自分に対する肯定」なのではないだろうか?
人は誰しも強いところばかりではない。
TPOに合わせ、時には強い自分を演じ、素に戻れば弱い自分の存在を認めているのではないだろうか?
そのような「弱い自分の存在」を出せる場所が、Z世代にはない、ということなのか?そのような場所を見つけられない、というのが今の状況なのかもしれない。

そう考えると、最近時折見かける「ちいかわ」のようなキャラクターは、彼らにとって「癒し」の存在なのかもしれない。
筋骨隆々の勧善懲悪なストーリーが目立っていた少年ジャンプなどでも、「東京リベンジャーズ」の主人公は、強いというよりもどこか弱さを感じるキャラクターが登場するようになってきている(と言ってもアニメ版をTverで少し見ただけなのだが)。
「不良が主人公のマンガ」と言っても、これまでのような勇ましさを感じないのだ。
それが、Z世代の一つの価値観だとすれば、「弱さ」は決してネガティブなことではなく、時には「自分を守る」ポジティブなことへと変化していく。

彼らの価値観がどのように変化していくのかは分からないが、これまで「強さ」ばかりが強調されてていた価値観から「弱くても自分らしくある」という価値観が主流となっていくかもしれない、と感じるのだ。


キッチンカーと被災地

2024-01-18 19:30:32 | マーケティング

1月1日に発生した「能登半島大地震」から2週間が過ぎ、救援の内容も徐々に変わりつつある。
例えば、被災地の中学生が学校丸ごと2次避難場所へ移動し、寮生活のようなカタチで生活と勉学を両立させたり、タブレット端末をNTTをはじめとするキャリア各社が提供し、勉強の補助的なサポートを始めるなど、29年前の「阪神淡路大震災」や13年前の「東日本大震災」とは違う、避難生活や支援がされるようになってきた。
特に「タブレット端末を活用した授業」というのは、「コロナ禍」で休校を余儀なくされた時の学習支援として、試みられた経験があってのコトだろう。

その中で、新しい支援スタイルとして注目されてもよいのでは?と感じるのが、大手飲食店会社の「キッチンカー」による被災地支援だ。
「コメダ珈琲」や「すき家」と言った、馴染みの飲食店だけではなく、日清もキッチンカーによる被災地支援をはじめている。
まいどなニュース:コメダ珈琲店のキッチンカーが被災地で活躍「避難所にコメダが」「久しぶりの温かいコーヒーうれしい」
時事通信:キッチンカー、被災地で始動 外食業界が牛丼・カレー提供 能登半島地震
食品新聞(Yahoo!ニュース):能登半島地震 日清食品がキッチンカー派遣し4か所で炊き出し 被災者の栄養状態を考慮し「完全メシ」を提供

29年前の「阪神淡路大震災」、13年前の「東日本大震災」という二つの大震災の時、被災者の生活の質という点で問題となったのが「暖かい食事」だった。
それまでの「避難生活の食事」と言えば、おにぎりと炊き出しの味噌汁や豚汁だった。
これらが悪いわけではない。
とはいえ、いくら暖かいお味噌汁があったとしても冷たいおにぎりという食事が続くことで、被災者の「食に対する意欲」のようなモノは減退しただろう。
そのような状況の中で、食べなれたチキンラーメンや牛丼、暖かいコーヒー等は、食べるというだけではなく心理的な安心感のようなモノがあるはずだ。

キッチンカーによる支援は、それだけではないのでは?と、考えている。
数量は限られているとはいえ、機動力があるので被災地を巡回することができる。
そこで得られた被災者の生活状況等の「情報伝達」という役割も担える。
被災者側にとっても、外からやってくるキッチンカーの存在は「自分たちのコトを支援してくれている」という、安心感があるのではないだろうか?
能登半島のように、地形が複雑で道路そのものが狭く、土砂崩れにより孤立してしまった地域等がまだまだあると聞くが、安全が確保されればキッチンカーによって運ばれる食事以外の安心感は、とても大きいのではないだろうか?

