日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

市場を創るのは、生活者でもある

2020-08-01 20:31:57 | マーケティング

昨日、国が「マスクや消毒用アルコールなどの転売規制を廃止する」という報道があった。

Huffpost:マスク転売規制をなくす方針との報道に「悪質な転売ヤー増え、また品薄に」とネットで批判続出

Huffpostの記事にあるように、「マスクや消毒用アルコールなどの衛生用品」の転売規制廃止については、多くの生活者が不安を抱いているのは、当然だと思う。
この規制が始まる前まではとんでもない値段で、メルカリをはじめとするC2Cサイトに数多く出品されていたからだ。
「生活に必要なモノ」と考えれば、多少高くても購入せざる得ないと思い、購入した人達は多かったはずだ。
それが、国からの規制によってC2Cサイトでは出品することができなくなり、できなくなった数多くのマスクなどが市場に出回るようになった。
もちろん、品質という点では粗悪なモノも多かったようだが、逆に考えれば「粗悪な商品を高値で売ろうとした人達が数多くいた」ということにもなる。
その「規制を廃止」しよう、というのが今回の報道だ。

かつてドラッカーは「マーケティングの目的は、市場を創り出すこと」だと、いくつかの著書で述べている。
そして、コトラーは「社会の問題を解決するのがマーケティングの目的である」とも言っている。
個人的には、その両方が「マーケティングの目的」だと考えている。
その一方で、「市場を創り出すのは、企業だけなのか?社会の問題を解決するのは、企業だけなのか?」と考えると、「企業だけの力で市場を創り、社会の問題を解決することはできない」はずだ。
何故なら、企業だけが商品やサービスを提供しても、それらの商品やサービスを生活者が購入したり利用しなくては、市場は創られないし、社会の問題を解決することもできないからだ。

とすれば、今回の「マスクや消毒用アルコールを含む抗菌剤・滅菌剤」等をC2Cサイトに出品されていれば、それを「購入しないように」という不買運動をネット上で展開したり、場合によってはサイト情報をSNSなどに公開するなど「購入しないように呼び掛ける」ということを生活者自ら行う、ということも「市場を創る」上では重要なのでは?という、気がするのだ。

と同時に、サイトを運営している企業は、自主的に規制をする姿勢を取る必要があるだろう。
「ネットで取引をしている個人同士の問題」としてではなく、「社会がどのようにその取引を見ているのか?その見られ方はサイトを運営している企業に対する社会的信頼度を図っている、という意識を持つことで、より社会的=利用をしていない未来の利用者からも信頼を得る(または信頼を失う)ことに繋がるからだ。

むしろ、国からの規制がなくなったことでC2Cサイトを運営している企業に対して、厳しいチェックを生活者はするようになるはずだ。
それは3月の「マスク騒動」の時を振り返れば、よくわかることだと思う。
それは「自由経済」という視点で考えても、「国からの規制がなくなったことで、企業の姿勢が問われている」という認識を持つべきだろうし、持って当然だろう。
その程度のビジネス上のリスクマネージメントをして、当然なのだから。
たとえ些細なことであっても、生活者が受け入れることができないようなビジネスとは何か?ということを、徹底して考えサイト運営をすることが、今だけではなく未来の利用者を獲得する唯一の方法なのだから。