昨年から、話題となっているUSスチールを巡る買収問題。
石破総理と面談をしたトランプ大統領は、「微妙な落としどころ」を見つけたようだ。
Bloomberg:トランプ氏、日鉄は買収ではなく投資で合意ーUSスチール株下落
USスチールと日鉄との間での買収交渉に、待った!を掛けたのは、トランプ氏と米国の製鉄労働組合だった。
トランプ氏は、大統領選の時から「USスチールは、海外の企業に買収させない」といった趣旨の発言を繰り返していた。
その背景にあったのは、この買収に反対を表明していた製鉄の労働組合だった。
しかし、残念な事に米国の製鉄企業はUSスチールとの買収交渉で合意に至らず、USスチール側は新たな交渉相手として日鉄を選び、両者の間ではほぼ合意となっていた。
企業名の通りUSスチールは、米国を代表する製鉄企業だ。
その企業が、日本の企業に買収される、ということに不満だったのが米国の製鉄労働組合だったし、労働組合の票田が欲しかったトランプ氏が、それに乗ったのだった。
トランプ氏とすれば、USスチールが買収されようともさほど興味はなかったのでは?という、気がしていた。
トランプ氏が欲しかったのは、労働組合からの支援であり票田だったのではないだろうか?
だからこそ、1月の大統領の宣誓式からさほど日が立たない今、日鉄の実質的な買収を「投資」という表現をしたのでは?という気がしている。
もちろん「投資」となれば、USスチールは米国の企業として残るし、懸案だった資金調達については日鉄から引き出せる、という目論みがあるはずだ。
なにより「投資」という表現を使えば、これまで買収に反対をしてきた製鉄労働組合も、納得させることができるだろう。
「USスチールは、日鉄から投資を受け、企業再生へと向かう」ということが、言えるからだ。
トランプ氏にとって、USスチールを救済する相手が、米国の企業でなくても良かった、ということでもあると思うし、実際米国内のライバル企業との間での話し合いが進まなかったことを考えれば、中国やロシア以外の国の企業であれば問題ない、位の気持ちだったのではないだろうか?
実際、その興味の無さを示す言葉として「日鉄」を「日産」と、間違えているということからもうかがえる。
今の「日産」は、ホンダとの経営統合の撤回により、以前より厳しい経営を迫られるような状況に陥っているはずだ。
にもかかわらず、企業名として米国でも有名な「日産」の名前を挙げてしまっている点から考えれば、トランプ氏は日本の企業に興味がなく、米国内の企業がピンチに陥った時、日本の企業が「投資」してくれれば問題ないということだろう。
「投資」という言葉を使うことで、今回のUSスチールと日鉄の買収を収めようとする、トランプ氏のしたたかさを感じる。
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