そう考えれば、今回の震災をきっかけに食品業界・飲食業界全体が「災害支援の為の支援の在り方」の協業という発想も生まれてくるかもしれない。
もう一つ企業の連携として必要なのでは?と考えるのは、オフィス街の企業同士が「災害支援チーム」を組み、企業が保有している「緊急災害支援品」を、ローリングストックとして消費期限の迫っている飲料水を飲料水以外目的として、災害地で使ってもらうという考えだ。
何となくだが、企業が災害用としてストックしている飲料水の内、消費期限が近いモノ等が案外あるのでは?と、想像しているからだ。
飲料水ではなく、手洗い用の水としてであれば十分使うことができるだろうし、水そのものは衛生面でも必要なことが多い。
災害発生時から問題になるのは、食事と衛生面だ。
そのどちらにも「水」は必要であり、飲料用の水をそれ以外の目的で使うことに、躊躇する被災者も多いのでは?
まして、今回のように個人からの支援を受けしにくい時等は、企業が集まり大きな支援品として、提供できるものがあるのではないだろうか?

企業の災害支援として、単体で出来ること、業界全体やオフィス街全体で出来ること、支援の在り方はいろいろだが、「企業として何ができるのか?」という、ことを考えた新しい企業支援は、その企業や業界団体に対して、生活者からの大きな信頼を得られる社会行動なのだと思う。


日本のヒットドラマが海外へ ‐クールジャパンの新しい方向性‐

2023-12-22 20:20:12 | マーケティング

今朝FM番組を聞いてたら、「政府肝いりのクールジャパン事業は、ことごとく失敗をしているのにな~」と、感じる話題があった。
それが今年の夏ドラマで話題になった、TBS系列で放送された「日曜劇場・VIVANT」だ。

放送時から、人気が高く続編の期待等もあったと思う。
話題としても、同じ時間枠で大ヒットとなった「半沢直樹」で主演を演じたのち、ドラマなどから遠ざかっていた堺雅人さんが主役。
脇を固める俳優陣も、そのほとんどが主役級だったこと、「半沢直樹」をはじめ同じ時間帯で放送された重厚感あるドラマの監督を務められていた、福澤克雄さんのTBS最後のドラマとしても、話題になった。
その為TBSでは、ドラマを盛り上げる為に様々なスピンオフ(?)番組も制作していた。
それほどまでに、ドラマを制作するTBS側が力を入れた、ドラマでもあった。

その「VIVANT」が、Netflixで世界190以上の国と地域で、配信されることになったという。
TBS:日曜劇場「VIVANT」Netflixで世界配信決定! 

Netflixと言えば、今では米国映画の最高賞とも言われる「アカデミー賞」に、ノミネートされるような作品を制作するようになっている。
そのNetflixが全世界190以上の国と地域に向け配信をするとなれば、Netflix側もそれなりの本気度がある、ということだろう。
少なくとも、ある程度の配信利益が出る、と見込んでの配信契約をしたと考えるのが自然だ。
そしてこの「VIVANT」の成功が、今後日本ドラマの海外進出となる可能性はある。

そして思い出すのは、「クールジャパン事業」の素となった、日本アニメの力だ。
元々日本のアニメは、世界でも人気が高くアニメのキャラクターを真似るコスプレーヤーも世界各地にいる。
毎年8月に名古屋で開催される「世界コスプレサミット」等は、日本アニメの人気の高さを表すイベントだと言える。
それだけではなく、今年の6月6日付けビルボードグローバルチャートで、YOASOBIの「アイドル」が1位を獲得している。
ご存じの方もいらっしゃると思うのだが、「アイドル」という楽曲は、アニメ「推しの子」の主題歌だ。
Billboard Global Chart:YOASOBI「アイドル」が米ビルボード・グローバル・チャート "Global Excel U.S"で首位獲得 

このようなアニメ人気にあやかり政府の旗振りで行ったのが「クールジャパン事業」だったのだが、ことごとく失敗し、累計で50億円以上の赤字を出していると、記憶している。
そんな赤字はどこ吹く風、という感じで日本のJ-popやドラマは、海外から注目され、買われているのだ。
ドラマ「VIVANT」に関しては、放映時から海外での公開があるのでは?と、噂されていたと思うのだが、「やはり」という感じで世界配信が決まった。

そう考えれば、それなりのドラマや映画をつくれば海外からの買い手が付き、Netflixのように100を超える国や地域での配信がされる、という時代になっている、ということでもある。
そしてこれからのクールジャパンの方向性を示しているのでは?という、気がしている。


