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安倍首相の「新聞を読んでくれ」発言を考える

2017-05-09 19:43:17 | 徒然

昨日、ネットのニュースチェックをしていたら「安倍首相が、新聞を読んでくれ」と発言した、という趣旨の見出しがあった。
朝日新聞:安倍首相、改憲発言の整合性「新聞読んで」衆院予算委

この見出しだけなら、どの新聞を読んでも良いような印象を受ける。
しかし記事を読むと、ある特定の新聞名を上げての発言だったようだ。

ここで問題だと思うのは、
①特定の新聞名を上げている。
②安倍首相自らの言葉で、説明することをやめている(あるいは、拒否をしている)。
という2点があると思う。

①の特定の新聞名を上げている、という点についてだが名前を上げられた新聞社側とすれば、「首相のお墨付き」と宣伝材料になる、というメリットがある。
その一方で、「安倍さんの都合の良い内容ばかりで、公正な報道がされていない」という印象も与えられてしまっている。
メディア、特に新聞社にとって「公正な報道がされていない」という印象は、大きなイメージダウンになりかねない。
人によっては「大本営発表の記事ばかりで、本当のことを書いていないのでは?」という、疑心暗鬼な印象を持ってしまうと、昨今問題になっている「フェイクニュース」と同じような扱いをされかねない。
何より、今の若い世代には「マスメディアに対する不信感」が、高くなりつつある。
テレビや新聞に対する信頼度そのものが低下している中で、「大本営発表の記事ばかりだろう」というイメージは名指しをされた新聞社にとっては、デメリットになっている可能性もある。
名指しされた新聞社の主筆は渡辺恒雄さんなので、その意味では安倍さんや自民党幹部と親しい関係があるので、想像するほどのダメージはないかもしれない。

実は、②の首相としての説明責任の放棄のほうが、問題としては大きいと思っている。
何故なら、首相自身が自分の言葉で説明する力がない内容の憲法をリミットを決めて改正しようとしているからだ。
ビジネスパーソンだけではなく、あらゆる場面で「説明をする」ことがある。
一番わかりやすい場面は、プレゼンテーションという場だろう。
その時、説明をする立場の人が説明できないような内容を、誰が信用するのだろう?
「自分で説明ができない」ということは、説明する人自身が内容を理解していない、と受け止められるからだ。
内容を理解していないのに「(親しい関係にある)新聞社の記事を読んでくれ」というのは、無責任だと受け止められても仕方ないだろうし、そのような発言をする人を信用することはできない、と感じる人は多いだろう。

4月下旬から「忖度」という言葉が、政治の世界では流行しているようだが、新聞の記事そのものが「忖度記事」ということにもなってしまう。
「忖度」ということは、あくまでも記事を書いている側の「相手の気持ちを思い計って、推察した内容」ということにもなる。
そのような記事は、事実を説明しているのではなく、想像をした内容ということでもある。
それでは、新聞記事ではないように思う。

一国の首相として、そのような発言を平気でしてしまうことに、安倍さんの危うさを感じるのだ。