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ネット通販から見える「新型コロナ」と「マスク」

2022-01-31 11:37:03 | マーケティング

日本では連日「新型コロナウイルス」の感染者が過去最大、と報じられている。
ほかにも「オミクロン株の亜種が、日本でも見つかった」などの情報があり、「重症化しないとは言いきれない」などと主要メディアが言っている。
このような情報を目にするたびに、「警告情報ばかりで、生活者は疲れ果てているのにな~」と、思うようになってしまった。

このような報道の背景には、日本独特の「0思考」があるのかもしれない。
「0思考」とは、「害悪となるものは”0”でなくてはならない」という思考だ。
「東日本大震災」で水蒸気爆発を起こし、放射能が噴出した「東京電力福島第一原子力発電所事故」が起きた時、世間を覆った「放射能悪」という世間の雰囲気といえば、わかりやすいかもしれない。
現実には、「放射能」そのものは身近な植物も、放出している。
温泉の効能の中にも、放射性物質を含んでいるものもいくつもあり、人はその恩恵にあずかってきた。
にもかからわず「放射能=発がん性物質=体に悪い」ということになり、「放射能を徹底して排除する」という感覚に陥った人たちが多かった。

それと同じような社会的雰囲気が、「新型コロナウイルス」にも起こっているのでは?ということなのだ。
今のような状況であれば、おそらく日本国内の感染者が”0”になるまで、今のような生活を続けなくてはならないのでは?という、気がしてくるのだ。

そんな感覚の中でネット通販を見ていたら、気づくことがあった。
それは「マスクのトレンド」というか、売れ筋の傾向の変化という点だ。

「新型コロナウイルス」の流行の兆しが顕著になった頃から4か月ほどは「不織布マスク」不足となり、布マスクを手作りする人が出てきた。
手作りができる人は良いが、すべての人がマスクを手作りできるわけではない。
そこで登場したのが「布マスク」の販売だ。
素材も様々・カラーや柄のバリエーションがあったことから、「マスク」そのものが、一つのファッション・アイティムのようにもなった。

「不織布マスク」が市場に再び出始めるようになると、人は「より高性能なマスク」を求めるようになっていった。
その一つが、従来の機能にプラスした「呼吸がしやすい」という、韓国で流行していた「柳型(別名:ダイヤモンド型)」と呼ばれる形状のマスクだ。
韓国発祥のデザインだったのか?「柳型(」と呼ばれるデザインのマスクには「KF〇〇」という、韓国での感染リスク排除表示がされたことも、人気の秘密だったのだろう。
今現在では、この「柳型」と呼ばれる不織布マスクをつけている人が、多くなっている。
その一方で、なぜか日本の主要メーカーさんは、この「柳型」ではなく、従来のプリーツタイプか立体型に終始している。
「日本のプロダクトデザインは、世界でも評価が高いはずなのに、なぜ従来の形状にこだわり続けているのか?」という、疑問を持っていた。

それが、英国で「通常の生活をする上でマスクを外しても構わない」という政府方針が発表されると、ネット通販ではヨーロッパ各国の首脳たちがつけていたような形状のマスクが登場するようになる。
この形状のデザインを見たとき、「簡易防塵マスク」を思い浮かべたのだ。
デザインよりも「防塵」を考えたマスクなので、「柳型」の主流が4層なのに対し「(簡易)防塵マスク型」は5層構造という、「絶対!感染しないぞ」という、気持ちに応えるのに十分なものだ。

ここで、気づかないだろうか?
現在流行している「オミクロン株」は、これまでの「デルタ株」などと違い、感染力は強いものの既往症や高齢者以外の重症化リスクは低い、といわれているのに、日本では「防御性の高いマスク」が徐々にネットで販売されるようになっているのだ。
特に現在ネット通販で人気となりつつある、欧州でつけられていた5層のマスクは昨年末ごろまではほとんど見ることがなかったタイプのモノだ。
確かに欧州で使われていた5層のマスクは「(欧州の飛行機会社では)飛行機に搭乗する時の基準マスク」という、謳い文句が使われているのだが、日本の航空各社はそこまでの物は求めてはいないし、購入している人たちは飛行機に搭乗することを前提に購入しているわけではない。
そこで考えられるのは、欧州での需要が減ってきたので日本で流通するようになった、ということなのだ。

ネット通販で販売されている「マスク」を見ていると、「新型コロナウイルス」に対する、日本人の受け止め方を示しているようにも思えてくるのだ。
それが上述した「”0”思考」ということなのだ。

これまでの風邪やインフルエンザを含む「感染症」を見ていると、おそらく「”0”コロナ」となるのは難しいと、考えている。
とすれば、「コロナとの共存」という方向を考える必要があるのでは?と、個人的には考えている。