「ブランド」マネージメント

2023-12-21 20:17:19 | マーケティング

今月はボーナス支給月でもある。
公務員や大手企業の多くは12月10日頃が支給日だったはずだ。
日頃節約を心掛けざる得ない状況の生活者にとって、ボーナス支給というのは「家計が一息つける」という感覚もあるのでは?と、想像している。

そのボーナスが支給されないとして、話題になった企業がある。
若い女性向けアパレルブランドの「サマンサタバサ」だ。
一時期は、高校生~20代前半のOLさんたちが、サマンサタバサの服やバッグ等を持ち歩いているのが、当たり前だった。
理由は、価格帯が比較的安く、デザインもカワイイ、ということだったような記憶がある。
他にあるとすれば、百貨店ではなくショッピングモールに出店していた、ということも人気となった理由の一つかもしれない。

この「サマンサタバサ」の話題より少し前に話題になったのが、ジュエリーショップ「4℃」だ。
昨年だったと思うのだが、敬宮愛子内親王殿下のお誕生日動画で身に着けていたネックレスが、「4℃」のものではないか?と、話題になったのでブランド名を覚えている方もいらっしゃるかもしれない。
実際に身に着けていらっしゃったのは、4℃のモノではなかったようだが、この話題で日頃若い女性向けのジュエリーに興味のない人にまで、ブランドが知れ渡ったのでは?という、気がしていたのだが、現実はそれほど優しいモノではなかったようだ。
ITMediaビジネス:なぜ「サマンサタバサ」はここまで追い詰められたのか「4℃」との共通点 

ジュエリーショップ「4℃」は、日本のジュエリーショップの中でも決してハイブランドな位置づけのショップではない。
どちらかと言えば、カジュアルな部類だろう。
その為、リンク先の記事にあるように大学生くらいの男の子が、彼女にプレゼントするには値ごろ感がよく、デザインもカワイイという点で、「外しがないプレゼントブランド」として人気があったことも確かだ。
ただ「外しがないプレゼントブランド」という側面ばかりが強調されると、それもまた違う気がするのだ。
それは購入の中心は、若い男性ではなく、若い女性だったはずだからだ。

「コロナ禍」以降、私自身も実店舗に行ってはいないので、はっきり言えないのだが、「サマンサタバサ」にしても「4℃」にしても、若い女性がファッションブランドとして初めて出会い、購入をする、という部分が強かったのでは?という印象を持っていたからだ。
「若い男性にとって、外さないプレゼントブランド」となったのは、贈る相手の女性が好んで読むファッション雑誌等で、度々紹介されていたからだ。
逆に言えば、上述した「若い女性が初めて出会い・購入するファッションブランド」ということになる。

その若い女性の人口が減りつつある中、同じような戦略でブランドマネージメントをしていたとすれば、先細っても仕方ないだろう。
むしろ「ファーストブランド」という位置づけで、ブランドマネージメントを考えていれば、「ファーストブランド」として体験した生活者の成長に合わせたブランド展開を検討する必要があったのでは?

確かに日本の女性は「永遠の少女」的な、乙女チックなモノ・コトが世代を問わず好きな傾向がある。
しかし高校生だった女の子は、いずれ社会人となりキャリアを積み、家庭との両立で悩むようになる姿がある程度想像できる。
その時、ファーストブランドとして出会ってくれた彼女たちの成長やライフステージに、どう寄り添えるブランドになるのか?その視点があれば、もっと状況は変わっていたのではないだろうか?




海外高級ブランドのホリデー戦略

2023-12-09 20:05:33 | マーケティング

実は、LINEを活用する海外の高級ブランドが増えている、と実感している。
元々、VOGUE Japanのメルマガ等に登録をしている関係で、LINEにも海外の高級ブランドからの「お友達登録」のお願いメッセージが来ていた。
そこでいくつかの有名な海外の高級ブランドに「お友達登録」をすることにした。
LINEのシステムそのものに対して、信頼が高いわけではないのだが、私の場合LINEに登録している友人・知人が限定的で、ほとんど動いていないのが現状だった、ということも登録をした理由の一つだ。

