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イオンの「転居なし新卒採用」は、地方にプラスになるか?

2017-05-30 20:09:05 | ライフスタイル

イオンが「転居なし新卒採用」を、来春入社採用者に対して行うという記事が朝日新聞に掲載されていた。
朝日新聞:イオン、転居なしの新卒採用 来春入社から、地元志向に

実家のある米子に帰省する度に、地元での就職先の少なさを感じている。
私が新卒で就職をするときですら、就職先は地元の銀行か市役所や県庁などの公務員くらいだった。
それから30数年たち、地方の産業は徐々に廃れ、都市部への集中がより進んでいる。
特に、東京への集中は激しく、ここ名古屋であっても女子の就職先が限られるため、地元名古屋での就職を諦め、東京で就職を目指す、ということもあるという。

そのような状況の中で、イオンの「転居なし新卒採用」というのは、地方出身者にとっては魅力的な採用方法だと思う。
何故なら、地方出身者で都市部の大学などへ通っている学生たちの中には、比較的高い割合で「地元で就職をしたい」という、希望があるからだ。
都市部の大学に進学しながら就職先の少ない地元へ帰りたい、という希望があることに、驚かれる方もいらっしゃるかもしれないが、都市部での生活に慣れないまま大学生活を送っている学生たちは、案外多いのだ。
実際、私の高校時代の同級生たちの多くは、「やはり地元での生活が、一番安心できる」と言って、地元就職を目指していたし、地元に就職をした同級生は多い。おそらくクラスの半数以上が地元就職を目指し、何とか地元で就職をしていたはずだ。
就職をする側は、上述した理由などでメリットは十分あると思う。

それだけではなく、イオンそのものにもメリットがあるのでは?と、考えている。
というのも、その地域のコトを一番知っているのは、その地域で生活をしている人たちだ。
イオンのような全国展開をしている大型スーパーであっても、出店している地域の特色や社会事情は無視できない。
そのような地域の特色や社会事情を、素早くビジネスに展開するためには、その地域のことを一番よく知っている人たちの意見を聞くことだろう。
イオンで働く人たちは、一歩職場から離れればその地域で生活をする人になる。
そのような「内なる生活者」の声を、売り場や商品展開に反映させることができる、というのは大きなメリットになるはずだ。

もう一つメリットがあるのでは?と思うのは、「地産地消」への切っ掛けづくりだ。
ローカル系のスーパーで最近目立つ売り場が、「地産地消」の売り場だ。
野菜などが中心なのだが、最近では鮮魚売り場などでも「地元産」を謳うようになり、なかなかの人気売り場となっていると実感している。
「地産地消」となれば、やはり地元のことをよく知っている人材が必要となる。
それが、イオンのように全国展開をしている大型スーパーであれば、「地産地消」から全国へと展開できるチャンスも生まれるだろう。
「地域産業の交流」という、ローカルビジネスの展開も将来的には生まれてくるかもしれない。

イオンがそこまで考えて、転居なし新卒採用を検討したのかはわからないが、地域の後押しも含め地域の活性化につながる可能性があるように思われる。