VOUGEのサイトには、なかなかユニークな文化の変遷をまとめたビデオが見られる。
その一つ、オフィスカジュアルのトレンド、100年の歴史を見ると、その時々の社会の雰囲気だけではなく、女性の働く意識の変化も感じられるような気がする。
VOUGE:ライフスタイル オフィスカジュアルのトレンド 100年の歴史
最初に紹介されるオフィスカジュアルのブランドが、シャネルだと知って驚かれる方が多いかもしれない。
今のような高級ファッションブランドとなる前、というよりもココ・シャネル自身が自分のブランドを立ち上げた時は、「働く女性たちの為のファッション」を創りたいと考えていた、と言われている。
そのため、それまで男性のカジュアルウェアの素材であった、ツィードを使ったり、スポーツウェアの素材であるジャージ(「伸縮性のある生地」という意味)を積極的に使うことで、女性たちが働きやすいファッションを提案していた。
もちろん、当時はファストファッションなどはなく、「オーダーメイド」という時代だ。
数多くの服ではなく、少ない服を上手に着まわすことも、オフィスファッションの重要ポイントだったに違いないだろう。
シャネルスーツは着回しがしやすいスーツとして、働く女性たちに受け入れられたと言えるのだと思う。
しかし、第二次世界大戦がはじまる前までの女性の外出着の基本は「帽子・手袋・小振りのハンドバッグ」ということを考えると、このような服装で仕事に行く女性の仕事は、今のような仕事内容ではないだろうな~と、想像ができる。
そのようなファッションが一転するのが、第二次世界大戦中のファッションだ。
それまで、穿かなかったパンツスタイルが登場する。
同じころ日本では、モンペが女性の服装の「基準服」だった。
最も、第二次世界大戦後次にパンツスタイルが登場するのは、1970年代に入ってからなので、戦争という時代は女性からファッションやおしゃれというモノ・コトを奪うことだということもわかる。
戦後になると、再びスカートが復活。
しかし、戦前には一般的であった「帽子・手袋」はCA以外の職業では、着用しなくなる(ジャクリーン・ケネディは別だ)。
戦後、女性がオフィスで働く、ということが一般的になり、帽子や手袋をして出勤するほど優雅な職場ではなくなった、ということだろう。
随分前に「9時から5時まで」という、米国映画があった。
この時、ジェーンフォンダが演じる、長い間専業主婦で離婚をしたため人生で初めて働くことになった女性が初出勤する場面では「帽子・手袋・小振りのバッグ」で登場し、職場の女性から失笑される、という場面があった(と、記憶している)。
映画公開が1980年だったコトを考えれば、それだけ時代遅れ感のあるファッションでの出勤、ということを大袈裟に表現していた、ということだろう。
女性のオフィスファッションが大きく変わるのは、1970年代になってからだろう。
パンツスタイルで仕事をする女性が登場するのと同時に、「ウーマンリブ」という社会の動きとリンクする。
1960年代から始まった、公民権運動やベトナム戦争に対する若者たちの反戦活動などもファッション全体への影響を与えていると思う。
と同時に「女性が働く」という意思と意味の、変革の始まりだったかもしれない。
それがより強く表れるのが1980年代、ということになるだろう。
女性が男性と対等に仕事をするのが、(米国では)当たり前になりつつあり、日本でも「男女雇用機会均等法」が施行されるのが1985年だ。
行き過ぎた平等意識は、女性自身のアイデンティティを揺るがすことになったのか?1990年代になると、揺り戻しのようなファッションになる。
とはいうものの、既に「女性が働く」ことが特別なコトではなくなり、大学進学率なども急激に増えるなど、仕事にファッションが影響を受けるのではなく、自由さを得たのが1990年代以降ということになるのかもしれない。
ファッションの変遷という視点で見るだけでも、女性の働く意識の変化を感じるのは「時代を映す鏡」として当然なのかもしれない。
その変遷を長いスパンで見ることで、「ファッション」という文化の変化と社会的影響も感じられる面白いビデオだと思う。