もう一つの理由は、年々Yahoo!等への広告動画が減ってきている、と感じていたからだ。
私が見落としているだけなのかもしれないのだが、ルイ・ヴィトンやエルメス、グッチ、カルティエと言った、多くの人が知っている海外の高級ファッションブランドのホリデーシーズンのネット広告が減ってきたり、出稿期間が短くなってきているような気がしたからだ。

海外、特に米国でのホリデーシーズンは、11月の感謝祭が終わると始まる、と言われている。
そして、今まさにホリデーシーズンのセール(日本でいうクリスマスセール)の真っただ中だ。
海外の高級ファッションブランドであっても、今のホリデーシーズンは売上の中でも飛びぬけて多い時期でもある。
何故ならホリデーシーズンは、「Season Of Greetings」と言われるように、ギフトシーズンでもあるからだ。

その「ご挨拶の季節」という言葉通り、海外の高級ファッションブランドが今年から始めたサービスの一つに「Eメッセージ」がある。
LINEで友達登録をしているユーザーに対して、「あなたの親しい人へメッセージを送りませんか?」というサービスだ。
勿論、このサービスを提供するにあたっては、それなりの目的がある。
一つは、LINE登録をしているユーザーに対する「ブランド価値を上げる」ということ。
もう一つは、特別な「Eメッセージ用のひな型(絵柄)」を用意するコトで、ブランドの高級感をLINE登録者以外へ伝えられる、という点だ。
いずれにしても、「ブランドイメージを上げる」ということに関しては、LINE登録者だけではなく「Eメッセージ」を受け取った人に対しても、その効果は高いはずだ。
実際、いくつかのブランドの「Eメッセージ」のひな型を見たのだが、クリスマスシーズン用の商品をさりげなく取り込みながらも、ブランドイメージを上げるような、素敵なモノばかりだった。
送る人のセンスの良さを感じさせるような、ひな型だったのだ。

このような手法を日本の高級ファッションブランドと呼ばれるブランドは、行っているのだろうか?
というよりも、日本の場合「高度成長期」を支えた「製造業」ばかりがスポットライトが当たる為なのか?アパレルや飲食と言った分野での高級ブランド化ができていないような気がする。
海外では評価が高い化粧品メーカーであっても、このような「個人と個人を結びつける」ことで、ブランドイメージを拡散させ、より強いブランド価値をつくり上げる、という発想をあまり感じたことが無い。

確かに上述したような、世界中に名の知れ渡るような高級ファッションブランドを、今の日本が創り上げることは経済的にも厳しい状況だろう。
しかし、このような分野についても「日本らしい高級ブランド」として、創り上げる必要があるのでは?
その視点で考えた時、海外の高級ファッションブランドのホリデー戦略は参考になるような気がしている。



「インバウンド」という、観光の在り方を考える

2023-11-25 21:32:59 | マーケティング

今月の半ば、独居高齢者である父のご機嫌伺いという名目の、介護チェックの為帰省をした。
2~3ヶ月に1度、ケアマネさんやデイケアのスタッフさんたちと、日ごろの父の生活状況を確認し、今後の対応を相談する為だ。
このサイクルが、短くなっていくのか?と、考えつつの帰省であった。

今回の帰省で利用した在来線乗り換えで見かけた、海外からの観光客については先日拙ブログでエントリをした通りだ。
「神在月」となっている、出雲地方を訪れる為に日本に来ているのだろうか?という、疑問を持ったのは、後日Yahoo!のトピックスに面白い記事がピックアップされていたからだ。
JCN NEWSWIRE:CNN、「Next Big Trip」で日本の秘境の隠れた魅力発見 

曲がりなりにも、実家が鳥取県にあり、本籍が島根県という私としてはこの両県が「日本の秘境」と書かれることに、残念な思いがある。
多くの日本人が思い描くような「秘境」ではないし、地方都市として成り立っている行政もある。
ただ、この記事で取り上げられる理由となった「新幹線が通っていない県」というのは、確かだ。
そして現在、舞鶴から山陰にかけ「山陰新幹線誘致」という活動を行っているようだ。
当然だが、このような「誘致活動」が起きれば、「反対活動」も起きる。
それはある意味仕方のないことだと思うし、むしろ盛んに意見を交換しあい「新幹線ありき」ではなく「地域活性化」に繋がるようになることが、一番だと思う。

