日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

AppleのホリデーシーズンCM

2016-12-16 20:48:23 | CMウォッチ

先日、見かけたAppleのホリデーシーズンのCM。
とても、素敵なCMだった。
Apple:Frankie’s Holiday
既に、ご覧になった方も多いと思う。

CMそのものは、AppleのSiriのCMのようにも思える内容だが、Appleが本当に伝えたかったメッセージは、SiriではなくCMの最後に出てくる言葉「心を開こう、すべての人に」ということだろう。

そしてこのCMを見た時、思い浮かんだのが「Apple VS トランプ氏」だった。
大統領選真っただ中、トランプ氏はIT企業の多くが米国内での雇用に貢献していない、という趣旨の発言をしていた。

そのやり玉に挙がった企業の一つが、Appleだった。
Apple側が、FBIからの「ロック解除依頼を拒否」した点も、トランプ氏側は不満だったようだが、それ以上に不満だったのが「国内雇用」という点だったという気がしている。
当然、Apple側はすぐに声明を発表している。
その一つが「企業の多様性」という点だった。
「様々な人種、多様な価値観の中からAppleの価値が創造される」という、趣旨だったように記憶しているのだが、このような企業理念(?)を基にこのCMが作られたのでは?という気がしている。

確かに異形のフランケンシュタインは、人を驚かせ、恐怖感を与える存在だ。
山から下りてきたフランケンシュタインの胸には、柊の葉で作った可愛らしいブローチを付けている。
赤と緑の電球を首のソケットにつけ、クリスマス気分を盛り上げたい!という、配慮まで見せている。
しかし、群衆の目は冷たく「何か悪いことをするのではないか?」という、疑心暗鬼の眼差しで、フランケンシュタインを見ている。
それでも、フランケンシュタインはクリスマスツリーに集まる人達の前で、歌を歌い仲良くなろうとする。

緑色の電球が、接触不良で消えてしまった時、一人の少女がフランケンシュタインを手招きをし、電球を直すと少女はフランケンシュタインが歌うのを止めてしまったフレーズから、歌を歌いだす。
その歌声から、群衆のコーラスへと繋がっていく時のフランケンシュタインの表情は、穏やかで嬉しそうだ。
そこには異形のフランケンシュタインではなく、友人を得た一人の人の姿のように見える。

米国のホリデーシーズンのCMは、商品を売る目的よりもその企業の理念に基づいたCMが作成されるコトが多い。
そしてこのCMは、「アメリカファースト」を掲げ大統領になったトランプ氏へのAppleからの返事のようにも思えるのだ。

多様な価値観、人種、性差など潜在的に持っている「偏見」ではなく、「心を開き、寛容な価値観こそ、人を豊かにする」という、メッセージのように思える秀逸なCMだと思う。