日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

イノベーションを考える前に、考えたいコト

2019-10-09 16:10:09 | ビジネス

バブル経済の崩壊後、低成長(はっきり言えば「マイナス成長」かもしれない)が続いている。
そして、お題目のように言われるのが「イノベーション(改革あるいは変革)」。
「イノベーション」を起こすために、最近では「イノベーション」と言う言葉を冠とする部署をつくる企業もあるらしい。

日経新聞:イノベーションの定義は社外に求めてもムダ、自分たちで定義しよう

この記事とは別に思い出したことがある。
しばらく前に、大阪ガスのエネルギー・文化研究所の池永さんが書かれたコラムだ。
エネルギー・文化研究所:【起動篇】なぜ日本人は「イノベーション」が好きなのか

池永さんのコラムを読んで気づくことはないだろうか?
「イノベーション=現状打開」という意味で、使われていることが多い、という点だ。
だからこそ「奇をてらったこと」をし、失敗をしてしまうのだ。

「現状打開」と「イノベーション」は、発想そのものが大きく違うのではないだろうか?
「イノベーションによって、現状打開ができる」という発想から、「イノベーション」に関する部門を作ってしまったりするのでは?と、想像してしまうのだ。
しかし「現状打開策」を考えるのであれば、「現状の分析→問題点の洗い直し→捨てる事業・残す事業の検討と実施」などのステップによって、ある程度の「負」の状態からの脱却を図ることができる。

何も、大胆な発想の転換をする必要はないはずなのだ。
ところが「V字回復」と言う言葉が好きなビジネスパーソンがいるように、現状分析などを地味な作業を嫌う傾向があるように感じる。
そのような思考傾向のある企業が、「イノベーション」と言う言葉を冠につけた部署を、作りたがるのでは?

「イノベーション(改革あるいは変革)」というのは、実は地味なマーケティング分析の中から、種となるものをみつけるというところからスタートのではないか?と、考えている。
残念なことに、日本の企業全体に見られることだと思うのだが、「マーケティング」そのものを十分理解をせず、専門部署も設けずに広告代理店に丸投げしている傾向がみられると感じている。
そのために、日経の記事のような提言が出てくるのだと思う。

マーケティングの最大の目的とは「生活者(あるいは顧客)の問題解決」だ。
その「問題解決」を把握できていないのに、地に足がついた「イノベーション」など起こせるはずもない。
「奇をてらった」ところで、「生活者(あるいは顧客)の問題解決」に結びついていなければ、生活者や顧客からそっぽを向かれるのは当然だ。
何よりその「イノベーション」は、自社の企業理念や創業の精神と相通じるものでなければ、生活者は違和感しか感じない。
違和感ではなく、不信感を招く可能性も高い。
であれば、自社のことを十二分に理解している社内で考え・行動することの方が、遥かに現実的でマネージメントもしやすいはずだ。

その視点を持たずに、部署だけをつくるのは本末転倒だろう。