これまで度々と感じてきたことに、行政側がこのような「新幹線誘致」を進める時「新幹線さえできれば、地域の活性化につながる」という、考えだ。
そしてそのような考えで、新幹線を誘致してきた行政の多くは、「人口流出」等に悩まされるという結果になっている。
交通の便が良くなったことで、「人の交流が生まれる」のではなく「10代から現役世代が外へ出やすくなった」という、状況を生んでいる、ということなのだ。

「人の交流が増える・新たな人の交流を刺激する」という意味で考えるのであれば、真っ先に思い浮かべられるのが「観光」ということになる。
おそらく行政の首長さん達も「観光誘致」を中心に考えられているのでは?と、想像をしている。
問題なのは「新幹線があるから、観光客が来るわけではない」ということに、気づかないことだ。
上述したCNNの「秘境の魅力発見」という点においては、「新幹線」云々の話ではない。
元々海外の方たちの旅行は「のんびり・ゆったり」が基本だ。
大切なことは「その場所に行かなくては、体験できないコト。その場所に行かなくては見ることができない風景や地元の人たちとのふれあい」だ。

「コロナ禍」が(建前上)終わり、海外からの観光客も増えつつある。
「コロナ禍」以前のような「インバウンド=爆買い」というイメージは徐々に薄れてきているがゆえに、改めて「自分たちの地域にあったインバウンドとは何か?」ということを模索しなくてはならなくなってきている。
そのことを忘れ、以前のような「爆買い」や「有名観光地」という固定された発想の中では、新しい海外からの旅行者を受け入れる事は、難しくなってくるのではないだろうか?


来春のファッショントレンド

2023-11-23 20:44:40 | マーケティング

久しぶりに、ファッション専門サイトWWDを見ていたら「2024年春夏コレクションから見る、ファッショントレンド」のまとめがあった。
WWD:2024年春夏トレンドブックは、今シーズンも100を超えるブランドから気になる傾向をまとめ 

ファッション業界とは関係のない人にとって、このようなトレンド分析は「何が何だか???」という、感覚にとらわれると思う。
まして、パリコレ等のランウェイに登場する「あの服を、着る場所や鴇はあるの?」と思われる方も多い。
実は、ブランドが発表するコレクションのうち、実際に商品として販売されるモノは、3割程度と言われている。
勿論、ミラノコレクションになると、もっと現実的に着ることができる内容が多い為、商品化し販売されるモノはもっと多くなる。
おそらく、アルマーニなどはコレクションの8割程度は、店頭で並ぶのではないか?と思っている。

では、ファッション関係者だけではなく、トレンドを意識しなくてはならない分野の人たちは、何を見ているのか?と言えば、服のラインやバッグや靴等の小物との色調合わせやデザイン合わせ等に注目していることが多い。
例えば、レディースウェアの中でスーツ等のビジネス向けの内容が増えている、となれば「働く女性を意識して、キャンペーンを犯が得る」と言った感じだ。
その中でも、肩ラインが強調されているとすれば、女性の意識が外に向き始めるようなアプローチが必要かもしれない。
逆にアルマーニが得意とする「スラウチ」と呼ばれる、なだらかな肩ラインが増えていれば「内省性や自分らしさを求める」傾向があるのでは?と、考えることもある。

他にも、1960年代のようなノスタルジックな印象のデザインが増えていると感じれば「復古調」というだけではなく、その当時の社会的雰囲気を生活者が求め始めているのでは?という、感覚で見るとそれまでとは違う社会が見えてくるはずだ。
実はこの1960年代のファッションについては、今年の春頃からSNS等で話題になり始めている。
例えば、高校生のお嬢さんが、おばあちゃんの若いころの服を「カッコイイ」と言って、譲り受けた。とか、1960年代の婦人雑誌の付録としてついてきていたソーイングブックを見ながら、自分で洋裁をするというYouTubeが話題になったりしていたからだ。
これを暗に「復古調」と括るのではなく、「何故その頃の服を見て、素敵だと思うのか?」というところまで掘り下げることが重要なのだ。

ファッショントレンドと生活者の意識は、別物とみるのではなく、日々の暮らしの中にある「服」を、その時々の生活者の表現だとみれば、まったく違う見方ができてくる。
今ほど、既製服が一般的ではなく、多くの若い女性が自分で服を仕立てたり、テーラーメイドで服を作ってもらっていた時代は、今ほど生活者は服を持っていなかった。
代わりに身に着けたのが「着回し」であったり、「コーディネートセンス」であったりしたのだ。

最近YouTube等で「仕立て直し」の動画をupする若い人達も増えてきている。
仕立て直しどころか、古民家を買いDIYするという動画をupする若い世代も多い。
それを単純に「経済成長」と結び付けるのか?はたまた「生活者の意識変化」ととらえるのか?で、その動画から感じることが、大きく変わってくる。
そのとらえ方の違いと、生活者の意識変化の一つの現れをファッションという視点で考えている、とみればWWDのレポートの読み方も変わってくると思う。


地方の観光資産とは?

2023-11-13 22:48:25 | マーケティング

昨日、独居老人の父の介護の為に、帰省した。
新幹線から、岡山駅で伯備線に乗り換えたのだが、日曜日の午後の自由席でも余裕をもって座れるはずの「やくも号」なのだが、何故か乗り換え駅の岡山駅で行列ができている。
それも、これまでに体験したことが無いほどの人数の海外からの観光客が、並んでいるのだ。
これまで数十回以上利用していると思うのだが、これほどの海外からの観光客を見たのは、初めてだったと思う。

確かに、今月は出雲地方は「神在月」となり、日本中の神様が大集合する月でもある。
その神様たちが集まる「神迎えの神事」は来週のはずだ。
出雲観光ガイド:出雲観光ガイド【神在月】スケジュール 

今でも勘違いをされている方がいらっしゃるのだが、「出雲における神在月」というのは、旧暦の10月のことなので、現在の暦では11月ということになる。
その為、出雲観光のメインイベントは11月ということになるのだ。
今回のように、海外からの観光客に「出雲の神在月」が、知られているのか?というと、疑問だ。
それだけではなく、今回同じ車両に乗車した海外からの観光客は英語圏の団体客ではなかった、団体の中に知的ハンディがあるのでは?と、感じられる参加者がいた、ということもまた驚きの一つだったのだ。

そのような動きを受けてという訳ではないと思うのだが。鳥取砂丘近くに外資ホテルの開業予定という記事が、産経新聞に掲載されている。
産経新聞:1泊6万円以上、鳥取砂丘に「五つ星ホテル」米マリオットの狙いと課題 

記事を読むと、米国を中心の富裕層を宿泊対象としているようだ。
富裕層とは言え、鳥取砂丘だけで1泊6万円以上という宿泊費は、高額のように思える。
日本の多くの旅行は、観光地巡りを詰め込んで、いかに効率よく数多くの観光地を回るのか?ということを旅行プランの中心となっている。
実際、様々な旅行代理店が広告しているツアー内容は、観光地巡りとグルメだ。
その視点で考えれば、1泊6万円以上で著名な観光地らしきものと言えば、鳥取砂丘と出雲大社位しか思い浮かばない人達にとっては、高額で海外の富裕層を対象としているとしても、価格設定が高すぎるのでは?と、感じると思う。

おそらく、富裕層の中でも日本での旅行のリピーターで、既に京都のような日本の有名観光地へは何度も行っている、という人達であればより「日本的な風景」であったり、「日本の地方でなくては体験できないコト」と言ったコトを求めるのでは?と、考えるのだ。
その視点で考えると、高度経済成長に乗り遅れてしまった山陰という地域は、今でも「日本の原風景」が数多く残っている。
現在は、関西から直接山陰まで運行する列車は無くなってしまっているが、観光列車の「銀河」のように運行ルートを季節毎に変更できる「自由運航」のような列車であれば、ユネスコ世界ジオパークをめぐるようなルート運行も可能になるだろう。
なぜなら、観光の目的は「日本の風景」だからだ。

もう一つ今回の「やくも」で乗り合わせた海外からの観光客の団体が教えてくれたのは、「ハンディのある人も楽しめる旅」の提案だ。
日本の原風景に溶け込むように、街中を散策するにしても、様々なハンディの有る人達も楽しめる配慮、という考えも必要となってくるだろう。
何故なら、何度も日本観光を体験している海外の富裕層は、「その場所に行かなくては体験できないモノ・コト」を求めているからだ。
とすれば、マリオットホテルの1泊6万円以上の価値を生み出すのは、ホテルのサービスではなく、地元の人たちなのではないだろうか?




知らないところに、大きな市場が隠れている

2023-10-18 22:31:44 | マーケティング

Yahoo!のトピックスのチェックは、1日に数回するのが当たり前となっているのだが、今日、「知らないところに、大きな市場が隠れていたのだな~」と、実感する記事があった。
記事の元となっているのは、私の実家がある山陰のテレビ局のニュース記事。
山陰放送:アイドルの「チェキ会」ピンチ フィルム品薄・品切れ相次ぐ・・・「チェキ不足」深刻 

ご存じの方も多いと思うのだが「チェキ」という商品は、富士フイルムが製造販売している「インスタントカメラ」だ。
富士フイルム:INSTAX”チェキ”カメラ

撮影をしたその場で、写真が出来上がり、余白にメッセージ等を書き込めるようになっている。
私のような昭和世代であれば「ポラロイド」と言った方が、わかりやすいかもしれない。
その「ポラロイド(カメラ)」は、2008年に一度完全撤退をしている。
その後「トイカメラ」のような位置づけで、米国の大型おもちゃチェーン「トイザらス」等で再販売されるようになっている。

実は「チェキ」そのものも、一時期製造・販売が危ぶまれた時があった。
その時救世主(?)となったのが、結婚披露宴や披露宴の二次会だった。
「チェキ」の魅力は、その場で撮影・現像・写真として見られるだけではなく、メッセージ等が書き込めるという点だった。
披露宴等で新郎・新婦と参列者が一緒に撮影をし、その場でメッセージを書き込み、披露宴や二次会終了と同時に、新郎・新婦に手渡すことができる、ということで再び脚光を浴び、注目されるようになったのだ。
同様の場面として「送別会」でも、「撮影したその場でプリント、メッセージが書き込める」として、今でも人気となっている。
というのが、私の知っている範囲の「チェキの市場」だった。

そこに「アイドルの『チェキ会』」なるモノがあるとは、まったく知らなかったのだ。
しかも「チェキ会」の発祥は、ビジュアル系バンドにあるという。
BASEMENT TIME:ヴィジュアル系にあって地下アイドルにあって歌い手にあって声優俳優にあって、ロックバンドにないものってなーんだ? 

タイトルが長いのでわかりにくいと思うのだが、世間の認知度としてはあまり高くないかもしれないが、コアなファンを獲得しているエンタメ業界の方々と考えるとわかりやすいかもしれない。
その人達が、宣伝の一つの方法としてライブ後に「チェキ会」を開き、ファンと一緒に写真を撮ったり、事前にチェキで撮った自分の写真にサインを入れて、手渡しをしたりしている、ということのようなのだ。

「地下アイドル」というと、一時期労働契約等で問題があったりしたが、山陰放送の記事中書かれている、いわゆる「地元アイドル」に関しては、そのような法外な契約で活動をしていない。
これは私自身、「がん検診の啓発イベント」で名古屋の地元アイドル達と数年ご一緒したことがあるのだが、学業優先でアイドル活動そのものは土・日と夏休みや春休みのような長期の休みに限られ、進学等については本人の意思に任せているようだった。
今問題となっているような「ジャニーズ的要素」は、まったくなかったという印象を持っている。
そして彼女たちを支えるファンの多くは、とてもまじめな人達が多く、主催者側の指示を守っていた。

話が逸れてしまったが、ヴィジュアル系バンドや地元アイドル達の活躍の中心は、いわゆる「ライブハウス」なのでライブハウス管理者側の裁量で様々な「ファンイベント」が開催するコトができる。
その一つが「チェキ会」と呼ばれるモノなのだ。
大きな予算を必要とせず(=大手広告代理店等を必要とせず)、ファンにとってはチェキ1枚、1枚が特別なショットである「特別感」を持った特典であり、販促物となっているのが「チェキ会」ということになる。

この「チェキ会」等は、大手メディアが注目し・報道するような類のものではない為、注目されにくい「大きな市場」なのでは?と、考えるのだ。